どんな職に付いていても、仕事を辞めたくなる時はあるものです。トラック運転手をしている方の中にも、転職を考える方がおられますが、辞めたくなる原因としてはトラック運転手ならではの理由があるようです。では、辞めるか続けるか迷った時には、どのような要素を考慮しなければいけないのでしょうか。また、すぐ辞めたほうがいい場合の状況についても知っておきましょう。
目次
トラック運転手が仕事を辞める前には、必ず確認しておきたい点がいくつかあります。以下にあげる条件に当てはまる会社に勤めている場合は、転職を考えられることをおすすめします。
運送会社の給料が少なすぎる場合は、すぐに辞めるべきです。実習生と正社員の待遇の違いは、雇用契約書をよく読めばわかります。
最近では珍しいことですが、契約書のない会社であれば、すぐに辞めるべきです。男性トラックドライバーの平均給与は月給34万円、ボーナスを含めると月給37万5,000円です。
トラックドライバーの仲間に確認してみると、また運送業界の相場が見えてきます。また、特に見習いから正社員への移行基準については、会社に確認するのが賢明です。
見習いとして続けさせてくれる会社もありますが、小さな会社では社長自身がドライバーやリクルーターをしていることが多いので、見習いであることを忘れてしまうこともあります。いずれにしても、採用時には雇用契約書をよく読むことが大切です。
残業代についてはどうでしょうか。働いた残業代は正確に支払われていますか。もし仕事量に対する報酬が得られない場合は、退職した方が良いでしょう。トラック運送会社の中には、従業員と36時間協定を結ばず、60時間までの残業代を想定残業代として支払う会社もあります。
こんな会社は辞めた方がいいと思いませんか。一度給与明細をよく見て、会社が誠実に社員に向き合って、きちんと労働に対する対価を払っているかを考えてみてください。
トラック運転手は、もともと他の仕事に比べて労働時間が長いと言われます。しかし、トラック運送会社によって労働時間はかなり異なります。それは、コンプライアンスが厳しくなった現在でも、法律で定められた基準を守っていない企業があるからです。
「今日は会社に来る前に会社の駐車場で仮眠をとった」とか「今日の仕事が終わったら、また徹夜で運転….」といった恐ろしい話をよく耳にします。もしこのようなブラック企業で働いているとしたら、早急に転職を考えましょう。
商用トラックは、3ヵ月ごとに50項目、12ヵ月ごとに99項目の定期点検が義務付けられています。これをしない会社は、自分の安全のためにすぐに会社を辞めるべきです。
万が一業務中に突然、高速道路で故障して運転できなくなる、なんてことが起きれば、本当に危険です。命に関わります。きちんと点検しない会社は安全意識に欠けた会社ということですから、長く働いてもいいことはありません。
運送業者の中には、事故の修理費用をドライバー本人に負担させるという会社があります。もちろん、事故の原因がドライバーにあるという場合の話ですが、それにしても、そのような時のために会社は保険をかけているわけです。
保険を使うのがもったいないと感じるのかもしれませんが、いずれにしても、ドライバーが自腹で修理費用を払うような会社は辞めたほうがいいです。従業員から利益を得ようとする会社が長続きするとは思えません。
人間関係に悩んでいるのは輸送業界だけではありません。仕事で毎日顔を合わせる人たちと仲良くなれない、上司との関係に問題がある、同僚にいじめられている、会社の雰囲気が悪い、という方はたくさんおられます。
職場の人間関係にどうしても耐えられないという方は、無理せず他の会社にいきましょう。一時的に我慢できるものなら我慢すればいいのですが、毎日毎日苦しい思いをしていると、心身共にやられてしまう可能性もあります。
自分の仕事の内容をよく考えて、年齢的に無理があるのでは、またその仕事が肉体的にきついかどうかを考慮するのは大切です。多くの場合、自分が思っているほど若くはありません。
無理すると疲れを次の日に持ち越さないか、休み明けに疲れを感じないかなどに注意してください。手積み、手降ろしは、トラックドライバーにとって最も体力を使う仕事です。年齢的にもう無理だと思えば、辞める決意をすべき時かもしれません。
そもそも運転が嫌いな人は、トラックドライバーには向いていません。好きであっても、ミスや事故が多ければ、その仕事にも向いていないといえます。
現役のドライバーで運転が嫌いな人はあまり多くはないと考えられますが、「なぜかいつも事故を起こしがち」というタイプの人は、転職して違う業界で働くことも視野に入れるべきです。
とはいえ、問題があるからといってすぐに仕事を辞めることだけが解決策とは限りません。ここでは、すぐに辞めると後悔する場合の状況を考えてみましょう。
これはどんな仕事にも言えることですが、もし転職先が決まっていない状況ならば、勢いで辞めてしまうのは良くありません。これも年齢によって変わってきますが、特に30代後半になると、転職は非常に難しくなります。
また、学歴がない人は要注意です。トラックドライバーは免許があればすぐに働けますが、他の業界ではそうはいきません。高校卒業以上、専門学校・短大卒業以上、大学卒業以上など、一定の学歴・資格が必要な場合もあります。
入社したばかりで、まだ仕事に慣れていない段階で辞めたいと思う方はたくさんいます。特に他の業界から来た方ならば、全く違う働き方に戸惑い、慣れずに辞めてしまうことが多いようです。入社したての方は、新しい会社や人間関係に慣れるまで大変ですが、我慢するしかありません。
会社に慣れてきたら、職場環境や待遇、人間関係などを徐々に見直すことができるでしょう。最初は会社に馴染めなくて辞めようと思ったけど、今では辞めなくて良かったと感じている人は大勢います。
トラックドライバーをしていると、仕事が単調になってきて、辞めたくなることがあります。毎日、同じルートで同じ得意先への配達を繰り返すという環境なら特にそうでしょう。仕事に興味がなくなった、面白くなくなったから辞めたい、と思うかもしれません。
その場合には、例えば同じ会社内でも違う部署の仕事に回してもらうか、業務内容について相談してみることで、解決する場合があります。
トラックの運転は大変で疲れるという単純な理由で辞めてしまうと、後悔することになります。仕事というものは、時に大変なこともあります。「隣の芝生は青い」という言葉がありますが、どんなビジネスでも辛くて大変だということを思い出してみるべきです。
冷静にどの辺が辛いと思っているのか、またどれほどの期間そのきつい状況が続くのかを分析してみると、意外にも我慢できそうな状況であることに気づくかもしれません。
トラック業界は辞めても転職先が見つかりやすい業界といわれています。どうして転職しやすいのか、その理由についてみてみましょう。
昔は「石の上にも三年」と言いましたが、今はキャリアが長いから有利という保証はありません。実際、良い会社を見つけてすぐに転職したドライバーは、給料も高く、自分に合った仕事をしています。
1つの会社にこだわる必要は全くありません。世の中にはたくさんのトラック運送会社があります。また、必ずしも大企業が優れているとは限りません。中堅・中小企業で働いた方がいい場合もあります。
世の中にはたくさんの運送会社があります。仕事や給料に不満がある会社で働きつづけるよりも、もっと良い会社を探しましょう。
今は、売り手市場です。特定の産業では労働者が不足していて、トラックドライバーもまさに売り手市場です。思い切って給料を上げてもらうように頼んでみることもできるでしょう。同じ時間働くのなら、労働条件の良い会社に移るのも一つの選択肢です。
給与や福利厚生などの条件は、これまでよりもはるかに良くなっており、今後も労働条件を改善していこうという機運がかなり高まっています。新しい仕事を探している方も、転職活動中の方も、良いトラック運転手の求人を見つけることは比較的容易であり、心配せずに転職活動をすべきです。
では、何らかの事情で辞めるに辞められない状況にあるなら、一体どうすれば良いのでしょうか。トラック運転手を辞められないで困っている場合の対処法をみてみましょう。
トラックドライバーを長くやっていると、長年の無事故運転よりも、点検不足による事故や故障が発生しやすくなります。会社によっては、事故の過失があった場合にドライバーに支払わせるところもあります。
また、法律で定められた点検を適切に行っていないために、トラックが故障してしまうケースもあります。多くの場合、このような事故や故障の責任を負わされて会社に借金があり、辞めたいのに辞められないということが多いのです。
トラックドライバーの場合、会社に「辞めたい」と伝えるのは相当な覚悟が必要です。誠意を持って辞任の意思を担当者に伝えることが大切です。
狭い業界なので、仕事先でいつ出くわすことになるかもしれません。また、その会社の下請けとして運転席に座ることもあるかもしれません。そのため、良い関係を保ちつつ会社を去るために、できる限りの努力を払いましょう。
トラックドライバーが不足しているので、会社を辞めようと思うと止められてしまうこともあります。しかし、民法によれば、従業員は会社の事情にかかわらず14日後以降に退職することができ、雇用契約に期間の定めがない場合はいつでも辞表を提出することができます。
つまり、引き止めるという行為は法的には違法なのです。会社との話し合いがうまくいかずに退職できない場合は、退職代行会社に相談することができます。
では、最後に転職を決めたなら、どのような職種への転職がおすすめかを解説していきます。転職先を選ぶ際の参考にしてください。
トラック運転手は、同業他社に転職する確率が高いです。トラック業界から突然ネクタイとスーツで会社に行くのは難しいといえます。
その上、同業他社なら、せっかく取得した資格や免許を生かすことができます。そのため、元同僚とトラブルにならないように、転職前の会社での振る舞いには気をつける必要があります。
今では、ドライバー向けの求人サイトがたくさんあります。これらのサイトには、離職したトラックドライバーの体験談など、有益な情報がたくさん掲載されています。
特に、退職や転職の際の事務手続きについては、多くのサイトで詳しく紹介されています。トラックドライバー専門の人材紹介サービスでは、仕事を辞めた優秀なドライバーをトラック会社に紹介し、実際に入社してくれればコミッションを受け取ることができます。
そのため、一人でも多くのドライバーを入社させるために、詳細な履歴書や面接のコツなどをサポートしています。エージェントの中には、お客様に代わって会社と条件交渉をしてくれるところもあります。
トラックドライバーと同じ運転業のタクシーやバスの運転手など、引き続き車を運転する仕事に転向する方も少なくありません。というのも、運転経験があれば第二種免許の取得に協力してくれる会社が多いですし、大手企業の方が勤務時間や休暇の管理がしっかりしていることが多いからです。
車の運転が苦にならない方や、荷物の積み下ろしが苦にならなかった方には、このような同業種の仕事がおすすめです。車の運転がどうしても苦手な場合や、不規則な勤務が無理という場合には、倉庫や配送センターでの勤務をお勧めします。
例えば、商品を集約しているセンターでは、実際に自分で配送したことがあれば、大まかな仕事の流れを把握しやすいことでしょう。全く別の業界で一から教育を受けるには年齢的に無理がある場合、馴染みのある業界に転職するほうがハードルが低いといえます。
以上、トラック運転手を辞めたいと思った場合に考えるべき要素を挙げてみました。絶対辞めたいと思っていても、冷静にさまざまな要素を考慮することで、今はやめないほうが賢明だと判断するかもしれません。
また、実際辞めるにしても、後悔しない辞め方をするべき理由が分かっていただけたのではないでしょうか。辞める前には、ぜひ一度立ち止まって、今本当に辞めるべきかどうかを考えてみましょう。