体を動かす仕事や車の運転が好きな方なら、運送業という業種への就職・転職に興味をお持ちではないでしょうか。とはいえ、ただ車が好きだから、あるいは運転が好きだからという理由だけで、運送業に就職できるとは限りません。当記事内では、運送業への就職をお考えの方に向けて、運送業界で役立つ資格を徹底解説していきます。
目次
そもそも、運送業の仕事とはなんでしょうか。その職種にはどのような種類があるのでしょうか。また、運送業と運輸業に違いはあるのでしょうか。
運送業と運輸業という言葉は一字違いで、同じような職業と捉えられがちです。実のところ、この2つの業界は、それほど明確に定義されているわけではありません。考え方としては、乗り物の種類の違いや距離で区別化されています。
運送業とは、自動車による物や人の移動を指し、配送は主に陸路で行われます。なお、「運送」という区分には、船や飛行機による運搬は含まれません。
それに対して、「運輸」とは、鉄道や船舶、航空機のような移動手段を指して用いられます。人や物を陸・海・空のどれかの手段で運ぶ仕事を指し、より広い定義では、航空会社やフェリー等を移動手段とする旅行サービスも含まれています。
そのようなわけで、自動車を使った運搬が運送業と呼ばれるのに対し、それ以外の乗り物を利用するサービスが運輸業で、運輸業の方がサービスが広範囲であるといえます。
運送業に最低限必要とされている資格は普通自動車運転免許ですが、運転免許には様々な種類があり、大きな区分として2つの種類があります。
多くの方が取得している普通免許は、第一種運転免許を指しています。それに対して、第二種運転免許を取得するには、21歳以上で普通免許を3年以上保持していることが必要です。
過去に免許を取り消されたり、停止されたりしたことがある場合は、3年間はこの期間から除外しなければなりません。試験には、深視力検査と呼ばれる、動くものを見るための視力を測る項目もあります。
第二種の学科試験と実技試験に通り、その他求められている条件を満たした場合にのみ、二種免許の取得が可能です。なお、この免許を取得するための費用の目安は、25万円から40万円程度です。
それでは、具体的に運送業界への転職にあると有利な資格について見ていきましょう。ここでは、5つの主な運転免許をご紹介します。
3.5トン未満のトラック、最大積載量2トン未満の運転が可能です。この免許は18歳以上でないと取得できません。
免許取得にかかる費用は、教習所によっても異なりますが、通常合宿だと約20万円、教習所だと約30万円で、AT車よりもMT車の方が1~2万円ほど高くなります。
一般的にMT車の取得には1~3ヶ月、合宿では2~3週間かかります。この免許では、小型トラックを運転することができます。
3.5トン以上7.5トン未満のトラックで、最大積載量が4.5トン未満のものが運転できます。18歳になれば取得できる免許で、2トンまたは3トンのトラックが運転できます。
7.5トンから11トン、最大積載量が6.5トン未満の車が運転できる免許です。取得は20歳以上で、普通運転免許を2年以上保持していることが条件となります。
2007年の道路交通法改正により新設された免許で、普通免許と大型免許の中間的な免許として設けられました。
運転者の視力や深視力などを測定し、基準に満たない場合は免許を取得できないとされています。中型MT8トン限定をお持ちの方は、限定を解除することで中型免許を取得することができ、費用も時間もかかりません。
マイクロバスや4トントラックを運転できるようになるので、運送業界での活躍の場が大きく広がります。
11トン以上、最大積載量が6.5トン以上の車両が運転可能です。21歳以上で、普通運転免許を3年以上保持していることが条件です。
中型免許と同じ視力検査に合格しなければなりません。中型免許を経ずに大型免許を取得することも可能ではありますが、普通車と大型車の感覚があまりにも違うため、慣れるまでには時間がかかるのが普通です。
中型車と大型車は、車幅や構造、エアブレーキなど共通点が多いため、先に中型免許を取得しておくと、比較的簡単に免許を取得することができ、結果的に費用を抑えられる可能性があります。
難易度は高くなりますが、通常の配送に必要なすべての車両を運転できるようになるので、非常に助かります。
けん引車免許は、トレーラーや貨物をけん引して運ぶための免許のことです。普通車免許でもキャンピングトレーラーなど750kg以下の荷物であればけん引することが可能ですが、運送で使用するような大型荷物のけん引にはけん引車免許が必要となります。
けん引車免許の取得は満18歳以上で、視力は両眼で0.8以上が求められます。また、深視力や色彩識別能力などの測定もされます。
では、次に運送業界で役立つ機械オペレーターに関係する資格を見ていきましょう。フォークリフト、ユンボやクレーン車など、特殊車両の運転に必要な資格をご紹介します。
フォークリフトのオペレーターは、倉庫やヤードでの作業に欠かせない資格です。フォークリフトの免許があれば、倉庫作業でも活躍できます。
フォークリフトの最大積載量が「1トン未満」なのか「1トン以上」なのかによって、この資格への道のりは異なります。
「1トン未満」の場合は特別講習、「1トン以上」の場合は技術講習を受ける必要があります。1トン以上」の場合は、実技・学科講習の後に試験があります。
目安としては、「1トン未満」は1日、「1トン以上」は2日から6日が必要で、資格によって受講期間が異なるため、ご注意ください。
「玉掛け」とは、建設や物流、大規模な工場などで働く方には馴染みのある言葉ですが、聞いたことのない方が多いかもしれません。
玉掛け作業とは、クレーンで荷物を持ち上げて吊り下げる作業のことです。クレーンを使用する場合は、必ず玉掛けの資格を持った方が作業に立ち会う必要があります。
「玉掛け作業者」とは、労働安全衛生法で定められた講習を修了した技術者のことです。この資格は、荷重1トン以上のクレーン、移動式クレーン、デリックなどの玉掛け作業を行う技術者を認定する国家資格です。
この資格を持っていない方は、作業を行うことはできません。運転席と玉掛け作業を行う場所が離れている作業では、両方の作業を行うためにその都度移動することが難しいため、別の有資格者が必要となります。
建設機械の中でも特によく使われるのがユンボです。ユンボは知らなくても、パワーショベルや油圧ショベルは知っている方が多いのではないでしょうか。
建設現場だけでなく、個人でも庭の大きな切り株を掘り起こしたり、畑を整備したりするのにも使われています。ユンボの運転・操作には運転免許と資格が必要です。
まず、ユンボで公道を走るには運転免許証が必要です。必要な免許の種類は、ユンボの車両総重量に応じて異なります。
車両総重量が3.5トン未満の場合は普通免許、3.5トン以上7.5トン未満の場合は中型免許、7.5トン以上11.0トン未満の場合は中型免許、11.0トン以上の場合は大型免許が必要となります。
建設現場での操作や作業を行うための資格には、重量も関係してきます。機械の重量、すなわち総重量から作業装置(バケットなど)を差し引いた重量が3トン未満の場合は、「小型車両搭載建設機械運転のための特別教育」が必要です。
機械の重量が3トン以上の場合は、「車両搭載型建設機械運転講習(整地・運搬・積込・掘削用)」を修了する必要があります。
自分の農場や農地で、仕事以外の目的でユンボを操作する場合は、免許や資格は必要ありません。ただし、ビジネスの目的で使用する場合は、私有地や会社の敷地内であっても資格が必要です。これは、資格要件の根拠が「労働安全衛生法」だからです。
レンタルの場合は安全性が第一ですから、たとえ自分の敷地内で個人的に使用する場合でも、必ず資格を持っていることを証明しなければなりません。
クレーン運転士の資格があれば、大きな工場で使われる天井クレーンや、屋外での建設作業に使われる天井クレーンを操作することができます。なお、この資格を持っていても、移動式クレーンを操作することはできません。
移動式クレーンとは、クローラトラックにクレーンを取り付けたような車両のことで、都市部の工事現場などでよく見かけます。学科試験と実技試験に合格した方だけが、移動式クレーンのオペレーターを名乗ることができます。
運送業に役立つ資格は、車両関係の資格だけではありません。車の運転が好きなわけでなくても、下記のような資格を保有していることで、運送業での転職が有利になります。
運行管理者(貨物)資格は、主に運送会社で安全な輸送を確保するための「指導」に必要な資格です。この資格は、安全性を確保するための判断力と、ドライバーに適切な指示を与えるためのリーダーシップが求められます。
この資格を取得することを管理職になる条件としている企業もあります。受験資格は、「運行管理の経験が1年以上あること 」または 「基礎講習を修了していること 」の2つの条件のいずれかを満たす必要があります。
運行管理者になるためには、次の2つの条件のうちどちらかを満たす必要があります。まず、運行管理者試験に合格することが必要です。
試験の合格率は約30%、受験チャンスは8月と3月の2回しかありませんので、予定通りに事業を開始できるように、事前にしっかりと試験対策を行うことが大切です。もしくは、一定の実務経験と講習を通じて資格を取得する方法もあります。
運行管理補助者とは、簡単に言えば、運行管理者の補佐役のようなものです。運送業の運行管理業務は多岐にわたるため、運送会社の規模に比べて少人数で管理することは非常に困難です。
そのために、運送会社では運行管理補助者が活躍しています。運行管理補助者として働くには、「運行管理者資格証」は必要ありません。
その他の特別な資格は必要なく、運送会社は運輸局に報告する必要もありません。とはいえ、運輸業界で管理職として働きたいと考えている方は、この資格を取得しておくのが賢明です。
また、運送業界でドライバーとして働いている方や転職したいと考えている方も、時間があるときにぜひこの資格を取得することをおすすめします。
運送業でドライバーとしてのみ働く場合は直接必要ありませんが、運行管理者の資格を持っていれば、将来的に心身の問題で運転ができなくなった場合、内勤業務に活用することができます。独立や転職のためだけでなく、将来に備えて勉強するのもいいかもしれません。
運行管理補助者資格を得るためには、運行管理者基礎講習コースを修了する必要があり、その後、運行管理補助者として仕事することができます。講座は、自動車学校や運送会社など、国土交通省が認可した教育機関で実施されています。
整備管理者とは、運送会社のビジネスツールであるトラックなどの車両を適切に維持・管理する仕事です。
整備管理者の中には、一級から三級の自動車整備士免許を持ち、特にトラックのメンテナンスに精通している方が多くいます。
資格のある整備管理者は、資格のある運行管理者を兼ねることができます(その逆も可能)。従業員数の少ない運送会社には最適なシステムです。
整備士の資格を取得するには、2つの資格要件のいずれかを満たし、勤務先の運送会社の運輸支局に申請する必要があります。
国土交通省が発表している制度概要によると、資格要件は①就職先で主に整備する同種の自動車の点検・整備を2年以上経験し、地方運輸局が実施する研修を修了した者、②3級以上の自動車整備士試験に合格した者、のいずれかとなっています。
倉庫管理とは、倉庫の建物の日常的な維持管理や火災などの事故防止など、倉庫のハードウェアの管理全般を指します。
「倉庫業法」では、「倉庫管理主任」の要件を次のように定めています。①倉庫管理の指導監督経験が2年以上ある者、②倉庫管理の実務経験が3年以上ある者となっています。
倉庫管理の実務経験がない方は、国土交通省が定める講習を受ける必要があります。また、日本倉庫協会では、「倉庫管理主任者」の養成講座を実施しています。このコースを受講することで、「倉庫管理主任者」の資格を得ることができます。
最後に、危険物の取り扱いに関係する運送業界で役立つ資格を確認しておきましょう。危険物取扱者と高圧ガスの資格です。
危険物取扱者という資格ですが、化学物質やガソリンなど扱う商品の種類によってこの資格が必要となります。
また、「タンカー」や「危険物」を配送するドライバーにも必要です。会社によっては危険物の取り扱いを求められることもあるので、倉庫で働く方にも有利な資格です。
危険物取扱者の免状には、甲種、乙種、丙種の3種類があります。各免状では、取り扱うことのできる危険物の種類が異なります。
高圧ガスを取り扱う資格の一つに、高圧ガス製造保安責任者があります。高圧ガスを扱う施設で安全に作業を行うためには、この資格が必要です。
高圧ガス製造保安責任者の資格を得るためには、試験を受けて合格する必要があります。この資格は、高圧ガスの輸送に携わる方にとって絶対に必要なものです。
私たちの生活に欠かせない運送業ですが、今では都会でも田舎でも、大きな街でも小さな街でも、どこにいても必ず運送会社があります。
どんな場所でも生活できるのは、輸送産業のおかげです。一方、好景気の影響で、輸送業界では空前の人手不足が発生しています。
運送業界のジレンマは、景気が回復して宅配サービスが充実してくると、運ぶべき荷物が増えてくるが、それを運ぶための運送業界の人材が不足していることです。
また、運送業界ではドライバーの高齢化が深刻な問題となっています。全産業のドライバーの平均は約3割が40代、50代の中高年ですが、運送業ではその割合が4割を超えています。
40代になると、さまざまな健康上の問題が出てきますが、運輸業界ではその健康上の問題による事故が多発しています。
つまり、これらの問題を解決できれば、輸送業界にはまだまだ成長の余地があるということです。これらの問題を解決するために、運送業界では様々な取り組みが行われています。
運送業界で活躍するためには、各種運転免許以外にも役立つ資格が数多くあります。将来の働き方も見据えた上で今のうちに各種必要とされる資格を取得しておくことで、キャリアアップにも繋がります。