近年DIYでリフォームやリノベーションを行う方が増えていますが、そのなかでもハードルが高そう、と思われていたのが塗り壁です。難易度の高そうな塗り壁ですが、実はコツさえ掴めばひとりでもできるようになります。塗り壁に使われる壁材は主に漆喰と珪藻土ですが、意外と知らないのがこの2つの違いです。こちらの記事では漆喰と珪藻土の違いや特徴、DIY方法などを紹介します。
漆喰の読み方は「しっくい」で、原材料となる石灰の唐音からきています。漆喰の壁とは消石灰・水酸化カルシウムを主成分とした壁で、消石灰に発酵させたワラやスサ(麻)などの繊維材や、海藻から採取した糊を加えて練り上げたものが日本の漆喰です。
主成分の消石灰は塩を加えて窯で焼いた石灰岩に水を加えたものであり、石灰石はサンゴ礁がルーツになっています。漆喰は製造するメーカーによって成分が異なり、天然の海藻糊を使うメーカーがあれば化学合成接着剤を使っているメーカーもあります。また、漆喰の原料は時代や地域により多少異なりますが、主に消石灰や繊維材を含む有機物を混ぜるのが基本です。
古くから建築に用いられてきた漆喰はさまざまなメリットがあり、漆喰を壁材として利用するにふさわしいメリットをチェックしてみましょう。
壁材としてメリットが多い漆喰ですが、もちろんデメリットもあるのでしっかりと把握しておきましょう。
珪藻土は「けいそうど」と読み、最近ではバスマットやキッチンでの水切り用として利用されているもので、藻の一種である珪藻(けいそう)が積み重なり化石化した堆積物です。
ダイアトマイトとも呼ばれる珪藻土は海や湖泥に沈殿した珪藻の死骸が分解されて殻だけが残った状態となり、化石となった珪藻が岩石になったもので、鉱物の一種でもあります。
細かな小さい穴があいているため体積は小さく、ろ過助剤としても利用されています。耐火性や断熱性に優れているだけでなく高い保湿性や吸湿性もあるので壁土材にも使いやすく、施工のしやすさから近年DIY建材としても注目を集めています。
リフォームやリメイクで自然素材の関心が高まるなかで、漆喰壁同様に、珪藻土の壁を選ぶ方も少なくありません。珪藻土の壁にするメリットはどこにあるのでしょうか。
漆喰の壁同様に珪藻土の壁にもデメリットはありますが、このデメリットをカバーできる施工方法もあるので、DIYするときの参考にしてみてください。
漆喰と珪藻土の壁はどちらも調湿作用や優れた消臭・脱臭効果、高い耐火性など、壁材としてさまざまなメリットをもたらしてくれます。このふたつの違いは主原料であり、接着能力の有無になります。漆喰には繊維材や海藻糊を混ぜ合わせているので徐々に固まることができますが、珪藻土は固化材を混ぜなければ固まることはなく、剥がれ落ちてしまいます。
また、漆喰は外壁や水回りでも使える耐水性がありますが、珪藻土は水に弱いので内壁のみになります。どちらが壁材として良いのかは使用する場所や立地条件、さらには家庭環境や家族構成などによって異なるので、どちらか一方が優れている、というのは一概に言えません。
上記のメリットやデメリットを踏まえ、漆喰壁のDIY方法を紹介します。事前にどの部屋に漆喰壁を塗るのか、壁の面積などしっかりと下準備を行うようにしましょう。
DIYで漆喰壁を塗るなら、まずは漆喰の種類を知っておきましょう。漆喰の壁材には自分で水を寝る混ぜるタイプや、購入してそのまま塗ることができるタイプがあります。練りタイプは調合などの手間を省くことができ、簡単に扱えます。粉漆喰は水や糊などを調合して混ぜる必要があり、ある程度のスキルを必要とします。
種類も複数あり、本漆喰は古くから城壁や蔵の壁に使われ、土佐漆喰は湿度の高い地方に適した漆喰です。海外製の漆喰は塗り壁のコテ跡にデザイン性を出せるハンドメイド感覚で使えるようになっています。
水以外の素材が調合された既調合タイプの漆喰もあり、こちらは粉末や練り込みの両方が販売され、左官のプロから一般の方まで幅広く使われる漆喰です。漆喰は白のイメージがありますが、着色されたタイプもあるので好みで選ぶといいでしょう。
DIYで漆喰壁を塗るにはある程度の事前準備を行い、失敗やアクシデントを防ぐようにしましょう。施工壁付近の家具は作業しやすいように別の場所に動かし、柱部分やコンセントに漆喰がつかないように養生しましょう。床を汚さないために、床部分にもブルーシートやビニールシートなどを敷くといいでしょう。
壁が汚れている場合やコンクリート壁、モルタル、砂壁、ベニヤ板に塗るときは下地材であるシーラーを塗って乾燥させておきます。つなぎ目や凹凸がある箇所はパテ埋めして平らにしておきましょう。
こちらの動画では練り混ぜ不要の漆喰を使った塗り方を紹介しています。作業する際の参考にしてみてください。
DIY漆喰壁にかかる費用は壁材の漆喰に施工費用がかかります。漆喰の種類や施工面積、下地材の有無によって費用が異なり、専門業者に依頼する場合は設定価格によっても違いがありますが、1㎡あたり3000~4000円前後が目安で、10万円前後になることがほとんどです。
自分で漆喰壁を塗る場合は施工費を節約できるので多少ローコストに抑えることができます。
珪藻土の壁はセルフリフォームに人気の壁材で、漆喰壁よりも施工しやすく、初心者やDIYが得意でない方にもおすすめできます。
DIY珪藻土壁も漆喰同様に事前準備が必要になります。柱やコンセント、床部分を養生しますが、珪藻土の厚みを考慮して壁から2mm程度離して養生テープを貼るようにします。
珪藻土にはシーラーなどの下処理が要らないタイプもあるので、必要に応じて壁全体にシーラーを塗ってしっかり乾燥させておきます。
こちらの動画でDIY珪藻土壁の事前準備や工程を確認することができるので、参考にしてみてください。
珪藻土の壁を専門業者に依頼すると1㎡あたり3000~6000円程度かかりますが、DIYの場合は珪藻土のタイプによって相場が異なるものの約900~2000円程度に抑えることができます。リフォーム業者に依頼すると10万円ほどかかる費用も、DIYなら4万円ほどにコストダウンできます。
より安くしたい場合は粉末タイプの珪藻土がおすすめですが、固化材などの配合が難しいので初心者にはあまり向いていません。
珪藻土や漆喰壁は使用する場所によって使い分けするのもおすすめです。また塗り壁の特徴を最大限に活かせる場所があるので紹介します。
ニオイのこもりやすいトイレは珪藻土や漆喰壁が持つ消臭・脱臭作用が最大限に活かせる場所です。トイレの壁なら面積も狭いので、手軽にDIYが始められるだけでなく、市販の芳香剤が必要なくなります。メンテナンスは重曹やキッチン用漂白剤で簡単にできます。
常に湿度が高くなる洗面所には調湿作用のある漆喰壁がおすすめです。珪藻土よりも水に強いので、水回りなら結露やカビ対策に漆喰を使いましょう。また、洗面所に洗濯機を置いてる場所では排水口からの気になるニオイも軽減してくれます。
塗り壁で一番人気のある場所がリビングです。常に人が集まる場所なので、常に空気をきれいしておきたい場所でもあります。消臭・脱臭効果に優れた珪藻土や漆喰壁を使うことでクリーンな空気を保てるだけでなく、高級感のある壁になるのでおすすめです。特にペットを飼っていたり、タバコを吸う場合はかなりの消臭効果が期待できます。
家の顔となる玄関にも珪藻土や漆喰壁はおすすめです。靴などのニオイや生活臭がこもりやすい玄関は、消臭・脱臭効果だけでなく、調湿作用のある珪藻土や漆喰壁が便利です。塗り壁にしたことで雨の日でも玄関の湿気が解消されるなどの声も少なくありません。
結露や生活臭に悩まされているなら珪藻土や漆喰で自宅の壁をDIYリフォームすればあっという間に解決できます。それぞれのメリットやデメリットを把握して、高級感のある壁に変えてみませんか。