車やバイクに欠かす事の出来ない部品であるタイヤには、スリップサインが設けられています。公道を走行する以上必ずタイヤにはスリップサインがあり、これを確認しながら走る事で安全な走行を保つ指標になります。今回は、そんなスリップサインの役割や確認の仕方を解説します。
公道を走る自動車には、どんなタイヤにもスリップサインと呼ばれる溝が設けられています。サーキットで走るレース用のタイヤであるスリックタイヤでなければ、どんなタイヤにも必ずスリップサインは確認できます。
これは、タイヤに刻まれている溝の中でも、残りが1.6mmを下回った事を表している目安です。タイヤを装着して走り続けると溝がだんだんと無くなっていき、ある一定以上まで溝が減ると「スリップサインが出る」という状態になります。
溝が設けられているといっても、スリップサインが出ている状態とそうでない時の違いは分かりにくいかと思われます。そこで、一度も使われていない新品と、摩耗した状態のタイヤとの比較を動画で見てみましょう。
ウェットな路面でコーナリングをした時の違いで、新品のタイヤは速度を出したままでもスムーズにコーナーを曲がる事が出来ています。しかし、摩耗したタイヤで同じ条件を走ると、滑っている事が確認出来、溝の無いタイヤが如何に恐ろしいかが分かります。
このスリップサインですが、どんなタイヤでも簡単に確認する方法があります。それは、タイヤの側面にある「△」のマークを目印に探す事です。頂点部分がタイヤの溝に向かっている所から直線上に、一か所だけゴムが盛り上がっている箇所があります。
その溝が浅くなっている部分が該当箇所と判別できます。サインが出ているか否かに関しては、この△マークを随時確認しながらチェックします。
冬用のタイヤであるスタッドレスタイヤでも、同じように△マークが設けられスリップサインが確認出来ます。そして、冬用という事でもう1つ確認箇所があり、それが「↑」のマークで表されるプラットフォームです。
冬用タイヤのプラットフォームは、新品の状態で溝の深さが50%以下になっています。タイヤを使い、全体の溝が減ってプラットフォームが露出してくるころになると、完全に溝がなくなった状態でなくとも入れ替えるタイミングとなります。
道路運送車両の保安基準に依って、行動を走行する車のタイヤの溝は1.6mm以上である事が定められており、後述する様にこの規定をクリアしていないと整備不良の扱いを受け、道路交通法違反になりかねません。
車のタイヤの溝については車種によって保安基準が異なっており、乗用車、小型トラック、大型のトラックやバスは公道で走る場合共通で1.6mm以上ですが、高速道路では乗用車は1.6mm、小型トラックが2.4mmで、大型トラックやバスは3.2mm以上と定められています。
もしスリップサインの出ている状態のタイヤで走ったらどうなるかというと、まず1つに危険な走行になる事が挙げられます。先の溝の無いタイヤと新品タイヤとの比較の動画で見た通り、溝の無い、スリップサインが出た状態のタイヤは、非常に滑りやすくなっています。
タイヤに溝が掘られているのは、接触している路面の水を排出する為です。溝があるからこそ滑らずに走れるわけですが、摩耗して溝の無くなったタイヤは路面との間に水の膜を作り、結果的に車が滑ってしまうのです。
続いて、車検に通す事も出来なくなります。前述した通り、車に装着するタイヤの溝は保安基準によって定められており、これに違反した場合は危険であるという証拠で、そのままでは到底車検に合格させることは出来ません。
当然ながら車にはタイヤが4本、そしていずれもに幾つもスリップサインの溝があり、これら全てサインが出ていないのが合格の条件となります。車検に通らなければ、危険以前に公道を走ること自体ができなくなります。
そして、罰金を課せられる事にも繋がります。何度も前述している通り、溝の深さは全て1.6mm以上という基準によって規定されており、これに違反するのは免許不携帯や信号無視などと同じ道路交通法違反に相当します。
仮に本当に違反と判断された場合、大型車も普通車も2点の減点、そして普通車は9千円、大型車は1万2千円の罰金を課せられる事になります。1つでもスリップサインが出たのなら、速やかにタイヤの交換をおすすめします。
自動車で安全に走行する上で、スリップサインは1つの目安になります。但し、あくまで目安の1つであり、これ以外にもタイヤの交換目安は幾つかあります。そのうちの1つが、走行距離です。新品の状態のタイヤの溝が8mm、5千キロ走るごとに1mm減ると言われています。
勿論、タイヤが消耗するのは走行する道路の状況によって左右される所がありますので、必ず5千キロで1mm溝が減るわけではありません。それでも、走り始めて大体3万キロ程度経ったときには、タイヤの交換を視野に入れておきましょう。
地面に接する箇所ではなく、側面のひび割れなどゴムの劣化でも判断する事が出来ます。タイヤに自分の指で圧を掛けても押し戻される感触が無かったり、側面にひびが確認出来る場合、例えスリップサインが出ていなくても交換時期になります。
タイヤに弾力が無い、ひび割れがあるなど劣化しているという事は、ゴムが硬化して滑りやすくなり、パンクを誘発する恐れもあります。劣化は走るのではなく直射日光下に置くなどの保管方法が関係しますので、空気圧を半分にするなどで負荷を減らせます。
もう1つ、製造年数も目安となります。前述した通り、自動車用のタイヤは実際に使っていなくとも経年劣化をして行くもので、最初からメーカーに依って耐用年数を10年と期限を付けています。その為、タイヤの製造年数が分かれば、そのタイヤの寿命も判明します。
例え購入した時期を忘れていたとしても、タイヤ本体に製造年と週が記載されており、何時でも確認できます。2000年以降製造のタイヤは、例えば「BMC2817」と書かれている場合、28は第28週目、17は2017年を表し、2017年の28週目、7月に製造されたことになります。
使っていなくても耐用年数が決まっていて寿命が来るというのはちょっと嫌な話ですが、寿命を延ばす方法も幾つかあります。1つ目は車に装着するタイヤをローテーションし、それぞれの負荷を軽減させるというものです。
同じ位置で同じタイヤを使い続けていると、前と後ろで消耗の具合が異なったりします。一般的なエンジンが前にある車はフロント側が減りやすいですが、5千キロの走行距離を目安に前後と左右を入れ替えて、均一に負荷をかければ、総合的な寿命が延びます。
2つ目は、実際に運転している最中の運転方法です。走行中にタイヤの消耗を早めてしまうのは、急ブレーキや急発進といった大きな負荷をかけるものです。これらは偏摩耗を起こし、タイヤの寿命も縮めます。
車を運転する運転者としても、急な動作を行うのは安全面を鑑みても褒められたものではありません。「急」が付く運転はNGとし、丁寧な運転を心がける事は、タイヤの寿命を延ばし安全な運転に繋げられます。
もう1つ、空気圧の調節でも寿命を延ばせます。何もしないままではタイヤの空気は自然と抜けて圧が下がっていくものですが、長くタイヤを使いたいのであれば適正な空気圧を保ち、偏った摩耗を防ぐのが重要です。
適正な空気圧は普通車の中でも車種により異なりますが、適正な空気圧より低い状態だとショルダー部分が、高い状態だとトレッドのセンターが消耗しやすくなります。
そこで、空気圧の点検を行います。一般的にはドアか給油口の蓋裏側にフロント、リア両方の適切な空気圧がkPa単位で表記されていますので、月に一度はこれを点検しましょう。
車がどれだけ高性能であったとしても、タイヤが無ければ走る事は出来ませんし、健康な状態でない場合事故を起こす可能性を高めてしまいます。スリップサインやその他の交換の目安、そして寿命を延ばす方法を知り、安全な走行を心がけましょう。