現代社会において、日本の農業は、農家の高齢化や後継者不足などの問題を抱えています。しかし最近では、若い新規就農者の数も年々増加傾向にあり、この問題を解決する兆しが見えてきました。農家として働くには、どのような雇用形態があるのでしょうか。当記事では、農業の働き方や雇用形態について解説しています。農業への転職や開業を考えている方の参考になれば幸いです。
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もちろん、そのような印象は間違いではありません。しかし、農業とは直接的な農作業だけではありません。これは後述する農業の適性にも大きく関係しています。
もちろん、一人で黙々と力仕事をすることもありますが、他業種のサラリーマンと同じようにパソコンを見ながら戦略を練ることもあれば、いろいろな人とコミュニケーションをとりながら一緒に仕事をすることもあります。さまざまな仕事があることを意識することが大切です。
たとえば、日本の代表的な農業の一つである「稲作」を考えて見てみましょう。米は日本国民の主食ですが、そのお米が取れる稲を栽培することを稲作といいます。日本で栽培されているお米の品種は約300種類あります。
次に、小麦やトウモロコシなどの穀物、豆類、芋類などを畑で栽培するのが「畑作」です。大きな機械を使ったダイナミックな農業が特徴です。
また、「果樹」も代表的な産業です。リンゴ、ミカン、モモなどの季節の果物を生産します。一般的には、2年以上栽培され、果実が食用になる植物を「果樹」と呼びます。その他、日本で主に行われている農業には、「露地野菜」や「施設野菜」、「花き」などがあります。
畜産業の中でも最も一般的なのが「酪農業」です。酪農とは、牛を飼育し、私たちの食生活に欠かせない牛乳を生産する仕事です。酪農は、チーズやアイスクリームなどの加工・販売、観光牧場などを組み合わせた6次産業化も進んでいます。
「養豚業」も一般的な畜産業の一つです。養豚業では、食肉用の豚や母豚を育てます。養豚業の特徴は、地域の特性や独自性を活かした「ブランド豚」の確立に熱心な企業が多いことです。
また、日本の畜産業には、「肉牛」も含まれます。これは、食肉用の肉牛を飼育する事業です。大きく分けて「繁殖」と「肥育」の2つの工程があり、どちらかの工程に特化した牧場と、もう一方の工程に特化した牧場があります。自分の手でブランド牛を育てられるのが魅力です。
アグリビジネスとは、英語の「agriculture」と「business」を組み合わせた造語で、農業に関連する経済活動全般を指しています。アグリビジネスといっても、作物の生産や加工、農薬や肥料の開発、品種改良、流通、販売など、多岐にわたります。
日本の農業は長らく家族経営が中心でしたが、近年では食糧需要の増加に伴い、ビジネスチャンスを求めて農業に参入する企業が増えているのです。
農業を経営的な面から考えて効率化や農地の大規模化を進めている会社が多いですし、企業や異業種からの参入もあり、バイオテクノロジーや自動管理などの先端技術の導入が加速しています。
その一方で、レストランとの直接契約や各農家によるインターネット販売など、高付加価値の小規模アグリビジネスも登場しています。
アグリビジネスの代表的な組織は「農業生産法人」です。これは、農地を所有して農業ビジネスを行う株式会社のような会社組織です。これらの企業で働き、技術力を高め、経験を積むことで、個人事業主(農家)として独立することができます。
また、食品の流通に関わる商社などの業種や、生産工場を持つメーカーもアグリビジネスに進出しています。小売業や外食産業では、食材となる作物を自社や契約先の農場で生産する傾向が強まっています。
「自営農家」とは、完全に独立して農業を行うスタイルです。実家が農家の場合、親の跡を継いでいれば「自営農家」と言えます。親や親戚が農家ではない場合や、農家の人から引き継ぐのではない場合は、土地や住宅、資金、作物を育てる技術など、必要なものをすべて揃える必要があります。
しかし、企業形態ではないので、自由度は高いです。自営業で働きたい方、指示されずに自分のペースで思うように仕事をしたい方には最適な仕事の形だといえます。とはいえ、責任感も求められる働き方であることに間違いありません。
自営農家では、どんな作物を作るかだけでなく、それをどこで売るかなどの販売ルートも決めなければなりません。販売ルートは大きく分けて農協などへの出荷と自分で直接販売の2つあります。農業などの場合、市場に出向いて出荷することもありますが、直売所やスーパーなどと直接契約して販売することもおすすめです。
また、現代は便利なインターネットがありますので、インターネットを利用して、自分で農産物を販売するのも可能です。インターネットやマーケティングの手法を駆使して、自分が育てた作物を独自の商品として扱ってみてはいかがでしょうか。
ゼロから農業を始めるには、多額の資金と不安定な収入が必要ですが、農業法人で働くことで、自営農家よりも安定した収入を得ながら農業を続けることができます。
農業をやってみたいけど、実務経験がないから不安という方や、農業に興味があって短期間だけ手伝いたいという方におすすめなのが、農業法人でのアルバイトです。時給制や日給制で雇われることが多く、期間は数日から1年程度です。
農業は、土作り、苗作り、栽培、収穫など、1年を通してさまざまな工程があり、忙しい時期だけアルバイトを募集する農家も多いです。例えば、野菜や果物は熟す前に出荷する必要がありますし、花は開く前に出荷しないと売れません。
旬の食材の高値を逃さないためには、人手を集中的に使って収穫から出荷までを一気に行うことが重要になります。基本的に時給は最低賃金程度で、決して高くはありませんが、農業を体験し、貴重な時間を過ごすことができます。
農家は家族総出で仕事をしていることが多いので、「家族に子供が生まれたので人手が欲しい」「家族が怪我をして働けなくなったので人手が欲しい」などの理由で、一時的にピンチヒッターを募集することがあります。
この場合、住み込みで働かせてもらえたり、食事が提供されたりして、農家の生活をより深く体験することができます。最近では、「スローライフ」「スローフード」「ロハス」などの価値観の浸透により、農村生活や農業に興味を持つ若い方が増えています。
しかし、農業は通常の仕事とは全く異なる作業の連続ですから、農業経験のない方がいきなり仕事を始めようとするのは大きなリスクがあります。これから農業を始めようと思っている方は、まずはアルバイトで農業を経験してから、長く農業を続けられるかどうか、自分に合っているかどうかを判断するのが良いでしょう。
また、収穫期ではありませんが、真夏には朝早くから仕事を始める農家もあります。最近の夏は、10時過ぎにはすでに気温が30度を超えています。
暑くて仕事にならない上に、健康上の理由からも早朝に仕事をするのです。その代わり、午後に3~4時間の休憩を取り、夕方の涼しい時間帯に作業を再開します。
農家の大変なところは、自然相手の仕事ですから、人間の力では対処できない場合が多い点です。それは、夏の暑さや冬の寒さとの戦いです。
夏の暑さの中、直射日光を浴びながら畑仕事をすることもあれば、ビニールハウスの中で眉間に汗をかきながら苗を植えることもあります。冬の寒さの中では、朝早く起きて収穫することもあります。
冷房の効いた室内で仕事ができる普通のサラリーマンとは、働く環境が根本的に違うといえるでしょう。
もちろん業種にもよりますが、田んぼ畑仕事には土日祝日の決まった休みが取れにくいです。りんご栽培の場合、10月から12月末までの3カ月間は週休1日(日曜日のみ)なので、なかなか疲れが取れません。
週1回の休みがあるだけでもマシという感じでしょうか。農業はとても忙しい仕事なので、特に収穫期のピーク時には週に1日しか休みがありません。収穫期にはほとんど休みがなく、雨が降れば突然休日になるというパターンが多いです。
農家にとって一番ダメージが大きいのは、自然災害です。ひとたび激しい台風や大雨、地震などに見舞われると、大切に育ててきた作物が大きなダメージを受けてしまいます。
このような災害を早い段階で予見することは不可能であり、どんなに気をつけていても、全く制御できない自然の猛威から作物を守ることはできないのが現実です。
農家にとっては、丹精込めて育てた田んぼや畑が一瞬にして破壊されるのは非常に悔しいですし、その年の作物が売れなければ収入も大きく損なわれてしまいます。
農業で正社員はきついと言われる理由について取り上げましたが、農業の仕事はきついばかりの仕事ではありません。魅力もたくさんある仕事です。ここからは、農業で正社員として働く魅力にフォーカスしますので、迷っている方はお役立てください。
農業を始めるにあたっては、自分で農業をやりたいという方もいれば、まずは農業法人に就職したいという方もおられるでしょう。農業法人に就職すれば、収入は出来高制ではなく給料として支払われるので、独立するよりも安定しているというメリットがあります。
以前は、農業法人への就職は、縁故採用が主流でした。しかし、最近では求人を出す農業法人も増えてきました。農業法人の求人は、インターネットやハローワークで探すことができます。また、農業に特化した求人サイトもありますので、そちらの方が探しやすいです。
また、農業法人や農協を直接訪問するのもおすすめです。希望の農業法人に求人がなかったとしても、あきらめる必要はありません。連絡すれば、面接をしてくれるかもしれません。
注意点としては、必ず現地に足を運ぶことです。できれば、数日でもいいので、事前に職場体験をしておくことをおすすめします。自分で農業を始めるよりもリスクは少ないですが、少なくとも自分に合っているかどうかを事前に確認しておいて損はありません。
農家の収入は「何を」「どれだけ」「どのように」売るかによって大きく変わります。同じ作物を作っていても、年収1,000万円以上の農家もあれば、100万円以下の農家もあります。
農林水産省が発表しているデータによると、農家の平均年収は約600万円で、民間企業のデータによると、農家の年収のボリュームゾーンは450万円から1,000万円と考えられています。
この数字だけを見ると、一般的な会社員の平均年収よりもやや高い収入が期待できます。しかし、条件が整って高値で売れる作物を量産できるときもあれば、台風などの自然災害に見舞われて収穫できず、赤字になってしまうこともあります。
天候などの外的要因で売上が大きく変動しやすく、年によって収入が大きく変わることがあります。そのため、他の仕事と両立させて「兼業農家」として安定した収入を得ようとする人も少なくありません。
農業法人に雇用されている場合は、雇用主から給与を受け取ることになります。給与額は経験や地域によって異なりますが、平均的な給与額は20万円から30万円と言われています。
業績に応じてボーナスが支給されたり、通勤手当や住宅手当、家族手当などの手当が支給される場合もあります。また、労働時間や休日が決められている場合も多く、自営の農家に比べて安定して働くことができます。
動画内では、公務員から無経験で農業に転職した方に、農業の魅力についてインタビューがなされています。公務員をしていたときには、マニュアルに沿って仕事する働き方でしたが、元々ものづくりをしたいという思いがあり、農業に転職されました。農業では自然が相手で難しさを感じることがあるものの、良いものを作る仕事にやりがいを感じているとのことです。
では、農業の働き方の全体像が見えてきたところで、果たして自分は農業に向いているのかどうか確かめておきたい方もおられることでしょう。ここからは農業に向いている人の特徴を解説していきます。正社員として農業への転職を考えている方は、これらの特徴のいずれかを応募書類や面接でのアピールポイントにすることもできますので、チェックしてみましょう。
農業は食べ物や生き物に関わる仕事ですから、自然や生き物が好きな人でないと長続きしないでしょう。また、消費者の口に入る、健康や命に関わる仕事でもあります。そのため、仕事に愛情や熱意をもって取り組める人であることは農業に従事するためにとても重要なポイントなのです。
また、農業に向いている人の特徴として、「計画性がある」ということが挙げられます。なぜ農業では計画性が重要なのでしょうか。意外かもしれませんが、農業では農作業だけでなく、経営についても考えることが大切です。特に、今後の経営方針を決定するためには、計画が欠かせません。
効率を上げるために土地を広げたり、新しい機械や設備を導入したり、インターネットと組み合わせてビジネスを展開したりといった戦略が考えられます。どこまで土地を広げるのか、機械設備は本当に必要なのか、ブランド力を高めるにはどうしたらいいのかなど、慎重に検討する必要があります。
農業の収入は、すべて出来高制です。農業では、同じ作業を延々と続けます。たとえば田植えでは、しゃがんだ状態で何百本もの苗を植えます。良い作物を育てるためには、どうしてもこれらの地道な作業が必要なのです。自分の仕事に対する姿勢が作物に反映され、品質や収穫量が一定になっていく世界ですので、責任感を持って仕事できる人でないと厳しい仕事だといえます。
農業の現場には様々な年齢層の人がいます。熟練した農場長から長年のパートさん、若い社員やパートさん、外国人研修生まで、年齢も性別もさまざまな人が働いています。そのため、どんな人ともうまくコミュニケーションをとり、スムーズに仕事を進めていくためには、柔軟なコミュニケーションが必要です。
また、同じ地域の農家や卸業者、農業資材メーカーなどと一緒に仕事をしなければならないので、農業は実はいろいろな人と関わる仕事です。より多くの人と関われることに喜びを感じるタイプの人には、向いているといえるでしょう。
今回の農業に関する記事はいかがでしたでしょうか?記事内で取り上げたように、農家の仕事には大きく分けて、自営農家、農業法人、アルバイトの3つの働き方があります。自営業者は、自分で全責任を負わなければなりませんが、自分の好きなように作物を作ることができます。その点、農業法人は雇用される立場ですから、サラリーマンのように働くことができます。農業に興味があり、経験を積みたいと考えている方は、まずアルバイトから始めるのがおすすめです。
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