一人ひとりの体力や健康状態に合わせて運動指導を行うインストラクターは、スポーツが好きな人にとってはとてもやりがいのある仕事です。運動指導を適切に行うために、専門的な知識が必要です。しかし、資格は必ず必要というわけではないので、アルバイトとして始めてから資格を取得する方法もあります。今回は、スポーツインストラクターとして着実にキャリアを積んでいくための方法をご紹介します。
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スポーツインストラクターとは、スポーツの技術指導を行う専門職のことです。スポーツジムではマシンの使い方を、フィットネスクラブではダンスのレッスンを、スイミングスクールでは泳ぎ方を教えるなど、さまざまなスポーツ分野や場所で活躍しています。
スポーツインストラクターは主に技術指導を行うのに対し、スポーツトレーナーは技術指導だけでなく、日常の体調管理やリハビリなど、より幅広いサポートを行います。一般的には、プロスポーツチームや実業団などの指導を請け負う人を「スポーツトレーナー」と呼ぶことが多いようです。
スポーツインストラクターの仕事は、どんなスポーツでも、担当する種目について一定の専門知識が必要です。動作例を見せる機会も多いので、自分自身がスポーツに詳しく、運動神経が良いことがスポーツインストラクターとしての条件となります。
しかし、最も重要な資質は、人を明るく元気にさせることです。スポーツインストラクターの採用では、学歴よりも経験や人柄が優先されることもあるほどです。勤務態度や人柄を買われ、アルバイトから正社員として採用されるケースも少なくありません。
また、人のやる気をアップさせるのが得意な人も、この仕事にピッタリです。フィットネスクラブやスポーツジム、各種スポーツ教室に来る人の目的はさまざまですが、共通しているのは「スポーツをすることの爽快感を味わいたい」ということです。
スポーツインストラクターの温かい声や表情、人柄は、利用者や生徒の気持ちを高め、運動の虜にします。その結果、同じ時間を使っても、ユーザーや生徒の満足度は高くなり、運動効果が高まるのです。
このように、スポーツインストラクターには、スポーツをしに来たユーザーや学生のモチベーションを上げ、スポーツを楽しんでもらうことが求められています。
スポーツインストラクターは運動を指導する「指導者」ですが、職業としては接客業でもあります。コミュニケーションをしっかりとり、相手との信頼関係を築くことで、運動を楽しんでもらい、自分の指導を受け入れてもらうことができます。施設によって違いはありますが、ここでは主な仕事内容を紹介します。
インストラクターは、フィットネスクラブやエアロビクススタジオ、スポーツ教室、福祉施設などで、主にグループレッスンに携わっています。音楽を使ったり、楽しいゲームを取り入れたり、スポーツに参加したりと、参加者が楽しくレッスンを受けられるような工夫をすることがインストラクターの大切な仕事です。
利用者が怪我をしないように、運動前にはストレッチを、運動後には身体のケアを呼びかけます。万が一、ケガをした場合は、アイシングなどの応急処置を行う必要がありますし、急病人や重傷者は無理に動かさないようにし、速やかに医療機関へ連絡するのも仕事です。
運動の動機は人それぞれですが、運動を通じて心身の健康を維持・増進しようとするケースは少なくありません。適切で無理のないトレーニングにより、スポーツの爽快感を安全・安心に味わえるようにすることが重要です。
また、同時に、運動の場そのものを好きになってもらうために、コミュニケーションをとり、信頼を得ていくことも求められます。
特に、高齢者は年齢とともに社会とのつながりが希薄になることが懸念されており、スポーツを通じた仲間づくりがメンタルケアに有効であることが認識されています。
利用者が安心してトレーニングできるよう、マシンは毎日点検・整備し、不具合があれば専門業者に修理を依頼しています。また、使用後のマシンのアルコール消毒やロッカールームの清掃など、施設の衛生管理にも気を配っています。
スタジオを併設しているフィットネスクラブでは、スポーツインストラクターがエアロビクスやダンス、ヨガ、武道などのエクササイズを指導することがあります。また、勤務先によっては、子どもの水泳教室や高齢者のリハビリテーションなど、さまざまなレッスンに力を入れている施設もあるので、仕事内容は一概には言えません。
スポーツインストラクターになるには、専門学校に通い、スポーツ施設に就職する方法が一般的です。専門学校に通いながら資格を取得するケースもあれば、卒業後に実際にスポーツインストラクターとして働きながら資格を取得するケースもあります。ここでは、スポーツインストラクターとして取得しておきたい資格についてご紹介します。
健康増進を目的とした運動を安全かつ効果的に指導することができる資格です。運動不足による生活習慣病が問題となっている今日、医学、運動生理学、運動指導などの知識と技術を持ち、実践的な指導を行うことができる資格です。
「JATI認定トレーニング指導者」は、日本トレーニング指導者協会(JATI)が主催する資格で、科学的根拠に基づいた適切な運動プログラムを作成・指導できる専門家であることを認定するものです。
基本資格は「トレーニング指導員」、上位資格として「上級トレーニング指導員」「特別上級トレーニング指導員」があります。こうした資格は、日本トレーニング指導者協会の正会員になり、研修会を受講し、認定試験に合格することで取得することが可能です。
スポーツインストラクターの代表的な資格として、日本体育協会が認定する「スポーツインストラクター」があります。スポーツインストラクター資格は、スポーツの普及や競技力向上のために、安全で楽しくスポーツを指導する能力を有すると認められた人に与えられる資格です。
他にもスポーツリーダー、フィットネストレーナー、アシスタントマネージャーなど様々なコースがあり、それぞれ受験資格や合格条件が異なります。
日本スポーツ振興センター(JSPO)が発行する民間資格です。選手の安全・健康管理、スポーツ外傷・障害の予防、救急対応、アスレティックリハビリテーション、フィジカルトレーニング、コンディショニングに関する知識・技能を認定するものです。
資格取得には、日本体育協会が認定した学校で所定のカリキュラムを修了するか、日本体育協会のスポーツ指導者資格の養成講習会を受講し、試験に合格する必要があります。
NSCA認定パーソナルトレーナーとは、日本ストレングス&コンディショニング協会が授与する資格です。トレーニングを受ける人の年齢、性別、現在の体力、過去の経験などに応じて適切なトレーニング指導ができる人のための資格です。
指導技術をさらに磨き、スポーツインストラクターとしてのキャリアアップを目指すなら、ぜひ取得しておきたい資格です。プロスポーツ選手を専属で担当するインストラクターやトレーナーには、NSCA認定のパーソナルトレーナーが多くいます。
スポーツや健康関連の専門学校・短大で学び、スポーツジムやフィットネスクラブに就職するのが一般的なルートです。専門学校や短期大学では、「スポーツインストラクター科」や「健康スポーツ科」で1~2年のカリキュラムを履修します。
医療系、調理系、美容系の専門学校では、夜間授業や通信教育を行っているところが多いですが、スポーツ系の専門学校は昼間授業のみというところがほとんどです。
授業料は150万円から200万円程度で、短期間で効率的にスポーツの基礎理論や指導法を学ぶことができます。そのため、目指す職業がある程度決まっていて、早い段階で現場経験を積みたい方に向いています。
フリーランスとして働くスポーツインストラクターの給与は様々ですが、フィットネスクラブやスポーツクラブの正社員として働く場合は、同年代の他の職業に比べて給与・年収が低くなります。正社員の場合、初任給は17万円から20万円程度で、年収は200万円から300万円程度になります。
その後、資格や人気、経験を積むことで給料は上がっていきます。他の業種に比べると給料は低いですが、スポーツインストラクターは運動が好きで、スポーツを通じて人に良い影響を与えたいという人が多く、やりがいのある職業といえます。
フィットネスクラブやスポーツクラブ、公共スポーツ施設などで働くのが一般的で、契約形態も正社員から契約社員まで様々です。中にはフリーランスとして働く人もいます。
しかし、スポーツインストラクターは若い人が多く、体力の問題で30代になると転職や退職をする方も出てきます。また、管理職としてマネジメントしたり、スポーツクラブ店舗全体の企画・運営を担う正社員に転職する人もいます。
スポーツ業界は実は転職・就職に有利な業界といえます。日本政府はスポーツ産業の拡大のために様々な政策を実施していますし、健康目的での運動需要により、フィットネスクラブや体操教室の利用者が増えていることを証明するデータがあります。
スポーツ市場の拡大や健康志向により、スポーツインストラクターの需要は今後ますます高まっていくことが予想されます。
以上スポーツインストラクターとはどのような仕事かについて解説しました。最初はバイトから始めることもできますが、正社員になれば、スポーツインストラクターのリーダーとして企画・運営・管理を行うポジションにキャリアアップできる可能性があります。本気で目指すなら、必要な資格を取得しながら、着実に経験を積んでいきましょう。