「お疲れ様です」はビジネスシーンでよく使われる言葉です。多くの方が何気なく使っているのではないでしょうか。しかし、この言葉を目上の人やビジネスパートナーに使うときには注意が必要です。今回は、「お疲れ様です」の使い方や、上司や取引先に使ってはいけない理由など、ビジネスマンが気をつけたいポイントをご紹介します。
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オフィスですれ違うときに、会釈しながら「お疲れ様です」と声をかける場面を見たことがあるのではないでしょうか。また、同僚から内線で電話がかかってきたときに、枕詞のように「お疲れ様です。ところで○○の件ですが」のように使われることもあります。
そして仕事終わりにまだ残っている社員に対し、「お先に失礼します」という挨拶すると、「お疲れ様です」返されることがあります。このように、さまざまな場面で「お疲れ様です」と言われると、「疲れてないけどどうしてお疲れ様というのだろう」と疑問に思うこともあるでしょう。
「お疲れ様です」という言葉は、あまり意味を考えずに使っている方が多いと思いますが、その意味を知っておくことは大切です。「お疲れ様です」は、基本的に、人が一生懸命働いていることに対して「感謝の気持ちを表す」言葉です。
また、先に帰ってしまう同僚や上司への「挨拶」でもあります。「お疲れ様です」以外にも、「お疲れ様」や「お疲れ様でした」という形で使われることもあります。
最近ではビジネスマナーが変わってきているので、上司・後輩・先輩、など地位や立場にこだわらずに、こうした表現を使うのが普通のことになっています。
ちなみに、ビジネスで日本人以外の人と接する機会のある方もおられると思いますが、英語で「お疲れ様です」という言葉を表現しようと思うと、翻訳に困ることがあります。それは、英語には「お疲れ様です」に当たる表現がないからです。
そのため、どのような目的で「お疲れ様」と言いたいのかを考えてから、ふさわしい英語表現を選ぶようにしましょう。場合によっては、「Thank you.」「Hello.」などの言葉で十分なこともあるでしょう。
他の人の働きに対する感謝を述べる、という意味合いのある「お疲れ様です」という言葉ですが、感謝や労をねぎらう以外にも、ビジネスシーンでさまざまな使われ方をしています。では、どのようなシーンでどのように使えば良いのか見ていきましょう。
「お疲れ様でした」という表現は、仕事がうまくいったとき、1日の仕事を終えたことに対して、感謝の気持ちを表すために用いられるのが一般的です。
上司や先輩が仕事を終えた部下に、また部下が上司にねぎらいの意味で「お疲れ様」という形で使うこともあります。ねぎらいの意味で使うときには、ぜひ相手に対する気持ちを込めて言うようにしましょう。
最近では、「お疲れ様」は感謝の気持ちを表すだけではなく、挨拶としてもよく使われます。例えば、廊下ですれ違う同僚に「お疲れ様です」と挨拶したり、会社を出るときに同僚に「お疲れ様でした」と言ったりする方も多いのではないでしょうか。
「お疲れ様です」は、社内のメールやコミュニケーションツールの冒頭で使われる標準的な挨拶としても一般的です。部下、同僚、上司など、社内の誰にでも使えます。
一例として、「お疲れ様です。広報部の〇〇ですが、明日の会議の議題についてお知らせします。」のように、本題に入る前の前置きで使うことが多いです。
また、電話での挨拶でも、「こんにちは」というよりも、「お疲れ様です」と始める方が、オフィスでは適しています。
上司に対して「お疲れ様です」は、失礼にあたるのではないかと、目上の人への挨拶に使うのをためらう方も多いですが、実際のところはどうなのでしょうか。確かめておきましょう。
結論から言うと、「お疲れ様です」は目上の人にも使えます。そもそも、「ねぎらい」という言葉は、目上の人が目下の人に対して使う言葉です。ですから、厳密に言えば「お疲れ様です」は目上の人から目下の人への挨拶です。
とはいえ、同じ社内では目上の人に対しても使われるのが一般的になっています。ただし、言葉づかいは丁寧に、また敬語を用いなければいけません。
「お疲れ様です」は同じ会社の目上の人にしか使えません。取引先やお客様など、社外の目上の方に「お疲れ様です」と言うのは失礼にあたります。
もちろん、「お疲れ様です」と言われても気にしない方も多いですが、失礼にならないように「ありがとうございます」などの表現を使うのが賢明です。
社会人になると、お礼やねぎらいの言葉として「ご苦労様です」や「お疲れ様です」を使うことがあります。この2つの言葉は気軽に使ってしまいがちですが、間違った使い方をすると、相手に不快な思いをさせてしまうので注意が必要です。
ビジネスマナーの本では、「ご苦労様です」は目上の人から目下の人に使うもので、「お疲れ様です」は対等な関係、あるいは目上の人に使うとされています。目上の人に「ご苦労様です」を使うことがなぜ失礼にあたるのかについては、諸説あります。
昔、殿様が家臣に「よく頑張った」と言ったことから、目上の人が目下の人に使う言葉になったという説や、「ご苦労様」は人の苦労を高いところから見ているようなもので、目上の人に使うのは失礼だという説などがあります。
いずれにしても、目上の人に「ご苦労様です」を使ってはいけないというのは確かです。では、目上の人の労をねぎらうには、どのような表現が正しいのでしょうか。
感じ方は人それぞれなので一概には言えませんが、現在の風潮を考えると、「お疲れ様です」が正しい表現であると結論づけられます。
しかし、昭和以前のイメージが強い年配の方の場合、自分よりも立場が下の人が「お疲れ様です」と言うことに違和感を覚えることも少なくありません。
そのような場合には、「お疲れ様でございます」などの丁寧な語尾を付けたりするのが良いでしょう。ただし、これらの感謝の言葉で大切なのは、気持ちです。
相手を思いやる気持ちがあれば、どんな言葉を使っても通じるものです。礼儀作法にとらわれて、気持ちを置き去りにしないようにしましょう。
上司や社外の取引先の方に、「お疲れ様です」や「ご苦労様です」などの表現を使うことが、厳密には失礼にあたることはすでに見てきました。ここでは、「お疲れ様です」ではなく、実際にお礼や挨拶に使われる正しい表現をご紹介しましょう。
外出先から帰ってきた上司に、反射的に「お疲れ様です」と言ってしまいがちです。とはいえ、上司が外出先から戻ってきたら、「お帰りなさいませ」などと、敬意と感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
また、会社外の方との会議や打ち合わせなどの場では、感謝やねぎらいを表すために「本日はありがとうございました」と言うような表現を使うのがふさわしいです。
また、挨拶の際にも、「お疲れ様です」以外の言い換え表現を覚えて、ビジネスマナーを向上させましょう。例えば、朝の待ち合わせや出社時には「おはようございます」を使います。広く使われている言い回しですが、「ございます」という敬語表現となっているので、会社で使っても問題ありません。
同僚や上司がまだ会社にいて、自分が先に帰らなければならない場合もあるでしょう。そのような場合には、「お疲れ様です」だけではなく、「お先に失礼します」と元気よく言うことで、好印象を与えることができます。
このように、「お疲れ様です」は様々な場面で使える便利なフレーズです。相手に感謝の気持ちを伝えることで、相手との関係を縮めることができますし、この言葉をきっかけに、また新しい会話が生まれるかもしれません。
つまり、「お疲れ様です」という言葉は、人と人とをつなぐ不思議な力を持った言葉とも言えます。とはいえ、中にはマナーに厳しい方もいるので、使い方には注意が必要です。
漫然とどんな場面でも使ってしまうのではなく、自分が使うのにふさわしい相手かどうか、一旦立ち止まって、適切に使うようにしましょう。
ビジネスマナーは難しいですが、相手に応じて言い換えることができれば、さまざまな場面で活躍してくれるはずです。円滑な人間関係を築くためにも、上手にまた正しい方法で言葉の表現を使い分けるようにしましょう。