作業現場で、作業者の命を守る防塵マスク。大変な現場で安全な作業を行うには、欠かせないアイテムです。
ですが規格が複雑で、種類が大変多いため、
「防塵マスクのおすすめ品はどれ?」
「N95やDS2という規格は何?」
という疑問をお持ちの方も、多いのではないでしょうか?
そこで今回は、防塵マスクの用途別おすすめ品や効果、規格、選び方、Q&Aを解説していきます。わかりやすくまとめていますので、防塵マスクについて詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
まずは防塵マスクについて、基本的な情報をご紹介します。
防塵マスクは、事業場や作業を行うさまざまな現場において、粉じんやヒューム、ミストといった粒子状物質を吸入する恐れがあるときに使用する、呼吸用の保護具です。
厚生労働省が定める国家検定に合格したマスクであり、基準に達していないマスクは「防塵マスク」とは呼べません。アーク溶接など、防塵マスクの着用が義務付けられた作業もあります。
防塵マスクは高機能で、花粉やPM2.5、ウィルス、放射性粉じんの吸入リスクを低減するとの有効性が認められています。また防塵マスクが、国家検定で粉じんの捕集効率を試験する粒子の大きさは、0.06~0.25µmです。一般的な花粉の大きさは約10µmですから、非常に小さいことがわかります。
そして家庭用マスクは、カゼなどにかかった人が「飛沫の拡散を防止」するために使用。マスクと顔の間にすき間が生じやすいため、空気中に浮遊する物質の吸引リスク低減への有効性は証明されていません。
このように吸引リスクに強い防塵マスクですが、その効果を得るためには、空気が漏れないように着用しなければいけません。適切なサイズを選ぶことも重要です。
また、成人が利用する目的で製造されており、子ども用としては作られていません。
防塵マスクは、国家検定規格で種類や性能が決定されています。そして規格名から、防塵マスクの性能がわかります。
こうして、下表のような合計12種類に分類されます。(表はスライド可能です)
試験粒子 S | 試験粒子 L | 粒子捕集効率 |
---|---|---|
DS3 | DL3 | 区分3(99.9%以上) |
DS2 | DL2 | 区分2(95.0%以上) |
DS1 | DL1 | 区分1(80.0%以上) |
RS3 | RL3 | 区分3(99.9%以上) |
RS2 | RL2 | 区分2(95.0%以上) |
RS1 | RL1 | 区分1(80.0%以上) |
また作業内容によって、防塵マスクの使用区分が下表のとおり分かれています。
ここでは、用途別のおすすめ防塵マスクとフィルターをご紹介します。
花粉症におすすめの防塵マスクは、3Mの『VFlex 9105J-DS2』。防塵マスクは、花粉よりも小さい粒子を防ぐよう設計されています。さらに口からの飛沫防止を目的とした家庭用マスクとは違い、顔に密着し吸入リスクを減らす構造をしています。そのため、防塵マスクは花粉症対策にも有効なんです。
『VFlex』は安心と信頼の日本製。スモール・レギュラーの2サイズがあるので、自分に合ったタイプを使えます。また、鼻からアゴの奥までしっかり包み込んで、顔あたりがやわらかい素材を使用し、会話をしてもズレにくい。
フィルターが大きく広がっており、口元に広い空間ができるため、呼吸が快適なマスクです。
最強の防塵マスクとしておすすめするのが、興研の『サカヰ式 1821H-02型』です。分類は、最も上位のRL3。レバーを引き上げるだけでフィットテストができる、フィットチェッカーが内蔵されています。また本体質量が412gと、全面形モデルでありながら軽量です。
防毒マスクとしても使用可能。伝声器つきで、マスクをしたまま会話や指示が行なえます。吸盤効果によって、高い密着性を生み出すホークリップを採用しています。
また国内で初めて、極細径の繊維をラウンドプリーツ状に一体抄紙成形して誕生したアルファリングフィルトを使用しました。こうして、より低い吸気抵抗を実現しています。
溶接用におすすめの防塵マスクは、SK11の『Wフィルター M-220S』です。区分はRL2で、溶接のほかにも研磨や切断、解体、農薬散布、清掃作業などに使用できます。
フィルターに活性炭素繊維(ACF)を配合しているため、ちょっとしたイヤな臭いも取り除きます。また従来品と比べて、フィルターの寿命が約4倍に伸びました。撥水・撥油加工したメカニカルフィルターを採用したため、水や油をはじきます。
おすすめ防塵マスクについては、こちらの記事もぜひご覧ください。
防塵マスクフィルターでおすすめするのは、興研の『アルファリングフィルタ RD-5型』です。区分はRL3で、適合マスクは次の通り。
アルファリングフィルターは、ラウンドプリーツ状に一体抄紙成形したものです。ろ過面積が最大で12倍と広いので、ラクに呼吸でき、長時間使用可能。また撥水加工により、ミストや水分に対しても威力を発揮します。
さまざまな種類がある防塵マスクですが、効果を発揮するには適正なタイプを選ぶことが重要。そこで、防塵マスクの種類と選び方をご紹介します。
防塵マスクには、使い捨て式(D)とフィルター取替式(R)があります。「D」や「R」というのは、前述した分類上の記載です。
使い捨て式とフィルター取替式では、粒子の捕集効率などに違いはありません。たとえばDS3とRS3では、どちらも固体粒子のみに使え、捕集効率は99.9%以上です。
マスクを探していて、前述した12種類の分類(DS1〜RL3)のほかに「N95」と記載されたマスクを見たことはありませんか?これは米国労働安全衛生研究所(NIOSH)が定めた規格で、「ウィルスを含んだ飛沫の侵入を防ぐ」ことが可能な、高性能マスクを指します。
厚生労働省では、N95マスクをSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)、新型インフルエンザなどの対策指定品のひとつと認定しています。医療施設内の日常業務での感染を、最小限に押さえるマスクです。
そして防塵マスクのなかで、N95と同等の効果を得られるのは「DS2」と「RS2」。法律で定められた労働作業現場でN95マスクは使用できませんが、ウィルス対策やPM2.5対策としては、N95とDS2はどちらも有効に使うことができます。
防塵マスクの選び方でもっとも大切なのは、「作業内容に合ったタイプを選ぶ」ことです。「防塵マスクには12種類ある」と前述しましたが、マスクの機能や性能は用途によって異なります。目的に合ったマスクを使用してください。
次に、使い捨て式(D)とフィルター取替式(R)のどちらかを選びます。フィルター取替式は長い期間使えて経済的ですが、フィルターを定期的に交換することが必要です。マスクの使用頻度から選んでみましょう。
そして、使い捨て式の一部にはサイズが選べるタイプがあります。しっかりと自分に合ったサイズを選んでください。
ここでは、防塵マスクのメーカーをご紹介します。
防塵マスクや防毒マスクなど、保護具の専門メーカーである株式会社重松製作所。その創業はなんと1917(大正6)年ですから、100年以上前です。官公庁や大手メーカーに納品するなど、保護具の最大手でありパイオニア企業です。
防塵マスクや防毒マスクなどの労働安全衛生保護具、環境関連機器・設備の製造・販売を行う興研株式会社。防衛省にも納品している実績から、信頼性の高さがわかります。防塵マスクでは、フィルター取替式を多種類販売しています。
アメリカのミネソタ州に本拠地を備える3M Company。世界70カ国でビジネスを展開し、約9万人の従業員を抱えるグローバル大企業です。特に、使い捨て式防塵マスクのラインナップが豊富です。
最後に、防塵マスクについての疑問にお答えします。
フィルターは水洗いすると、捕集効果が低下します。そのため、水洗い可の使い捨て型防塵マスクはないようです。
しかしフィルター取替式では、水洗い可能なフィルターもあります。ただし、厚生労働省の通達で「水洗いしたフィルターは、新品時より粒子捕集効率が低下していないか、吸気抵抗が上昇していないかを確認すること」と定められています。その性能を測定するためには、高額な機器を用意しなくてはなりません。
そこで、自分で水洗いするのではなく、メーカーの再利用サービスを利用しましょう。シゲマツのメカニカルフィルタは、捨てずに再利用可能。2週間ほどで届けられ、性能が低下したフィルターはシゲマツ負担で新品と交換してくれます。
防塵マスクは、ホームセンターでも販売されています。もちろんAmazonなど通販でも販売されていますが、サイズや形状は実物で確認したいもの。できれば、ホームセンターなどで実物の形状やサイズを確認したうえで、購入することをおすすめします。
ワークマンでも、防塵マスクは販売しています。ただしワークマンオリジナルブランドではなく、興研や高儀などの一般メーカー品です。
区分DS2の防塵マスクについては、新型インフルエンザやSARS(重症急性呼吸器症候群)など、ウィルスを含んだ飛沫の侵入リスクを下げることが認められています。
ただし現在のところ、マスクを付けることで新型コロナウィルス感染を予防できるという、確たる証拠は出ていません。それは、DS2やN95規格の高性能マスクでも同様です。
わかっているのは、マスクを付けることで新型コロナの飛散防止効果は高くなるということ。新型コロナウィルスでは、無症状の感染者がウィルスを広げるケースがあります。できるだけマスクを付け、無症状でもウィルスを広げないよう心がけましょう。
防塵マスクは、正しく付けないと効果が出ません。顔とマスクの間にすきまがあれば、そこから粉じんが侵入してしまいます。そのため、自分の顔に合った形・サイズのマスクを選び、正しく装着しましょう。
正しい装着の手順は次のとおりです。
*:フィットチェックとは、マスクの密着性を確認すること。陰圧法と陽圧法がありますので、取扱説明書などに記載された正しい方法で行ってください。
今回は、防塵マスクの用途別おすすめ品や効果、規格、選び方、Q&Aなどを解説しました。防塵マスクは多くの種類がありますが、作業内容にあったものを選ぶことが大切ということがわかりましたね。
用途にあった、適切なサイズのマスクを選んで、適切に装着することはあなたの安全に関わります。今回の記事を参考に、適切な防塵マスクで安全な作業を実現してもらえれば幸いです。