「グリスガン」とは、潤滑剤「グリス」を機械部品などに注入する際に使う工具です。工具といっても、一般家庭で使用するような馴染みのあるペンチやドライバーとは違って、グリスガンは主にプロが働くさまざまな現場で活躍しています。
たとえば、自動車など車両関係のメンテナンス・建築現場で使う建設機械の整備・農業で使うさまざまな農機具・工場で使用している機械や設備の点検時などが挙げられるでしょう。また、プロの現場以外にも、ガーデニング・造園で使用する芝刈り機、DIYで利用する小型チェーンソーなどのメンテナンスなど一般の人も利用しています。
ひとくちにグリスガンといってもいろいろな種類があり、それによってふさわしい用途も違うものです。この記事では、グリスガンの構造と部品・働き・種類などの基礎知識や選び方、適切なメンテナンスや保管方法などを紹介しましょう。
これから「グリスガンを買おうかな」「新しいグリスガンに買い替えようかな」などと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
目次
グリスガンとは何か、について以下で詳しく解説します。
機械は、金属部品と金属部品が回転して擦れあう部分があると、どうしても時間とともにその部分は磨耗していきます。
「グリスガン」は、そんな機械部品の軸部分や軸受(ベアリング)ほか、スムーズに動かしたい部分に潤滑剤の一種である「グリス」を注入する(グリスアップ)ときに使用する工具です。
グリスガンは、圧力をかけてグリスを注入するように設計されているので、分解しないと手の届きづらい回転ベアリングのような場所に、直接グリスを押し込んで注入できます。グリスガンを、適切に使用してメンテナンスを行うことで、機械の寿命を維持できます。
グリスガンは1900年代初期にアメリカで開発された工具です。当初は、アメリカ陸軍のトラック整備などに用られてから、徐々に自動車整備の工具として一般市民の間にも普及しました。
現在では、自動車のみならず、さまざまな種類の機械部品や可動部などに、グリスアップするために便利な工具として幅広い分野で愛用されています。
グリスガンによるグリスアップ作業を怠ると、以前注入しておいたグリスが時間とともに劣化します。当然、潤滑機能も低下していくので、金属部品同士が異常摩耗を引き起こしたり、過剰な摩擦熱で両者が溶着し焼き付きなどの発生原因になってしまいます。
そんな状態を引き起こしてしまうと部品のダメージだけではなく、機械自体の寿命が縮まる・作業効率が低下する・作業中に危険が生じるなどの問題が発生してしまうのです。
グリスガンは、主に手動式・ハンドポンプ式・空気圧(エアー)式・電動式などがあり、それぞれ構造や部品も異なります。
手動式やハンドポンプ式は、レバーを手で引くと本体のシリンダー内に圧力がかかり、圧送部からノズルへと、グリスが押し出されていく構造になっています。
空気圧(エアー)式・電動式は、手の代わりに付属のコンプレッサーやバッテリーなどを使用して自動的にグリスを注入する構造です。
グリスガンは、主に以下の部品でできています。
①本体
グリスガンは、カートリッジタイプとグリス直入タイプの2種類があります。
グリスガン本体内のシリンダーを引っ張り出し、カートリッジ状になっているグリスを詰めて使うタイプです。補充・充填が楽にできます。
グリスガンの本体に、ヘラなどを使用して直接グリスを入れるタイプです。
②ノズル
ノズルは、グリスガンの先に付いている細い金属の金具のこと。グリースニップル(ねじ込み式の金属製バルブキャップの一種)に接続することで、グリスを機械に正確に注入できます。
③カートリッジ/バレル
カートリッジとは、前述の「カートリッジタイプグリスガン」で使用する、グリスが中に入っているカートリッジのことです。
バレルとは、前述のグリス直入タイプグリスガンの直接グリスを入れる部分の名称です。
④圧力調整機構
手動式などのグリスガンの場合は、レバー操作でシリンダーに圧力を加えることで内部のグリスがノズルに移動し、グリスを押し出す構造になっています。
電動式の場合は、製品によっても異なりますが、スピード調節ダイヤルで調整可能です。エアー式グリスガンの場合は、エア圧力調節するレギュレータを装着して使用します。
グリスガンは、自動車・トラック・バイクなどの整備、トラクター・コンバイン・田植え機など農業機器の整備、ブルドーザー・クレーン・ユンボ(油圧ショベル)などの建設機械の整備、ガーデニング・造園などで使用する芝刈り機・小型のチェーンソーのメンテナンスにも使われています。
そのため、その使用場面によって使用しやすいようにさまざまな種類があります。
前述したように、グリスガンは、手動式・ハンドポンプ式・空気圧(エアー)式・電動式があり、それぞれに特徴が異なります。
手動式グリスガンは、ほかのグリスガンと比較すると、操作はシンプルです。
単純な手圧トリガー構造で操作するタイプで、使用者が自分の力でグリスを押し出すので、力加減によって吐出量をコントロールできます。
手動式には「ハンドポンプ式グリースガン」と呼ばれるものもあります。
このタイプは内部に加圧ポンプハンドルやピストンを備えており、使用前にプライミングして圧力を発生、その後トリガー機構を介して解放することでグリスニップルにグリスを押し出します。
一般的な手動式よりも高い圧力がかけられ、固いグリスや密閉部分へのグリス注入に適しています。
ハンドポンプ式グリースガンには、レバー式(ストレート式)とピストル式があります。
レバー式(ストレート式)は、本体に平行するように接続しているハンドル(レバー)を握ることで本体内部のグリスを押し出すという、分かりやすい構造です。自転車のハンドルとブレーキレバーのような形をしています。
ハンドルを握る力によって、グリースをベアリングに送り込む速度と圧力のレベルを変えることが可能。「ストレート式」とも呼ばれています。
ピストル式は、本体の上部横に握るレバーが付いていて、全体がピストルのようなシルエットをしているタイプです。
ピストルタイプは、片手でトリガーを引いてグリスを供給するので、レバータイプよりは疲れず、繰り返し作業にも向いています。
手動式グリスガンは、ガンを作動させるためにエアーコンプレッサーなどの外部機器に接続する必要がないので、電源がない屋外などの環境や身動きがしづらい狭い場所での作業に向いています。
また、構造がシンプルなのでメンテナンスや掃除が簡単にできるのもメリットです。そのため、手入れも苦にならないのでこまめに手入れすることで、結果的に長期間にわたって安定して使用できるタイプです。
電動式のグリスガンは、その名の通り「電気で動かす」グリスガンです。
コードとコンセントがありコンセントにつないで使用する「有線電動型(電動式)」と、専用の充電器で充電して使用する「バッテリ駆動型」の2種類があります。
有線電動型(電動式)は、本体に電源コードがあって家庭用電源AC-100Vで使用できるタイプです。バッテリーの使用時間を気にすることなく利用できます。いちいち充電する手間も不要です。
バッテリー駆動型(バッテリー充電式)は、専用のバッテリーで充電して使用する、コードレスタイプのグリスガンです。電源が不要なため、電源のない場所や屋外など、利用する場所を選ばないのがメリットでしょう。
また、コードがないので移動しながらの作業も効率的にできます。ただし、充電がなくなると、再び使用できるまで充電時間がかかるのが難点です。また、比較的高価なのも悩みどころでしょう。
空気圧式グリスガンは、「エアー式グリースガン」「空気圧式グリースポンプ」とも呼ばれています。
ベアリングの隙間にグリスを押し込むために必要な圧力を、手動ではなく圧縮空気でグリスを押し出すタイプです。
エアコンプレッサーに接続して連続使用ができるエアコンプレッサー連動タイプと、屋外のコンプレッサーがない場所で便利な、専用キャリーの上に「ペール缶」をセットしてグリスガンと連結し、エアーポンプで空気を圧送するタイプがあります。
いずれにしても、空気圧式グリスガンは手動式よりも高い圧力を作れるため、短時間で連続した注入作業や大型機械へのグリス注入ができるのもメリットでしょう。
ただし、エアコンプレッサーの空気圧は手動で作れる圧力よりもはるかに高圧です。そのため、うっかりした誤操作をすると、部品が破損してしまったりカケラが飛んでケガをしたりなどのリスクがあります。取り扱いには十分に注意してください。
グリスガンを選ぶ際には、どこにグリスアップするのか・手動・電動などどんなタイプにするのかなどいろいろな面を考慮して選ぶ必要があります。ポイントを紹介しましょう。
グリスガンは、プロの作業現場から一般家庭まで幅広く使われています。
グリスガンの主な用途は以下の通りです。
具体的にどのような部分に使用するのかは、後の項で説明しましょう。
グリスガン自体の圧力と吐出量もチェックして選びましょう。
手動式やハンドポンプ式のように人の手で圧力をかけるよりは、エア式グリスガンのほうがエアコンプレッサーを使いグリスを高圧で大量に押し出せます。
作業効率がぐっとアップするので、工業用製品や大型重機などのメンテナンスに向いているでしょう。
また、電動式のグリスガンも、バッテリー(電力)で動かすので、手動式よりは高圧です。DIY用途での使用は少なく、メンテナンスの作業効率を重視したいプロの現場で利用されることがほとんどです。
吐出量とは、基本的に「ポンプが一定の規則性に基づいて動いているときに一回転ごとに出される液体の量」です。
圧力・吐出量が高いほうが、当然高性能で作業効率もアップするのでプロの現場で用いられています。
グリスガンの耐久性・操作性も気になるところです。もちろん耐久性や操作性の優れている製品を購入したいと考える方が多いでしょう。
ただし、機能性に優れ・操作性が高く・強度があり・長年使えそうな製品は、そのぶんだけ当然価格も高価になります。たとえば、手動式のグリスガンはほとんどがリーズナブルな価格で、安いものだと2,000円台で購入できます。
それと比較すると、エア式のグリスガンは本体自体が10,000円台を超えるものが多く、本体のほかにもエアコンプレッサーが必要です。
また、電動グリスガンは平均的に数万円クラスの価格。耐久性・操作性の高い製品だとかなり高くなります。
さらに、専用の充電器が必要で、定期的に買い替えも必要です。「製品本体以外にもプラス必要なアイテム」があるとランニングコストがアップすることも考えましょう。
グリスガンは、製品にあった正しい使い方をしてください。種類によって「操作手順」は異なりますが、ここでは一般的なハンドポンプ式グリスガンを例に挙げて紹介しましょう。
①グリスガンにグリスをセット
まず、グリスをグリスガンにセットしてください。
②グリスニップルとノズルの確認
グリスニップル(機械にグリースを注入する接続口)が汚れたままの状態でグリスを注入すると、汚れやゴミが混入しやすいので先に掃除をしてください。
グリス漏れを防ぐためにも、グリスニップルとノズルがきちんとはまった状態かどうかを確認します。
③ノズルの先端をグリスニップルに装着
確認作業が終わったら、ノズル先端をグリスニップルに垂直にはめて装着します。この部分が曲がってしまうとグリスがスムーズに注入できません。
④グリスを注入していく
ハンドポンプ式グリスガンのレバーを手動で往復させ、グリスを注入していきます。
⑤注入完了を確認する
グリスが十分に注入されると、レバーの手応えが重くなってくるのでストップしましょう。また、注入している最中に古いグリスが染み出てくるのも「注入完了」のサインです。
密閉された箇所では、過剰にグリスを注入してしまうことを避けるため「レバーは2往復程度」を目安にしたほうがいいでしょう。
⑥グリスガンを取り出す
グリスガンのノズルをニップルから外す際には、力任せにひっぱらずノズルの先端を傾けて、そっと外してください。
グリスガン自体のお手入れ・メンテナンスも欠かせません。グリスガンの種類によって方法は異なりますが、メンテナンスや古くなった部品を交換することで製品を長持ちできます。
グリスアップ・注油の前には必ずグリスガンの掃除をしてから使用しましょう。
水やグリスクリーナーを使い、機械全体を洗浄してから、グリスアップ・注油をするという順番は必ず守ってください。
グリスニップルが土や油などで汚れている場合は、歯ブラシを使ってきれいに掃除します。
また、グリスガンでグリスを注入後にノズルを外した際、古いグリスが出てきたらたら、丁寧にウェスなどで拭き取ってください。
グリスニップルの掃除をする際に、破損や劣化がないかもチェックしましょう。もし、ダメージが見られるようなら、そのまま使用しないですぐに新しい部品に交換してください。
破損や劣化した状態で使用し続けると、グリスの十分な注入ができなくなってしまいます。
グリスガンで使用するグリスはいくつか種類があります。使用する機械や条件などに適したものを選ぶ必要があるのですが、一般的に使用されているグリスの種類を紹介しましょう。
グリスとは、半固体状態になっている潤滑剤のこと。増ちょう剤(グリースの構成成分で、グリースの基本的な構造と特性を決定)・基油(原料となる油)・添加物(防錆剤・抗酸化剤・摩擦改良剤ほか)などで構成されています。
増ちょう剤の種類によって、耐水性・耐熱性・せん断安定性など、さまざまな性能が左右されます。
【リチウムグリス】
特性
「リチウム石けんグリース」とも呼ばれます。リチウム石けんを増ちょう剤としているので、耐水性・耐熱性・安定性・潤滑性など優れています。
用途の範囲が幅広いために「万能グリース」といわれ、自動車・自転車・電動工具・小型モーター・ドアヒンジ・ワイヤー・チェーン・農機具・シャッターなどさまざまな場所に利用できるので便利です。
リチウムグリスは、樹脂やゴムの部品に使用する場合は要注意。これらの材質には、多少悪影響を及ぼす可能性があるといわれています。使用時には製品の適合性を確認しましょう。
【モリブデングリス】
モリブデングリスは、前述のリチウムグリースに、有機モリブデン・二硫化モリブデンを配合したものです。
二硫化モリブデンが金属面に付着することで、始動時の油切れや不意の荷重から起こる「かじり・磨耗・焼付」などの症状を防ぐ性能があります。
高速・高荷重の潤滑箇所や摺動部に適していて、使用することで部品の寿命やグリスアップの間隔を延ばすことが可能です。各種建設機械、一般産業機械によく使用されています。
ほかのグリスと比較すると、粘土が低い・熱に弱い・水に流されやすいなどが難点です。
【シャーシグリス】
シャーシグリスの「シャーシ」は、骨格・ 枠組(フレーム)の意味がある言葉で、乗用車の車体を支える部分(エンジンを含むボディ以外の部分)を指します。
その名前の通り、車の足回りによく使用されるグリスで、カルシウム石鹸を増ちょう剤として使用し精製度の高い高級オイルをベースオイルにしていますが、比較的リーズナブルです。極圧タイプのシャーシグリスなら、油膜を保持できる時間や耐摩擦性がアップするのでより厳しい条件下での使用にも耐えられます。
シャーシグリスは、耐水性・潤滑性に優れているものの、リチウムグリスほど性能は高くありません。ただし、ゴム製のパーツには向いていないため、ブレーキ周辺に使用するのはやめたほうがいいでしょう。
【シリコングリス】
シリコングリスは、プラスチックやゴム製品に悪影響がでにくいため、それらのグリスアップに使用されます。半固体タイプとスプレータイプがあるので、用途にあわせて選びましょう。
半個体タイプは、主に自動車やバイクのギアなど、スプレータイプは時計やカメラなどの小さい精密機械に適しています。
シリコングリスは、安定性が高く、耐熱・耐寒性に優れているので、熱の影響による変色が少なく低温でも硬化しにくいので用途が広いのがメリットです。
基本的に、金属同士のグリスアップには向きませんが、鋼材とアルミ、鋼材とゴムなどなら使えます。
前述した「グリスの種類と特性」を参考に、使用する場面に合ったグリスを選んでください。また、機械の種類・使用温度の範囲・機械の運転条件なども考慮しましょう。
さらに、プロの現場で使用する場合は、コスト面も考えて選ぶ必要があるでしょう。
グリスの潤滑効果を十分に発揮するためには、常日頃から管理方法に気を配って保管する必要があります。以下のような点に注意してください。
保管場所の温度管理には気を付けましょう。温度が上がってしまうと、基油が酸化し、増ちょう剤が持つ網目構造が破壊されていくため、グリス本来の機能を失ってしまうのです。
一般的には、70℃以上になるとグリスは短命になってしまいます。一度高温状態にさらされてしまうと、そのあとで室温が下がっても元の状態には完全に復元できなくなってしまいます。
高温多湿の場所は避け、気温の安定している冷暗所に保管しましょう。
缶に入っているグリスの蓋はしっかりと閉めて、管の外側に垂れていたらすぐに拭き取りましょう。できればその上からカバーをするのがおすすめです。
ホコリ・水分・虫ほか、異物が混入しないように気を付けます。蓋は完全に閉める・容器の天部を開けたまま放置しないなど、日常的に気を配ります。
また、グリスを使用する際は、容器やヘラなども清潔なものを使用してください。
グリスに水分が混入すると、乳白色になるという特徴があります。グリスの性質が変化したり潤滑不良を起こしたりするので気を付けてください。雨が差し込んだり雨漏りがしたりする場所での保管は避けましょう。
菜園作りやガーデニングなどで家庭用の刈り払い機(刈払機・草刈機)を使用することもあるでしょう。刈り払い機のメンテナンスでは、ギアケースの中にある回転軸のグリスを交換します。回転軸は常に高速で回転しているために、グリスが蒸発してしまうので、こまめにグリスを注入しなければなりません。
また、古いグリスはメインパイプの中に樹脂のように固まって詰まっていることもあるので、掃除が必要です。
さらにDIYでよく用いられるチェーンソーも、高速で回転するためにグリスアップが必要です。ガイドバー・オイルポンプギア・ニードルベアリングなどをグリスアップしてください。
グリスガンを使用する場面は多岐にわたっています。自動車整備・農業機械の整備・建設機械の整備・工場整備の例を挙げてみましょう。
自動車整備の場面では、自動車・トラック・バイクなどの整備にグリスガンを使用します。主にドライブシャフト・サスペンションリンク・ステアリングシステムなどの整備に使用します。
また、トラクター・コンバイン・田植え機など、農業機械の整備でもグリスガンは活躍します。トラクターを例に挙げると、車軸・ペダル・ロータリーとのジョイント部・キャタピラなどへは、定期的に点検してグリスアップする必要があります。
工場整備の場面では、「オイルは少なくなったら補給すればいい」「設備にイオンが発生してからグリスアップをすればいい」という管理では、設備自体の寿命は短くなってしまいます。
工場にある機械の回転部分・可動部分は、使用しているうちに摩擦が発生します。そうなると、金属表面の凹凸が少しずつ削れてさらに摩耗が悪化。
回転部分・可動部分の部品の潤滑が悪くなれば機械の故障の原因になるだけではなく、生産作業がストップしロスも生じてしまうでしょう。
トラブルを起こさないためには、工場内で、グリスアップの周期・管理基準を定めて、周知・教育・運用を行い管理していくことが大切です。
ハードな働きをするブルドーザー・クレーン・ユンボ(油圧ショベル)などの建設重機は、グリスガンによるグリスの注入の頻度が高くなります。
可動部にグリスを注入し部品の摩擦を抑えて重機の寿命を伸ばすことにもつながるだけではなく、建設現場での作業効率を高めて安全性を守ることに繋がります。
グリスガンを使用して、安全かつ正確なグリスアップ作業を行うためには、いくつか注意点があります。どのような現場でも下記に挙げるようなことは十分に注意してください。
機械などを支障がないように使用するためには、その機械にあった頻度でグリスガンを使用してのグリスアップが必要です。しかしながら、機械の内部が過度のグリスで満たされてしまうようなことは避けなければいけません。
むやみやたらにグリスアップするのではなく、機械やグリスの状態を確認し、適切な状態となるようにしてください。事前に、使用するグリスガンの1ストロークで供給されるグリス量をきちんと把握したうえで作業を行いましょう。
また、グリスガンを使用する際、グリスの量が不足している場合に「異なる成分のグリス同士」を混ぜるのはやめてください。グリス本来の特性が損なわれてしまうことがあります。
補充するのであれば、必ず同じ種類のものを使用するか、グリスガン内のグリスをすべて入れ替えるかどちらかにしてください。
グリスを処分する場合は、環境に配慮した適切な方法で処分する必要があります。
家庭で使用していた古いグリスを処分したい場合は、自治体によって不燃ゴミ・資源ごみなど扱いが異なるので、事前に自治体のホームページや電話などで確認してください。
処分に出す際には、必ず中身を入れたままではなく「使い切ってから」出しましょう。家のトイレや街中の排水溝、裏庭や公園などの土などに廃棄するのは絶対にNGです。
また、自動車整備工場や建設現場ほかで排出されるグリスは基本的には「産業廃棄物」になります。事業所で排出したグリスなどの廃油は、法律に基づいて正しい方法で処分しなければなりません。
廃油の処分は、リサイクルと最終処分の2種類があり、一般的には産業廃棄物処理業者に委託して処分します。
グリスなどの廃油の処理費用は、処理するグリスの種類や量、依頼する業者・処分する場所などによって異なりますが、グリスや廃塗料などは、一般的な廃油の中でも特殊なもののため、費用は高くなるようです。
多くの自治体では、ホームページで一般廃棄物業者リストを公開しているので探してみてください。
また、以下のような公的機関が運営している「産業廃棄物処理業者」の掲載サイトもあります。
公益財団法人である産業廃棄物処理事業振興財団が運営するサイト。5000千件以上の業者情報が掲載されていて1社あたりの掲載情報量も多いです。
同じく、産業廃棄物処理事業振興財団が運営しているサイト。ここでは「優良認定を受けている産廃業者」のみを掲載。登録業者数は、2000社程度ですが、「さんぱいくん」よりはみやすいと評判です。
東京都が運営しているサイト。東京都が許可を出している産廃業者を検索できます。東京都が独自に認定した「産廃エキスパート」「産廃プロフェッショナル 」で検索できます。
グリスガンを使用する際には危険がないように、作業時の安全対策は徹底的にする必要があります。
グリスガンは、自動車やトラック、農業機器や什器、工場設備ほかのメンテナンスには不可欠な工具です。使用する場所によって、最適な種類やタイプなどが異なるので、今回ご紹介したポイントなどを参考に、自分の目的にあった製品を探してください。
安全にグリスアップを行うためにも、作業上の注意点や準備などは必ず守って、快適に作業を行いましょう。