屋根やベランダに溜まった雨水を流すために家屋に付いている雨樋は、普段何気なく見ているので詳しい役割等を知らない方もいるかもしれません。そんな雨樋の基礎知識から、もしも雨樋が壊れてしまった時に、DIYで修理できるのかまで詳しく解説いたします。雨どいが壊れる原因も取り上げていますので、破損防止の為にも一読ください。
雨樋とは、屋根やベランダ、屋上などに溜まった雨水を集めて外に流す為の筒状の建材を言います。最近の雨樋の主流はプラスチック(塩ビ)製となっていますが、昔は鉄や木製の物もありました。また西洋のガーゴイルも大まかに分ければ雨樋の一種になります。
雨樋は建物の端や軒下に設置する為、あまり目立ちませんが、雨の多い日本においては大変重要な建材です。雨樋がなければ、屋根や屋上に溜まった水がそのまま大量に下に流れ落ち騒音の原因になりますし、木造住宅なら建物の腐食にも繋がります。また水たまりや水による浸食で庭などに溝が出来る場合もあります。
雨樋があれば、これらの不具合は起こらないので、雨樋がどれだけ建物において重要かが分かるのではないでしょうか。
雨樋があると建物の土台や外壁が傷んで受ける劣化やダメージを防いでくれます。例えば、土台や外壁にひび割れがあれば、そこから雨水が染み込んで雨水が浸水してくる事があります。
また地面の排水機能が十分でないと、建物の土台下は常にじめじめと湿気過多な状態になります。こうなると外壁にはカビや苔が生え、木材が腐食し白アリの巣になってしまいます。
また雨樋がない場合、屋上と外壁の継ぎ目はむき出しになっている場合が多く、そこから雨漏りする危険性が高くなるとも言われています。雨樋は、これらのトラブルやダメージから建物を守ってくれるメリットがあります。
雨樋と一言で言っても、取り付けられている場所によって異なる形状や、素材によっていくつかの種類がありますので解説いたします。
雨樋を形状で分類すると、大きく分けて4つに分かれます。まず一つ目が半円形です。築20年以上の建築物の雨樋はほぼこの形状なので、よく見かける形の一つかと思われます。形状が単純なのと安価な為、現在一番ポピュラーな雨樋の形です。
少し新しい建築物になると、角型の雨樋が設置されている場合もあります。流水量が半円形に比べ多い為、設置する家屋が増えてきています。また近年問題になっているゲリラ豪雨に対処する為、片側がせりあがった形状のものもあります。
少し変わった形状のものに「リバーシブル」があります。前面は半円形ですが後面は角型になっており、どちらも背面にする事が出来るので、建築物に合わせて見た目を選べます。
純日本家屋などに取り付ける為、形は丸どいにしたいが排水量は増やしたい時に使われる事が多いようです。また丸どい・角どいどちらにも流用できるため、在庫をかかえやすく、職人の方達にはありがたい形状となっていますが、お値段は少々高くなります。
他に雪が多い地方特有の特殊型もあります。これは雪かきをした時に、雨樋を傷つけないよう雪が滑り落ちる形態になっています。構造が複雑な分、値段も高額になります。
雨樋の素材には様々なものが使われています。一覧にまとめると下記のようになります。
雨樋が壊れるのには様々な原因があります。よく見受けられる原因と修理方法を解説いたします。
雨樋には、いつの間にかビニールや鳥の巣材、藁や落ち葉、漆喰などがゴミとして溜まってしまいます。このゴミが増えてしまうと雨樋が詰まり、雨水が流れずに溢れてしまいます。
大量の雨が降った時に、集水器から水が溢れているようならゴミが詰まっている可能性が高いので、専門業者に修理や清掃を頼みましょう。ゴミ詰まりで雨樋に穴が開く事もあるので放置は危険です。
雨樋の耐用年数は一般的に20年前後と言われています。ただし、ビル風等の強い風が吹く住宅街に建っている建物の雨樋や、台風の多い地域の雨樋はそれよりも耐用年数が落ちてしまいます。雨樋が外れたり穴が開くと、そこから雨漏りや浸水、腐食やカビなどの家屋へのダメージが広がるので、早めの交換を心がけましょう。
雨樋は集水器に水が流れるように、わざと傾けて付けられています。この傾斜角度が正しくないと、雨水がうまく流れず溢れてしまいます。原因は雨樋を支えている金具の歪みやゆるみな事が多く、金具を一つずつ、はしごを使って点検していく必要が出てきます。力任せに直そうとすると金具が壊れる事もあるので、専門の業者に点検を頼みましょう。
いきなり破損するケースは、やはり台風や大雪が原因な事が多いでしょう。最近は元々雪の多かった地方だけでなく、関東でもいきなりの大雪や、台風に直撃される事の少なかった地方に台風が上陸する事があります。
激しい突風や積雪で破損した雨樋は、火災保険で修理費用を賄えることがありますので、修理する前に入っている火災保険の約款を見直してみるようおすすめします。なお、積雪や雨風による雨樋の破損は、圧倒的に上層階より1階が被害に合う事が多いのが特徴です。
突風や地震で雨樋の継ぎ手が外れてしまう事があります。他にも継ぎ手は経年劣化でもずれたり、隙間ができる場合があります。継ぎ手が外れるとそこから水漏れしてしまうので、接着剤で修理します。業者に頼んでも数千円で済みますが、こちらならDIYでも修理が可能でしょう。
もしも建物の屋根に瓦を使っているなら、瓦のかけらが雨樋に溜まってしまう事があります。瓦はかけらでも、結構重たいので、重さに雨樋が耐えきれず、たわんだり壊れる事があります。瓦屋根の方は台風や突風の後、瓦が欠けていないかチェックする事をおすすめします。
雨樋が原因で起こる建造物の不具合にはどのようなものがあるのでしょうか。特に起こる可能性の高いものを3点解説いたします。
屋根材の下には一般的には防水性の高い建材が敷かれていて、雨樋が壊れたことで雨水が屋根の下に浸水したとしても、すぐに雨漏りになる事はありません。しかし施工不良で屋根材の下の建材の継ぎ目(この継ぎ目は必ずあるのでなくす事は出来ません)に不具合があると、その下に雨水が浸透し雨漏りを起こします。
また木造住宅の場合、雨樋が施工不良でうまく機能せず浸水すると、屋根材が腐って耐久性が損なわれる危険性があります。
雨樋に汚れが溜まってしまうと、それを養分にしてカビや苔が生えてしまいます。カビや苔が生えると悪臭が発生し、雨水も流れが悪くなります。特に雨樋の近くに木が生えていたりすると葉が溜まりやすくなり、カビや苔の養分になりますので、定期的に掃除をし、カビや苔が生えていないかチェックしましょう。
雨樋が原因で近隣とトラブルになる事例としては、まず雨樋が隣家の敷地にはみ出ているというものがあります。雨樋は屋根の先に付けるので、屋根が敷地内ギリギリまでに作られていると、敷地を超えてしまうのです。もしも敷地を超えてしまっている場合、小さめの物に交換するという手もあるので、その場合は業者に相談してみましょう。
雨樋が壊れてしまって、そこから水はねを起こし、隣家の外壁に雨水をぶつけてしまうというトラブルもあります。これはマメに雨樋を掃除、壊れていないかチェックしていれば防げる事なので、常日頃から気をつけておきましょう。
他に、雨樋が大幅に壊れ、隣家の敷地に倒れ込み、隣家の窓を割ったり外壁を傷つけるという場合もあります。こういった大きな破損は台風や積雪の後に起こりやすいので、それらの災害が発生した時は、必ず雨樋をチェックしておきましょう。常日頃からのチェック体制が近隣とのトラブルを防ぐ一番の手です。
雨樋は1階部分くらいならDIYで補修・修理が可能です。しかし雨樋の補修・修理にはルール化された作業が必要で、留め具一つとっても、知識がなければ正しく取り付ける事が出来ません。ビス止めや釘を打つ場合、釘穴等を塞ぐ工程も必要になってきます。自信がない場合は、専門業者に相談し、補修・修理してもらった方が無難です。
雨樋の補修・修理が多い地方の特徴は次の3点に要約されます。1.台風が多い、2.雪が多い、3.気温が高いです。
台風が多い地方としては、沖縄県、鹿児島県、熊本県、長崎県、宮崎県、高知県、和歌山県、愛知県、静岡県、千葉県、北海道が挙げられます。台風、大雨、強風、暴風雨、突風等で、雨樋が吹き飛んだり、壊れてしまいます。
特に台風や大雨が続く場合は、早め早めのチェックと補修・修理が必須になります。台風等の後は、必ず雨樋をチェックするようにしてください。
雪が多い地方は、北海道、青森、岩手、秋田、山形、宮城、福島、新潟、石川、富山、福井、長野、岐阜あたりになります。屋根の上に積もった雪が雨樋に溜まり、その重さで雨樋が壊れてしまいます。雪留めで雨樋に雪が溜まるのを防ぐ事が出来るので、もしも付いていないようなら業者に相談してみましょう。
気温が高い地方は、埼玉県、高知県、東京都、山形県、山梨県、岐阜県、和歌山県、群馬県、静岡県、愛知県、千葉県が挙げられます。最高気温が高くてニュース等にもなる地域ですが、そういった地域の雨樋は暑さで変形する事があります。暑い日が続いた時は雨樋が変形していないかチェックしてみましょう。
雨樋の掃除・補修・修理にかかる費用の相場は下記のようになります。
工事内容 | 費用相場 (30坪) | 期間 | 詳細 |
---|---|---|---|
雨樋の掃除 (自分で行う) | 0円 | 数時間 ~1日 | 雨樋に詰まった落ち葉や瓦の欠片、苔、泥等を取り除きます。 ※高所での作業となる為、経験のない方は危険ですので業者に頼みましょう。 |
雨樋 交換・補修 (一部) | 1〜3万円 | 数時間 〜1日 | 軒樋の一部、雨樋がひび割れを起こし、一時的に交換・補修したいなら、防水テープで補修したりコーキング材を使います。また雨樋の一部を交換します。 |
雨樋の修理 (全体) | 10〜60万円 | 1〜2日 | 雨樋の損傷や劣化が酷い場合は全体交換が必要になります。雨樋の部品代と、雨樋を交換するための足場代が必要になるので、費用も必然的に高価になります。 |
雨樋の塗装 (全体) | 5〜10万円 | 1〜2日 | 塗装された雨樋は雨水を受けやすく7~10年程で塗り替えが必要です。様々な色のバリエーション、種類があり、費用も変わります。メンテナンスサイクルに合わせ、雨樋の塗装も行いましょう。 |
DIYで雨樋を取り付けている動画です。かなりDIY慣れされている方の動画ですが、それでも初めての取り付けという事で色々とハプニングに見舞われています。ここまでの作業を行う自信のない方は、やはり業者に頼んだ方が良いでしょう。DIY慣れしているので、同じような作業が出来るという方は、ぜひ参考になさってください。
他に雨樋の修理において知っておくと良い点は、足場を組み必要があるかないかの差です。
【足場が必要】
【足場不要】
また、雨樋の支持金具は3種類あり、亜鉛メッキ製、プラスチック製、ステンレス製となっています。一番錆びにくいのはステンレス製ですが、価格は割高になります。
雨樋の修理はある基準を満たせば火災保険で修理が可能です。では、どのような条件が満たされれば火災保険が降りるのかを解説いたします。
雨樋修理・交換に火災保険が適用されるのは、雨樋が壊れた原因が災害にある場合です。具体的に挙げると、風災、雪災、雹災、地震の4点です。これは火災保険の「風災補償」「雪災補償」に該当するからです。この中に雹も含まれます。よって、暴風雨、台風、強風、落雷によって雨樋が壊れた場合も、火災保険で雨樋を治す事が出来る可能性があります。
火災保険に入っているのなら、加入保険会社のホームページや約款を確認してみましょう。(火災保険によっては、火災保険と震災保険が別になっている場合もあります)
雨樋修理や補修が出来る業者は、工務店、リフォーム店、雨樋修理専門店、塗装工事専門店、雨樋修理を請け負う個人事業者です。
ほとんどの業者が雨樋修理が出来る事が予想出来る中、塗装工事専門店が何故、雨樋修理が出来るかというと、外壁塗装と雨樋は家屋施工時に一緒に作業する事が多く、切っても切り離せないからです。外壁塗装修理をする時に、雨樋も一緒に修理してもらえると覚えておいて損はありません。
雨樋の修理・補修のDIYは素人では、なかなか難しいという事が分かりました。しかし、常日頃から雨樋に注意を向けて手入れを行っておけば、防げる破損がある事もお判りいただけた事でしょう。ついつい忘れがちな雨樋の手入れとチェックを、これからは日々のルーティーンの中に取り入れてみてください。