切削工具は切削加工をする上では欠かせないものです。
実際の切削加工の現場では業務に携わる以上、切削工具の基本的な知識は、持っていて当たり前だと考えられています。
そのため、切削工具のことを知りたくても、誰にも質問できずに困っている方は多いようです。今回は切削工具の基本を知りたい方のために、切削加工の種類と使われる切削工具を紹介します。初心者の方に向けて丁寧に解説しますので、ぜひ切削工具の知識を深めるための取っ掛かりにしてくださいね。
切削加工とは金属などの材料を作業者が求める形状にするために、不要な部分を切り削る加工のことです。
切削加工をする工具を切削工具、加工する材料を被削材(ワーク)と呼びます。
切削加工の説明はりんごの皮むきに例えられることが多く、ナイフが切削工具、りんごがワークです。
切削加工は大きく分けると、以下の3種類に分類されます。
・穴あけ加工
・旋削加工
・フライス加工
つづいてそれぞれの切削加工について簡単に説明します。
穴あけ加工は切削工具が回転しながら直線運動をすることで切削します。
代表的な工作機械はボール盤です。
ボール盤はワークを固定しますが、ワークを回転させて固定した工具に押し当てて切削する工作機械もあります。
旋削加工はワークを回転させて切削工具を押し当てることによって切削します。
代表的な工作機械は旋盤です。
旋盤はシャフトやブッシュのような丸物を加工するのに最適な工作機械で、旋削加工はワークの完成形状から丸物加工と呼ばれることもあります。
旋盤を見たことのない方でも、鉛筆削りをイメージしていただくと理解していただけるのではないでしょうか。
旋盤はワークが回転する軸の方向によって一般的な横旋盤と、大きなワークの加工に向いている立旋盤に分けられます。
木工用の旋盤はこちらの記事で紹介しています。
フライス加工はワークをテーブルに固定して、回転させた切削工具に押し当てることで切削します。
代表的な工作機械はフライス盤です。
フライス盤は作業者から見ると、切削工具が上下に、ワークは前後左右に動くのが一般的で、三次元的な動きができることからさまざまな形状に加工できます。
フライス加工はその加工形状の自由度から、旋削加工の中でもっとも多く行われる加工です。
フライス盤は切削工具が回転する軸の方向によって、一般的な立フライス盤と、溝加工に向いている横フライス盤があります。
また、切削工具の回転軸や、テーブルの角度を自由に傾けることができる万能フライス盤は、歯車やドリルのなどの複雑な形状の加工が可能です。
切削工具はたくさんの種類があり、さまざまなメーカーが工夫を凝らした製品を販売しています。
ワークの種類や加工方法によって、使用する切削工具も材質や形状を変えることが必要です。
切削加工の種類ごとに、代表的な切削工具を紹介します。
穴あけ加工に使用する切削工具を紹介します。
穴をあけるドリルやネジを加工するタップ・ダイスが、穴あけ加工に使われる工具として有名です。
ドリルは穴あけ加工に使用する切削工具で、電動工具に取り付けて使用されることもあります。
工具の先端が刃物になっていて、加工で発生した切り粉を排出しやすいように、らせん状の溝がついているのが特長です。
皿ビスの座面や六角穴付きボルトのザグリ穴のように、同時に複数の径の穴あけができる段付きドリルなど、たくさんの種類があります。
リーマは高い精度や、表面粗さを求められる穴の仕上げを行う切削工具です。
リーマは穴あけ工具ではないので、使用する前にはドリルなどで下穴をあけておきます。
リーマもドリルと同様に穴の径や寸法公差によって、交換する必要のある工具です。
テーパーピン用の穴を仕上げるために勾配のついたリーマも存在します。
こちらの記事で紹介しているテーパーリーマも切削工具です。
タップは雌ネジ(めねじ)を、ダイスは雄ネジ(おねじ)を加工する切削工具です。
タップはリーマと同様にドリルで下穴をあけるのが一般的で、ダイスも他の工具によってある程度の形状を整えておくことが必要です。
タップとダイスは専用のハンドルに取り付けると、ハンドツールとして使用できるものがあります。
タップとダイスはこちらの記事でも紹介しています。
旋削加工に使用する切削工具を紹介します。
旋削用の工具は加工する場所によってさまざまな形状をしているのが特長です。
バイトは旋盤の基本的な切削工具で、シャンクとよばれる部分を旋盤に固定して使います。
工具の先端が刃物になっており、刃先を回転しているワークに押し当てることで切削します。
ワークの外径加工に使用される片刃バイトや、溝加工に使用される突切りバイト、円筒形状の内部を加工する中ぐりバイトがあり、加工する場所や加工する形状によって交換が必要です。
チップとホルダはバイトと同様に、旋盤で多く使用される旋削工具です。
先に紹介したバイトの「刃先とシャンクが別になったもの」と考えていただくとわかりやすいのではないでしょうか。
チップはホルダにネジ止めで固定されることが多く、役割はバイトで例えると刃先がチップ、シャンクがホルダです。
シャンクと刃先を別にすることで、高価な材料を工具に採用しやすいというメリットがあります。
チップは切れ味が悪くなるたびに角を入れ替えて使えるように、三角形やひし形の形状をしているのが一般的です。
すべての角を使い終わると使い捨てられるチップは、スローアウェイ(投げ捨てる)チップと呼ばれます。
フライス加工に使用する切削工具を紹介します。
先に説明した通り、フライス加工は多く行われる加工で、工具の種類も豊富で分類も複雑です。
今回は簡単に説明するために、フライス加工で使用する切削工具をフライスカッターとして紹介します。
フライスカッターは加工する場所や形状に合わせて、さまざまな種類があります。
一般的なフライスカッターは平面の加工に多く使われ、フェースミルと呼ばれることもある正面フライスです。
その他にも工具の側面についた刃物で平面の加工に使われる平フライスや、溝加工に使用される溝フライスがあります。
フライスカッターは旋盤で使用されるバイトのように一体になったものだけでなく、チップを交換できるタイプもよく使われています。
エンドミルはドリルに似ていますが、先端だけでなく外周も刃物になっている切削工具で、フライスカッターに分類されます。
先端の刃物は底刃と呼ばれ、形状によって角型で一般的なスクエアエンドミルや、球形をしたボールエンドミルなどの種類があります。
エンドミルを使うと立体的で複雑な加工も可能ですので、さまざまな場面で使われる切削工具です。
エンドミルについてはこちらの記事でも詳しく紹介していますので、参考にしてください。
今回は初心者の方に向けて、基本的な切削工具について紹介しました。
ワークを必要な形状に加工するためには、切削工具は欠かせない大切なものです。
切削工具は今回紹介した以外にもたくさんの種類があり、作業者は加工する材料や形状などに合わせて、膨大な切削工具の中から最適なものを選びます。
完成形状が複雑になればなるほど、多くの種類の切削工具が必要です。
加工に合わせて切削工具を交換するのが面倒に感じるかもしれませんが、実際の作業では複数の工具をセットしておいて、自動で持ち替えてくれる工作機械が多く使われています。
切削加工後の寸法チェックによく使われる、ノギスの使い方を知りたい方はこちらの記事がおすすめです。