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ファクタリング未払金の会計処理はどうなる?売掛金と比較してわかりやすく解説

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個人事業主や中小企業の経理では、出入金があると、出入金の性質や理由に合わせて会計処理をするはずです。売掛金なども発生時や入金時に必要な会計処理をしますよね。

ファクタリングをしたときは、会計処理はどうなるのでしょう。ファクタリングの未払金や入金について、どのような会計処理をすればいいのでしょうか。

この記事では、ファクタリング未払金の会計処理についてわかりやすく説明します。合わせて、ファクタリング未収金の仕分けで注意したいポイントについても解説します。

これからファクタリングをしようと思っている個人事業主や中小企業の経営者、そして、いつもファクタリングで資金調達するときに「仕分けはどうなるのだろう」と悩んでいる個人事業主や中小企業の経営者などは、参考にしていただければと思います。

ファクタリング未払金と売掛金の処理は違うの?

ファクタリングで資金化した売掛金も、もともとは他の売掛金と同じです。だからこそ、売掛金の仕分けとファクタリングした売掛金の未払金などは同じ仕分けでいいのではないかと思うかもしれません。

結論からいうと、ファクタリング未払金と売掛金は仕分けや処理が違っているのです。

売掛金は売掛金の処理をおこないますが、ファクタリングした売掛金は資金を得るまでのルートが変わってきますから、仕分けや処理についても通常の売掛金の処理とは違ってきます。

ファクタリング未払金と売掛金の処理は違うことを念頭に、必要な知識を順番に説明していきます。

ファクタリングによる売掛金の資金化とは?

ファクタリング未払金の話に入る前に、ファクタリングによる売掛金の資金化についても簡単に説明しておきます。

ファクタリングとは、売掛金などの債権をファクタリング会社に売却(買取)・譲渡してもらい、資金化する方法になります。

たとえば100万円の売掛金をファクタリング会社に資金化してもらい、手数料を引いた現金90万円を受け取るなどがファクタリングの具体例です。

ファクタリングは以前から中小企業や立ち上げたばかりの会社などでよく資金調達方法として使われていました。

中小企業などは銀行融資をお願いしても、経営状況や会社規模などから断られることも少なくありません。仮に融資が通っても、建設業などは債権の入金が遅いなどの問題点が指摘されており、資金繰りに悩まされることも少なくありませんでした。

このようなときに所持している売掛金などの債権をファクタリング会社に買取してもらい、資金繰りの改善や繋ぎ資金にするのです。

立ち上げたばかりの会社も、会社の歴史の浅さや経営状況の不安定さから、銀行融資を断られることは少なくありません。せっかくビジネスチャンスを掴んでも資金調達できず、経営者が頭を抱えることもあるのです。

このようなときに立ち上げて間もない会社と他社の取引の中で生じた売掛金債権などをファクタリング会社で早急に資金化すれば、ビジネスに必要な資金を迅速に調達できます。

ファクタリングについては別記事に詳細をまとめました。参考にしてください。

 

ファクタリングの”全て”が分かる|利用前に読んでほしい徹底解説ガイド

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ファクタリングの特徴

ファクタリングはあくまで売掛金などの債権の買取・譲渡ですから、借入ではありません。よって、返済の必要はないのです。

また、ファクタリングは銀行融資などとは異なり、返済能力は問題になりません。ファクタリング会社が見るのは、あくまで売掛金(債権)です。銀行融資を受けられない設立間もない会社や中小企業、個人事業主なども問題なくファクタリングの利用が可能です。

この他にもファクタリングのメリットや特徴があります。別記事にまとめましたので、参考にしてください。

 

ファクタリングの8つのメリット&3つのデメリットを徹底解説

 

ファクタリングで問題になるのは「仕分け」である

ファクタリングによって売掛金などで資金調達するときは、仕分けが問題になります。

売掛金の場合は売掛金の仕分けをすればいいのですが、売掛金をファクタリングしたときは、ファクタリング未払金やファクタリング会社から調達した資金をどのように仕分けすればいいのかが問題なのです。

この記事のテーマは、まさにファクタリング未払金などの仕分けです。

ファクタリングの基礎知識を確認したところで、ファクタリング時のファクタリング未払金などをどのように会計処理するか見ていきましょう。

ファクタリング未払金の会計処理は?売掛金と比較して説明

ファクタリング未払金は売掛金と異なる会計処理をおこないます。ファクタリング未払金などの処理を覚えるときは、売掛金と比較して覚えるとわかりやすいという特徴があるのです。

売掛金の会計処理と比較しながら、ファクタリング未払金の会計処理を説明します。

売掛金(売掛債権)の会計処理

通常の取引から発生する売掛金(売掛債権)の会計処理は以下のようになっています。

200万円の取引を仮定して会計処理例を説明します。

 

・売掛金(売掛債権)が発生したときの処理

借方 / 売掛金200万円

貸方 / 売上200万円

 

・取引先から入金されたときの処理

借方 / 現金200万円

貸方 / 売掛金200万円

 

以上が基本的な仕分けになります。

ファクタリング未払金の会計処理

もとは売掛金(売掛債権)でも、ファクタリングをすると性質が変わってしまいます。また、ファクタリングによる資金調達と通常の売掛金の入金では、流れが異なっているはずです。

よって、売掛金をファクタリングで資金化した場合には、以下のような仕分けをおこないます。

ファクタリング未払金についても、仮に200万円の取引が発生したものとして説明します。

 

・売掛金(売掛債権)が発生したときの処理

借方 / 売掛金200万円

貸方 / 売上200万円

 

・売掛債権譲渡のとき(ファクタリング契約を結んだとき)の処理

借方 / 未収金200万円

貸方 / 売掛金200万円

 

・ファクタリング会社から支払いを受けたときの処理

借方 / 現金180万円・売上債権売却損20万

貸方 / 未収金200万円

 

ファクタリングにより売掛金(売掛債権)を資金化するときは、通常の売掛金の処理では登場しない「未収金」と「売上債権売却損」という項目が登場するところが特徴です。

売掛金の処理では、借方、貸方で「売掛金」「売上」「現金」で処理しますが、ファクタリングの場合は債権に使う「未収金」を使います。

未収金という項目は売掛金以外の金銭債権の仕分けに使う項目です。

ファクタリング会社に売掛金(売掛債権)の売却・譲渡を申し込むと、ファクタリング会社から売掛金(売掛債権)に応じた金銭を受け取り権利があります。よって、売掛金の発生段階は同じ処理をし、ファクタリング会社と契約した段階で「未収金」「売掛金」に切り替えるかたちになるのです。

ファクタリング未収金がファクタリング会社から支払われたら、借方を「現金」「売上債権売却損」で処理し、貸方を「未収金」で処理します。

売上債権売却損とは、ファクタリングにより売掛金(売掛債権)を売却・譲渡したときなどに発生する損失を処理する項目です。ファクタリングでは手数料が発生するため、手数料分を売上債権売却損として処理する流れになります。

ファクタリング未収金で「売上債権売却損」が使えない場合

ファクタリング未払金などの処理をする中で「売上債権売却損」という項目が出てきますが、会計ソフトによってはこの項目がなく、使えない場合があります。売上債権売却損の項目がない場合は、別の項目でファクタリング手数料などの処理をする必要があるのです。

ファクタリング未収金が入金されたときに手数料の仕分けができる項目としては、「雑損失」「支払手数料」などがあります。この他には、「債券割引料」などの仕分けることも可能です。

使っている会計ソフトの項目に合わせて、ファクタリング未収金などの仕分けをおこないましょう。

ファクタリング未収金の会計処理で注意したい税務のポイント

ファクタリング未収金などの会計処理をするときは、税務にも注意が必要です。

ファクタリングの税金で気になることがあれば、税理士などの専門家に確認し、早めにクリアにしておくようにしましょう。税金関係で分からないことがある場合も、個人事業主や中小企業の税金処理と合わせて税理士などの専門家にチェックしてもらうと安心です。

ここでは、ファクタリング未収金の会計処理などの中で特に注意したい税務のポイントを3つ取り上げます。

ファクタリングを利用するときは、ファクタリング未収金などの処理だけでなく、税務にも目を向けることが重要です。

ポイント①ファクタリングと法人税・所得税の関係

ファクタリング未払金を処理する流れで出てくる「売上債権売却損」、つまりファクタリングの手数料があります。

ファクタリングの手数料は法人税や所得税の経費として損金算入の処理が可能です。

ファクタリングのときはファクタリングする売掛金そのものに目が行きがちですが、手数料についても適切に処理するよう注意してください。

ポイント②ファクタリング手数料に消費税は課税されるのか

個人事業主や中小企業の経理担当が特に気にする税務としては、ファクタリングの消費税があります。ファクタリングに消費税はかかるのでしょうか。それとも、ファクタリングに消費税はかからないのでしょうか。

この点については、国税庁の公式サイトの質疑応答「金銭債権の買取り等に対する課税関係」に回答が明確に示されています。

 

【照会要旨】

売掛金、貸付金等の金銭債権に関する次の取引は、どのように取り扱われるのでしょうか。

(1) 省略

(2) 相手方から金銭債権を譲り受け、債務者から回収できるかどうかにかかわらず、金銭債権額から割引料、保証料又は手数料を控除して現金又は手形で支払います。

【回答要旨】

(1) 省略

(2)においては、金銭債権の譲り受けの際に債権者から徴収する割引料、保証料又は手数料は、その名目の如何にかかわらず、金銭債権の譲受対価として非課税となります。

引用 : 国税庁

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/06/03.htm

 

国税庁の質疑応答を見ていただければ、ファクタリングの手数料について消費税が非課税になっていることがわかります。

ポイント③ファクタリングの取引には消費税がかかるのか

手数料は消費税非課税ですが、では、ファクタリングの取引自体はどうなっているのでしょう。

結論から言うと、ファクタリングの取引の方にも消費税はかかりません。国税庁のタックスアンサーにファクタリング自体に消費税はかかるかどうかの回答が記載されています。

以下、国税庁の該当部分を引用します。

 

(2) 有価証券等の譲渡

国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡

ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。

引用 : 国税庁(No.6201 非課税となる取引)

https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6201.htm

 

ファクタリングは上記の記述の中の「金銭債権などの譲渡」に該当します。金銭債権などの譲渡は非課税なので、ファクタリングの取引そのものにも消費税はかからないという結論になるのです。

ファクタリング未払金の仕分け以外で注意すべきポイント

ファクタリングをするときに注意したいのは、ファクタリング未払金の仕分けや税務以外にも注意点があります。ファクタリング未払金の仕分け以外で注意したいポイントを、ここまでの見出しの知識を踏まえて補足します。

ファクタリング未払金の会計処理以外で注意したいポイントは3つです。

ファクタリングの請求書や明細に消費税が含まれていないか注意する

すでにお話しした通り、ファクタリングそのものとファクタリングの手数料は、消費税非課税となっています。

個人事業主や中小企業の経理担当がファクタリングで資金調達や資金繰り、売掛金の整理などをおこなう際は、ファクタリングの明細や請求書などの書面に消費税が含まれていないか注意する必要があるのです。

ファクタリング会社の中にも悪徳企業が潜んでいます。ファクタリングの悪徳企業は記載のない手数料を請求したり、消費税などの名目で金銭を取ろうとしたりすることがあるのです。

ファクタリング取引そのものと手数料に消費税が含まれている場合は取引を一端ストップし、弁護士や税理士などに明細や請求書をチェックしてもらうことをおすすめします。

悪徳ファクタリング企業の見分け方は別記事にもまとめていますので、参考にしていただければと思います。

 

ファクタリング詐欺の手法や悪徳業者の見分け方など

 

ファクタリング会社の取引でも費用によっては消費税が関係する

ファクタリング会社との取引の中でも、費用によっては消費税などの税金が関係します。ファクタリング会社の取引関係すべてにおいて消費税がかからないわけではないため、注意してください。

たとえば、取引の中で債権譲渡登記をする場合は司法書士に登記手続きを依頼することになります。登記手続きを依頼するときの司法書士報酬などには消費税が必要になるのです。

ファクタリング関係だからといってすべてに消費税がかからないわけではなく、司法書士報酬などが関係する場合は別途消費税が発生します。ファクタリングの際に気になるのであれば、ファクタリング会社側に確認しておくといいでしょう。

ファクタリング未払金や税金でわからなければ相談する

ファクタリングを資金調達や資金繰りに使う中でファクタリング未払金などの会計処理や税金についてわからないことがあれば、税理士などの専門家に確認を取るようにしましょう。

ファクタリングの仕分けや税務でわからないことを放置し、税金の申告時期になっては処理が大変です。税金の申告ミスにもつながってしまいます。

ファクタリング未払金などの仕分けや税務でわからないことは、税申告の前に余裕を持って専門家に確認しておくようにしましょう。

会計処理や資金調達などについても、アドバイスをもらっておくといいですね。税申告の前に慌てずに済みます。

最後に

ファクタリング未払金はもともと売掛金などの資金化ですが、会計処理については売掛金とは異なる仕分けをおこないます。ファクタリング手数料などについても、会計ソフトの適切な項目で仕分ける必要があるのです。

ファクタリング未払金や税務のことでわからないことがあれば、信頼できるファクタリング会社や税理士に確認しましょう。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。