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職人の継続雇用|65歳以降の厚生年金保険はどうなる?

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昨今の高年齢者の増加に伴い、今まで定年60歳としてきた方を継続雇用で就業するケースが増えてきました。この背景には平成25年4月の「高年齢者雇用安定法の改正」や「厚生年金の受給開始年齢の65歳への段階的引上げ」などが大きく影響しています。今回はわかりにくい高年齢者の厚生年金についてまとめてみました。

従業員自身の社会保険の変更点

高年齢者の厚生年金で気をつけなければいけないのは、先ず65歳という年齢が社会保険の手続き上非常にポイントになる年齢であることです。会社によっては65歳を超えても雇用し続けた場合、様々な手続きの変更が必要となってきます。

ではこの変更点とはなにか?を掘り下げてみましょう。

国民年金

あなたの会社の社会保険担当者は国民年金の被保険者には3種類ある事を先ず知っておかなければいけません。

基本的に会社勤めの方は第2号被保険者となり、同時に厚生年金保険の被保険者でもあります。そのため65歳まで毎月給与から天引される厚生年金保険料に国民年金の保険料も含まれて給与から差し引かれていました。

従業員が65歳以上になり老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給権を取得すると同時に国民年金の被保険者ではなくなります。

この点が少しだけややこしく、例えば65歳の時点で老齢基礎年金の受給資格を得るのに必要な納付年数を満たしていなくても、会社勤めを続けていれば現行法では70歳まで第2被保険者としていることができます。

この場合は特別な手続きは特に必要ありません。

まとめると65歳を超えても勤めを辞めなければ70歳までは第2被保険者として厚生年金を払い続けられるのです。

もう一つ変更点があり、今まで老齢基礎年金の受給資格を得るのに必要な年数は25年間でしたが、今後の法改正で10年に短縮される予定になっています。

平成29年4月の消費税10%引上げが見送られたため現時点では25年間の払込が必要ですが、10年に短縮される予定に変更はありません。

厚生年金保険

厚生年金保険は70歳まで加入が認められています。

そのため65歳を超えた従業員でも加入が可能で、65歳時点で会社側が行うべき変更は特にありません。

しかし、気をつけなければいけないのは加入している本人で、65歳以前に特別支給の老齢厚生年金を受け取っている場合があります。

65歳以上になると「年金請求書(国民年金・厚生年金保険老齢給付)」を本人が日本年金機構へ提出しなければいけません。その結果、受け取る年金も老齢基礎年金と老齢厚生年金に変わります。

また、勤務しながら年金を受け取ることになりますので、在職老齢年金の計算方法にも変更があります。わかりにくいのですが65歳以上で既に年金を受け取っている場合、勤務しているところの報酬によって年金が減額される場合があるのです。

この点、わかりにくいので表にしてまとめました。参考になさってください。

年齢における減額対象 ひと月あたりの給与+年金の合計額
60歳~64歳まで 月額28万円以下
65歳~70歳まで 月額合計46万円以下

こちらの変更も本人の申請による減額対象なので、会社側は何も手続きは必要ありませんが、月額の報酬が表以上になってしまうと損をしてしまう場合があります。

介護保険

介護保険では40歳~65歳までの医療保険加入者のことを第2号被保険者、65歳以上の方を第1号被保険者と呼びます。

もし65歳以上でも勤務されている場合は第2号に該当し、給与から保険料が天引きされています。65歳を迎えて第1号になるとその後に支給される年金から天引きされる形で徴収されます。

介護保険料は第1号になったとしても払い続ける保険と認識して下さい。ただし年金受給者はすぐに年金から天引きされるわけではなく、住んでいる市町村によって変更があるので、詳しいことは年金受給時に市町村の窓口で問い合せるようにしましょう。

被扶養配偶者の変更点

次に65歳を迎えた従業員の被扶養配偶者の変更についても変更していく必要があります。ここで気にしなければいけないのは3点、国民年金、健康保険、介護保険です。こちらも掘り下げてみていきましょう。

国民年金

被扶養配偶者(主に奥さん)は従業員である旦那さんの配偶者となるので60歳未満の場合は国民年金の第3号被保険者となっていました。

それまでの保険料は旦那さんの納める保険料で賄われていましたが、65歳以上になると前記した通り、国民年金の被保険者ではなくなります。

そのため60歳未満の配偶者は第1号被保険者となり、自ら保険料を納める必要があります。

この場合お住まいの市町村で第1号被保険者への手続きが必要となりますので、注意が必要です。

健康保険

健康保険は従業員が75歳になるまで継続します。

つまりは65歳以上でも旦那さんが勤めてさえいれば配偶者より先に75歳以上にならなければ維持されます。

介護保険

介護保険も健康保険と同様で、配偶者が65歳まで勤めていれば、介護保険料を納めている範囲で賄われているため、配偶者よりも先に65歳以上にならなければ支払う必要はありません。

被扶養配偶者の変更点まとめ

被扶養配偶者の変更点で特に注意しなければならないのは国民年金です。

継続雇用で配偶者が65歳を超えて70歳まで働いた時、自身が60歳未満だったらご自身の国民年金の保険料を払わなければいけません。

その点のみ注意し、それでも不明な場合は市町村の税務課か国民年金の窓口にご相談ください。

その他の注意点

社会保険では誕生日当日を1日目として起算します。そのため「◯歳に到達した日」とは「誕生日の前日」となり、特に1日が誕生日の方は「65歳に到達した日」は「65歳の誕生日前」となり、月をまたぎ誕生日前日と誕生日の月が異なるため注意が必要です。

健康保険、介護保険、厚生年金保険(国民保険)では「当月分の給与から前月分の保険料を天引き(控除)する」ことが原則となっているため、例えば7月1日に満65歳の誕生日を迎える人は前月の6月30日が65歳到達日となります。そのため保険料が65歳に到達した突きの分から控除されない事となるため、この場合は6月の保険料控除がなくなります。

到達日の前日の原則を知っておかないと、保険料を控除されない月が発生し、混乱を招いてしまいます。特殊な例かもしれませんが、同じことは受給日にも影響しますので、慎重に確認なさってください。

まとめ

65歳という年齢は現行法では年金受給開始年齢にあたります。そのため多くのことを変更しなければならず、大きな節目の年齢とも言えます。

会社の社会保険実務担当者の方は、それぞれの場合にどの様な手続きが必要になるのか?はチェックしておくようにしましょう。

また、どうしても不明瞭な場合はお近くの年金事務所か社会保険労務士に相談なさるなどの対策を取るようにしてください。



※記事の掲載内容は執筆当時のものです。