新型コロナの影響が様々なところに出ていますが、言うまでもなく、建設・建築業にも影響が出ています。今現在の、建設・建築業の現状をご紹介すると共に、政府からどのような支援策が打ち出されているのかまとめてみましたので、建設・建築業に携わっている方はぜひ参考にしてみてください!
目次
新型コロナによって、建設・建築業がどのような危機的状況に陥ってしまっているのでしょうか。中小企業になればなるほど、倒産危機にさらされているのです。なぜ、倒産危機にさらされてしまっているのか、そのメカニズムから見ていきます。
新型コロナ感染拡大のため、2020年4月8日より、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、大阪府、兵庫県、福岡圏を対象に緊急事態宣言を発令しました。これを受け大手でゼネコンが相次いで対象地域の建設を中止しだしたのです。
事の発端は、緊急事態宣言の発令と同時に西松建設が対象地域全ての建設作業をストップさせると発表したことから始まりました。発表当初こそ、建設・建築業界に大きな衝撃を与えましたが、一向に収束することのない新型コロナの感染拡大を受け、5日後には清水建設も工事ストップを発表し、それに続く形で戸田建設、大林組、JR東海も中止の発表をしたため、建設業界に波及していったのです。
中止を受けた工事現場は、いったいどれだけの数にのぼるのでしょうか。その数は少なくても3000箇所以上あるとされています。西松建設をはじめ、大手ゼネコンの工事中止の発表により、中小企業、零細企業に影響がでているのです。
なぜ、こんなにも中小企業や零細企業に影響を及ぼしてしまうのかということから、ご説明しましょう。建設業に従事している方の人数は全国で3300万人にものぼり、そのほとんどが「個人事業主」なのです。元請けからの仕事がなければ、下請けの中小零細企業は体力がないため、たちまち資金繰りが悪化し、最悪の場合倒産となってしまうのです。
中小零細企業の資金繰りが悪化すると、作業員に支払われる給料を支払うことができなくなってしまうということが起こります。給料を支払う体力があったとしても、作業員の給料は働いた日数により変動することが、ほとんどです。そのため、収入を得ることができなくなってしまうんです。ただでさえ、人手不足な建設業界に追い打ちをかける事態にまでなってきてしまっているのです。
オリンピックや都市開発で建築需要が高まったこともあり2019年の廃業、倒産前年比より減少していましたが、2020年は増加すると見込まれています。新型コロナの影響の他、建築業界の高齢化も要因の1つにあり、黒字のまま畳みたいと考える方も多いようです。コロナの影響でこのまま工事を再開できなければ、倒産に追い込まれてしまう企業も出てしまうでしょう。
では実際に建設現場はどのような状況になっているのでしょうか。建設現場で起きていることを詳しく見ていきましょう。
建築現場は、衛生的にも良い場所とは言えないのが現状です。屋外での作業を想像する方も多いでしょうが、実際は3密が起こりやすい環境にあるのです。作業中でもそうですが、現場へ行くためのエレベータでの密、休憩所での密、朝礼での密など密の環境にならざるを得ない状況にあります。またトイレも、何百人もの人が仮設トイレを使用するので衛生的にも良いとは言えません。手を洗う場所もない現場もあるようで、せめて手だけでも洗いたいと改善を望む作業員が多いようです。環境的にも、他のオフィスと比べ対策がしっかりとられていないのが現状です。
納期までに作業が滞りなく進むために、新型コロナに感染した従業員がいても報告をしない「コロナ隠し」が問題になりました。感染力の強いコロナなので、一人感染してしまうと他の作業員にも感染してしまうことは容易に想像できるでしょう。
しかし、コロナに羅患した感染者が出たということを隠し、工事をストップさせることなく作業をすすめている工事現場も少なからずあるのです。コロナに感染した作業員を隠すことにより、一緒に働いている作業員やその家族、どんどん感染が広まってしまうので、コロナ隠しは大きな問題となっています。
このように、環境的にも衛生的にも改善するよう求められていますが、実際には手を洗う場所も十分にない環境のようです。適正な改善策がとられておらず、現場で働く作業員たちは疲弊していると言います。
コロナによる、建設業界への影響をできるだけ抑えるためにも、救済策は必要不可欠です。どのような救済策がとられているのか見てみましょう。
赤羽国土交通大臣は「経営基盤が脆弱な下請け建設企業に追加費用の発生など、しわ寄せが生じることのないように対応することが必要だ」と述べ、下請け企業が影響を受けないように対応が必要だという意向を表明しました。具体的な救済策の案はまだ何もなく、意向表明するまでにとどまっています。
コロナの感染拡大を防止するのも大切ですが、それにより収入がなくなってしまう下請け企業を経済的に支援することも大切です。建設業界だけでなく、どの業界に関わらず、政府の経済支援は必須ではないでしょうか。
業界に関わらず、中小企業であれば利用できる制度があります。利用できる制度をまとめてみましたので、該当する方は参考にしてみてください。
【持続化給付金】
下記に該当する事業所に関して、中小企業は200万円、個人事業には100万円給付してくれるもののことを言います。
青色申告の事業所 | 前年同月比5割減 |
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白色申告の事業所 | 2019年度の1か月の売り上げ平均の5割減 |
【雇用調整助成金】
コロナによる休業により、従業員の雇用が困難になる中小企業のために、雇用を維持するために支払った休業手当の費用を助成する制度のことを言います。直近1か月の売り上げや生産量が前年同月比の5%減少していることが条件になります。
【特別貸付制度】
3年間、実質無利子で貸し付けを行ってくれる制度のことを言います。無利子になる仕組みは、日本政策金融公庫の場合、融資を受けた後、別の金融機関から利子補給を行うことで実質無利子になるというわけです。融資を受けるための要件や実施期間などはまだ決定していません。随時情報をチェックするようにしましょう。
コロナの影響による他国の建築業界の動向はどのようになっているのでしょうか。イタリアとアメリカを例にとって見てみましょう。各国の動向や対策は参考になることでしょう。
イタリアの建設業界も必要不可欠な工事以外は、ロックダウンの制限に入りました。3月10日よりロックダウンが発令され2か月ほど経っていますが、今月4日より少しずつ制限が解除されていくようです。
アメリカでは州により異なっていますので、ニューヨーク州の場合を見てみましょう。ニューヨークでは、3月下旬から4月末まで必要不可欠以外の工事は禁止されています。工事が認められているのは、病院、ホームレスの方の一時宿泊施設、低所得者向け住居の工事です。それ以外の工事で稼働していることが発見された場合には、1万ドル以下の罰金が課せられるようです。
国により政策が異なっていますが、日本はどうすることがベストなのでしょうか。一概にどれが正しいとは言えませんが、必要な工事と不要な工事を見極めることが1番大切なのではないでしょうか。生活するうえで欠かせないインフラ工事や、病院の工事などは必要不可欠と言えるでしょう。
コロナの影響により、建設業界だけでなく様々な業界が揺れ動いています。今1番大切なのは、経済支援策をしっかり行ってもらうこと、また私たちにできるのは、新型コロナが感染しないように不要不急の外出を控え自粛をすることではないでしょうか。
いつまで続くか分からない暗闇の中ですが、1日でも早く当たり前の日常を当たり前に過ごせる日が来ることを願うばかりです。感染力の強い新型コロナですが、手洗いなどしっかり行い感染しない努力をすることも大切です。
緊急事態宣言が早く解除できるよう、ひとりひとりが不要不急の外出を控え、自粛をし、感染拡大を予防しましょう!