ボルトを締める際には、ワッシャーを噛ませて使うというのが現代の常識になっています。車やバイクのボルトなど身近な物の部品から始まり、非常に様々な場所でワッシャーが扱われていますが、いくつかの種類がある事はご存じでしょうか?今回は、ワッシャーの役割や種類ごとの特徴などを解説します。
機会を製作するにあたって、最も使用頻度の高い道具は何なのかというと、ボルトやナットと並んでワッシャーが挙げられます。それ程機械製作を行うのには無くてはならない必需品で、一般的にワッシャーとはボルトの頭と母材の間に組み込む円状の穴の開いた薄い部品の事を指します。
後述するとおり、ワッシャーと一口に言ってもその種類は様々存在しますが、一般にワッシャーというと「平ワッシャー」を指す事が多いです。これはドーナツ状の穴の開いた平たいワッシャーで、最も思い浮かべやすいでしょう。
役割としては、ボルトの軸力を分散させる事で安定して母材を固定させる「母材滑落の防止」と、ボルトと母材の硬さが異なる場合、柔らかい母材の方が傷を受け錆の原因になるのを防ぐ「母材の損傷軽減」の2つが主です。
サイズも1つという訳では無く、大きな物から小さなものまで、制作される機会に依って異なるワッシャーが使用されます。そのサイズの表記に関しては、基本的には内径×外径×厚みという形で表記されるのがメジャーです。
内径は、ワッシャーの中央に開いている穴の直径、外形はワッシャーそのものの直径、厚みはワッシャーの厚さそのままを意味します。ISOやJISと言った、規格に依ってワッシャーのサイズは異なり、使用するネジもそれぞれ適合したものを使用します。
ここからは、様々存在するワッシャーの種類と、それぞれの特徴解説に移りましょう。まずはすでに前述している「平ワッシャー」で、名前通り平たく厚みのあまりないワッシャーです。大抵ワッシャーと言えば、この平ワッシャーが思い浮かぶことでしょう。
締めつける穴の内径が、ボルトやナットよりも大きかったり、柔らかい材料の場合には、必要な座面を得るのが難しくなります。そんな時、平ワッシャーを使用すれば軸力に見合うだけの座面を確保できます。取り扱う方に依って、金属製のワッシャーを「平座金」、非金属のものを「平ワッシャー」と呼ぶ事もある様です。
ロゼットワッシャーは、下になる穴の内径が小さく、上になる穴の内径は大きくなっているという、皿の様な形状をしたタイプのワッシャーです。皿小ねじや、丸皿小ねじで締め付けを行う際はこのワッシャーが用いられます。
この皿小ねじや、丸皿小ねじを使用する際、通常であれば材料側にネジの頭の部分を板に沈めて出っ張らない様にする「ザクリ加工」が必要になりますが、ロゼットワッシャーを使用すれば、その加工が必要無くなります。
平ワッシャーに切れ込みを入れ、ねじれを加えた様な形状をしているのがスプリングワッシャーです。繋がっていない為頼りなさそうに見えるかもしれませんが、緩み止めを果たすのみならず、ボルトなどが緩んでしまった場合に脱落を防止する機能もあるのです。
実際には、ネジの頭部分に挟む、又はナットと締め付け部分の間に挟み込むようにして使用します。ばね作用により反発力が生まれ、締めた部分に食い込んで緩みを防止する他、食い込みで材料側に傷が付かない様、平ワッシャー等と併用する事もあります。
歯付座金は、まるで歯車を連想させるかのような形状が特徴的なワッシャーの1つです。別名菊座金とも呼称されており、ワッシャーの内側ないし外側にある歯は締めつけた時に先端部分が材料へと引っかかります。
この引っ掛かりを意図的に行う事で、ネジの締め付けをした後の緩みを防止する働きがあります。あまり見ないタイプのワッシャーでしょうが、主に電気製品や自動車部品に於いて、アース端子を固定する際に用いられます。
種類が多用に存在する様に、ワッシャーに使用される材質も様々です。例えばアルミのワッシャーは、バイク等のドレンボルトを締める際に潰れて密閉性を高くするために使用されますし、銅製のワッシャーはコストこそ高いですが再利用が可能です。
樹脂製のワッシャーは、同じ樹脂製の外装やスクリーンと言ったものを締める際に使用されます。同じ素材であれば、傷を付けてしまう事が無いからです。また、鉄を素材にしたワッシャーも非常に多く用いられています。
ここからは、ワッシャーを使用する事に依って如何な効果を得られるのか、その役割などについて解説しましょう。まず1つ目のワッシャーを利用する目的は、やはりボルトやネジが緩まないようにする為と言う点が大きく占めています。
単にボルトだけで締めようとしても、どれだけきつく締めたとしてもどうしても隙間が生じます。そこで、ワッシャーを材料とボルトとの間に噛ませる事で、ボルトを締めつけた時にワッシャーの分だけ広い面積を締めるのに繋がります。
続いて、座面の陥落を防止し安定して固定させる役割もあります。ボルト側の径が埋め込む穴の径よりも小さい場合、当然ながらその分の隙間が空いてしまいます。そのままボルトを締めても、十分に固定できるとは言えません。
そこで、ワッシャーを使用してその隙間を埋めます。また、例えサイズが適合していたとしても、何も噛まさないままボルトを締めると、頭の部分が締め付けた材料の部位にめり込んでしまいます。こうなると、見栄えも良くありません。こうした事態を防ぐためにも、必ずワッシャーを噛ませています。
既に紹介している内容ではありますが、材料に傷が付くのを防止するのも大切な役割の1つです。もしもワッシャーを敷いておらず、ボルトをそのまま閉め付ければ、柔らかい材料側にはボルトが開店した時の傷が付きます。これも見栄えが良く無くなります。
ワッシャーを噛ませる事で、ボルトを締めた際に先にワッシャーの方が固定されてその上でボルトが回転する様になり、直接材料に接触して傷を発生させるのを防いで綺麗な状態のままに保てます。主に樹脂を素材に使用したタイプのワッシャーがこの役割を担います。
そして、気密性を高める効果も非常に重要な効果となります。こちらも樹脂やゴムを素材に使った非金属性のワッシャーが多く当て嵌まりますが、こうしたタイプのワッシャーはボルトと材料との間に隙間が出来るのを防ぎ、気密性を高めています。
最も分かりやすいのは、バイクのドレンボルトでしょう。オイル交換を行う際に取り外すドレンボルトですが、この部品が緩まるとエンジンオイルが漏れだしてしまいます。使用するのはアルミ製のワッシャーですが、これをドレンボルトに組み込んで締め付けを行い、潰れる事で密閉性が確保されます。結果、オイル漏れを防いでくれます。
最後に、実際にワッシャーを使用する際に覚えておいて欲しい事を2点程解説しておきましょう。まず、全てのワッシャーが該当する事ではありませんが、物によっては裏と表があるワッシャーもあります。このタイプのものは、片面は角に丸みがあり、もう片面には加工時に発生する突起であるバリが見られ、光沢がありません。
これは、どちらかをボルト側、もう一方を材料側にしなければならないといったルールは存在しませんが、バリのある側を材料の方に向けた方が軸力を分散してくれますので、若干の違いではありますが有利になります。但し、材料の塗装を剥がしたくない、傷を付けたくないのなら、逆にして使いましょう。
スプリングワッシャーを使用する場合には、ボルト、スプリングワッシャー、ナットの順番で挟んで使用します。挟み込んで使用するスプリングワッシャーは、入れる際にナットが緩む方向に置きあがっている方を挟むのが正しい使用法となります。
単体でネジに組み込まれている事もあれば、ネジにワッシャーをセルフで組み込んで使う場合もあります。ナット無しでボルトとワッシャーのみで締める際は、ボルトの傘と材料に対してワッシャーが食い込むような形で取り付けます。
薄くて小さい部品であるワッシャーですが、その実機械の制作を行う過程では無くてはならない大切なアイテムなのです。DIYでワッシャーを使用する際は、種類と適切な使用法を事前に十分に覚えて実践しましょう。