ここ数年、環境にやさしい薪ストーブが静かなブームになっています。その燃料となる薪割りを機械で行えるのが薪割り機で、特に人気が高い機種がエンジン薪割り機です。
しかし、どのようにエンジン薪割り機を選べばよいのか、どんなメーカーがあるのかといったことまでご存じの方は少ないですよね。
今回はエンジン薪割り機の基本から選び方、使い方、おすすめ国産メーカーなどご紹介します。薪割り機の購入を考えているあなたは、ぜひご覧ください。
薪割り機の中でも、特に人気が高いエンジン薪割り機。まずここでは、エンジン薪割り機の特徴から、電気式・手動式との違いといった基本をご紹介します。
薪割りの動力にエンジンを使っている薪割り機が、エンジン薪割り機です。燃料はガソリンで、電動薪割り機よりもスピードとパワーがあるのが特徴。
ただし、エンジンですので稼働音はかなり大きいです。パワーが小さめの小型タイプからハイパワータイプまで、薪割り機では最も多くの機種が販売されています。
薪割り機には、エンジン式のほかに電動式・手動式があります。電動式・手動式薪割り機の特徴は以下のとおりです。
薪割りの動力に、電力を使っているのが電動式です。コンセントにプラグを挿して使用します。エンジン式よりも軽量なタイプが多く移動に便利、さらに稼働音が静かです。
家庭用の100V電源で動作する薪割り機もありますが、破砕力は高くても10t。より高い破砕力が必要な場合は三相200V電源の機種を選ぶ必要があります。
動力をもたない薪割り機が手動式です。薪の数が少ない場合には、手動式もおすすめ。上下にスライドして打ち込むタイプと、横置き油圧式タイプの2種類があります。
薪割り機には、機構の違いによって油圧式と機械式があります。ここではその違いをご紹介します。
一般的なエンジン薪割り機の、多くの機種が採用している油圧式。下図のような機構で、循環する油圧オイルをコントロールバルブで制御します。機械式より動作は遅くなりますが、粘りがあり固い木でも割ることができます。
油圧式のような複雑な機構がない機械式。下図のように、操作レバーを押すと回転するフライホイールとギアが噛み合ってウエッジを押し出します。油圧式よりも動作が早く、短時間で多くの薪割りを行えるのが特徴です。
エンジン薪割り機の性能を決めるのは、やはりエンジン。ホンダやスバル、ヤマハといった国内メーカーのエンジンを使用するメーカーも多くあります。
国内メーカーのドリームリンクでは、通常は海外メーカーのエンジンを使用しているLS-27Tについて「7万円の追加料金で、ホンダエンジンに交換」というサービスも行っています。国内メーカーのエンジンは、やはり信頼性の高さが違いますね。
たくさんの種類があるエンジン薪割り機。どのように選べば、理想の機種を選ぶことができるのでしょう?ここでは、エンジン薪割り機の選び方をご紹介します。
薪割り機の性能としてまず確認したいのが、「破砕力」(または「破壊力」)です。これは「薪を割るために、機械が薪を押し込む力」のことで、単位は「t」(トン)。
目安として、直径30cmまでの薪であれば、6.5tの破砕力を持った薪割り機で割ることが可能。さらに大きい直径の薪を割る場合は、7t以上の薪割り機が必要です。
ただし、薪として使いたい木が針葉樹なのか広葉樹なのか、また節の多さや乾燥具合といった様々な条件で、木の硬さは変わります。まずはどういった種類の薪に使いたいのか把握し、その上で必要な破砕力を確認しましょう。
薪割り機の性能を示す値として、破砕力と並んで重要な値が「サイクルタイム」です。サイクルタイムとは、薪割り機が1回の薪割りを行う作業スピードのこと。単位は「秒」で、短いほど薪割りが早く行えます。
大量の薪割りを行う場合には、サイクルタイムが短い機種を選びましょう。ただしサイクルタイムが短い機種は、破砕力が低いタイプが多いです。必ず、破砕力も合わせて確認してください。
薪割り機には薪を縦に置く「縦割り」タイプと、薪を横に置く「横割り」タイプ。そして縦・横どちらでも使える「縦横兼用」タイプがあります。
縦割りタイプは大きな薪を台まで持ち上げずにセットできるため、腰にも負担がかかりません。ただしほとんどが大型・ハイパワーな機種のため、家庭用として使用したい場合にはオーバースペックになることも。使用する薪の種類に合わせて、検討しましょう。
エンジン薪割り機に多いのが、この横割りタイプです。しかし割るたびに薪を台に乗せる必要があるため、腰に負担がかかります。破砕力が低め~高めまで多くの機種が出ていますので、用途に応じた機種を選ぶことが可能です。
薪を置く台が直角から水平に切り替わることで、縦割りにも横割りにも使えるタイプです。薪の大きさによって縦割り・横割りを切り替えることができるため、腰に負担がかかりません。ただし切り替え機構がある分、同破砕力の機種よりも重量がかさみ、移動にひと手間かかります。
「薪を割る」という単純なはたらきをする薪割り機。
便利な機械ですがハイパワーな機械のため、使い方を誤ると大変危険です。ここではエンジン薪割り機の使い方をご説明します。
エンジン薪割り機には、長さ1mの薪を割ることができる業務用も存在します。家庭用では、割れる薪の長さが50cmまでの機種がほとんどです。
ただし注意事項や使用方法は、業務用と家庭用ではほとんど変わりません。どちらの場合でもしっかりと注意事項を確認して、安全に使用しましょう。
薪割りを行う際は、機械への「巻き込み」や騒音などに対処する必要があります。そのため次の点に注意した服装で、薪割り作業を行いましょう。
エンジン薪割り機を取り扱っている「ナカトミ」では、上図のような服装を勧めています。
まずは薪割り機を組み立てます。しっかりと組み立てを行わないと、車輪の外れなどで大事故につながる恐れもあります。取扱説明書をよく確認しながら組み立てましょう。
ハイガー産業では、組み立て手順を動画で詳細に説明しています。ハイガーの薪割り機を購入した際は、ぜひ動画を参考に組み立てを行ってください。
・ハイガー工業 薪割機HG-MWR40T 組立て動画
エンジン薪割り機を安全に使うため、使用前に次の確認を行いましょう。
エンジン薪割り機の使い方について、プラウGLS12を見本にご説明します。
エンジン薪割り機の構造は単純ですが、調整とメンテンスは必要です。機械を長く使うためにも、定期的に以下の項目を確認しましょう。
エンジン薪割り機は大手の工具メーカーではなく、オリジナルブランドや業務用機械メーカーから多く販売されています。ここではエンジン薪割り機のおすすめ国産メーカーをご紹介します。
㈱ホンダウォークのオリジナルブランドであるプラウ。農業機械などを販売する店舗を運営しながら、薪割り機や除雪機などを独自に開発しています。
薪割り機で最も有名なメーカーの一つで、品揃えもトップクラスです。
・プラウ
産業機械などの開発・販売を行うハイガー産業。薪割り機の他にも、除雪機やチェーンソーなども販売しています。
ハイガー産業のエンジン薪割り機の特徴は、破砕力の高さです。こちらのHG-MKWR12TSは、入門機ですが破砕力は12t。最も高い機種では、37tもの破砕力を備えています。
低価格・高品質な業務用製品を数多く開発、販売しているのがナカトミです。エンジン式と電動式の薪割り機も販売しています。
エンジン式薪割り機ELS-7Tは、破砕力が7tと低めですが、小型&軽量タイプなので移動に便利です。
小型機械の販売を行うミナト電気工業の、プライベートブランドであるミナトワークス。販売しているエンジン薪割り機は1種類だけですが、とても人気がある機種です。
LSE-12Kは破砕力12tと、パワーは充分。また薪の落下を防ぐガイドフレームがついているため、薪割りがスムーズに行えます。
薪割り機は年じゅう使う機械ではないため、中古品やレンタルを利用する方も多くいます。ここでは、中古品やレンタルでエンジン薪割り機を利用する注意点などをご紹介します。
エンジン薪割り機は、定期的なメンテナンスを必要とします。中古品で手に入れる場合でも、しっかりメンテナンスがされた品物を選ぶことが必要です。
そのためには信頼できる中古品店を見つけることが大切。オンラインショップでは、中古のエンジン薪割り機はほとんど取り扱っていないようです。地元の中古品店や農機具店などで、取り扱っている店舗がないか探してみましょう。
レンタルであれば、メンテナンスは店が行ってくれるので、安心して使うことができます。ただし電動工具をレンタルするホームセンターでも、エンジン薪割り機のレンタルを行う店舗はほとんどありません。
そこで、インターネットなどを使って、地元でレンタルをする店がないか探してみましょう。工務店などでもレンタルを行っています。1日借りて数千円の機種もあるため、お得に使うことができますね。
・ディースタイル–薪割り機レンタル価格表–
・サンファイヤー・レンタル薪割機
また、地域によっては市役所・役場で薪割り機のレンタルを行っています。最寄りの市役所・役場に一度確認してみましょう。
今回はエンジン薪割り機の基本から選び方、使い方、おすすめ国産メーカーなどをご紹介しました。重労働の薪割りも、薪割り機を使えばラクにこなすことができますね。
ぜひ今回の記事を参考に、用途にあったエンジン薪割り機を選び、安全な薪割りを行いましょう。