自動車、バイク等を運転する上で、ブレーキは無くてはならない機能の1つです。このブレーキを作動させるには、ブレーキフルードと呼ばれるオイルが用いられており、これは定期的に交換が必要なのです。そこで、今回はこのブレーキフルードの役割や、交換時期の目安等を解説します。
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車やバイクには必ず搭載されているブレーキという機能は、どうやって作動しているかご存知でしょうか?車ならブレーキペダルを、バイクならブレーキレバーやリアブレーキを踏んだ際、速度は段々と低下していきます。
このペダルやレバーを踏んだり握った時、自動車などの中ではオイルが押し出され、それがブレーキパッドを押し出してブレーキディスクローターを挟み、摩擦の力によって減衰させています。こうした形のブレーキを「油圧ブレーキ」と言い、此処で使われるオイルがブレーキフルードなのです。
オイルというと、車には他にもエンジンオイル等別のオイルが用いられていますが、一般的な自動車に用いられるブレーキフルードは「ポリエチレングリコール」と呼ばれる成分を主に含んでいます。
この成分は、油よりもアルコールに近いとされており、ブレーキフルードが求める「粘度が低くさらさらしている」、「圧力を加えても体積の変化は小さい」等といった性質に合致しています。
ブレーキフルードは、DOT規格と呼ばれる検査を受けています。この規格は、ブレーキフルードの性能を測定しているもので、規格の中ではブレーキフルードがどれだけ沸騰しにくいかが測定されています。
規格はいくつかに分類され、例えば「DOT3」なら主成分はグリコール、ドライ沸点205℃以上、ウェット沸点140℃以上で、「DOT4」の場合主成分は同じくグリコール、ドライ沸点230℃以上、ウェット沸点155℃以上です。
そんなブレーキフルードを交換しなければならないのには、いくつかの理由があります。まず1つ目は、オイル自体が漏れてしまう為です。フルードの成分の中に「ポリグリコールエーテル」がありますが、周囲の水分を吸収する性質を持っています。
ブレーキフルードの含む水分量が増えると、キャリパー等のシステムに錆ができやすくなり、これが広がっていくと内側から漏れ始めてしまいます。漏れだしたから直ちにブレーキが効かなくなりはしませんが、放っておくと正常にブレーキを作動させられなくなります。
べーパーロック現象という名前は、自動車教習所の座学で聞いた覚えがあるかもしれません。「べーパー」というのは蒸気を意味しており、ブレーキフルードの様な液体の配管の中で発生します。
配管の中に蒸気が充満すると、液体がほとんど圧縮されずに圧力を十分に伝える事が出来なくなります。これに依り、ブレーキを踏んでも効いた感覚がほとんどなく、ブレーキオイルに不純物が混ざる事が原因と考えられています。
既に解説している通り、一般的な乗用車は油圧式と呼ばれるオイルを使った方式のブレーキ構造をしています。ブレーキパッドを使って摩擦で速度を低下させるときには、大量の摩擦熱によってブレーキフルードの温度も高まります。
本来であれば、ブレーキフルードは沸点が250℃と高い為摩擦熱への耐性は十分にあります。しかし、劣化した状態ではべーパーロック現象でも解説したように水分量が増え、沸点が100℃以上下がってブレーキをかける力が制限されてしまい、結果性能の低下を招きます。
こうした様々な理由がある為、ブレーキフルードは定期的な交換が必要なのです。その交換のタイミングについては、基本的に2年に1度ある車検の時となります。車検後に「ブレーキが効かない」となっては検査した意味がありませんから、同時に行います。
しかし、ユーザーが自ら検査をある程度行うユーザー車検などでは、交換しない場合もあります。もし車検の際に交換せず2年以上使っていたとしても、最低4年か5年以内には必ず交換をし、安全な状態にしておきましょう。
2年に一度の車検を受けていなくとも、交換をしなければならない場合もあります。交換するか否かを判断するのには、オイルの色が非常にわかりやすく、車ならボンネットを開ければブレーキフルードがある白いタンクが確認出来ます。
タンクの横に「MAX」「MIN」とあり、オイルの量がこの間に収まっているのなら適正な量が入っていると判断でき、色は新品に近いほど透明で、劣化すると茶色に近くなります。実際にオイルを見て、2年以内でも劣化が確認出来れば交換を推奨します。
自分の手でブレーキフルード交換を行う場合、リザーバータンクからブレーキパッドまで全て行って確実に交換する必要があります。ジャッキやリジットラックで車体を浮かせ、車に乗ってブレーキを踏み「エア抜き」というブレーキペダルを踏む手順を取ります。
タイヤも外し、リザーバータンクに新しいオイルを、それぞれのタイヤのブレーキパッドへもブレーキブリーダーと呼ばれるキットを用いてオイルを充填させていきます。
前述したのは方法の中の1つで、DIYでも一応オイルを交換する事は可能です。しかし、構造など知らないままに素人目で作業をしてしまうと、不具合を起こす確率の方が高いのです。特に、ABS装備車両はどうトラブルが起きるか予測できません。
それでも行う場合、ブレーキフルードの吸湿する性質を踏まえて、湿度が低めの晴れた日に行いましょう。また、車両の塗装面に付着すると奥の方まで浸透し、自分では修復できなくなる可能性もある為慎重に進めましょう。
解説している通り、知識が無いままに交換を使用とすると不具合を生じさせる可能性が高く、もし交換に失敗してしまった場合、当然ながらブレーキを効かせるシステムが正常に作動せず、ブレーキ自体使えなくなります。
加えて、エアがブレーキラインに入ってしまっていると、ABS装備車両の場合ABSが作動せず、スリップなどの危険な状態を招きかねません。多少でも自身が無い場合には、おとなしくプロの手を頼るのが最も無難です。
構造などに詳しく経験のある方であれば、ブレーキフルード交換に挑戦する事もあるでしょう。大抵の場合は交換に関してはプロの手を頼って行う事になりますが、その相場に関しては事前に知っておきたい所です。
ディーラー | 10,000円前後 |
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ガソリンスタンド | 3,000円~5,000円程度 |
カー用品総合専門店 | 3,000円~4,000円程度 |
身近なショップ | 約5,000円前後 |
ディラーのみ他と比べると交換費用が比較的高額になっていますが、これは元々の工賃が高いこと、そして扱っているオイルの性能も高いことが影響しています。その分安全性も高く、信頼がおけるといえます。
かと言って、他の交換できる場所が品質が低いというわけではありません。例えばガソリンスタンドなどは給油のついでに「そろそろ交換時期か」と思えばついでに換えられますし、カー用品店やショップは非常に身近で気軽に交換を依頼できます。
ブレーキフルードの容量は、車種によって異なります。特に、トラックなどを始めとした大型の車両の場合、車体が大きく制動力も一般的な自動車以上に必要となる為、より多くのブレーキオイルを必要とします。
容量で言うと大抵2リットル程度は必要で、普通の乗用車が800~1,000mlである為2倍かそれ以上を毎度交換します。故に、トラックだと10,000円や20,000円ほど費用が必要となります。
通常の自家用車等であれば前述した費用の範疇に大体は収まりますが、スポーツ走行を想定した所謂スポーツカー、そして排気量が大きな車両の場合など、大型でなくとも車種によっては10,000円程度必要にもなる模様です。
エンジンオイルなどと同じく、ブレーキフルードも車の運転に於いて欠かす事は出来ない物の1つである事がお分かりいただけたでしょう。基本は車検を受けるごとの交換になりますが、気づかぬうちに漏れたり、劣化していたりするケースもあります。
交換の頻度こそ、それほど多くはありませんが、ブレーキというシステムを作動させるうえで重要な部品である事は間違いありません。状態に常に気を遣い、安全な走行を心がけて下さい。