電気を充電して、好きなときに使える蓄電池。2019年には台風による停電時の電源確保が重要になったことや、太陽光発電の固定価格買取期間終了などもあり、購入する方も増えています。
しかし、蓄電池メーカーなどのウェブサイトを見ても、難しい説明ばかりでよくわらない…という方も多いのではないでしょうか。また、メリットばかりが強調されがちですが、もちろんデメリットもあります。どちらも知っておかないと、購入後に後悔するかもしれません。
そこで今回の記事では、蓄電池にはどんなメリット・デメリットがあるのかをご説明していきます。また後半では、価格や補助金、エコキュートとの連携についても解説。
あまり詳しくない方にも、わかりやすいように記載しています。家庭用蓄電池の導入を検討している方は、ぜひご覧ください。
まずは、蓄電池とはどのようなものかをご説明します。
蓄電池とは、繰り返し充電して、家庭などの電気機器に電気を供給できるシステムのことをいいます。以前は産業用としてのみ使われていましたが、近年では小型化が進んだこともあり、家庭用として普及しました。
2012年には、東日本大震災の復興対策のひとつとして、蓄電池導入のための補助金制度がはじまります。これによって、家庭用の販売台数が伸びはじめました。さらに2019年には、太陽光発電の10年間の固定価格買取期間が終了する人(「卒FIT」とよばれます)が出始めたことで、さらに購入者が増加しています。
蓄電池は、おもに次の機器で1セットです。また、本体とパワコンが一体化した「創蓄連携タイプ」もあります。
そして蓄電池に充電する方法は、次の2つです。
太陽光発電の設備だけでは電気を貯めておけないため、機能をフルに活用できません。そのため蓄電池もあわせて導入し、電力の自給自足を行う家庭が増えています。
ここでは、蓄電池のメリット3点をご紹介します。
上のグラフは電気料金平均単価の推移です。原油価格の下落などで2014年以降下がったものの、再び値上がりをしています。このような状況のなか、蓄電池を利用すれば電気代が節約できます。
そのためには、太陽光発電と組み合わせるか、昼と夜の電気料金が異なる「スマートライフプラン」(東京電力)などのプランで契約する必要があります。
太陽光や安い深夜電力で充電して、日中には貯めておいた電気を使う。こうすることで電気代が節約できます。太陽光発電の設備だけでは電気を充電できないため、蓄電池を購入する家庭が増えていることも納得ですね。
蓄電池で貯めておいた電気を、地震や台風などで起こった停電の際に使うことができます。
過去の大地震では、80%の家屋が停電から復旧するまで、次の期間がかかりました。
非常時のために、1日〜3日分の電力を確保しておくことは大変重要といえます。蓄電池を使用すれば、下図の電化製品を、それぞれの時間で使うことが可能に。さらに蓄電池の容量が大きければ、図の右にある電化製品まで使うことができるというわけです。
2019年の台風15号では、記録的な暴風が発生し、千葉県を中心に停電が長期化。停電の復旧にかかった時間は約280時間でした。この期間、ずっと電化製品を使わない暮らしを続けることはできますか?
災害が多い日本列島では、地震や台風などによる停電はいつ起こってもおかしくありません。非常時のための備えとしても、蓄電池を検討してみてはいかがでしょう。
太陽光電池と蓄電池は、相性バツグンです。太陽光で発電した電気を蓄電池で貯めておき、必要なときにいつでも使うことができます。
これまで太陽光発電は、固定価格買取制度(FIT制度)を利用して、発電した電力を電力会社に売る(売電)ことができました。しかし、高額で売電ができるのは10年間のみ(10年後の状況は「卒FIT」とよばれます)。これまでは48円/kwhで売電できたものが、10円以下になるといわれています。
卒FIT後の、太陽光発電した電気の使いみちは次の2つ。
そして、現在電力会社から供給される日中の電気代は、30円/kwhほどです。この単価をみても、安い値段で売るよりも、家庭で使ったほうがよいことがわかりますね。そのためには、蓄電池で充電する必要があるんです。
このように、2019年から始まった卒FITのご家庭では、蓄電池の導入は特に大きなメリットがあります。
蓄電池のメリットを確認したところで、次にデメリットを3点をご説明します。
蓄電池は近年、かなり安くなってきたとはいえ、それでもまだ高額です。後述するとおり、70万〜200万円する機種がほとんど。メリットで紹介したように電気代などの節約ができるとしても、これだけの大きな出費は痛手ですよね。
そこで少しでも価格を抑えて購入するために、次のような方法があります。
いくつもウェブサイトをみていくと、これらのことがわかるようになります。できるだけよく確認して、出費を減らしていきましょう。
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蓄電池の主流であるリチウムイオン電池は、充電・放電の回数に限りがあります。永遠に使えるわけではなく、充・放電を繰り返すと劣化して、使える容量が減ってしまうのです。
寿命は「サイクル」と呼ばれます。100%の充電状態から、0%の放電状態までが1サイクル。これを何回繰り返せるかで、寿命を表します。
サイクル数を公表しているメーカーもあり、たとえばパナソニックの『LJ-SF50B』では「3,000回」です。設置する環境や使用方法にもよりますが、一日に1サイクルを行うと、約8年で寿命となります。
ただし蓄電池のなかには、長寿命をセールスポイントにしている東芝のエネグーンのような機種もあります。15,000回の充放電のあとも、80%以上の容量を維持するという高性能ぶりです。
蓄電池の、経年劣化の度合いはメーカーで違います。購入する際は、サイクル数や保証期間をよく確認しましょう。
蓄電池には、屋内に設置するタイプと屋外に設置するタイプがあり、どちらでもある程度の設置スペースが必要です。
たとえばシャープの蓄電池では、屋内・屋外兼用可能な機種でサイズは次のとおり(表はスライド家可能です)。
タイプ | 容量 | サイズ (幅 ✕ 奥行き ✕ 高さ) |
---|---|---|
コンパクトタイプ (JH-WB1621) | 4.2kwh | 500 × 360 × 605 mm |
ミドルタイプ (JH-WB1921) | 6.5kwh | 560 × 320 × 575 mm |
大容量タイプ (JH-WB1821) | 8.4kwh | 700 × 360 × 605 mm |
他社と比べてコンパクトといえるシャープ製でも、このサイズです。必要な容量を確認しながら、できるだけサイズが小さい機種を選択することをおすすめします。
またサイズのほかに、特に屋内タイプでは運転音を確認しましょう。機種により異なりますが、35dBほどの運転音は発生します。これは「静かな住宅地」や「深夜の郊外」といった騒音レベルで、通常に生活をしている分にはほとんど気になりません。ただし、寝室からは離れた場所に置くほうが安心です。
そして屋外設置タイプでは、次のような設置場所の制限があります。「敷地内の空いているスペースなら、どこに置いてもよい」というわけではないのです。
ここまでのデメリットをよく理解したうえで、ぜひ蓄電池の購入を検討してみてください。
メリットとデメリットを確認したところで、ここでは蓄電池の価格と2020年度の補助金をご説明します。
家庭用蓄電池の価格は、年々下がっています。それでも、容量が小さいタイプで70〜80万円、容量が大きい機種では100〜200万円ほど。
資源エネルギー庁では、2015年度には22万円/kwhだった価格を、2020年には9万円/kwhにするとの目標を2017年に掲げていました。(資源エネルギー庁:定置用蓄電池の価格低減スキーム)
国のこうした取り組みもあり、今後もさらに蓄電池の価格が下がる可能性は大きくあります。ただし現時点では、リチウムイオン電池の原材料であるレアメタル価格が上昇していることもあり、大幅な下落までは見込めません。
また蓄電池の導入には、次の費用がかかります。
平均してみると本体が100万円、設置工事と電気工事あわせて30万円で合計130万円。工事費用があることを考えると、相見積もりをとるなどして、複数の販売店・工事業者に金額を確認することも大切です。
工事費用「なし」で蓄電池を設置するには下記をチェックしてみてくださいね。
高額な蓄電池ですが、購入を助けてくれる補助金制度があります。国と地方自治体のそれぞれで制度がありますので、見ていきましょう。
国から支給される補助金として、sii(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)による「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」があります。
この補助金制度は、「10kw未満の太陽光発電設備をすでに設置している、もしくは蓄電池と同時に設置する方」が対象です。
たとえば、次の費用がかかった場合。
このときは23万6千円が補助金として支給されます(計算の詳しい内容はこちらを参照)。
追加公募期間は、2020年4月7日から2020年6月30日まで。ただし、新型コロナの影響で期間延長の措置が講じられる可能性ありと、アナウンスされています。蓄電池の購入を検討されている方はぜひ、こちらのサイトをご確認ください。
・sii:平成31年度「災害時に活用可能な家庭用蓄電システム導入促進事業費補助金」
地方自治体でも、蓄電池導入の補助金制度を持つところが多くあります。さらに都道府県と市区町村それぞれで補助金制度を設けている地域も。
たとえば東京都では、現時点では公表されてはいませんが、2020年9月ごろから公募が始まるといわれています。
さらに東京都の足立区では、「蓄電池・HEMS設置費補助金」として、「補助対象経費の1/3に相当する額(上限5万円)」の補助を行ってくれます。申請期間は、令和2年4月13日から令和3年2月26日まで。
ただし、申請が多く一定予算額に達すれば、公募終了期間前でも申請受付が終了してしまいます。
東京都の「蓄電池、燃料電池(エネファーム)等に対する助成金」は、申請期間が2016年6月27日〜2020年3月31日でしたが、予算額に達したということで2019年8月9日で受付が終了しました。予定していた期日よりも半年以上前に、補助金申請が打ち切られたことになります。
これから蓄電池の設置を検討されている方は、ぜひお住まいの地方自治体のウェブサイトで、補助金制度が行われていないか確認してみましょう。ただし蓄電池の設置には、依頼してから数ヶ月かかる場合が多いことも考慮してください。
最後に、蓄電池とエコキュートが連携できるのかどうかを確認しましょう。
大気中の熱を集めて、お湯のわき上げに活用するエコキュート。「1」の電気エネルギーで「2」の空気の熱をくみ上げ、「3」の熱エネルギーを作り出します。消費電力が1/3になるため、とても経済的で、導入する家庭も多くありますね。
しかも割安な夜間電力を使用するため、蓄電池とは相性がいいようですが、連携は可能なのでしょうか?
実は、多くの家庭用蓄電池では、エコキュートを使用することはできません。それは家庭用蓄電池が、100V対応になっているため。エコキュートは200V仕様が多いため、100V対応では使えないのです。
これはエコキュートだけでなく、IHや一部のエアコンなどもあてはまります。これらの機器は、停電時に100V蓄電池が稼働しても使用できません。
ただし蓄電池でも、ニチコンの『ESS-H1L1』のように、定格出力AC200Vでさらに10kwh以上の大容量タイプであれば、エコキュートも連携可能です。大容量ですので定価が420万円と、より高価なタイプになります。
今回は、蓄電池のメリット・デメリットや価格、補助金、費用計算などを解説しました。とても便利ですが、大変高額な蓄電池。導入には、メリットとデメリットを知った上で、よく検討することが大切ですね。
今回の記事で、蓄電池の導入に興味を持たれた方は、ぜひこちらのサイトをご利用ください。