HSPは、一般的に周りの人たちと比べて鋭敏な感覚を持っていると言われています。また、仕事が続かない、適職に就けないといった悩みを抱えている方が多いようです。確かに、生まれつき敏感な気質を持っているHSPは社会的には少数派なので、周りの人との違和感や異質感に悩む方が多いのも事実です。このページでは、HSPの性質を理解し、よりよい仕事に就くためのヒントをご紹介します。
目次
HSPは英語では「ハイリー・センシティブ・パーソン」という意味で、略してHSPといいます。一般の人と比べて感受性が非常に高い人のことを指しています。専門家の研究によると、人口の約20%もの人がハイリー・センシティブ・パーソンの特性を持っていることが分かっています。
また、人以外の動物にも見られる傾向であることから、感受性が生物の生存本能のひとつ、つまり生存のための戦略であることが示唆されています。なお、HSPの男性はHSPの女性よりも苦労すると言われています。
他の人より仕事が遅い、他人の顔を見すぎてしまう、人間関係に疲れてしまう、人に見られているとミスが多くなる、仕事が長続きしない、根性がないと言われることがある、といった悩みをお持ちの方は、ハイリー・センシティブ・パーソンかもしれません。
HSPという特徴にうまく対処するためには、まずは自分がHSPというくくりに当てはまるかどうかを確認することが大切です。ぜひ以下のリストを使ってセルフチェックして見ましょう。
このような質問に対して、20個以上当てはまった方は、ハイリー・センシティブ・パーソンである可能性があります。しかし、単に20個以上当てはまらないからといって安心はできません。
たとえ20個未満であっても、合計10個以上の特徴があり、症状が強い場合は、HSPである可能性が排除できませんので、気になる方は専門医に見てもらうようにしましょう。
それでは、ハイリー・センシティブ・パーソンにみられる特徴や傾向について見ていきましょう。大きく分けて以下のような6つの特徴があります。
【刺激に敏感】
外部からの刺激に敏感で、五感で受ける刺激に過剰に反応する傾向があります。そのため、季節の移り変わり、電波、目に見えないエネルギーなどにも敏感です。
【心の境界が薄くてもろい】
心の境界とは、自分のテリトリーや自分らしさを守るための壁のようなものですが、この境界が薄くてもろく、他人の影響を受けやすいのがHSPといえます。また、他人に同情しすぎたり、相手の気分や考えに引き込まれて自分を見失うってしまう危険性もはらんでいます。
【疲れを感じやすい】
常に周囲に気を配っているため、仕事のときだけでなく、遊んでいるときですら気を遣って疲れてしまいます。また、「何かをしているとき」だけでなく、人が多い場所や周りのネガティブな感情の影響も受けやすく、すぐに疲れるのが特徴です。
これは、意識している訳ではなくても、常に自分の五感が周りで起きていることがらの刺激を敏感にキャッチしてしまうからです。刺激をキャッチするかどうかは自分で意識的に出来るものではないだけに、本人は辛い思いをしがちです。
【共感しやすい】
自分の周りにいる人たちや接する人たちの感情に共感しやすい特徴もあります。また、フィクションやドラマなどの作品に強く感情移入することもあります。
【自己否定感が強い】
一般的に良心的で親切で、相手のことを第一に考える傾向があります。ただし、相手を気遣うあまり、些細なことでも「自分のせいだ」と自分を責めてしまう人が多く見られます。
ネガティブ思考で自分に自信がないため、周囲の怒りの対象になることが多く、また、本音を隠すため、人と接するのが苦手です。
このように、HSPは、常に人よりも敏感な五感を生まれつき持っている人だといえます。そのおかげでちょっとした仕草や言動で相手の気持ちを理解したり、さまざまなことに深く感動したりすることができますが、本人にとってはストレスの原因にもなります。
特に日本人にはこうした特徴をもった人が比較的多く、これには日本人ならではの特性が関係しているとされています。
ハイリー・センシティブ・パーソンの強みは、他人の感情に敏感で、共感能力が高いことです。他人の気持ちを自分のことのように考えることができ、物事の細部にまで気を配ることのできる人です。
また、同じ情報を得たとしても、他の人よりも思考の深さがあり、感受性が高く、さまざまなアイデアを出すことができるのです。
ハイリー・センシティブ・パーソンはネガティブなイメージで語られることが多いですが、それを強みと捉えれば、ポジティブに対処しやすくなるのではないでしょうか。
ハイリー・センシティブ・パーソンの人は、周囲から「マイナス思考だ」「根性がない」などと否定されることが多いため、「自分はおかしい」と思いがちです。しかし、そのつらさの原因は、人よりも感受性が強いという独特の特性から来ています。
また、私たちが短所だと思っていることは、実は長所の裏返しでもあります。例えば、「仕事が遅い」という短所は、実は「丁寧で質の高い仕事ができる」という長所でもあるのです。
ハイリー・センシティブ・パーソンは優れた能力をたくさん持っていますから、自分の特性を知り、自信を持って対処することが大切なのです。HSPの提唱者であるアーロン博士によると、HSPは1を聞いただけで10まで想像できてしまいます。
そのため、ハイリー・センシティブ・パーソンの方は、他の人が気にしないようなことを考えすぎてしまい、落ち込んでしまうことがあります。自分では大したことがないと思っていても、考えすぎている可能性があるのです。
たまには客観的に振り返って、自分にとっては大したことでも他の人にとっては大したことではないかもしれない、と考えることも大切です。
また、その他大勢のいわゆる普通の感覚を持った人たちと比べると少数派なので、周囲の人に理解してもらうのは簡単ではありません。しかし、職場に自分を理解してくれる人がいることで救われるという人は少なくありません。
一人でもいいので理解者を確保するために、「他の人の目が異常に気になる」「ちょっとした物音でも気になる」など、抱えている苦悩を周囲の人に相談して、働きやすい環境を整えていきましょう。
また、他の人と比べていつも我慢したり遠慮したりすることでストレスを溜め込みやすいという傾向もあります。そのため、できるだけ静かな環境で心を休める機会を作りましょう。
もっと深刻な点としては、生まれ持ったさまざまな特性から周りに理解されず、自分で自分を追い込んでうつ病になる人も多いのが現実です。
うつ病にならないためには、家でストレスを解消したり、人に相談したり、より快適な職場に移るなどの工夫をしましょう。
不眠症、疲労感・倦怠感、自律神経症状のような症状が続く場合は、無理をせずに専門家やクリニックに相談しましょう。
ここからは、HSPの人が適職を探すためのヒントをお伝えします。仕事選びには以下の3つのポイントを押さえておくことで、自分の強みを生かし、弱みを回避する転職活動が可能になります。
仕事を選ぶ際に、自己分析をして、どのような職場環境が苦手なのかを明確にしましょう。耐えられない職場環境や労働条件を事前に回避することで、仕事を続けやすくなります。
たとえば、騒音の多い職場、長時間労働や残業が多い職場、売上目標などのノルマがある職場、チームワークを必要とする職場などは注意が必要です。
転職の際には、上記のような職場を避けることで、快適な職場環境を手に入れることができるでしょう。
物事を深く考える傾向のあるHSPにとって、「自分はこんな職場で何をしているのだろう」「この仕事は自分がやりたかったことなのだろうか」といった疑問を無視し続けて働くのは苦行でしかありません。
そのため、給料の額や対価で仕事を選ぶのではなく、自分が本当にやりたいと思える仕事を選ぶことが大切なのです。
HSPの人が仕事を探すときには、自分に合った職場の環境や労働条件などをよく検討することが大切です。また、よい仕事を見つけるためには、まず選択肢をできるだけ多く増やすことも必要になってきます。
その点、転職サイトや転職エージェントは、豊富な仕事を提供していますし、専属のサポーターがいるエージェントを選べば、相談にのってもらうこともできます。
さまざまな特性のあるHSPですが、言い換えればその特性を生かした仕事を見つけることで花開くことができるかもしれません。ここからは、HSPの人に向いている仕事をご紹介します。
思考力があり、細部にまで気を配ることができるので、正確さが求められる仕事に向いています。コンピューターと向き合って正確に数字を入力するデータエントリーや会計、お客様を安全かつ快適に目的地まで運ぶことができるタクシーやバスの運転手などがあげられます。
また、人よりも深くデータを分析することが得意なので、経営コンサルタントやWebマーケッターなど、データから課題を整理して提案・改善する仕事も向いているかもしれません。
多くの人が気づかないことに気づくことができるのは、大きな価値があります。正確さが求められる仕事の例には、ライン作業、自動車整備士、製造業、検査・検品、データエントリーなどがあります。
HSPの人は、物事を多面的に見ることができます。たとえ時間がかかっても、独自の視点で物事を深く考えることが得意です。
ビジネスではスピードが重視され、迅速な判断が求められることが多いですが、慎重に、じっくりと、深く考えることが求められる仕事も多くあります。
慎重さが求められる場面では、複数の視点から深く考えることができる能力は、HSPにとってプラスになります。そのため、システムエンジニアや動画編集者、プログラマーなど正確さと同時に深い思考がいかせる仕事はぴったりと言えるでしょう。
また、クリエイティブな仕事は、感受性が強く、芸術的なことが好きなHSPにおすすめです。クリエイティブな仕事には、デザイナー、イラストレーター、ハンドメイドアーティスト、写真家、音楽家、俳優などを挙げることができます。
これらの仕事の中には、副業として気軽に始めることができるものもあります。会社が副業を認めている場合は、趣味を活かして挑戦してみるのもいいでしょう。
副業として始めた仕事が軌道に乗れば、独立することも可能です。HSPの方で、仕事にやりがいを感じられない場合は、自分の個性を発揮できる仕事のほうがやりがいを感じられるかもしれません。
他人への共感能力が高いHSPの方は、悩みを抱えている人と接する仕事に向いています。心の悩みを解消するセラピストや、美しくなりたい人をサポートするエステティシャンなど、人への共感や優しさを活かした仕事がおすすめです。人と接する仕事の例は、カウンセラー、マッサージセラピスト、介護士、看護師、カウンセラーなどがあります。
対人関係に疲れやすいHSPの方には、植物や動物を扱う仕事もおすすめです。たとえば、フラワーショップの店員、植物園、トリマー、ペットシッター、ペットトレーナー、動物園や水族館の飼育員などがあります。
HSPの人は、共感能力が高く、動物の気持ちに寄り添うことができます。一方で、自然や動物に癒されることもあり、穏やかに仕事をすることができるでしょう。
HSPは他人の反応を気にしすぎる傾向があり、人と一緒にいるだけで過剰に気を使い、疲れてしまいます。そのため、できるだけ他人とのコミュニケーションが少ない仕事を選ぶことで、ストレスを感じずに働くことができるのです。
また、トラックドライバーや在宅勤務など、仕事の時間を邪魔されにくい環境で仕事に没頭することで、高い成果を上げることができるでしょう。最近では、コロナの影響もあり、リモートワークを採用する企業が増えてきました。
職場に出勤するか、遠隔地で働くかを選択できる場合は、リモートワークに挑戦してみてはいかがでしょうか。人とコミュニケーションをとる機会が少ない仕事の例には、在宅勤務、ライター、ブロガー、トレーダー、トラック運転手などがあります。
人の痛みに敏感で、高い共感能力を持つHSPには、マッサージセラピスト、鍼灸師、エステティシャン、カウンセラー、コーチングなどがおすすめです。
HSPには人の役に立ちたいという気持ちが強いため、人の悩みを解決することに関係する仕事が向いています。これらの仕事は、人に喜んでもらえるので、共感性の高いHSPにとってはとてもやりがいのある仕事です。
料理人、シェフ、パティシエ、家具などの職人、ハンドメイド作家、写真家といった仕事もHSP向きの仕事と言えます。
HSPは、五感で違いや特徴に気づくことができるので、その鋭い感覚を生かして、人に喜ばれる料理や道具、写真を生み出すことができます。
とはいえ、スピードが求められる職場では本来の力を発揮できないので、時間に追われたりプレッシャーを感じにくい整った環境に身を置くことが大切です。
ノルマや売上至上主義を求められるような競争の激しい仕事は、HSPには向いていません。ストレスを感じやすいHSPにとって、常に結果を出さなければならない環境は負担が大きすぎます。
また、周囲からのプレッシャーによって、違和感を覚えることもあるでしょう。また、激しい競争を勝ち抜くためには、周囲の人を出し抜く必要があります。これは、共感性が高く、他人の感情に敏感なHSPにとっては苦痛になるかもしれません。
また、要領の良さや機敏さが求められる仕事は選ばない方が良いでしょう。HSPは深く考えることができる反面、機敏さや要領の良さが求められる仕事は苦手とする傾向があります。マルチタスクや速いペースでの作業を求められると、パニックになり、小さなミスを繰り返す傾向があります。
他人との接触が多い仕事も、できるだけ避けたほうが無難です。というのも、HSPは些細な言葉に傷つきやすく、他人の行動に過剰に反応してしまい、余計に疲れてしまうことがあるからです。特に、接客業や対面販売の仕事は避けたほうがいいでしょう。
HSPの人は、一つの仕事に没頭するのは得意ですが、同時にいろいろな仕事をするのは苦手な傾向があります。どれから始めようかと悩む時間が長かったり、気が散って集中できなかったりする傾向があります。
結局、何事も中途半端になってしまい、仕事の質やスピードが低下し、上司からも苦手意識を指摘され、ストレスを感じるという悪循環に陥ってしまうのです。1つの仕事に集中できる会社を探すのは難しいかもしれませんが、明らかに仕事が多い会社は避けたほうがいいでしょう。
例えば、平均残業時間が多い会社は仕事量が多い傾向にありますし、小売業などのサービス業は一人に割り当てられる仕事量が多い傾向にあります。
コンビニエンスストアやアパレルショップなどの小売業やサービス業で社員として働いたことがある方や、学生時代にアルバイトをしたことがある方は、小売業やサービス業の社員が非常に忙しいことを知っているはずです。
やるべきことがたくさんあって、いつも時間に追われているという印象がありませんか?狂ったようにマルチタスクをこなさなければなりません。
加えて、スピードも求められ、頻繁にお客さんと接しなければならないので、HSPにとっては非常に悪い状態です。ですから、このような仕事はできれば避けたほうがいいでしょう。
そして最後に、HSPに向いていないもう1つの仕事は、シフトワークです。HSPの人は、HSPでない人に比べて精神的にも肉体的にも疲れやすい傾向があります。
そのため、十分な休息をとって疲労を回復させる必要があるのですが、シフトの組み方によっては、十分な休息をとることができず、疲れたまま仕事をしなければならないことがあります。
例えば、夜遅くまで仕事をして、次の日は早番で早く帰らなければならない場合や、夜勤があってリズムが安定しない場合などは、寝たいときに寝られないこともあります。
HSPの人のデメリットを踏まえた上で、HSPの人に向いていない仕事を紹介していきたいと思います。HSPの人のデメリットとして考えられるのは、
などの点です。これらのデメリットから、
などは、HSPにとって非常に難しい仕事だと想定できます。現在、上記のような仕事をしていて、「自分はこの仕事に向いていないのではないか」と悩んでいる方は、HSPの特性に合った仕事への転職を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事では、HSPに適した仕事について解説しました。ストレスなく長く仕事を続けるためには、自分の性格を正しく理解し、無理のない範囲で興味のある仕事を選ぶことが大切です。転職に興味はあるけど、自分に合った仕事かどうかわからないという方は、プロの転職エージェントに相談することも検討してみてはいかがでしょうか。