割引手形の買い戻しとは?買い戻しのリスクに備えるため事業者ができること

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銀行・信用金庫等と手形の割引を通じて融資取引のある事業者が突然、取引金融機関から割引手形の買い戻しを要求されることがあります。

いったん金融機関に買い取ってもらった手形の買い戻しを要求されるのですから、事業者としてはそれでなくても厳しい資金繰りの中から買取り資金を捻出して買取りに応じなければなりません。事業を行っている経営者なら、そんな状況、想像しただけでも気が滅入るし嫌な話ですよね。

そこで今回の記事では、取引先と決済で手形をやりとりしている中小企業・個人事業主を対象に、割引手形の買い戻しについて、その意味や買い戻しにより発生するリスク、その防止策など詳しく解説します。読んで頂けば割引手形の買い戻しに詳しくなり、間違いなくリスク対応力が上がります。

割引手形とは?

割引手形とは事業者ができる資金調達方法のひとつで、商取引で手に入れた約束手形や為替手形を取引銀行や民間割引業者に持ち込み、買い取ってもらって資金調達します。

手形は商品・サービスの対価に受け取る売掛債権のひとつですが、通常支払いが1ヶ月から3ヶ月先、長いものでは6ヶ月先にもなるので、その間、手形をもらった先は自己資金を各種支払い(仕入れ代金、従業員給与等)に充てねばなりません。

しかし中小企業・個人事業主の多くは資金繰りに余裕のないのが実態であり、手持ち手形があればそれを使って支払いに利用したいと考えます。

手形を使った支払い方法のひとつが裏書です。手形は裏書という方法で決済手段として支払い期日まで流通させることができるので、支払先が手形を受け取ってくれるなら裏書譲渡で支払いを済ませ相手に手形を渡します。

一方銀行等、取引金融機関に手形を売却・譲渡して資金調達する方法が割引です。手形を持っている事業者は、それを取引金融機関に持ち込んで買い取ってもらい支払期日より早めに資金調達します。

一方手形を買取りした金融機関は、手形の額面金額から割引料を差し引き、残金を本人の取引口座に振込みするとともに、手形を期日まで保管し、支払期日が来れば交換所経由で手形を取り立てに出し手形振出人から資金を回収します。これが一連の割引手形の仕組みです。

割引手形の買い戻しとは?

ところが金融機関が交換所経由で取り立てに回した各手形が全て順調に決済されるとは限りません。銀行等が期日まで手形を保管している間に、手形振出先が経営不振や他社の影響を受けていきなり倒産したり支払い不能な状態になったりすることもあります。

そうなると交換所に取り立てに回していた手形も回収不能(不渡り)になるので、金融機関としてはいったん割引で資金交付した相手に対して、その不渡りになった手形を戻す代わりに手形の額面金額相当の資金の返却を求めることになります。これを「割引手形の買い戻し」と言います。

金融機関から手形の買い戻しを求められた融資先は、別途買取り資金を用意しなければならない※ ので、もし会社の資金繰りが厳しければさらに別の経営リスクを抱えることになります。

※割引手形の買取り義務については、銀行等と融資契約時に交わした「銀行取引基本約定書」に銘記されています。

買い戻し手形が戻ってきたときに手形所持人がしなければならないこと

金融機関から割引手形の買い戻しを求められた事業者、なんとか資金を用意して不渡りになった手形を買取りできたとします。では買い戻し手形が手元に帰ってきた手形所持人が次にしなければならないことは何でしょうか?

それは取引金融機関と同じように、その不渡り手形をできるだけ早く振出人に呈示して買い戻しを要求することです。ただし自社が金融機関に対応したようにはことが簡単に運ばないのは容易に察しが付きます。

なぜなら振出人は資金繰りが付かず、あるいはすでに全くお金がないので不渡りを起こしてしまったのであり、手形所持人が買い戻しを要求しても簡単に応じられるはずがないからです。

でも振出人が破産等の法的処理にでも入っていない限り、まだ相手は事業を続けている可能性もあり、要求を諦めるのは早計ですし、他の債務者もいるので買い戻し請求の行動に出るのは早ければ早いほどいいでしょう。

また手形所持人にとって買い戻しを請求する先は振出人だけではありません。手形を裏返してみて自社が裏書した欄の上にもし複数の裏書人がいればその各裏書人に対しても買い戻しを請求することはできます。また請求の順番も裏書の順番とは関係ありません。

もし自社のひとつ前の裏書人が買い戻しに難色を示せば、そのひとつ上の欄の裏書人に請求してもいいようになっています。ただしその裏書人も振出人の動きを注視しているので(手形振出人に対する債権者としての立場は自社と同じ)買い戻しの要求にすんなり応じるとは限りません。

買い戻しの手続きの流れ

ここで手形の不渡りが発生し、金融機関から手形の買い戻しを要求された以降の手続きの流れを解説しておきます。その流れは以下の通りです。

1. 買い戻し資金の確保→口座から引き落とし

金融機関から割引手形の買い戻しの依頼を受けた事業者は、買取り資金を用意して取引金融機関の口座(割引時の手形売却代金入金口座と同じ)に入金します。

2. 口座から引き落とし

金融機関は口座に手形額面以上の残高があることを確認して引き落としします。
その際、手形割引時に引かれた割引料は事業者には戻ってこないし、さらに追加で不渡り返却手数料(税込み1,100円程度)も必要です。

3. 割引手形買い戻し分の返却

手形買い戻し代金決済後、数日して不渡り手形が割引依頼人の手元に金融機関から返却されます。

4. 手形の振出人に請求

手形を受け取ったら所持人は、できるだけ早く振出人に連絡を取り、あるいは振出人先に出向いて手形の買取りを請求します。
また将来の訴訟に備えて、そのときの振出人とのやりとりも都度、記録に残しておく方が無難です。

買い戻しのリスクに備えるため事業者ができること

事業者として商取引で手形使用を続けている限り、この割引手形の買い戻しリスクを避けることができません。特にこのトラブルは取引相手が起こすので偶発性が高く、事前に予想が付きにくいのが難点です。

そこで手形を受け取った事業者としては、そのリスクを少しでも少なくするため、予防策を張っておく必要があります。以下では自社ができる予防策について3つの方法を紹介します。

経営セーフティ共済

取引先の倒産、それにより発生する連鎖倒産、経営難、そして割引手形の買い戻しリスク等に対応するため、事業者が利用できるのが経営セーフティ共済です。別名「中小企業倒産防止共済」といいます。また経営セーフティ共済の主管先は独立行政法人中小企業基盤整備機構(通称中小機構)です。

金融機関から割引手形の買い戻しを求められたとき、資金繰りの悪化を防ぐため、事業者は経営セーフティ共済から借入れを行い、事業資金を確保して備えることができます。経営セーフティ共済の安心ポイントは以下の4つに要約できます。

1. 無担保・無保証人で掛け金の10倍まで借入れできる
2. 取引先が倒産後にすぐに借入れ可能
3. 掛け金の税制優遇が得られ、掛け金を全額損金算入できるとともに節税効果もある
4. 解約手当金が受取りできる※

※共済契約を解約したとき解約手当金が受け取れるが、掛け金を12ヶ月以上掛けていれば掛け金総額の8割以上戻り、さらに40ヶ月以上納めていれば掛け金全額が戻ってきます。なお、経営セーフティ共済の取扱窓口は中小機構の委託を受けた各地の商工会議所・商工会や取引金融機関となります。

取引信用保険

買い戻しのリスクに備えるため事業者ができる予防策の2つめは取引信用保険に入ることです。

取引信用保険の別称は倒産保険です。その名の通り、取引先の倒産等に備えて企業が入る保険であり、割引手形の買い戻しに対するリスクにも対応できます。

国内外の損害保険会社がこの取引信用保険を取扱いしており、利用対象は法人ですが利用価値は高いです。さらに保険対象は手形債権だけでなく、売掛金にも対応しているので、広く売掛債権全体の保全が図れます。

取引信用保険の保険料率は支払限度額に対して年1%~3%程度なので、倒産リスクを考えればそれほど高くない利率だと考えています。また保険なのでその掛け金は全額損金処理ができ節税もできます。さらに日本商工会議所や全国中小企業団体中央会等を通じて提携先の保険会社に取引信用保険を申込みすれば低利で契約することも可能です。

別の資金調達方法の確保

割引手形の買い戻しで企業が資金繰りの悪化を防ぐ最後の方法は別の資金調達方法を確保しておくことです。

もちろん手形割引を利用した取引金融機関で別の融資を依頼して資金繰りの悪化を防ぐ方法もあります。しかし相手もこちらの事情を知っているだけに必ずしもその金融機関が融資に応じてくれる保証はありません。そのような場合に備えて他の調達方法も持っておく必要があります。

たとえばファクタリングです。自社に手形以外に売掛金があれば、その売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで資金調達が図れます。

あるいはビジネスローン会社、消費者金融等、ノンバンクからの融資も別の選択肢です。ノンバンクの融資金利は割高ですが、銀行等より審査ハードルも低く、緊急融資にも対応しており、このような買い戻し資金の確保や資金繰りの調整資金として役立ちます。

いずれにしても事業者である限り、いざというときに備えて常にこのような別の資金調達方法を持っておくことはとても大事です。

まとめ

割引手形の買い戻しに係り、その意味や発生するリスク、起こったリスクに対して事業者が取らねばならない対応とその予防策など、詳しく解説してきました。

もちろん割引手形の買い戻しなど発生しないのに越したことはありません。しかし事業で取引先と手形のやりとりをしている以上、経営者は常にこのようなリスクに晒されることになります。そんな場合でも予防策さえきちんと張っていれば何も恐れる必要もありません。

この記事が割引手形を利用予定、あるいは利用中の会社経営者の参考となれば幸いです。

 

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※記事の掲載内容は執筆当時のものです。

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