タイヤ交換時に重宝する「クロスレンチ」。十字レンチとも呼ばれます。
レンチを十字にクロスさせた形状そのものが語源で、主にタイヤを交換する際に使用します。用途はシンプルですが、アルミホイール対応、薄口形状、早回しタイプなどとさまざまな特徴を持った商品が販売されていますため、どれを選ぶか迷ってしまうこともあると思います。
そこで今回は、
1.クロスレンチの選定基準(必須)
2.その他の用途に応じた特殊仕様
をご紹介します。用途に合ったクロスレンチで、タイヤをスムーズに交換しましょう。
クロスレンチは構造はシンプルですが、ソケット形状や特殊機能など様々な特徴を持ったものが発売されています。
クロスレンチを選ぶ際の必須の基準としては、ソケットのサイズ、ソケットの厚み、ソケットの形状があげられます。それぞれの選定基準について、詳しく解説します。
クロスレンチは一般に、十字のバーの4つ端にそれぞれ違うサイズのナットに対応するソケットが備わっています。一般的なクロスレンチのソケットサイズは国産車でよく使われるサイズに合わせた17・19・21・23mmですが、外車の場合は14mmのナットが使われている場合もあり、サイズが合わないこともあります。その場合は、 14・17・21・23mmのパターンのクロスレンチか、ソケットが取り外し可能で様々なサイズのソケットが取り付けられるタイプを選定ください。 この、ソケットが接合されておらず、別途ソケットを用意するタイプの場合、ソケット取り付け部、その逆サイド、ハンドル部分と、4つのバーの用途が明確に分かれています。自分でソケットを選択できるので、どのようなタイヤでも対応できるのがメリットです。いろいろなメーカの車に頻繁に買い替える方にはおススメです。使えるソケットは、クロスレンチの挿し込み口の規格で決まります。よく使われるのは1/2インチ(12.7mm)ですが、違う場合もあるので購入の際はしっかり確認しましょう。ただし、接合されているソケットに比べて耐久性に劣ります。
ご自身の車のナットサイズや、使用頻度に合わせて、適切なソケットのサイズを選びましょう。
ホイールの形状によって、ナットのサイズが合致してもクロスレンチが入らない場合があります。アルミホイールの場合など、ナット周辺のスペースが狭く、ソケットがナットと素材の間にはまらないことがあります。
このような場合には、薄口形状のソケットを選択しましょう。薄口形状のソケットは標準形状のソケットと比較してソケット周辺が薄く作られているため、狭いナット回りでも対応可能です。つまり、薄口形状のクロスレンチは汎用性が高いといえます。
デメリットとしては、標準形状のものと比較すると、耐久度に劣りますが、ある程度の価格のものを選べば、きちんとした素材・加工方法で製作されているので、家庭での使用には問題ありません。
クロスレンチはソケットタイプのレンチです。ソケットタイプのレンチはソケットの形状と、ソケットの深さ分類されます。まずソケット形状では、六角と十二角の2種類にわけられます。 ソケットの深さでは、標準タイプと深口タイプに分けられます。
六角のソケットは、十二角と比較するとナットとの接触面積が広く、力を無駄なく伝えることでナットにトルクをかけやすい点がメリットです。デメリットとしては、ナットにはめ込むために最大60°旋回させる必要がありますので、十二角と比べてナットにはめ込むまでに時間がかかる場合があります。
女性やナットを回す力に自信がない方には、トルクを掛けやすい六角を選定ください。
十二角のソケットは、六角型と比較すると、ナットにはめ込みやすい点がメリットです。ただし、ナットとの接触面積が約半分になるため、伝えられる力は少なくなります。また、ナットが硬すぎる場合など、ソケットの角が取れて空回りするようになってしまうことを「角がなめてしまう」と言いますが、十二角のソケットは六角に比べナットへの引っ掛かりがすくないため、なめやすいこともデメリットです。
ホイールの種類によっては、ナットの六角形の外にネジ部が飛び出している場合や、ナットの六角の上部に飾りがついている場合があります。このような場合、標準タイプのソケットでは、ナットの上の形状が邪魔をして、ソケットがナットに届かないことがありますので、深口タイプを選定してください。
上述した選定基準は、きっちり確認しておかないと、そもそもクロスレンチがナットにはまらないという意味で、必須の選定基準です。これらを満たしておけば、ひとまずナットにソケットがはまります。
以下では、「使いやすさ」をより追求した機能について紹介します。自身の使い方に応じて、判断するべき基準です。特に力の弱い方や、狭い場所で作業する方、工具置き場が狭い方は意識してみてください。
クロスレンチはバーが十字形状のため、そのままでは保管場所が広く必要です。しかし、最近はバーを折りたためるタイプや2本のソケットレンチとして取り外せるタイプのクロスレンチもあります。どちらも保管場所の削減というメリットがありますが、分離タイプは複数の工具を保管する場合などに片方が迷子になったりしますので、どちらか選ぶなら折り畳みタイプをおススメします。
自動車メーカでは、使用中タイヤが外れてしまったり、ナットがねじ切れるなどの不具合が起きないように、出荷時にホイールのナットを規定のトルク範囲に収まる力で締め付けています。そのため、市販のクロスレンチでナットを緩めようとしても、初回は非常に緩めにくいです。
てこの原理により、ナットを緩めようとするときは、回転の中心部からなるべく遠いところで力を加えると、より小さな力で回すことができます。そのため、ハンドル部のバーをスライドさせて、ハンドルの長さを調整できる支点調整タイプは、力の弱い方に最適です。
どうしても緩まない場合は、自動車整備工場にお願いしましょう。なお、ホイールのナットは一度緩めてしまうと、メーカー保証範囲を外れますので、ご注意ください。
ソケットの逆端のグリップ部分が回転することで、グリップを押さえてハンドルをくるくる回すことができる、早回しタイプのクロスレンチがあります。ソケットを取り外せるタイプが一般的です。作業時間を短縮するうえで、とても便利な機能です。
よくあるトラブルとして、安価な十字レンチを購入すると、溶接部分が折れて使いものにならなくなってしまうことがあります。やはり、しっかり加工されたものはそれなりに値が張ります。また、ホイール面を傷つけないように、ソケット部の素材にこだわったレンチもあります。
おススメは、実物をみて、軸とソケットの中心がそろっているかや、本体のしなりなどを確認してからの購入ですが、やむを得ずネット通販で購入する場合は、レビューをしっかり確認してから購入してください。
クロスレンチはKTC・KDR・メルテック・エーモン・Ko-kenなどさまざまなメーカから発売されています。
今回は、クロスレンチの選定基準となる特徴を紹介しました。クロスレンチに限らず、工具は必ずしも「金額が高いから良い」という訳ではありません。
「使用者の特性(体力)」
「使用頻度」
「使う対象のホイール」
などと照らし合わせて、是非、自分に合ったクロスレンチを見つけてください。
ちなみにまた、タイヤ交換のためにジャッキアップすると思いますが、空中ではナットを緩めにくいので、ジャッキアップする前にすべてのナットを一度緩めておくと作業がスムーズです。