切断や磨き、サビ落としなどに使えて、DIYの入門機種としても人気のグラインダー。砥石を変えるだけで多くの用途・材料に使える、とても便利な電動工具です。
ですが、多くの種類の砥石があるため、
「どの砥石を選べば良いのか、よくわからない!」
「たくさんの種類があるけれど、どう違うの?」
と思っている方も、多いのではないでしょうか。
そこで今回は、グラインダー砥石の選び方や種類、用途、交換・調整方法などを詳しく説明していきます。グラインダー初心者で、砥石についてよく知りたい方は、ぜひご覧ください。
まずは、グラインダー砥石の選び方をご紹介します。
グラインダー砥石を取り付ける「グラインダー」とは、「研削盤」とも呼ばれ、切削や研磨などの作業を行う電動工具です。形状や用途によって、次のように様々な種類があります。
そしてグラインダー砥石とは、グラインダーに取付けて切削や研磨、磨きなどを行うための部品です。砥石のほかに、「ディスク」や「刃」とも呼ばれます。
砥石を交換することで、木工やコンクリートなどたくさんの材料に対して、切削や研磨など多くの作業を行えるのがグラインダーの特徴です。
ただし砥石は、専用のグラインダーにのみ取り付けることができます。ディスクグラインダー用の砥石を、両頭グラインダーに取り付けての使用はできません。どの工具の砥石なのかをよく確認したうえで、購入しましょう。
グラインダーについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
グラインダー砥石の選び方として、まず考えたいのが「粒度」と「硬度(結合度)」です。
粒度とは、「目の粗さ」を表す数値です。数値が大きいほど目が細かくなり、精密に仕上がります。粗研ぎの場合は低い数値を、キレイに仕上げたい場合には高い数値の粒度の砥石を選びましょう。
硬度とは、「砥石の硬さ」を表す数値です。アルファベットで「A」に近いほど軟らかく、「Z」に近いほど硬いことを示します。一般的に、硬い加工物には軟らかめの硬度の砥石を、軟らかい加工物には硬めの硬度の砥石を使います。
グラインダー砥石の選び方、2点目にご紹介したいのが砥石のサイズです。
ディスクグラインダー砥石には次のようなサイズ(ディスク径)があります。
グラインダーの機種によって、使用できる砥石のサイズは決まっています。砥石を購入する前に、取扱説明書などでお手持ちのグラインダーで使えるサイズを確認しましょう。
そして、最も砥石の種類が豊富なのが100mm径です。ディスクグラインダーは、製品ごとの能力の差はあまり大きくありません。どのディスクグラインダーを購入するか迷ったときには、100mm径の製品を購入するのがベストです。
ディスクグラインダーの砥石についておすすめを知りたい方は、こちらの記事もぜひご覧ください。
グラインダー砥石の選び方、3点目は「砥材の選定」です。「砥材」とは、砥石を製造する原料(研削材)の調合のことです。研削材は種類によって特徴があるので、目的に合った種類を選ぶことが大切です。
グラインダーの砥石を選ぶ際、一緒に考える必要があるのがホイールカバーです。
ディスクグラインダーでは、研削くずや切りくずなどの飛散防止と、誤って手が触れないようにする目的でホイールカバーを本体に取付けて作業します。そして取り付ける砥石によってホイールカバーの方向を変えたり、適したホイールカバーに交換する必要があります。
下図は、マキタのディスクグラインダーGA4034の取り付け部品です。この図でわかるとおり、使用するディスクによって、ホイールカバーも変わります。
ディスク(砥石)を購入する際には、どのホイールカバーが必要になるか確認し、必要であれば一緒に購入しましょう。
軸付き砥石を回転させて金属などの研磨を行うのがハンドグラインダーで、「ストレートグラインダー」や「ミニグラインダー」とも呼ばれます。ディスクグラインダーに比べて先端が小さいため、繊細な作業に適しています。
ハンドグラインダー砥石を選ぶときには、回転軸の直径を確認しましょう。3mm径と6mm径のものが多くあり、互換性はありません。本体の取扱説明書やパンフレットなどで直径を確認し、対応した砥石を選びます。
また本体の直径がハンドグラインダーよりひと回り小さく、ペンのように持てるモデルもあります。こちらはいわゆるホビー用途で、先端に小さな切削ビット、切断砥石、ブラシ、紙やすりなどを取付けて、金属やガラス、模型類の繊細な加工が行えます。
ホビー用ハンドグラインダーもやはり、軸のサイズが合うかどうか確認してから、砥石を購入しましょう。
卓上グラインダーは、番手の異なる2種類の砥石を左右に備えるものが大半で、「両頭グラインダー」とも呼ばれます。金属のバリ取りや外形の修正、刃物の粗研ぎに使われます。
両頭グラインダーの砥石を選ぶ際は、現在取り付けられたものと同じ寸法の砥石を使うことが重要です。必ず取扱説明書などで、砥石の寸法(外径×厚さ×内径)を確認し、同寸法の砥石を選びましょう。
ここでは、おもにディスクグラインダーの砥石の種類と用途についてご紹介します。
ディスクグラインダーに標準で付属していることが多いのが、オフセット研削砥石です。金属のバリ取りや面取りに使用します。
「オフセット」とは、グラインダーに取付けた際、グラインダのスピンドルとフランジが砥石に隠れるように、中心部がせり上がっている形状のことをいいます。
オフセット研削砥石は、材料の面に対してディスクの面を15度〜30度の角度にして、外周部分で研削を行います。
切断砥石は、金属を削ったり切断するための砥石です。鋼管やアングル材の切断を行う鉄工用と、レンガなどの切断を行う石材用があります。
作業時には、切断砥石の側面を材料に当てないように注意が必要です。キックバックが起こったり、ディスクが傷んでしまいます。
ダイヤモンドカッターは、コンクリートやタイル、レンガなどの切断に使用する硬質なカッター刃です。最も硬い鉱物であるダイヤモンドを研粒に使用していることが特徴で、「ダイヤモンドディスク」や「ダイヤモンドホイール」とも呼ばれます。
ダイヤモンドカッターにも多くの種類があり、対応可能な材料も異なります。切断する材料に合わせて、どのダイヤモンドカッターが良いか選びましょう。
紙やすりを羽根状に重ねた金属・木工用のディスクが、スパーク(多羽根)ディスクです。
高い切削能力があるため、角を大きく面取りする際や、お皿などのように表面にくぼみを作るのに最適。ただしサンダーと比べて削る力が強いため、削りすぎないようにしっかりとコントロールする必要があります。
ダイヤモンドホイール(ダイヤモンドカッター)は硬い素材の研磨や切断が行なえ、コンクリートについても容易に研磨、切断が可能です。
ダイヤモンドホイールによる切断では、グラインダーのモーターに負担がかかりやすくなります。そのため1回の切り込み量は5mm以下にし、回転速度が落ちないように進める力を加減することが重要です。
サビ取りなどに使われるのがワイヤ−ブラシです。カップ型とベベル型の2種類があります。
カップから下向きにブラシが付いた形状が、カップ型ワイヤーブラシです。鉄鋼や非金属の防錆、研磨、溶接のバリ取り、塗装の剥離、下地の研磨などに使われます。全面を押し付けての研磨が行なえます。
丸く平らな金具に、平たくブラシが付いている形状で、素材はステンレスや真鍮メッキが多いのがベベル型ワイヤーブラシです。カバーから露出している部分を使用して、コーナー部などの研磨が行えます。
刈払刃や鎌、はさみなど刃物を研ぐことができるのが刃物研ぎ用砥石です。
砥石の種類によっては、平面でチップソーやはさみなど平らな刃研ぎに、曲面は鎌やナタなど湾曲している刃研ぎに使用できるタイプもあります。
両頭グラインダー砥石は、ディスクグラインダーほど多くの種類がありません。多くの場合、もともと付属していた砥石が消耗し、同じ品番の新品に取り替えることが多いようです。
砥石を毎分2万5000〜3万回転させて、おもに金属の研削を行うハンドグラインダー。
様々な形状の砥石があります。本体の軸径を確認し、その軸径にあった砥石を選ぶようにしましょう。
ここでは、グラインダー砥石の交換時期と方法をご紹介します。
グラインダーを使っていると、砥石が削れてだんだん小さくなっていきます。メーカーでは、「この程度の大きさになったら交換を」といった説明は特にしていません。
ただ、削れて小さくなった砥石は、新品よりも回転する速度が低下して、加工する能率が下がります。また砥石を長く使えば、破損する確率も高くなります。そのため新品時の6割程度まで消耗するか、ラベル部分まで消耗した場合には、砥石を交換することをおすすめします。
ディスクグラインダー砥石の交換方法について、マキタのGA4034を例にご説明します。
ホイールカバーの取付けは、次の手順で行います。
取り外す際は、上記の取り付け方の逆の要領で行います。
オフセット研削砥石の取付けは、次の手順で行います。
取りはずす場合は、取付け方と逆の要領で行います。
ダイヤモンドホイールの取付け方は次のとおりです。
*:矢印に合わせないと、ダイヤモンドホイールの回転方向が逆になり、刃先を傷め、切れにくくなる原因となります。
取り外すときは、取り付け方の逆の要領で行います。
カップ型・ベベル型ワイヤーブラシを取付ける場合は、ホイールカバーを取付けて、スピンドルにワイヤブラシをねじ込みます。
取り外す場合は、シャフトロックを押さえ、22mmのスパナをワイヤブラシの切り欠け部にはめてゆるめて下さい。
ディスクグラインダーの砥石を交換する場合は、必ず専用の交換用レンチを使います。これは各メーカーによって、ナットの穴の距離が違うためです。
グラインダーに付属していた交換用レンチを使うか、メーカーに対応した交換用レンチを購入しましょう。
最後に、グラインダー砥石の調整方法と特別教育についてご紹介します。
両頭グラインダーを使っていると、砥石が目詰まりしたり、片減りして使いにくくなってきます。そういった場合にはドレッサーを使用して、砥石の目詰まりや片減りを修正しましょう。
この作業を「ドレッシング」といいます。砥石を回転させ、通常の研磨のようにドレッサーを砥石に当てていきます。砥石が平らになるようにドレッサーを動かせば、砥石のメンテナンスは完了です。
グラインダーを業務で使う場合には、一般的に「グラインダー特別教育」とも呼ばれる「研削といしの取替え等(自由研削)の業務に係る特別教育」を受講しなければなりません。
特別教育の受講は、労働安全衛生法という法律で決められています。受講せずにグラインダーを業務で使用すると、会社・労働者ともに罰せられます。
全国の様々な事業所で講習が行われていますので、業務でグラインダーを使う場合には、必ず受講しましょう。
・東基連:研削といしの取替え等(自由研削)の業務に係る特別教育 講習会のご案内
今回はグラインダー砥石の選び方や種類、用途、交換・調整方法などを詳しく紹介してきました。多くの種類がありましたが、それぞれの用途についても理解して頂けたかと思います。
適切な砥石の選び方がわかれば、グラインダーは多くの用途で使える、とても便利な工具になります。ぜひあなたの用途にあったグラインダー砥石で、快適な作業を実現して下さい。