住宅建築や外壁リフォームなどで使用する外壁材のひとつにALCパネルというものがあるのをご存知でしょうか。近年では優れた能力を持つ外壁材として、住宅や高層ビル・中低層ビル、ショッピングセンターなど多くの建造物に欠かせない存在になりつつあります。こちらの記事では外壁工事に使われるALCパネルの特徴やメリット・デメリットについてまとめました。
先程も記述したように、外壁材であるALCパネルは近年の現代建築には欠かせない、主要な素材として多く利用されています。そもそもALCパネルとはどういったものなのでしょうか。その特徴や種類を把握して、住宅建築や外壁リフォームする際に使用するかどうか検討してみてください。
ALCパネルは軽量かつ断熱性に優れた板状の外壁材で、快適な居住空間にするために便利な素材です。ALCは軽量気泡コンクリートというコンクリート素材であり、内部が詰まっておらず泡状の穴があるため、通常のコンクリートの重量と比較すると約1/4も軽くなっています。
この気泡が断熱効果をもたらし、季節に関わらず室内温度を一定にしてくれます。気泡があるといっても耐久性に問題はなく、戸建てや高層ビルなどの外壁や、屋根材・床材としても利用されています。
ALCパネルには複数の種類があり、それぞれに厚みや形状が異なります。外壁材に適した厚さ75mm以上の厚型や、軽量鉄筋の建造物に利用される厚さ35~75mm未満の薄型で、厚型は高さ31m以下の強固な建造物、ビルや倉庫などに用いられることが多くなっています。
形状は大きく分けて凹凸のない一般的な平パネル、凹凸を利用してデザインされた意匠パネル、L字に角度のついたコーナーパネルの3タイプになります。
厚みや形状だけでなく製品によって大きさを選ぶことも可能です。平パネルは幅300~600mm、長さ600m以上がメインですが、製品やメーカーによってサイズが違ってくるので、どれが良いかは建築、またはリフォーム業者と相談して決めると良いでしょう。
また、パネルの大きさは目地の多さによってデザイン性や補修材による作業工程が異なり、仕上がりの外観や費用が大きく左右されます。
軽量で耐熱性に優れたALCパネルを外壁材に使うとどのようなメリットがあるでしょうか。高い断熱効果があるだけでなく、他にも良い面があるので把握しておくようにしてください。
コンクリートよりも軽く、断熱性に優れていても耐久性が低ければ外壁素材には向いていません。しかしALCパネルは正しいメンテナンスを行っていれば耐久性も高く、50年は外壁リフォームなしでもOKです。
近年少子高齢化などに伴い引っ越しや建て替えをする方が減ったぶん、同じ住宅に長期間住み続ける方も少なくありません。そのため耐久性の高いALCパネルは、引っ越しや建て替えより長く住みたい方には適した外壁材と言えるでしょう。
耐久性が高いだけでなく耐火性に優れた面もALCパネルを利用する大きなメリットです。ALCパネルの素材はセメントや生石灰、珪石など燃えにくい素材を合わせているために耐火性が高くなっています。
そのため隣接した住宅火災が発生したときでも燃え移る危険性を少しでも低下させてくれます。また、火災が発生してもガスや煙などの有害物質を出すこともありません。
耐久性だけでなく耐震性が高いことも特徴です。ALCパネルは基本的に1枚ではなく複数枚設置しますが、地震が発生した場合、地震時の揺れが鉄骨体躯に伝わり歪むと、それを追うようにパネルも微小な回転・ロッキングしてパネルの破損や落下を最小限に留めるロッキング構法という手法を用いています。
そのため耐震性に優れ、過去に起こった地震でもロッキング構法を用いたALCパネルは他の外壁よりも破損・落下が少なく建物の安全性が認められています。
どんなものでも良い面があれば悪い面もあります。耐久性や耐火性、耐震性に優れたALCパネルでも、取り入れる際にはしっかりとデメリットを知り、その上で実際に外壁材に使用するか検討しましょう。
ALCパネルの素材のメインはセメント、そのため吸水性に優れているため、防水性が低いという面があります。パネルを設置して数年は大丈夫ですが、経年劣化によって外壁保護のための塗料膜の機能が低下し、内部に水が入ってしまいます。
何度も繰り返しますが、ALCパネル内部は泡状の穴が無数にあいているため、寒い時期には入り込んだ水が凍って膨張、パネルの破損に繋がります。
パネルが破損すれば建造物自体の耐久性も下がるので、定期的な塗装メンテナンスが必須となります。逆に言えばデメリットである防水性の低さは、正しくしっかりとメンテすれば解決できるものなのです。
外壁などの広い面積に利用する場合、貼り付けるタイプのALCパネルはどうしても複数枚を張り合わせる必要があります。そのためつなぎ目が多くなってしまうのです。
外壁材に使われるものは塗り壁であるモルタルやサイディングボードがありますが、モルタルはつなぎ目がなく、サイディングボードは同じように貼り付けるタイプのものですが、ALCパネルよりも大きいためにそこまでつなぎ目がありません。
なぜつなぎ目の多さがデメリットになるのか、それはつなぎ目が多ければ多いほど雨漏りの危険性がアップする、目地を埋めるためのシーリング材の使用量が増えるので手間と費用がかかるからです。雨漏りに関しては、先程同様に定期的なメンテナンスによってコーキング補修を行うと良いでしょう。
外壁材にはALCパネル以外に窯業系サイディング、金属系サイディング、モルタルがありますが、ALCパネルはそれらの素材のなかでも費用が高めになっています。また、つなぎ目が多いことから目地を埋めるシーリング材の量や作業工程が増えるため、工賃も高めです。
しかし初期費用が高くなるぶん、しっかりとメンテナンスを行うことで長持ちする傾向にあるのでランニングコストを抑えることは可能になります。もちろんメンテナンスにもお金がかかるので、そのあたりも考慮してください。
良い面と悪い面を把握し、ALCパネルを外壁材に使うと決まればいくつかの注意点を抑えておきましょう。注意点といってもそれほど難しいことではなく、気をつけるべきポイントを把握して長く住めるように手をかければ良いのです。
耐久性・耐火性・耐震性に優れたパネルでも、防水性に若干難ありとなっているALCパネルは水の影響を受けないようにする必要があります。そのデメリットを取り除くためには、外壁塗装を防水性の高い塗料を選ぶようにしましょう。
防水性の高い塗料は主にシリコンやフッ素、アクリル塗料などがあり、より長持ちさせたい場合には少し価格が高くてもシリコン系やフッ素系の塗料がおすすめです。
また、防水塗料だけでなく弾力の高いものであれば、ヒビが入ったときに伸縮するため多少なりとも水の侵入を防いでくれます。
つなぎ目の多いALCパネルはパネル同士の隙間を埋めるためにシーリング材を使いますが、こちらも防水塗料同様に長い期間放置すれば劣化してその役割を果たさなくなります。
そのためシーリングの補修を行うようにしてください。シーリング補修のタイミングはひび割れや破断、剥離が見られるようになれば、速やかに補修を行いましょう。
補修を行わずに放置してしまうと、雨が侵入して外壁材が損傷して雨漏りの原因にもなります。室内に水が入ってくれば湿度によるカビが発生したり木材が腐るだけでなく、シロアリなどの害虫を呼び寄せてしまうので注意してください。
初期費用がかかるものの、長く住み続けることができる外壁材・ALCパネルは、防水性の高いあ塗料やシーリング材を利用することで弱い面である防水性の低さを補うことができます。
しかし定期的なメンテナンスを行わなければ、せっかくのメリットも活かしきれません。もちろん先程も紹介したような防水性の高い塗料やシーリングの補修もそうですが、5~10年に一度は点検やメンテナンスをする必要があります。
外壁に目立った破損などが見られない場合でも数年住めば劣化する箇所は出てきます。ALCパネル塗装は10年ごとのメンテが推奨されているため、最低限10年に1度は専門業者に依頼して点検してもらうましょう。
点検やメンテ費用は依頼業者や劣化具合などによって異なりますが、一般的には100~150万円ほどかかります。もちろん10年経過していない段階でも気になる場合は、早めに点検することをおすすめします。
断熱性に優れ、高い耐久性や耐火性、耐震性を持つALCパネルは、現代建築にも適した外壁材です。しかし、安易に取り入れるのではなくパネル自体の特徴や注意点、メンテナンスの必要性などをしっかりと理解したうえで利用するようにしてください。