マイホームを購入、というと早くても経済的に余裕の出てくる40代くらいからと思われがちですが、20代からでも購入は決して不可能ではありません。頭金がなくとも購入は進められるのか、ローンの返済は無理なく行えるのかなど、20代でのマイホーム購入について徹底解説します。
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住宅金融支援機構のフラット35利用者調査データによれば、30代未満の方の割合は約14%ほどと決して多くはありませんが、一定数は存在します。
早くしてマイホーム購入を決めた理由としては、結婚し子供ができて家族が増えた、マンションの家賃とローンの返済額に大きな差がなかったといったものが挙げられました。後ほどご紹介するメリット、デメリットを知り、前向きに検討してみてもよいでしょう。
割合としてそこまで多くはないとしても、20代で自分の家を購入した方は決してゼロではないことがわかりました。では、マイホーム購入に必要な資金はどの程度必要なのでしょうか。
家を買う、となると一番気になるのが、住宅本体の価格でしょう。確かにそれが一番大きくお金のかかるものではありますが、住宅購入にあたっては住宅本体だけではなく、購入に際しての諸費用も必ず必要になります。
のちに詳しく解説する項目にもありますが、例えば物件価格の一部を契約した証拠として支払う頭金、売買契約書に印紙を貼る際に必要な印紙税、登記を司法書士に依頼する場合の報酬などを含めた登記費用など様々です。
この諸費用、諸経費の目安としては、注文住宅や新築のマンションの場合には物件価格の3~6%程度、中古住宅や新築一戸建ての住宅の場合、6~9%に収まるといわれています。新築一戸建てで3,000万円の物件なら、180~270万円程です。
購入前にも前述した頭金をはじめとするお金が入り用になるわけですが、もちろん購入した後も継続的に費用が必要になります。その最たるものが住宅ローンの返済で、家の購入後、金利を乗せた残り額を支払い終えるまで毎月払い続けます。
最も長い住宅ローンの返済期間は35年までと上限が設定されており、この期間内で自分のライフスタイルに合った返済期間を設定します。住まいを維持、管理するための費用も必要で、マイホームの場合には固定資産税と都市計画税が課されます。
また、一戸建てであってもマンションのように修繕積立金が長い目で見れば必要になることは大いにあり得ます。特にキッチンをはじめとした水回りは数百万円の費用が普通にかかりますから、普段から貯蓄に回しておくのも大切なのです。
家の購入前、購入後で異なる資金が必要になるために、実際に家を買うのを検討している際には、事前に綿密な資金計画をしておくことが非常に大切なのです。続いて、具体的なマイホーム購入に際する資金繰りの仕方を解説します。
まずは頭金です。前述したとおり、マイホームを購入する際には大抵の場合頭金を支払うケースが多く、最も多いのが住宅価格の1割から2割を最初に支払うものです。ただし、最低限これだけは支払わなければならない、という決まりはありません。
事実、20代で実際に家を購入された方たちの中でも、頭金を用意しなかったという方は約半数に上っています。ちなみに、頭金を用意した方の中で最も多かったのが、100万円以上300万円未満の方でした。頭金は、絶対に支払わなければならないという決まりもないのです。
その分、購入後に月々支払う住宅ローンの返済額は金利が上乗せされますから、払わないのと比べると些か負担は増しますが、昨今は金利が低いことも相まって賃貸の家賃とほぼ同額という例も少なくありませんから、事前にしっかり計算してみましょう。
続いて、住宅ローンです。晴れてマイホームが手に入り、ローンを組んでの購入となるケースが非常に多いですが、マイホームとなった後の主たる費用が月々のローン返済となります。
2018年に行われた民間の住宅ローン利用者への調査によれば、最もローンを組んでいる割合が多かったのが30代、次いで40代、20代と続いており、20代は全体の15%であり、住宅ローンを組んだうちの10人に1人は20代ということになります。
借入限度額は年収によって上限が定められています。この後に、年収によっての借入金額の目安やローンシミュレーションサイトを紹介しているので、参考にしてみて下さい。自分が借り入れ可能な金額の目安が分かれば、無理のない範囲内で購入可能な家の価格帯と、その後の長期的な費用が計算できるでしょう。
20代でマイホームを購入されている方も、ローンを組まれている方も、全体から見れば決して多くは無いにしても、一定数は必ず居ることがわかりました。では、ほぼ確実に組むであろう住宅ローンの借入額はどの程度までなのでしょうか。
気になるその目安についてですが、一般的には年収の約5倍から6倍、多くても7倍程度であるといわれています。共働きでも、2人の合計の家族年収の5~6倍とされていますので、例えば年収が300万円であれば、1,500~1800万円程度が適正な借入額となります。
ご自身、ないし家族年収がどの程度なのかが分からない場合には、年末に勤め先から受け取れる源泉徴収票を確認してみましょう。いくつか項目がありますが「支払金額」の欄の額が自分の年収となります。ちなみに、ローン審査の際にもこの徴収票が必要です。
ただし、家を購入する際は、大半の方がローンを組んでの支払いになりますから、借入の限度額ももちろん頭に入れておきたいことではあるでしょうが、無理なくローンの返済が可能かどうかのほうが重要視されます。
年収が分かれば大体の住宅ローンの借入額の適正数値が見えてくるわけですが、年収によって借り入れ可能なローンの限度額が定められています。返済期間35年と仮定して、借入可能限度額と月々の返済額を見てみましょう。
年収 | 借入可能限度額 | 月返済額 |
---|---|---|
300万円 | 2,509万円 | 75,000円 |
350万円 | 2,927万円 | 87,500円 |
400万円 | 3,903万円 | 116,666円 |
450万円 | 4,391万円 | 131,250円 |
500万円 | 4,879万円 | 145,833円 |
550万円 | 5,367万円 | 145,833円 |
600万円 | 5,854万円 | 175,000円 |
このように、自分の現在の年収が分かれば、借入はどの程度が無理のない範囲内になるのか、そして実際問題どれくらいまで借り入れが可能なのかが分かります。金利の設定によって違いは出てきますが、1つの目安には間違いなくなるでしょう。
ただ、いくら借入額の目安などが分かったとしても、おおざっぱな金額でもあり、金利の違いもあるので、もっと細かく知りたい場合には住宅保険機構のローンシュミレーションサイトを活用してみてください。
このシュミレーションサイトでは、金利タイプ、当初金利などの一定の返済条件を入力し、総返済額や毎月の返済額などが分かる返済額の試算をはじめとして、年収から借入可能額の試算等が行えます。より細かく事前の想定をしてみたいときには非常に有用となるはずです。
比較的年収の少なめな20代では、表の中の借入限度額でもわかる通り、借りられる額がそこまで多くありません。そんな中、早期にマイホームを入手することにはどんなメリットがあるのでしょうか。いくつかの利点をご紹介します。
まず1つは、住宅ローンの月々の返済額が少なく、長期的な負担が軽いということが挙げられます。住宅ローンは年齢を重ねるほど返済の期間が短く、1月分の返済額も多くなるものですが、20代からなら負担は少なく済みます。
例えば、同じ住宅購入のために2,000万円のローンを借りた20代の方と40代の方がいた場合、20代の方なら最長の35年ローンを組んだとしても定年前に完済でき、月48,000円プラス金利となりますが、40代の方は最長でも20年、月67,000円と2万円近く多いです。
住宅ローンに限らず、ローンは長期で借りるほうが金利は多くなり、総額は多くなります。しかし、40代となると子供の養育費など出費も多くなりますから、夢があるなら早めにローンを組んでおいても決して悪いことではないのです。
続いて、20代という早期に不動産を取得できることが挙げられます。実際に20代でマイホームを購入し、スムーズにローンの返済を行うことさえできたのならば、同じ額の住宅でも30代で購入した時と比較しても早くにマイホームという自分の持つ不動産が手に入るのです。
マンション、アパートなどの賃貸物件に住まわれている場合、月々の家賃を支払わなければなりませんが、それでその部屋が自分の不動産になるということはありません。ですが、一戸建てという不動産を購入し、ローンさえ払えるのなら、財産として手元に残せるのです。
住宅の購入にあたっては、団体信用生命保険という保険への加入が行えます。これは債権者、つまりローンを支払う者が亡くなったり、高度障害を患ってしまったという場合にも、本人に代わって生命保険会社が残りのローンを支払ってくれるというものです。
自分の身にこれから先何も起こらないなどとは誰も言い切れませんし、長いローン返済にもなりますから、住宅の購入にあたってこの保険への加入はとても大切です。20代の方は、この団体信用生命保険への加入がしやすいのです。
20代という若く健康なうちであれば、高度障害などを患う確率が低いために、保険への加入のハードルが低くなっているというわけです。購入した後のことを考えれば、これは大きなメリットになるでしょう。
まだ年収が低いであろ20代でのマイホーム購入にもこれだけのメリットが存在しており、現実問題としてそこまで難しい話ではないということがお分かりいただけたでしょう。勿論、早期に購入することのデメリットもありますので、その点も押さえておきましょう。
まず1つは、住宅ローンの借り入れできる限度額が低い可能性があるという点です。すでに解説していますが、ローンで借りることのできる限度額というのは年収によって定められており、現在の年収が多ければ多いほど、借りられる額も多くなります。
逆に20代で割合が多い年収が低い方だと、ローンを組むこと自体はできても安定した支払い能力があるかどうかに関しては不安が残るため、どうしても可能額が低くなってしまいがちなのです。故に、購入できる物件の選択肢も限られてくるというわけです。
ライフスタイルの変化によって、ローン返済の負担が重くなる可能性もあります。現在20代で単身の方がマイホームを購入したとしても、その後結婚して子供ができるなど家族が増えた場合、住宅費以外の生活費も必然的に多くなり、返済がきつくなるのです。
食費、光熱費、子供の養育費など、家族を持てば様々な費用がかかる事になります。それらは当然ながら独り身の時よりも負担が大きくなり、将来を見据えないままにローンを借りると、想像以上にその他の負担が大きく、その後の返済が大きな負担になってしまいます。
月々のローンの返済額としては負担が少ないものの、先の将来ではそれが大きくなるとも限りませんので、十分に最初にイメージをしておくことが大切です。最後に、マイホームを購入するのに注意しておきたいことも解説します。
1つは、結婚相手との離婚をしてしまう場合です。もし離婚をすることになるのならば、財産分与を考える必要が出てきます。マイホームの場合、購入する際に夫婦2人の共有名義だとしたら、どちらか一方に登記をし直す必要が出てきます。
加えて、ローンの支払いについてもペアローンで続けてきていた場合、借り換えの手続等今後どのようにして支払うかも考慮しなければならず、自分の負担が一気に増えることも十分に考えられます。
もう1つが、勤め先が変わってしまう場合です。会社に勤められていたり、学校の教師などをされている方は職業柄、転勤することもあります。せっかく購入しても家を手放すケースもありますから、売却する可能性もあると購入時に考えて、立地などを決めても良いかもしれません。
本当にできるのかどうか不安になりがちな20代でのマイホーム購入ですが、ローンの額などを考えれば十分に現実的に可能な範囲です。先が長いですから、最初に様々な想定をして公開のないマイホーム購入を目指しましょう。