大工の必需品とも呼ばれている差し金ですが、機械製作現場や最近ではDIYの場面でも使われることが多くなっています。直角の長さを測ったり、90°を見つけたりするだけでなく、差し金には便利な使い方がたくさんあるので、細かく解説します!
差し金とは、金属で出来た直角の定規です。長い方の定規を長手(ながて)もしくは長腕(ながうで)と呼んでいて、短い方の定規は短手(つまて)、短腕(つまうで)とされています。
差し金は金属の定規なので、長さを測ることが目的に作られています。直角であることを活かせば、距離を測ることも出来るので、工具として使い勝手のよいものとなっています。また、長手と短手の接合部が直角になっているので、直角を測定することにも使えます。
大工や機械製作現場で都度長さを測定して計算しているとタイムロスに繋がりますよね。そこで考案されたのが差し金で、長さを測る以外に「作業の効率化」を行うことが出来る工具です。
差し金には外側と内側に目盛りがついています。よく見てみると長さが異なっているのがわかると思います。外側を表目、内側を裏目と呼んでいます。基本、外側は通常の定規と同じになっています。裏目の長さは計算された長さの目盛りが振られているので、計算せずに線を引いたり長さを測ったりすることが出来ます。
差し金の表面に凸凹がある面が上の状態を「丸目」、表面が平らになっている面が上の状態を「角目」と呼んでいます。差し金の本体に丸目・角目と書いているものもあるので、慣れないうちは印字のある差し金を使うようにしましょう。
差し金を2本用意して比べてみるとわかりやすいですが、丸目と角目ではそれぞれ裏目の目盛りの幅が異なっています。実際に測定できる長さが異なります。丸目と角目で測定できる長さを利用して、大工などは時間の効率化を図っているのです。
丸目、角目どちらも表目の長さは通常の定規と変わらない長さを測ることが出来ます。
表面に凸凹がある面が上の状態を「丸目」と呼ばれています。差し金によっては表面に丸目と印字されているものがありますが、印字されていなくても丸目の表面には凸凹しているので判断しやすいです。
丸目の状態では、表目は通常の長さ、裏目は【長さ×3.14】が計算された数字が印字されています。例えば、円形のものに巻きつける金属板の寸法を測るときに、直径×3.14を計算して円周を求めてから長さを測るのはかなり手間になります。
円周や直径などを求めることが出来るので【丸】目だと覚えておくと使い勝手がいいです。直径を測るだけで円周を求めることが出来るのが、丸目の強みです。
丸目を使えば、直径が7センチの円周は7目盛りの部分になるので、計算が不要ですし、すぐに印をつけることが出来ます。大工や機械製作現場では差し金を使って時間短縮をしながら作業を効率化しているのです。
円形の柱などの測定の際も、差し金の丸目の裏目を使えば、簡単に測定することが可能です。近年流行しているDIYでも重宝しそうな技術です。
角目は、表面が平らになっている面を上になっている状態のことです。表目は通常の定規と同じ長さになっているので、距離を測定するときなどに役立ちます。裏目は、【長さ×√2】の長さが記載されています。
中学校で勉強する、直角二等辺三角形(正方形の対角線)の比「1:1:√2」が求められるのです。例えば、5センチ角の角材の対角線は「5×√2」で求められますが、いちいち計算するのはかなりの手間です。差し金の角目の裏目を使えば、5目盛りの部分に印をつけると「5×√2」を計算しなくても長さを記せるのです。
1辺の長ささえわかれば、対角線の長さは計算しなくても求められるのが角目の強みです。
直角を使って長さを測るだけだと思われがちな差し金ですが、3.14をかけたもの、√2を掛けたものなどがすでに計算されているので、大工の必需品となっているのです。差し金は計算で求めなければいけない長さがすでに書かれているので、差し金を使うことでかなりの時間短縮になります。計算という作業を減らし、手順を作業にすることが出来るので工具として差し金を使う人が多いのです。
実際に差し金を使った便利な方法をいくつかご紹介します。長さだけでなく、角度の求めかたも合わせてチェックしてみてください。
円形の周りに金属板などを巻き付ける時には、円周の計算が必要になります。例えば、直径10センチの円柱に巻き付ける金属板を用意するときの方法をご紹介します。
・金属板をおいて、その上に差し金を置く
・差し金は丸目を利用する
・金属板の角に合わせ、裏目「10目盛り」のところに印をつける
・印をつけ、切断して巻き付ける
円周を使いたいときには、丸目を使うようにしましょう。10センチの直系の円の場合、裏目も10目盛りのところを利用しましょう。
正方形の対角線を求めたいときには、角目を使うようにしましょう。正方形の1辺の長さを測定するだけで、対角線の長さを求めることが出来ます
・正方形の1辺の長さを求める。このときの1辺を10センチとする
・角目の裏目を「10目盛り」の位置に印をつける
対角線しかわかっていない時は、裏目に合わせて目盛りがいくつかによって正方形の1辺を求めることが出来ます。
加工しているときに、しっかり直角になっているのか測定する方法があります。差し金の角はちょうど90°になっているので、差し金を当ててみて判断することが出来ます。差し金の裏目の部分を90°のところに押し当てて、差し金が動かなければ直角であると判断できます。少しぐらついている場合は、90°以下の角度になっています。
実際、大工の多くは差し金を使って90度を測定しているケースが多いです。取り付けた柱が直角かどうかの確認は、短手を天井部分に当てて、差し金と柱がしっかり平行になっているのかを確認することで行えます。
差し金が90°なので、それを利用して「直角二等辺三角形」を作ることが出来れば、45°を確認することが出来ます。直角二等辺三角形は、直角を挟む角度が同じ長さであればいいので、印をつけて45°を作ります。長手と短手の長さを同じにすることで、角度を45°にすることが出来ます。
中学校で学習した直角三角形のうちのひとつ「90°、60°、30°」の三角形を作ることで、30°や60°といった中途半端な角度を測定することが出来ます。直角三角形を作るためには、長手の長さを短手の長さの2倍にして線を引いてみると、60°と30度を作ることが出来ます。
差し金を使うことで、円周や斜辺の長さを求めることが簡単に行えます。また、90°を利用して細かい角度を作ることが可能なので、角度が必要な場面でも重宝しています。角度よりも長さの方が使う機会が多いので、初心者はまず、丸目と角目を使いこなせるようしてみましょう。