親族から相続するなどして、古い家を持つことになったけれど、正直使わないために持て余している状況は決して珍しくはありません。古い為に売ることも難しいのではと思われるかもしれませんが、売り方によってはそれも可能になります。そんな古い家の売り方について解説します。
親から古い家を相続しているけれど、維持費も安くはないし手放したいと考えている方もいるでしょう。日本では新築の方が人気が高く、古い家と呼ばれるほどの築年数の住宅を売ることも簡単ではありません。
その理由はいくつかあり、1つは築年数の経過による資産価値の低下です。特に売れにくいのは築年数が20年以上経過している家で、木造の住宅の場合にはどんどん資産価値が下がり、ゼロになっている家も出てくるほどです。
その原因としては、国税庁が住宅に対して定めている耐用年数によって、家の価値が決定されているというのが大きいです。鉄骨鉄筋コンクリートなら47年、れんが、石、ブロック造のものは38年、そして木造は22年と最も短いです。
もっと平たく言うと、木造の住宅の場合には築年数が11年経過している時点で家の価値は半分、そして築22年になった段階で、価値がゼロになってしまうのです。この場合、家には価格が付かず、土地の売却価格のみの取引となる事が多いです。
家の売却は土地とセットで行われますが、古い家というのは隣の家との土地の境界線があいまいになっている物件が多いです。長いこと同じ家に住んでいると、隣の家との境界線も気にせずに過ごしているからでしょう。
しかし、いざ家及び土地を売却するという段階になった時、土地の境界線での近所とのトラブルは後を絶たない状況です。その為、仮に古い家が売れたとしても、あいまいな境界線の土地と家の購入は断念する買主が多いのです。
もし境界がはっきりと定まっていない家を売りたいのならば、法務局で境界確認書、確定測量図を取得して、どこまでが自分の土地なのかを調べてみましょう。もし定まっていないのなら、測量士と隣家の立会いのもと、確定を行う必要があります。
家の建築に当たっては、必ず建築基準法にのっとって作られているのは共通しています。しかし、地震の多発する日本に置いてはその基準法の中身はたびたび改定されており、1981年以降は震度6,7の地震で倒壊しない、それ以前は震度5の揺れに耐えるという基準でした。
昨今は2011年に発生した東日本大震災、そしてそれ以降に発生した地震の影響も相まって、買い手は耐震基準をよく見る様になっています。その為、震度5までの地震に耐えるという旧耐震基準の家というのは売れにくいのです。
但し、絶対に売れないという訳では無く、古い耐震基準の家を売りたいのならば、耐震診断を受けて問題が無いことを証明すればよいのです。数万円の費用もほとんどの自治体で補助金が出されますから、一度役所で確認をしてみて下さい。
以上の理由から、古い住宅というのは売れにくい状況となっています。仮にすべて問題が無かったとしても、新築の人気が高い事も拍車をかけているといえます。では、古い家を売る為の方法にはどんなものがあるのでしょう。
まず1つは、家を土地ごとそのままの状態で売却することです。古いとは言っても、築年数が20年を超えるような家では無く、且つ傷みも少ない様な物件であれば、そのまま売却したとしても十分値が付く可能性はあるでしょう。
中古の家というのは古さに関わらず現物引き渡しでの売却となりますから、高額な初期費用を出す必要もありません。土地も一緒に売れば、より大きな利益が見込めるでしょう。但し、先に述べた通り築年数の浅さが大切で、耐用年数を超えると価値がゼロとなり、売れる可能性が大きく減ることは注意しておきましょう。
2つ目は、家自体は解体し、更地にした状態で売却をする方法です。売れにくい理由や1つ目の方法でも解説した通り、築年数の古い家というのは価値が無くなってしまっており、どちらかというと足かせにすらなってしまいます。
それは、買い主側が住める家とするべくリフォーム代などを負担しなければならず、買う側が結果的に損をしてしまうからです。その為、家が売却可能な状態では無いのならば、一度思い切って解体をし、更地にしてから売った方が、売れやすくなります。
これなら、買い主が引き渡した後のリフォーム代などを考慮する必要もありませんので、家がある状態よりも高く売れる可能性すらあります。加えて、新しい家を建てるだけではなく、様々な活用の仕方も出てきます。
3つ目は、土地の付属として古い家を付けて売却する方法です。家と土地をセットにするのではなく、あくまで土地をメインの売却対象として、家はそのおまけという位置づけにして売ると、土地が欲しいだけの方も購買対象にできます。
土地については、立地さえ好条件であれば居住用としてはもちろんの事、事業用や賃貸経営など、幅広い用途で使える様になります。また、最初から家を活用する前提では無い為に、売る際に簡易的なリフォームなどに費用を取られることもありません。
古い家の売却と言えば、不動産会社を通しての売却が主に行われていますが、その他に不動産業者が買い主となって買い取ってもらうという方法もあります。仲介を通しての売却となると、古い家は買い手を見つけるのにも時間がかかる為に、売れるとしても時間を要します。
しかし、不動産会社が買い主となって買い取ってもらう場合には、約1か月程度でお金に換えることが可能となります。業者側も家や土地の再販、及び活用を目的として買取を行いますので、仲介を通すよりも条件が悪い家を買い取ってもらえる可能性は高いですし、手数料を支払う必要もありません。
最後に、任意売却で売る方法です。これは、住宅ローンを支払えない、もしくは今は払えているけれど、今後支払い続けていくのは厳しいという状態の方が利用する売却の仕方です。売った後もローンが残る不動産を、業者が金融機関と交渉し、合意のもとで売却を認めてもらいます。
住宅ローンが滞納されているか、売却の金額よりも残っている残高ローンの額の方が大きい中で、任意売却は行われます。3~6か月ほどローンの滞納が続くと競売にかけられますが、任意売却をすればその実行を止められ、引っ越し代やリースバックで住み続ける事もできます。売却自体が認められたのであれば、その後は通常の不動産売却の手順に沿って手続きが進められます。
一般的な不動産業者を仲介しての売却の場合、まず業者に査定の依頼を出すところから始まります。仲介を依頼する不動産会社が決まれば、媒介契約を結びます。形態は色々とありますが、詳しくは後程解説します。
契約の締結後、売り主自身が売り出し価格を決めて、家を売りに出します。そして、家の購入希望者が出てくれば、購入価格や支払いの条件、引っ越し希望日の提示、交渉等が行われ、仲介業者と売り主が内覧の対応もします。
売買が成立したのなら、仲介の不動産会社に売買契約書やその他の重要事項説明書の作成をしてもらいます。買い主からの購入代金の全額の支払いを確認し、名義の変更、ができたのならば、家の売渡しは完了となります。
業者を仲介しての家や土地の売却の流れの中で解説した通り、その業者との媒介契約を結ぶ必要があります。この契約の形態が大きく分けて3種類存在しており、この契約を締結することによって、業者側はその物件や土地を売りに出せる様になります。
その1つが、「専属専任媒介契約」です。契約の名称から想像ができるかもしれませんが、これは1社の不動産とだけ契約を結び、不動産取引を行うものです。この媒介契約を結んだ場合、他の不動産会社との契約締結はできなくなります。
後にご紹介する専任媒介契約も同様に1社のみとの媒介契約の締結をするものですが、専門専任媒介契約においては契約をした不動産会社が見つけてきた買い主とだけ家や物件の売買契約を結ぶ形となっています。
それゆえに、知人や家族などの近しい間柄の方たちの間で家の売り買いをしたいという場合でも、必ず不動産会社を通してから取引を行うように義務付けられているのが、他の契約形態との最も大きな違いです。
続いては「専任媒介契約」になります。専属専任媒介契約の中で少し解説しましたが、こちらも同じように売り主が媒介契約を結べる不動産会社は1社のみで、最長の契約期間も1つ目と同じく3か月までが上限となっています。
専属専任媒介契約との違いは主に3つあり、1つは自分で見つけた買い主との取引ができる点です。その為、専属の場合には友人などでも一度会社を通して取引を行う必要がありましたが、この契約の場合にはそれは必要ありません。
2つ目は、不動産流通機構、別名レインズへの登録義務の期間についてで、専属の方は契約の締結をした翌日から5日以内でしたが、こちらは7日以内である事、そして依頼人である売り主への販売状況報告は、専属は7日に1回以上でしたが、専任なら14日に1回以上と変わります。
最後の3つ目が「一般媒介契約」です。専属専任、そして専任の媒介契約の2つは契約を結べる不動産会社が1社のみに限定されていますが、こちらの場合には複数の会社と契約を結べて、且つ専任と同じく自分で買い主を発見できたのなら個人間で売買契約を結べます。
その為、3つの媒介契約の中で最も制限の少ない契約形態であるといえます。レインズへの登録義務、及び不動産からの販売状況の報告についても義務がありませんので、業者側からのサポートは手薄になります。
また、契約の期間においても特に定められた期間は存在しませんので、業者と売り主の間で決める事になります。明示型、非明示型の2種があり、前者が依頼主が契約を結んでいる会社を明示し、後者はそれらを知らせなくてよいものです。
販売の流れについては紹介した通りです。古い家を売る方法についてはいくつかありますが、依然として築年数の浅い物件よりは売りにくい状態であることは確かです。ですが、売る為のコツについてもいくつか存在しますので、最後にそれらを解説します。
まず1つは、一括査定サービスを利用して相場を知っておくことです。単に家を売るだけに限らず、出来る限り高い値段で売却をしたいのであれば、確実に必要となります。というのも、自分の家を売るのに最も適した不動産会社を見つけられるからです。
複数の会社に査定をしてもらえば、当然ながら全く同じ額が提示されるという事は無いでしょう。同じ物件の査定でも会社によって査定額に差があり、実際に600万円近い差が出た物件もあったようです。こうして相場を知り、適した会社を見つけてみましょう。
多少手間のかかる方法ではありますが、一括査定サイトを利用する場合、建物と土地両方の査定結果を見ておきましょう。基本的に不動産査定サイトには、古家付き土地として査定ができる選択肢というのは設けられていません。
その為、一戸建ての建物の査定と併せて、何もない更地の状態の土地ではどの程度の相場になるのかも見ておくべきです。備考欄などを入力できる場所があるのなら、家が建っている事、築年数、構造なども入力しておくと良いです。
家を売る方法の中で、家を解体し更地にした状態にするというものを紹介していますが、一方で安易に更地にするのも控えるべき場合があります。これには固定資産税が関与しており、家が建っている土地なら、住宅用地の特例によって税率が優遇されます。
しかし、建物の無い更地の場合にはその特例から外れる事となり、税率の優遇も受けられなくなってしまいます。支払う固定資産税の額は、3倍から最大6倍ほどになる為、十分に売れると見込んだ場合に更地にする、という流れのほうが良いでしょう。
築何十年も経過している家は内装が痛んでいますので、リフォームしてから売る方が良いと思われるかもしれませんが、どちらかというと売却価格を値引きしたほうが効果的です。リフォームで新しめにしたとしても、その分が売却額に上乗せされるわけではありません。
古い家の購入を考えている方は、住む以前からリフォームやリノベーションを考えている方ばかりですので、値引きをしておけばその分は内装を新しくするための資金に回せます。
築年数の浅い家よりも売るのにコツが必要であるとはいっても、まったく売れないわけではありません。家の現状などを十分に調べたうえで、最も適した方法を選択して売却に移ることが大切となりますから、覚えておきましょう。