住宅ローンを組む際、具体的にいくら借りられるのか、毎月いくら返済しなければならないのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。物件を探す前に、金銭的な見通しを立てることはとても大切なことです。そこで今回は、年収450万円の方が借りられる住宅ローンの上限額や理想の借入額、無理なく返済していくためのコツなどをご紹介します。
目次
世帯年収450万円でも住宅ローンを借りられるのか、気になるところではないでしょうか。2022年に実施された「住宅ローン利用者の実態調査」によると、住宅ローン利用者のうち、世帯年収が400万円超~600万円未満の人は26.5%でした。
世帯年収が400万円超~600万円未満の方が住宅ローンを利用することは、決して珍しいことではありません。ちなみに、世帯年収が400万円超~600万円未満の方では、全期間固定金利型が最も多くなっています。
住宅ローンを利用する前に、まずは自分の年収からいくらまで借りられるかを把握することが大切です。
年収450万円の場合の住宅ローン借入額の上限は4400万円と言われています。しかし、この金額はあくまでも借りられる上限額であり、返済可能な金額というわけではありません。
4400万円を借りると、毎月の返済額は約13万円となり、貯蓄や生活費などの不測の事態に対応する余裕がなくなります。最悪の場合、自宅の売却や差し押さえ、強制退去を余儀なくされることになります。
借入理想金額を知るためには、ご自身の手取り収入から生活資金、固定費を差し引くことをおすすめします。
年収450万円では手取り月収は約29万円になります。そのため、上限額まで借りると手取り月収の5割近くを支出しなければならないということになります。
無理なく返済していくためには、返済負担率を25~35%以内に抑える必要があると言われています。そのため、借入額は申し込み可能な上限額である2,000万円までにとどめておくのが良いでしょう。
借入額2,000万円であれば月々の返済額は6万円台となり、無理なく返済を続けることができる上、貯蓄や生活費など様々な用途に資金を回す余裕ができます。
住宅ローンを利用する場合、重要なのは借りられる金額だけではありません。無理のない範囲で返済を行うためには、月々の返済額の目安を知ることが大切です。
概算返済額が妥当かどうかを判断するために、返済負担率を算出することができます。返済負担率とは、年収に対する年間総返済額の割合のことです。
【返済負担率】=【年間返済額合計】÷【年収】÷【100】
返済期間、金利タイプ、返済方法は、返済額に影響する要素です。毎月の返済額は、返済期間の長さ、金利タイプ、返済方法を決めることで決まります。
年収450万円の場合、融資額2,000万円の住宅ローンを組むことができます。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|---|
20年 | 1,158,000円 | 96,500円 | 25.7% |
25年 | 958,800円 | 79,900円 | 21.3% |
30年 | 828,000円 | 69,000円 | 18.4% |
35年 | 734,400円 | 61,200円 | 16.3% |
返済期間を20年とした場合、月々の返済額は96,500円、返済負担率は25.7%となります。これはフラット35の基準である35%を下回っており、月々の返済額も妥当なものとなっています。
下表は、2,500万円のローンを組んだ場合の返済額です。固定金利を1.5%と仮定し、元利均等で住宅ローンを借りた場合です。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|---|
20年 | 1,447,200円 | 120,600円 | 32.1% |
25年 | 1,198,800円 | 99,900円 | 26.6% |
30年 | 1,034,400円 | 86,200円 | 22.9% |
35年 | 918,000円 | 76,500円 | 20.4% |
借入金額2,500万円で返済期間を20年とした場合、月々の返済額は120,600円、返済負担率は32.1%となります。
「フラット35」の基準である35%を下回るものの、上限である35%に近く、突発的な出費などで家計が圧迫されやすいため、25年以上の返済期間が妥当と判断できます。
3,000万円借りた場合の返済額は以下の通りです。固定金利を1.5%と仮定し、元利均等返済を基本とした住宅ローンです。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|---|
20年 | 1,736,400円 | 144,700円 | 38.5% |
25年 | 1,438,800円 | 119,900円 | 31.9% |
30年 | 1,242,000円 | 103,500円 | 27.6% |
35年 | 1,101,600円 | 91,800円 | 24.4% |
3,000万円の住宅ローンを組むと、返済期間25年で返済負担率は31.9%となり、「フラット35」の基準である35%を下回ります。
上限の35%に近いため、突発的な出費に対応できるよう、上表では30年以上の返済期間を推奨しています。
下表は、3,500万円のローンを組んだ場合の返済額です。固定金利を1.5%と仮定し、元利均等返済の住宅ローンとします。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|---|
20年 | 2,025,600円 | 168,800円 | 45.0% |
25年 | 1,678,800円 | 139,900円 | 37.3% |
30年 | 1,448,400円 | 120,700円 | 32.1% |
35年 | 1,285,200円 | 107,100円 | 28.5% |
3,500万円の借入金額の場合、返済期間30年で返済負担率は32.1%となり、「フラット35」の基準である35%を下回ります。
上限の35%に近いため、突発的な出費に対応できるよう、上表では35年以上の返済期間が推奨されています。
下表は、4,000万円借りた場合の返済額です。固定金利を1.5%と仮定し、元利均等返済の住宅ローンとします。
返済期間 | 年間の返済額 | 月々の返済額 | 返済負担率 |
---|---|---|---|
20年 | 2,316,000円 | 193,000円 | 51.4% |
25年 | 1,918,800円 | 159,900円 | 42.6% |
30年 | 1,656,000円 | 138,000円 | 36.8% |
35年 | 1,468,800円 | 122,400円 | 32.6% |
4,000万円の住宅ローンを借りた場合、返済期間を35年とすると返済負担率は32.6%となり、「フラット35」の基準である35%を下回る計算になります。
上限の35%に近いので、突発的な出費に対応できるよう、返済期間を35年よりも長く設定したり、頭金を入れて借入額を減らしたりするのがおすすめです。
ただし、金融機関では完済年齢に上限を設けており、自由に返済期間を長く設定できるわけではありません。返済時の上限年齢から現在の年齢を引いたものが、返済期間の上限となります。
ここでは、頭金なしでローンを組んだ場合の借入限度額を考えてみましょう。頭金なしでローンを組むということは、貯金を自己資金として使わず、購入予算のすべてを住宅ローンで賄うということです。
上限額を検討する際には、シミュレーションサイト「フラット35」を利用して借入可能額を検討します。
フラット35は審査において年収を重視するため審査結果に個人差が出にくく、借入限度額がわかりやすくなります。
以下の条件で借入限度額を計算してみました。
年収 | 450万円 |
---|---|
金利 | 2.43%(2021年10月時点) |
返済期間 | 35年 |
返済方法 | 元利均等 |
年収450万円の場合、借入限度額は3,710万円になります。頭金なしだと、年収の約8.24倍を借りられることになります。
住宅購入費用を捻出できるかどうかは別問題ですが、3,710万円も借りられれば、マイホームを購入できる可能性は高いでしょう。
とはいえ、月々の負担を考えると、3,710万円借りた場合の月々の返済額は約13万2,000円となります。
年収450万円の方の手取りは約30万円で、ボーナス払いの人の場合、毎月の手取りはさらに少なくなります。
毎月の手取りが30万円の人が月々13万2,000円支払うと、手取りの44%を住宅ローンが占めることになるわけです。
残りの半分は、光熱費、生活費、育児費などを支払い、貯蓄をしなければならないと考えると、年収450万円の人が3,710万円も借りるのは合理的ではありません。
住宅ローンを利用する際、頭金を用意することで借入額が減り、住宅ローンの審査に通りやすくなります。また、頭金を準備しない場合と比較すると、月々の返済額が少なくなり、返済負担率も低くなります。
頭金を準備すると借入額が減るというメリットがありますが、頭金を準備する資金的余裕がない場合もあるでしょう。
そんなときに役立つ住宅ローンを組むコツとして、夫婦や親子の共同名義にすることができます。夫婦や親子の共有名義で住宅ローンを申し込めば、単独所有の場合よりも返済負担率が低くなるため、審査に通る可能性が高くなります。
つまり、不動産を別々に所有するのではなく、共同所有者全員が同じ不動産を所有することになります。
また、団体信用生命保険に加入していれば、連帯保証人が死亡した場合、生命保険で残債を返済することができます。
ただし、連帯保証人が退職した場合は、退職者分が連帯保証人に引き継がれるため、返済の負担は大きくなります。
また、住宅ローン控除の金額が減額されたり、贈与として贈与税が課されたりすることもあるので注意が必要です。
複数の金融機関に相談することも忘れないようにしましょう。金融機関によって、住宅ローンの審査基準はさまざまです。
ある金融機関の審査に落ちたとしても、別の金融機関に相談すれば審査に通ることもあります。1つの金融機関の審査に落ちたからと言って住宅ローンをあきらめず、複数の金融機関に相談しましょう。
複数の金融機関に相談することで、さまざまな角度から情報を得ることができ、住宅ローンへの理解を深めることができます。
住宅ローンが初めての方でも、月々の返済額をいくらに設定すればいいのか、判断できるようになります。
ここでは、年収450万円で借入可能額を増やしたい方のために、ペアローンや収入合算の方法について解説します。
共働きの場合は、収入合算という方法で借入可能額を増やすことができます。収入合算は、配偶者がパートタイムで働いている場合でも可能です。
収入合算できる金額は銀行によって異なり、例えば、配偶者の年収の50%まで合算することが可能配偶者の年収の50%が合算できるのは、配偶者がパートで年収100万円稼いでいる場合です。
収入が多ければ多いほど、信用度が高くなります。この制度の取り扱いは銀行によって異なるので、各金融機関によく確認するようにしましょう。
フラット35の場合は、収入合算の全額が集計可能なので問題ありません。しかし、他の住宅ローン商品の場合、合算した収入の全額を合算できないケースが多くあります。
例えば、夫の年収が400万円、妻の年収が300万円で、妻の年収の半分しか合算できない場合、年収の合計は550万円(=400万円+300万円/2)しかありません。
このような場合、多くの金融機関が取り扱っている「ペアローン」を利用することで問題を解決することができます。
ペアローンとは、年収400万円の夫と年収300万円の妻がそれぞれ別々の住宅ローンを組むようなものです。いわば、二人の収入を合算して全額を負担すると言い換えられるでしょう。
ペアローンの場合、それぞれが住宅ローンを組むので、住宅ローン控除が受けられたり、団体信用生命保険にそれぞれ加入できたりします。一方、注意点として、2つのローンを組むので事務手数料は2つとも同じになります。
返済負担率を上げる代わりに、借入期間を延長して負担率を下げることで、借入可能額を増やすことも可能です。
また、借入期間を延ばすと、年間の返済額も延びるので、返済負担率も下がります。返済負担率が下がると支払いがしやすくなるため、借入限度額の条件が甘くなる可能性が高いです。
ただし、期間を延長することで総支払額が増えたり、無期限で支払いが必要になったりする可能性があることは覚悟しておく必要があります。
住宅ローンで借りられる上限額を増やすことは可能ですが、いくつかの条件を満たす必要があり、場合によっては上限額が思うように増えないことがあります。ここでは、借入可能額が少ない場合の対処法について紹介します。
住宅を購入する際、最初に多額の頭金を支払うことになります。頭金の割合を増やすことで、住宅ローンの支払額を減らすことができ、結果的に借入可能額が少なくても対応できる場合があります。
また、頭金を増やすとローンの元本が減るので、利息による追加支払いを減らし、長い目で見て経済的負担を縮小することができます。
ただし、頭金を増やすためには、住宅購入を検討するずっと前から貯蓄を始めることが大切であり、できるだけ節約できるように日常生活を見直す必要があります。
住宅ローン以外にもローンがある場合は、他のローンを返済することで、住宅ローンの借入額を増やすことができます。
金融機関は住宅ローンの審査で返済負担率を試算する際、自動車ローンやカードローン、その他のローンも合算しています。そのため、他のローンがある場合は、借りられる金額が少なくなってしまいます。
また、ローンだけでなく、クレジットカードのキャッシングも借り入れ可能額に影響します。そのため使っていないクレジットカードは解約しておくと良いでしょう。
ローンの完済やクレジットカードの解約などの情報が個人信用情報に登録されるまでには1~2ヶ月かかるため、住宅ローン審査に申し込む3~4ヶ月前には他のローンを完済するようにしましょう。
住宅ローンの支払い負担を軽減するためには、貯蓄を積み重ね、ファイナンシャルプランナーにローンそのものを見直すことが大切です。
お金の管理方法を見直すには、ファイナンシャルプランナーに相談してアドバイスをもらうとよいでしょう。
ファイナンシャルプランナーはお金の管理や投資のプロなので、相談することで、日々の収支を確認し、住宅ローンの適正借入額を算出してくれるので、無理のない計画でローンを組みやすくなります。
以上、年収450万円で住宅ローンを組む場合の適切な借入額について解説しました。仮に年収450万円の方が住宅ローンを利用する場合、上限目安2,000万円の物件で購入を進めるのがおすすめです。
上限額まで借りられる場合でも、返済が借りた後の生活に大きく影響することを考慮した上で、金額を決めて申し込む必要があります。
上限額まで借りようとするのではなく、無理なく返済できる金額の範囲内で借りるのが賢明でしょう。