ビジネスのプロジェクトマネジメントや、物事の状況を示すのによく使われる「フェーズ」という言葉。しかし、複数の意味を持つ外国語から来たこのカタカナ語を、曖昧なまま使ってはいないでしょうか。今回は、「フェーズ」という言葉の意味と英語の「phase」の意味を明確にし、ビジネスでの使い方や例文を紹介します。また、日本語での言い換えの仕方や類語も解説していきます。
例えば、誰かとお付き合いすることになった場合、まずは「出会い」の段階があり、その後に「交際」の段階へと進みます。そして最後に「結婚」の段階が来るはずです。出会ってから何の段階も踏まずに結婚とはならないでしょう。
この段階という言葉が、英語でいうところのフェーズです。このように、「フェーズ」という言葉は、本来の英語が指している言葉の意味とほぼ同じ使い方がされますが、業界によって「フェーズ」の使い方に違いがあります。ここでは、「フェーズ」が業界でどのような意味で用いられているかを解説します。
「フェーズ」は、主にビジネス用語として「段階・区切り」「段階・時期」という意味で使われています。プロジェクトの進捗状況や事業の成長過程などを指す場合と、企業の状況が変化したときの物事の段階や段階を指す場合とがあります。
また、物理学でも「相・位相」を指して使われ、物事の見方や、様々な相が変化していく様相という意味を持っています。つまり、「フェーズ」とはこの場合単位で明確に区切られたものではなく、一連の変化として現れるものの段階や様相のことを指しています。
「フェーズ」の語源は英語の「phase」です。間違えて発音通り「faze」、「phaze」と綴らないように注意しましょう。英語の「phase」の意味は「段階」「位相」であり、カタカナの「フェーズ」は英語の発音を引き継いでいます。
さきほども少し触れましたが、英語の「phase」には、さまざまな意味があります。ビジネス以外にも、天文学で月の満ち欠けを表現したり、専門用語として、化学組成や物理状態が全体的に均一なものを表現するのに使われることもります。
つまり、ビジネスを含む日常生活で使われる意味と、学術領域で使われる意味の2つに大別されると言えるのです。
ここでは、みなさんが使う機会の多い、ビジネスの場における正しい使い方について解説します。どのようなシーンで「フェーズ」と使われるかを理解して、お互いが正しい認識を共有することで、説明や情報共有が容易になり、仕事を進めやすくなります。
「フェーズ」は、「曲面・時期」を指す言葉として使うことができます。そのため、現在の状況から別の新しい時期への移行を表現するために、例えば、「人工知能の発達により、我が社で扱っている商品開発はフェーズが切り替わろうとしている」、「取引先が上場することになったから、これからはフェーズが変わることになる」などの言い方ができます。
ビジネスでは、プロジェクトのプロセスをいくつかの段階に分けるときに「フェーズ」が使われます。プロジェクトマネジメントでは、「フェーズ1」「フェーズ2」のように、目標に至るまでの複数の工程に番号を振るのが一般的です。
「フェーズ」は、段階的な規制や臨床試験などでも使われることがあります。例えば、「〇〇規制は現在フェーズ1だが、次はフェーズ2が予定されている。」「フェーズ2の臨床試験のためのシンポジウムが開催されました。」のような使い方です。
また、「〇〇プロジェクトのフェーズ3では、A社との提携が予定されている」「フェーズ2に移行する前に、全てのフェーズ1のタスクが完了する必要があります。」といった使い方ができます。
ここでは、一般的にもよく使われるフェーズの使い方2つを紹介します。「フェーズフリー」「フェイズフリー」とは、平時と災害時の両方で有効に活用できる製品やサービス、およびその提供価値を指す言葉です。
よく耳にする「バリアフリー」は、高齢者や障害者など、介助が必要な人への空間的な自由を提案するものです。一方、「フェイズフリー」は、すべての人に時間的な自由を提案するものです。「フェーズフリー社会」「フェーズフリーデザイン」「フェーズフリー住宅」などの形で使われます。
また、「フェーズゲート」とは、フェーズとフェーズの間のバリアのようなものを指しています。建設や仕事のプロジェクトでフェーズの切れ目をはっきりさせておくことで、その基準(条件)を満たした場合にのみ、次のフェーズに進むことができます。そのため、問題やリスクを早期に発見し、対策を講じることが可能となるのです。
IT業界や建設業界などでよく使われる「フェーズ」ですが、使われるビジネスシーンによって意味が変わってくるので注意が必要です。ここでは、シーンごとの意味の違いや使い方を見てみましょう。
ビジネスの世界だけでなく、医療系のニュース、たとえばパンデミックに関する報道で、フェーズが使われるのを耳にしたことはないでしょうか。また、臨床試験でも、試験を区切るためにフェーズが使われることがあります。
例えば、「世界的パンデミックを引き起こした新型ウイルスに関する状況は、現在フェーズ4である。」「新薬の治験はフェーズ5までの5段階で行うことにする。」などの用例があります。
IT業界でもフェーズを使うことが多くなっています。例えば、次のように使われます。「お客様のご要望にお応えして、フェーズ1.0とフェーズ2.0の間にフェーズ1.5を挿入することにしました。」「プロジェクトの基本設計フェーズでは、画面設計、形状設計などが行われる。」
建設業界では、IT業界と同様に、建物が完成するまでの工程をフェーズ分けしたり、近年流行している「フェーズフリー」という言葉を使ったりしています。「このコンペでは、フェーズフリーの建築を提案します。」「建築の各段階はそれぞれのフェーズに分けて進めよう。」などの使い方があります。
フェーズの使い方や業界ごとのフェーズが使われる場面について理解したところで、ここからは類義語について見ていきましょう。ビジネス上のやり取りで食い違いが起きないためにも、それぞれの意味や違いを理解しておくことが大切です。
その1つ目は「ステップ」です。「ステップ」は「段階」とも訳せるので、「フェーズ」や「ステージ」を「ステップ」に置き換えてもそれほど大きな問題ではありません。
とはいえ、「ステップ」は「ステップアップ」という表現があるように、「一歩一歩」というイメージの言葉です。業界にもよりますが、「フェーズ」よりもさらに細かい期間を区切るときに使うとよいでしょう。
例として、「今回のプロジェクトは新規のお客様ですので、いつも以上に一つ一つのステップを丁寧に行うようにしてください。」というように使われます。
「プロセス」はフェーズと同様、仕事の進捗を管理するための言葉です。英語の「process」を語源とするカタカナ語です。「プロセス」は、「物事を行う手順や過程」という意味です。ある仕事を段階的に区切った「フェーズ」で進める方法を意味します。
例えば、「 第2段階のタスクが完了したら、次のプロセスに進むことができる。」「各フェーズのプロセスを尊重することが大切です。」といった表現が一般的です。
「ターム(term)」という言葉には「期間」または「期限」という2つの意味があります。ビジネスの世界では、その日その日で完結する仕事もあれば、他社との業務提携やプロジェクトなど、一定の時間を要する仕事もあります。
例えば、会話の中で「中長期的に」という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、同じような場面で「ターム」という言葉も使われ、「ビジネス用語」と呼ばれることもあります。
「チャプター(chapter)」は、論文や書籍で使われる場面転換や区切りのことで、日本語では「章」と呼ばれます。ビジネスにおけるフェーズは似ているようで、意味が異なります。
今回は、主にIT業界や建設業界などで使われている「フェーズ」という言葉の意味や用法について解説しました。フェーズは英語で「phase」と書き、ビジネスでは、システム開発などの長期プロジェクトの工程を表すのに使われます。
同じような意味を持つ「ステップ」の違いは、プロセスの大きさであり、「フェーズ」の方がより大きなプロセスを表していました。ビジネスの場面でも、長期的なプロジェクトや事業の進捗を「フェーズ」に分けて名付けると、説明や作業がしやすくなるメリットがあります。
ただし、業界によって微妙にニュアンスが異なる場合があるので、事前に確認して使用するとよいでしょう。