家を建てる際にほぼ確実に利用することになる住宅ローンですが、金額も上限なく決められる訳ではありません。基準となるのは年収に対して何倍までというところになりますが、果たしてどこまでが許容範囲なのでしょうか?今回は住宅ローンの借入金額の目安などについて解説します。
目次
住宅ローンで融資を受ける場合、金額は数千万円に上りますのでどこまででも上限が無い訳ではありません。ある程度までで頭打ちにしておく必要があるのですが、では実際にはどこまでの金額が借りられるのでしょうか?
一番わかりやすい目安となるのは、年収倍率です。賃貸を借りる際の家賃の上限額が月収の4分の1や3分の1などといったような目安が存在しているように、住宅ローンの金額についても年収の倍率によって上限を設定するところがあります。
一般的に住宅ローンというのは全国的な平均を見てみると年収の7倍から最大でも10倍辺りまで借りることができるとされています。仮に年収が400万円であった場合、借り入れできる上限の目安は2,800万円から4,000万円あたりまでということになります。
ただし、実際にいくらまで借りることができるかという点に関しては審査を行う金融機関がそれぞれで決定するものです。その為7倍から10倍までの金額が必ず借りられるという保証が付いている訳ではありません。
年収倍率のデータからは、ある程度どの金額まで借りることができるかの目安を知ることは可能です。ですがこれらの比率や平均というのはあくまでも購入金額に基づいた数字であって、住宅ローン利用額に適用されるものではありません。
年種倍率には、購入時に最初に支払う頭金まで入っている点にも注意が必要です。購入金額に頭金も含まれているケースを考えると、実際の住宅ローン利用可能な金額というのはさらに低くなります。
2019年度のフラット35利用者調査の中では、年収倍率の全国平均は約7倍程度と出ていました。ただしこれは平均で1割から2割の頭金が用意されているものであって、無い場合にはその分低くなると考えられます。
基本的には年収の7倍から最高で10倍程度という平均は存在していますので目安にはなりますが、頭金も含まれている事を考えると単純には決められない部分があります。続いては返済負担率から限度額を考えてみましょう。
そもそも返済負担率というのは、返済比率とも言われているもので年収に対する1年間の住宅ローン返済額の割合を示しています。当然ながら、返済負担率が大きいと生活にかけられる資金が減少しますので現実的には難しくなります。
よって借り入れをする際には非常に重要な数字となっていて、総返済負担率という言葉もあります。こちらは年収に対しての住宅ローン以外のローンまで含めた1年間の返済額合計の割合を示すものです。
総返済負担率を重視するのは、借り入れをする側はもちろん貸す側である金融機関などにとっても重要なものです。審査基準は金融機関ごとに異なっていますが多くはこの総返済負担率を基準にして決定しているところがあります。
この返済負担率を導き出す計算式は「返済負担率(%)=年間返済額÷年収×100」となります。会社員として勤めている場合には、年収については社会保険料や税金などを差し引く前の金額を入れ、年間返済額は住宅ローン以外の返済額を入れて計算します。
仮に年収が400万円であるとして、毎月の返済額が7万円、年間返済額が84万円と仮定した場合には計算式に当てはめると84万÷400万×100ということになるので、計算結果は21となり負担率が21%ということになります。
多くの金融機関では、住宅ローンの総返済負担率を30%から35%辺りで基準としています。年収によって総返済負担率を分けていて、年収の金額がアップするごとに負担率を上げるよう設定しているという金融機関もある様です。
国土交通省の令和元年度の民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書によると9割近くの金融機関が重要項目として扱っている結果になっているものの、50%以下を目安としているところもあるなどそれぞれで異なっています。
また、一般的に無理なく返済を続けられる返済負担率というのは20%から25%であるとも言われています。よって、20%前後に抑えることができれば住宅を建てた後の生活に関しても無理をせずに続けられるという予測ができます。
ローンの借入金額は年収の7倍などといった基準もありますが、実際に借り入れをするかの判断は金融機関等にゆだねられます。どこまで借りるかはそれぞれで異なりますが、限度額いっぱいまで借りることによって生じるリスクもあるのです。
まず1つ目に考えられるリスクは、金利が上昇してしまうというものです。借り入れ可能な限度額まで利用すれば、その分希望に近い物件を手に入れやすいという利点は生じます。特に都心などの場合にはそうした利点はプラスに働くでしょう。
しかし、借り入れる額が多くなると同じ利率であっても当然ながら多い方が利息の占める額が多くなってしまいます。加えて住宅ローンでよく利用されている変動金利型の場合、金利が上昇するリスクも孕んでいます。
実際には5年ごとに金利の見直しが行われ、大幅に上昇すればその分負担額も上昇します。借入限度額いっぱいまで借り入れていたとなるとその分の負担増加額も大きくなりますので、リスキーな行為であると言わざるを得ません。
もう1つ、年収が下がってしまうというリスクも存在しています。住宅ローンの完済までは非常に長い時間があり、最長で35年という期間が定められています。それまでに、借主の年収が変わらないという保証はありません。
むしろ変わる可能性の方が高いとも言え、注文住宅を購入した当初に年収が800万円でそれを基準に借入限度額まで借り入れたとしても、将来的に何らかの理由によって年収が減ってしまう可能性は十分にあり得ます。
そうなると、柔軟な対応ができずに返済が滞ってしまうことが予測されます。こうした想定外のことが起きうることも考えて、ローン返済額は家計管理も想定した無理のない金額に抑える方が無難と言えます。
年収の何倍までか、返済負担率はどこまでなのかというように数値は色々と存在しているものの、実際にどの程度まで借りられるのかというのが一番気になるところでしょう。最後に借り入れ金額の目安を年収ごとに解説していきます。
まず、年収と返済負担率から借り入れが可能な金額を見ていきましょう。以下の表は年収及び返済負担率毎に導き出した借り入れ可能額になります。
年収 | 20% | 25% | 30% |
---|---|---|---|
300万円 | 1,650万円 | 2,070万円 | 2,480万円 |
400万円 | 2,210万円 | 2,760万円 | 3,310万円 |
500万円 | 2,760万円 | 3,450万円 | 4,140万円 |
600万円 | 3,310万円 | 4,140万円 | 4,970万円 |
返済負担率が5%だけ違っていても、借入可能額は数百万円もの違いが生じます。年収400万円で返済負担率が25%の場合は約8万3100円、返済負担率が30%の場合は約9万9700円という毎月の返済額が出てきます。
こうした計算も面倒に思うかもしれませんが、インターネット上のサービスを利用してある程度の借入額目安を知る事が可能となっています。例えばライフルホームズの住宅ローンシミュレーターなどがあります。
年収や月々の返済額から購入可能額を調べることができたり、年収や購入金額から月々の返済額を調べるといった使い方が可能になっています。あらかじめいくつかの項目を明確にし、それらを入力すれば簡単に数字が求められます。
自分の年収や返済金額といったように様々な要素によって住宅ローンの借入金額はだんだんと明確になっていきます。ただ、社会経済や情勢によっても不動産全体の価格が変動するといった事もあるので、タイミングなども重要となっています。
全国的な年収に対しての平均は7倍などとも言われていますが、あくまでも目安であって無理のない返済ができるかどうかはケースバイケースです。事前に十分に計算などをしたうえでローンを組むようにしてください。