日本の水道水は、いつでも飲むことができる健康的な品質が確保されていますが、そこにはカルキと呼ばれる塩素が含まれていることが大きく関係しています。独特のカルキ臭と呼ばれる匂いが気になって、飲むのを敬遠しているという方も居るかもしれません。今回は、水道水の塩素濃度、除去の仕方などを解説します。
当然の事かもしれませんが、日本の水道水はいつでもだれでも手軽に利用する事ができます。そこには塩素が入っているからというのもあるのですが、健康上の問題は無いのかと不安に思われる方も居るでしょう。
塩素が水道水に含まれている最も大きな理由として、有害成分の消毒作用が挙げられます。水道水の元となる河川や湖の水をそのまま飲む方というのは少ないかと思われますが、それは病気の元となる細菌が含まれている可能性を含む為です。
塩素の消毒力は非常に高く、こうした病原となりうる微生物を死滅させて健康上の影響を無くしています。消毒がされた水は、細菌が入り込まないように水道管を通って各家庭に送られます。日本の水道水の安全性が海外から高く評価されていますが、その大きな理由がこの消毒作用なのです。
こうして各家庭へと運ばれた水道水の中には、最低限ではありますが塩素が蒸発することなく残ったままになっています。これを残留塩素と呼んでおり、家庭へ送り届けるまでに必要な塩素も、届いた時点で役目は終わっています。
事実として水道水の中に塩素が残っていますので、特有のカルキ臭と呼ばれる匂いが気になってしまう、という方も居ます。どうしても気になる場合には個人での対処が必要ではありますが、比較的蒸発して消失しやすい為に工夫次第で可能な範囲ではあります。
以上、各家庭へ水道水が送られるまでになぜ塩素が使われているのか、その理由について簡単にではありますが解説しました。先に水道水には塩素がまだ残っていると解説しましたが、では残留塩素はどの程度残っているのでしょうか。
後に解説する通り、水道水内に含まれる残留塩素の量は、国によって目標値、基準値が定められています。その基準の中では、残留塩素量は1.0以下且つ0.1以上と決められていますが、東京の検出例では0.4、大阪市では0.55、長野県大町市では0.18とどこも基準値を下回っており、また大都会である東京や大阪でも基準を上回る事は無いのです。
更に、山梨県の富士吉田市はミネラルウォーターの採水地としても有名ですが検出値は0.10、先に挙げた長野県大町市も北アルプスの天然水の採水地として知られていますが、0.18と基準値の中でも最低値に近いレベルの濃度なのです。
検出例の中で既に解説しましたが、水道に含まれる残留塩素の濃度に関しては、国が基準値を設けています。厚生労働省によれば、水道水の水質基準に関しては塩素濃度を含めて51個もあり、飲んでも健康に影響がない値で定められています。
そして、水質管理項目における残留塩素の濃度は、味、においの観点から1リットルにつき1㎎以下という目標値を設けています。水道法によると、蛇口を通る時点では安全上、水道水中の濃度を同条件で0.1㎎以上に保持するよう定めています。
この水道法と水質管理項目で定めている値をクリアするために、日本の水道水は0.1㎎以上1.0㎎以下の塩素を含むようにしているという訳です。全国の各水道局によっては、独自で塩素濃度を1リットルにつき0.3~0.6㎎以下に収まる様にしている事もあります。
この様に、水道水に塩素が入っている事は確実であり、また法律などによって一定以上含み、そして一定以下の濃度にすることが定められていました。各種の厳しい水質項目があることからわかる通り、少なくとも飲んで大きな病気につながるという事は考えにくいです。
水道水が健康的に飲めるように塩素による消毒が必要である事もお分かりいただけたかと思われますが、しかしそれでも含まれていることが明白である以上、本当に人間の体に影響がないのか不安がぬぐえない方も居るかもしれません。
これについては少ないながらもいくつか影響が挙げられ、そのうちの1つがカルキ臭の発生です。塩素を含んでいるとはいえ健康上の影響こそ無いと記述しましたが、管理項目においてにおいの観点から含有量が設定されている以上、どうしてもカルキ臭と呼ばれるにおいの影響があります。
学校のプールなどを思い浮かべていただくとわかりやすいですが、消毒の為に塩素を使っているプールの鼻に少しツンと来る臭いがカルキ臭です。住まわれている地域、季節が影響して注入される塩素量が増加し、気になるレベルでにおってしまうケースがあります。
続いて、お風呂場で使う場合、塩素によって肌のトラブルが起きるのではないかという心配もされがちです。ですが、これについては日本アトピー協会が声明を出しており、一般的にお風呂を沸かせば塩素は希薄になり、給湯方式であれば先に塩素自体が抜けている模様です。
シャワーを使う場合であっても、シャワーヘッドからお湯が多方向へと拡散することで大気にさらされる面積が大きくなり、蒸散していく残留塩素の量も大幅に増えます。結果として、肌に何かしらの悪影響を与える可能性は考慮しなくても良いレベルなのです。
日本アトピー協会からは、それでも塩素の影響が気になってしまう場合には、浴槽に木炭を沈めておくと安心だと言われています。
もう1つ、毛髪への刺激があるのではという心配です。もし残留塩素の酸化力が強力である場合、髪のキューティクルであるたんぱく質の毛小皮を傷めてしまいます。皮膚についても酸化分解がされますが、自己再生力がある為にカバーはできます。しかし、毛髪に再生力はありませんので、傷んだら傷んだままです。
但し、これについても肌トラブルと同様に、そこまで神経質になってしまう必要は無いとされていますが、どうしてもトラブルが発生する確率を抑えたいというのならば、この後紹介する塩素の低減方法を行ってみて下さい。
この様に、科学的な観点からみると人体への悪影響が大きく表れるという事もありませんし、国の定めた基準値もクリアしている為に健康上の問題を考慮するのは杞憂とさえ言えますが、それでも塩素が気になる場合には、除去する方法がいくつかあります。
まず1つ目の方法は、煮沸を行ってカルキ抜きをするものです。塩素は熱に弱い性質を持っており、お風呂場で使用する場合でも温かい中では直ぐに蒸散し消失します。この特性を利用して、一度水を沸騰させ、そこからさらに10~30分ほど沸騰させ続けます。
水の中の残留塩素は空気中で蒸散しやすいため、例えばやかんで沸騰させたときには、蓋は開けた状態にしておきましょう。こうすることで塩素の逃げ道が形成され、素早く無くならせることができるのです。
2つ目は、汲んでから日当たりの良い場所を選んで置いておく方法です。こちらは、日光によって紫外線が水へ降り注ぎ、それが塩素を分解してくれるから効果があるのです。時間については日の当たり方などによってまちまちですが、半日から長くとも1日となります。
当然ながら日に当たった水というのは暖かくなっていますから、そのあと冷やす工程を加えましょう。人間は自分の体温の20度から25度低い温度の水を美味しいと感じる為、冷やすとカルキ臭なども無い美味しい水が飲めます。
そして最後の3つ目は、浄水器や整水器を活用することです。こうした機器では、活性炭を使って含まれている塩素も濾過してくれ、更に整水器は水素を含んだアルカリ性の水を作ってくれます。但し、他2つと違い初期費用のかかる方法ですので、予算に余裕があるのなら試してみましょう。
色々と塩素の除去方法はありますが、雑菌の消毒を目的として含まれているだけに、それを取り除くと繁殖が促進する可能性があります。もし除去した後の水を保管などするのであれば、洗った清潔な密閉容器を使いましょう。
水道水がそのまま飲めるというのは塩素が注入されているからであり、これは世界的にも恵まれている環境であることを示します。もしも味などにこだわるのであれば、直結型のウォーターサーバーなども使ってみて下さい。