家具を滑りやすくするなど幅広い用途で使われているシリコンスプレーですが、鍵穴に使ってはいけないことを知らない方も多いのではないでしょうか。今回は鍵穴にシリコンスプレーを使ってはいけない理由を解説します。正しい鍵穴のメンテナンスの方法や、おすすめの鍵用専用スプレーもご紹介しますので参考にしてみてください。
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シリコンスプレーとは、対象物に合成樹脂(シリコーン)を吹きつけてコーティングすることができるスプレーです。滑りにくくなった家具などにシリコンスプレーを吹きつけると、潤滑性が向上してスムーズに開閉できるようになります。さらに水をはじく性質があり、耐熱性・耐油性が高いため、幅広い用途に使用可能です。
シリコンスプレーには無溶剤と石油系溶剤の2種類があり、無溶剤は木材・紙類・ゴム・プラスチックに吹きつけても変質する恐れがありません。石油系溶剤は高い浸透性があり、狭い隙間にも吹きつけ可能ですが、樹脂や化学繊維などの素材は石油に溶けてしまうことがあるため、使用する前に製品の注意書きをよく確認しましょう。
シリコンスプレーは、タンスの引き出しや引き戸のレールに吹きつけるとシリコーンの膜ができて滑りやすくなります。サビが原因で動きが悪くなった道具にも使用でき、ハサミにシリコーンスプレーを使うと、摩擦が減って刃の動きが滑らかになり、切れ味が回復するでしょう。
さらに、シリコンスプレーには防水・撥水効果もあり、スニーカーやレインコートに噴射すると防水スプレーのように水をはじくことができます。他には、車やバイクのボディにツヤを出すこともでき、幅広い用途に使用できます。
家具や道具の滑りを良くしたいときや、鍵穴が回らないときにシリコンスプレーを使用したという人も多いでしょう。しかし、鍵穴にシリコンスプレーが使えないことはあまり知られていないのではないでしょうか。ここでは、鍵穴にシリコンスプレーを使うとどうなるのか、なぜ使ってはいけないのかを解説します。
シリコンスプレーには潤滑剤の機能があるため、鍵穴の滑りにくさを改善できます。しかし、鍵穴へシリコンスプレーを噴射すると故障の原因になるので使ってはいけません。
シリコンスプレーは主成分にシリコーンオイルを使用しており、鍵穴に吹きつけると内部に油の膜が作られます。油の膜にはゴミや汚れなどの異物が付きやすく、動作不良が起きやすくなり、一度は症状が改善しても、繰り返し使用すると故障のリスクが高くなるためシリコンスプレーを使うのは避けましょう。
ネット上には、シリコンスプレーを鍵穴に吹きつけてしまい、鍵が開けられなくなった経験をした方の体験談がいくつか見られます。茨城県のあるマンションでは、鍵を開けられずに困った住人が鍵屋を呼んでみると、扉の鍵穴にベトベトの油が付着しているのが見つかりました。
住人には身に覚えがなかったものの、調べてみるとマンションの管理人が数日前にシリコンスプレーを鍵穴にさしていたことがわかり、このマンションでは鍵穴のトラブルが同じ日に3件あったとのことです。
家具や道具に吹きつけるだけで滑りが良くなる便利なシリコンスプレーですが、鍵穴に噴射するとゴミやホコリが詰まって鍵が開かなくなることがあります。
それでは、鍵穴にシリコンスプレーを噴射して鍵が開かなくなったときはどうすればよいのでしょうか。ここではトラブルが起きた場合の対処方法をご紹介します。
シリコンスプレーの噴射が原因で鍵穴が回らなくなったときは、パーツクリーナーで掃除しましょう。パーツクリーナーは金属に付いた油汚れを効果的に洗浄できるスプレーで、ホームセンターなどで購入できます。パーツクリーナーで鍵穴に付いた油汚れを洗浄することで鍵が回るようになりますが、シリンダーの回転を滑らかにする成分も落としてしまう点に注意が必要です。
洗浄してもシリンダー内の油汚れは残っているので、日を改めて鍵の修理業者に依頼して、シリンダーを分解洗浄してもらうとよいでしょう。また、パーツクリーナーを吹きつけると扉の塗装などが剥げることがあるため、使用後は忘れずに布で拭き取っておきましょう。
鍵穴の内部に金属のくずやホコリが詰まって鍵が差しにくいときは、シリンダーの分解洗浄するとよいでしょう。まず初めに、扉から取り外したシリンダーを分解し、内部に溜まった汚れやホコリをパーツクリーナーで洗浄します。
汚れを全て落とし終わったら、シリンダーを乾燥させて鍵穴専用の潤滑剤を塗布して元の形に組み上げて作業完了です。シリンダー内の汚れを放置すると、鍵が抜けなくなることもあるので早めに処置することをおすすめします。
シリコンスプレーを使っていけないのであれば、どのような道具を使えばよいのでしょうか。ここでは、鍵穴に使える専用スプレーをご紹介します。
鍵穴が回しにくいときは、ドア鍵の製造メーカーが販売している鍵穴専用のスプレーを使うのがおすすめです。自宅のドア鍵に対応している専用スプレーが販売されている場合は、その製品を購入すると故障の心配がありません。
鍵の製造元メーカーが販売している鍵穴専用スプレーは、ホームセンターやAmazon・楽天などのネット通販サイトで購入できます。一口に鍵穴専用スプレーといっても様々な製品が販売されているので、ここからはおすすめの専用スプレーをご紹介します。
カバクリーナーは、70年以上に渡りセキュリティー性の高いシリンダーを開発してきたスイスのカバ社が販売する鍵穴専用スプレーです。カバスター、美和ロックのJNシリンダーに対応しています。鍵の抜き差しがしにくいときや、鍵穴の回りが悪いときにこちらの専用スプレーを吹きつけると潤滑性が向上して症状を解消することができます。揮発性が高く、油のようなべたつきがないため鍵穴に噴射してもホコリが付きにくいのが特徴です。
使用方法は、鍵穴にカバクリーナーを吹きつけた後、鍵の抜き差しを数回繰り返してクリーナーの成分を鍵穴になじませます。洗浄後は鍵に汚れやクリーナーの成分が付着するので、乾いた布でふき取りましょう。
日本を代表する鍵製造メーカーである美和ロックの鍵穴専用スプレーです。鍵にMIWAのブランド名が刻まれている鍵穴に使用できます。スプレーすると白い粉末のような潤滑剤が噴射され、鍵の抜き差しや、シリンダーの回転が悪いといった症状を解消します。
潤滑性が高い成分がシリンダー内部を保護してくれるため、鍵穴の動きが滑らかになって鍵やシリンダーの摩耗を防いでくれます。蝶番やねじナットなどにも使用可能で、ドア回りのお手入れがこれ1つで済む便利アイテムです。
日本で初めてシリンダー錠を開発したGOAL社の鍵穴用潤滑スプレーです。フッ素樹脂が配合されており、鍵穴の動作や鍵の出し入れをスムーズにしてくれます。
内容量が70mlと多いため、定期的に鍵穴のメンテナンスをしてもすぐに使い切る心配がありません。自宅の鍵がGOAL社製の場合はこちらの鍵穴専用スプレーがおすすめです。
鍵用専用スプレーの使用には注意しなければならないことがいくつかあります。安全にメンテナンスをするために、次の3つのポイントを守りましょう。
専用スプレーを使う前に、シリンダー内部のゴミやホコリを掃除機で吸い出すとスプレーの洗浄効果をさらに高めることができます。掃除機を使うときのポイントは、ノズルの先端を鍵穴に密着させながら左右に動かすと簡単にゴミを吸い出すことができます。掃除機の代わりに、パソコンのキーボードを掃除するときに使うエアダスターでゴミを吹き飛ばすのも効果的です。
鍵穴の掃除には専用のスプレー以外は使わないようにしましょう。シリコンスプレーやCRCのような一般的な潤滑剤を使用すると、潤滑剤に含まれるオイルにホコリや汚れが付着してシリンダーが動作不良を起こす原因になります。専用スプレーは鍵穴の動作を滑らかに改善しつつ汚れも洗浄してくれるため、シリンダーが故障するリスクはありません。
鍵用専用スプレーは粉末状のため、一般的な潤滑剤やオイルと異なりホコリが付着しにくいです。しかし、鍵穴の内部に水が入ると、水分とホコリが結びついてシリンダーの動作を阻害してしまいます。
鍵用専用スプレーを使うときは、鍵穴の内部が乾燥した状態であることが望ましいです。雨が降っているときは湿気で鍵穴の内部にホコリが付きやすくなるため日を改めてメンテナンスしましょう。
今回は、鍵穴にシリコンスプレーを使ってはいけない理由を解説しましたが、お分かりいただけたでしょうか。家具の滑りを良くするだけでなく、防水・撥水や車やバイクのツヤ出しにも使えるシリコンスプレーですが、鍵穴に使用すると故障の原因になってしまいます。
鍵穴のメンテナンスには鍵メーカーが販売する専用のスプレーを使うことで、動作不良などのトラブルを予防することができます。鍵やシリンダーの摩耗を抑えて長持ちさせることもできるので、鍵用専用スプレーを1本備えておくと便利でしょう。