F1などのカーレースのタイヤ交換で活躍しているインパクトレンチ。そういったシーンを見て、「うちのクルマのタイヤ交換にも使えるかな?」と思ったことはありませんか?実際、クルマの整備工場などでは使われていますよね。
しかしドライバーと違って使う機会が少ないことから、「インパクトレンチについてよくわからない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで今回はインパクトレンチの基本から、仕様の見方や選び方などについてご説明します。工具にあまり詳しくない方にもよくわかるようにご説明しますので、ぜひご覧ください。
インパクトレンチとは一体どんな工具なんでしょう?インパクトドライバーとはどう違うのでしょう?まずはインパクトレンチの基本をご説明します。
六角ボルトを回す道具のことを「レンチ」といいます。そのレンチに回転機能と打撃機能がついて、強力に締めることができる工具がインパクトレンチです。
インパクトレンチを駆動方式でわけると、電動式とエアー式があります。さらに締め付けるボルトのサイズやトルクに応じた機種があります。このように多くのメーカーから多様なインパクトレンチが販売されています。
インパクトレンチは、六角ボルトやナットの締め付けや緩めに使います。そのため建築現場など連続してボルト締めを行う場面で使われることが多いようですね。
またクルマのタイヤ交換にも使われ、その回転力によって圧倒的な作業時間の短縮を図ることができるんです。
エアー式は工場での締め作業にも使われるなど、ボルト・ナットの締め付けについて広い範囲でインパクトレンチは使用されています。
インパクトレンチとインパクトドライバーのしくみは同じです。どちらも回転機能と打撃機能がついており、締め付けを行います。違うのは本体の先端です。
インパクトレンチの先端は、下写真のように先が四角い「角ドライブ」になっています。これはネジ回しがメインのインパクトドライバーよりも、ボルトを強力な力で回転させる必要があるためです。
下写真がインパクトドライバーの先端です。スリーブとよばれる先端に、用途に応じてドリルやドライバーのビットを取り付けて使用します。
ただし、下でご紹介するボッシュの製品のように、インパクトドライバーとインパクトレンチが兼用になっている製品もあります。インパクトドライバーのスリーブの中に角ドライブがあり、ソケットやビットを取り付けられます。
インパクトレンチのカタログを見ても、見慣れない名称が多くてわかりづらいですね。ここではインパクトレンチの仕様に記載される名称などをご説明します。インパクトレンチの細かい仕様を理解していきましょう。
インパクトレンチのカタログには「締め付け能力」という項目があり、「普通ボルト:M10〜M20(mm)」などと記載されています。
この「M10mm」とは「ボルト径が10mm」ということです。
この場合は、「ボルト径10mm〜20mmの六角ボルトを締め付けるのに適しており、これ以下のボルトは締めすぎになりやすく、これより大きいボルトは回らない」という意味になります。
インパクトレンチの角ドライブの大きさを「差込角」とよびます。インパクトレンチ用ソケットをインパクトレンチに取り付ける際には、この差込角の値が同じものを使用します。
差込角には次の5種類の大きさがあります。
ソケットを選ぶ際には、まず手持ちのインパクトレンチの差込角が何mmかを確認します。そしてその差込角のサイズの中で必要なボルト径を選びます。差込角とボルト径を区別して覚えましょう。
インパクトレンチ用ソケットは、手動用ソケットに比べると
という負荷がかかります。そのためインパクトレンチ用ソケットには次のような特徴があります。
インパクトレンチには様々なアタッチメント(先端工具)を取り付けることができます。六角ソケットの他に、アダプタを取り付ければプラスドライバーや木工ドリルを付けることが可能です。
また六角ソケットを使う場合、ユニバーサルジョイントをつければ角度がある場所でも締め付けを行えるんです。
エクステンションバーを取り付ければ、奥まった位置にあるボルトを締めることができます。このように多くの便利な部品が出ていますので、機会があれば活用してみましょう。
インパクトレンチはタイヤ交換に使うことができます。一般的にホイールナットの締め付けトルクは、
といわれます。そのため最大トルクが110N・m以上のインパクトレンチであれば、トルクは足りることになります。
しかしインパクトレンチでは、正確な締め付けトルクが設定できません。そして過剰に力を加えてしまうと、最悪の場合ボルトが折れてしまいます。そのため、インパクトレンチでの締め付けはある程度までの仮締めとして、最後の本締めはトルクレンチ等で行いましょう。
このようにインパクトレンチだけですべての作業が完了するわけではありませんが、使うことでかなりの時間短縮が見込めます。上手に活用して、手早くタイヤ交換を終わらせましょう。
※インパクトレンチを使ってのタイヤ交換については、メルテックの動画を参考にご覧ください。
インパクトレンチには様々な種類があります。安く買ったはいいけれど、締め付けトルクが足りなかったなんてことは避けたいですよね。
ここではインパクトレンチの種類をいくつかあげて、その特徴と選び方をご説明します。
インパクトレンチを駆動方式でわけると、エアインパクトレンチと電動インパクトレンチがあります。
エアインパクトレンチは、エアコンプレッサーで圧縮した空気を動力にして駆動します。電動インパクトレンチに比べて小型でパワーがあるのが特徴です。エアコンプレッサーが必要になるため、業務用で使われることが多いです。
電動インパクトレンチについては次項でご説明します。
電動インパクトレンチには、AC電源を使用するコードありのタイプと、コードレスタイプの2タイプがあります。
AC電源タイプは、コードレスに比べてバッテリーがないため軽量で、また同等能力でも価格が安くなっています。近くにコンセントがあり、締め付けるボルト数が多い場合にはAC電源タイプを選びましょう。
コードレスタイプは現在の電動インパクトレンチの主流といえます。電源コードを気にせず使用できる機動性の良さに加えて、最近はAC100並みのハイパワーをもつ機種が出ているためです。ただしバッテリーが装着されているため重量はあります。
自分が主に、どういったボルトの締め付けに使用するかということが、インパクトレンチを選ぶ最も重要な基準になります。
例えば「クルマのタイヤ交換に使いたい」という場合。クルマのナットのサイズはM10〜M12が多いため(必ず事前にサイズは確認しましょう)、締め付け能力の範囲内にM10〜M12が入っている機種を選びます。
さらにホイールナットの締め付けトルクは、普通乗用車で90~110N・m。つまり110N・m以上のトルクがないと、ナットを緩めることができません。最大トルクが110N・m以上の機種が必要となります。
このようにみていくと、必要な締め付け能力と最大トルクの値がわかります。あなたがどういったことに使いたいか、その作業にはどんなボルトが使われているか確認すれば、間違いのないインパクトレンチ選びができますよ。
インパクトレンチは様々なメーカーから販売されています。ここでは人気メーカーのおすすめ品をご紹介します。
電動工具の国内トップメーカーであるマキタ。電動インパクトレンチのラインナップも豊富です。
そんなマキタからおすすめするのはTW285DRGX。ナット落下防止の逆転オートストップモードが搭載されているため、安心して作業を行えます。
マキタと同様、電動工具の国内トップメーカーであるHiKOKI。電動インパクトレンチもマキタと同等のラインナップを誇ります。
おすすめするのはWR36DA。おすすめする最大の理由はなんと言ってもその最大トルク。充電式どころかAC電源を含めても最強の1100N・mです。さらに防じん・耐水機能付きで作業性の良さはピカイチですね。
リーズナブルな工具が人気の、自動車整備工具の専門店アストロプロダクツ。
おすすめするのはハイパワーAC電動インパクトレンチです。リーズナブルな製品ですが、最大トルクが510N・mとハイパワーな上に重量3.6kgと扱いやすい軽さになっています。
国内工具メーカーナンバーワン。そんなKTCはエアー式と電動式、両方のインパクトレンチを販売しています。
ここでおすすめするのはJTAE472。ホイールナットの仮締めに最適で、締めすぎを防止する「仮締めモード」がある、クルマのタイヤ交換にはピッタリの機種です。
老舗の総合工具メーカーTONE。KTCと同様にエアー式と電動式の両方のインパクトレンチを販売しています。
今回おすすめするのは、エアーインパクトレンチAI4201。驚きなのは、最大トルク700N・mのハイパワーでありながら、特殊強化樹脂ボディを採用し超軽量1.0kgを実現していること。超小型で作業性の良さも格別ですね。
いかがでしたか?今回はインパクトレンチの仕様の見方を中心にご説明しました。その特徴なども理解して頂けたかと思います。
最後に繰り返しますがクルマのタイヤ交換時、インパクトレンチは使っても仮締めまでにしましょう。これはインパクトレンチを販売しているメーカーも警告しています。
適正に使えば、楽にタイヤ交換が行える便利な道具です。使い方を間違えず、安全に使うことを心がけましょう。
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