車でもバイクでも、ブレーキは無くてはならない機能の1つです。しかし、ブレーキを利かせた時に「キー」「ゴー」といった異音が発生してしまう場合があり、何らかのトラブルが起きているのではというケースも珍しくありません。今回は、そんなブレーキから来る異音の原因、対処法を解説します。
まずは、ブレーキがどのようにして作動しているのかと言う、システムを知る事から始めましょう。大きく分けて2つのタイプに分けられ、その1つがディスクブレーキです。このタイプは、一言で言えば摩擦を生じさせることで速度を減衰させています。
ディスクブレーキのタイプの車、バイクには、タイヤを本体に取り付けている「ハブ」と呼ばれる部分に、金属のディスクローターという部品が付属しています。そして、周辺にはブレーキキャリパーと実際に摩擦を発生させるブレーキパッドも存在します。
ブレーキペダルを踏んだりブレーキレバーを握ると、その分オイルが押し出され、繋がっているブレーキパッドがディスクローターに接触します。接触すれば摩擦が発生し、これを利かせる事で段々と速度を落とせるのです。
もう1つが、ドラムブレーキと呼ばれるタイプです。速度を落とす際の原理はディスクブレーキと同じく摩擦を利用しており、タイヤと一緒に回転しているブレーキドラムの内側部分にブレーキシューを押し付け、その摩擦に依って速度が落ちます。
ブレーキとしての制動力に関しては、ディスクブレーキと差はありません。どちらかというとドラムブレーキの方が構造自体は簡易的である為、生産するコストも低くなるというメリットも持っています。
しかし、ディスクローターが外に出ているディスクブレーキとは異なり、密閉された内側に存在している為、水は入りにくいので錆びにくくはありますが、反面ブレーキをかけた時に生じる摩擦熱の放出効率が悪く、使うごとに性能は低下します。
では、なぜブレーキから異音が発生するのかの原因を探りましょう。まず考えられるのは、ブレーキパッドが消耗してしまっている事です。ディスクブレーキに使われるブレーキパッドは、ディスクローターに接触する事で摩擦を発生し減速させます。
ローターとパッドのどちらが硬いかと言えば、当然ディスクローターの方が金属製で硬く、パッドはどんどん削れて行きます。そうしてパッドが減っていくと、パッドウェアインジケーターというパーツがローターに接触し出します。
この場合、「キィー」と甲高い異音が発生し、構造にトラブルが生じているというよりもブレーキパッドが消耗している事を知らせています。一応ブレーキは利きはしますが、早急に新しいパッドを取り付けましょう。
例えブレーキパッドが十分残っている状態でも、異音が発生するケースがあります。この場合はインジケーターが接触している事は考えにくく、減速する際の摩擦によって振動音が起きている可能性があります。
ローターは回転しており、パッドは勿論停止している為、これらが接触すれば当然ながら振動が発生します。通常ならば、これらの振動はローターやパッドの摩擦面が吸収するため、異音が聞こえる事はありません。
しかし、そのどちらか何らかの問題が見られる場合には、周辺のキャリパーやサスペンション等の部品へと振動が伝わり、音へと増幅されて聞こえて来ます。「キィィィ」という不快な音に聞こえる場合があります。
こちらもディスクブレーキタイプで考えられる原因ですが、ブレーキディスクの錆が要因である事もあります。ディスクローターは金属でできており、摩擦熱を放出するため常に外部にさらされている状態です。この為雨水の影響を受けやすく、長らく屋外に放置していれば錆が進みます。
パッドが正常でも、ディスクローターが錆びたままでブレーキをかけると「コー」と擦れた様な音が聞こえる様になります。また、逆にローターは錆びておらず、パッドが古い状態のものだった場合、摩擦材がローター表面につき、振動音を起こします。
ローターの摩擦とは、ディスクローター側に何かしらのトラブルが起きているせいで異音を起こしているという原因です。この場合考えられるのは、前述したローター自体の錆付きの他、パッドが古いせいで摩擦材が融着しているなどです。
あまり車に乗っていないけれど擦れたような音が聞こえるのならば、錆付きを疑った方が良いでしょう。特に冬場の寒い時期、乗り出し始めには金属同士が摩耗し、ブレーキ鳴きが起こりやすい傾向にあるとされています。
原因が分かったのであれば、対処法を実践していけば異音を解決できます。まず、ブレーキパッドが消耗してインジケーターが接触しているのが要因だった場合は、単純にブレーキパッドを新しいものへ交換してあげます。
パッドが減少してしまっていたとしても、直ぐにブレーキが利かなくなるわけではありませんが、本来必要な分よりも少なくなっていては安心できません。残量が1mm以下になると影響が出るとも言われていますので、早急に取り換えましょう。
パッドは消耗しておらず、摩擦に依って異音が発生している場合には、ブレーキパッドの面取りをしたり、グリスアップをするのが対処法となります。直ぐにブレーキ鳴りを止めさせたいのであれば、ブレーキパッド用の鳴き防止剤やグリスがおすすめです。
これらを使えば、応急処置的にではありますが一時的に嫌な音が響くのを防止してくれます。大抵500円程度で入手できます。但し、あくまで一時的に止めているだけで根本的な解決に繋げなければなりませんので、その後はプロの手を頼りましょう。
長らく外に放置された状態でブレーキディスクが錆びてしまっているのが要因であるのなら、ブレーキディスク自体変えれば良いと思われるかもしれませんが、実は通常の走行をしてブレーキを利かせれば、摩擦効果で錆を落とせます。
又は、業者の手を頼って表面の研磨をし、錆を取り除くという方法もあります。この整備に関しては国からの認証を受けている工場のみ行え、DIYでは事故につながる恐れがある為決してやらない様にしましょう。
ローターの摩擦が原因ならば、これもパッドの面取りをしたり、グリスを使ってあげる事で解決に繋げられるでしょう。錆付いたディスクが摩擦で異音を起こしているのなら、前述したように普通に走ってブレーキを使えばやがては聞こえなくなります。
もしもブレーキパッドとディスクローターの摩擦面にトラブルが起きている場合には、グリスなどでは解決できない為表面研磨等をする必要があります。このケースでも、錆付きの時と同じく認可を受けた業者の手を頼るようにしましょう。
パッドが降る蹴れば交換する様に、ローターも新品へ交換できます。実際にブレーキディスクローターの交換を行っている動画があり、セルフでタイヤやパッド等全て取り外して新しいローターに組み替え取り付け作業をしています。
こうした作業はディーラーや専門店など技術者に頼る必要のある事と思われているかもしれませんが、知識と工具を揃えればセルフでも交換が可能です。実践してみたい方は、動画を参考にしながら交換に挑戦してみて下さい。
ブレーキの異音が訴訟に発展した例もあります。京都市のバスの運転手をしていた男性が、ブレーキをかけた際に鳴きが起きるバスには恐怖を感じるとして、市側に該当する車両を運転させない様に提訴したというものです。
この訴訟では「点検と整備をした上でブレーキに問題が無いのであれば、制動力に関連しない」として取り下げられる結果に終わっています。非常に大きな問題になった訳ではありませんが、それだけ鳴きが気になる方もいるのです。
異音が聞こえる際にも様々な音がしますが、甲高い音ならパッドの消耗や振動音、こすれる様な音ならローターの錆付きという様に、ある程度は音に依ってその原因も絞る事が出来ます。
トラブルが起きたら直ぐにブレーキが利かなくなる訳では無く、一応は減速も出来ます。しかし、音が鳴る状態で放置しておいても良い事は無く、いずれ制動力が落ちてしまいます。必ず異音が聞こえて来たら、原因の究明と対策を取りましょう。