建築士資格の最高峰である「一級建築士」は、木造や鉄筋コンクリートのビルや住宅をはじめ、商業施設や学校など、全ての建築物の設計、工事監理を行うことが出来る国家資格となります。学歴や実務経験が必須となり、非常に難易度の高い資格試験ですが、独立開業も出来る資格であるため、毎年約2万5千人ほどの方が受験されています。今回は、そんな「一級建築士」について各種情報をご紹介します。
簡単に「一級建築士」についてご紹介します。
一級建築士は建築士資格の最高峰となり、住宅をはじめ工場や学校など、規模、用途に関係無く全ての建築物を設計、工事監理を行うことが出来る国家資格で、国土交通大臣から交付される免許となります。
先にも少し記載しましたが一級建築士の資格を持っていれば、二級建築士や木造建築士などに課せられる「延べ床面積」や「建築物の高さ」といった制限が全く無いため、木造をはじめ、鉄筋コンクリートの住宅やビル、商業施設や映画館など、全ての建築物に対する設計、工事監理を行うことが可能となり、場合によっては大規模な公共工事などにも携わることが出来ます。
実際の厳密な年収データはありませんが、口コミサイトなどでの情報では600~700万円前後といわれています。建築士の最高峰となりますので、二級建築士や木造建築士と比較すると年収は高くなります。
一級建築士の受験資格を得るには、建築に関する学歴と資格に応じた実務経験が必須事項となり、第1号~第5号に分類される条件を満たしていなければ試験を受けることが出来ません。
第1号:大学において指定科目を修了し卒業した場合には、卒業後実務経験2年以上
第2号:3年制短期大学(夜間部を除く)で指定科目を修了し卒業した場合には、卒業後実務3年以上
第3号:2年制短期大学、または高等専門学校で指定科目を修了し卒業した場合には、卒業後実務4年以上
第4号:二級建築士を取得している場合には、実務経験4年以上。
第5号:国土交通大臣が特に認めるもので、建築整備士を取得している場合には、実務経験4年以上。その他については所定の年数以上
上記のように、全て実務経験が「○○年以上」となっており、厳しい要件となっています。
先にご紹介した第1号~第5号までの受験資格要件をクリアした方のみが、受験出来る一級建築士資格を得るまでの流れをご紹介します。
1:第1号に該当する場合
大学を卒業 → 実務経験2年以上 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
2:第2号に該当する場合
3年制の短期大学を卒業 → 実務経験3年以上 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
3:第3号に該当する場合
2年制の短期大学、または高等専門学校を卒業 → 実務経験4年以上 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
4:第4号に該当する場合
二級建築士を取得 → 実務経験4年以上 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
4:第5号に該当する場合
建築整備士を取得 → 実務経験4年以上 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
その他 → 各条件に応じた実務経験年数 → 学科試験 → 合格 → 設計製図の試験 → 合格 → 免許申請(国土交通大臣) → 一級建築士免許取得
一級建築士の受験者数は、平成25年~平成29年の5年間のデータを見ても学科試験だけで約26,000人が受験していますが、専門性の高さから合格率は約16%~19%と非常に低く、簡単に合格出来るものではありません。総合合格率も平均約12.1%とかなり厳しい数字となっています。過去5年間の合格率一覧をご紹介します。
年度 | 平成25年度 | 平成26年度 | 平成27年度 | 平成28年度 | 平成29年度 |
---|---|---|---|---|---|
受験者数(総合) | 26,801 | 25,359 | 25,804 | 26,096 | 26,923 |
合格率(学科) | 19.0% | 18.3% | 18.6% | 16.1% | 18.4% |
合格率(製図) | 40.8% | 40.4% | 40.5% | 42.4% | 37.7% |
合格率(総合) | 12.7% | 12.6% | 12.4% | 12.0% | 10.8% |
合格される方の傾向としては、大学を卒業した後に実務経験を積み、試験を受けている方の割合が高く、全体の約72%近くとなっています。その次に多いのが二級建築士を取得後に一級建築士を受験される方が約18.1%となり、合格者の男女比は約76:24となり、合格者の4人に1人が女性という比率になっています。
資格試験は1年に1度となりますので、事前にしっかりとした勉強と対策が必要となります。
一級建築士の試験は「公益財団法人 建築技術教育普及センター」が毎年行っています。簡単に受験手順についてご紹介します。
一級建築士の受験料の払い込み方法は、インターネット上でのクレジットカード決済と、コンビニエンスストアでの決済の2種類のみとなっています。受験料は同じですが、事務手数料が異なりますので注意が必要です。
1:クレジットカード決済の場合
受験手数料19,700円 + 事務手続手数料425円 = 20,125円
2:コンビニエンスストア決済の場合
受験手数料19,700円 + 事務手続手数料221円 = 19,921円
試験日程について簡単にご紹介します。
受験申込(04月) → 学科試験(07月) → 学科試験合格発表(09月) → 設計製図試験(10月) → 最終合格発表(12月)
毎年4月に受験申込が始まり、期間が2週間程と短いので受験を考えている方は、「公益財団法人 建築技術教育普及センター」のウェブサイトを頻繁にチェックすることをおすすめします。
受験の申込み方法は、各種必要書類を郵送で送付する場合と、インターネット上の2種類となりますが、どちらも申込み期間が約2週間程度と短いため、インターネットでの早期の申込みをおすすめします。
一級建築士をはじめ、二級建築士や木造建築士の試験を主催している公益財団法人 建築技術教育普及センターのウェブページをご紹介しておきます。
ウェブサイト:http://www.jaeic.or.jp/shiken/mk/index.html
一級建築士の出題科目や出題数について、ご紹介します。
1:学科試験について
建築計画、環境工学と建築設備、建築法規、建築構造、建築施工の5項目に分かれ、合計125問を四肢択一式で回答するようになっています。試験時間は合計で6時間30分と長時間で、1日掛けての試験となります。この学科試験に合格すれば、10月に実施される設計製図の試験へ進むことが出来ます。
2:設計製図試験について
設計製図試験については、事前に公表される課題建築物についての設計図書の作成となります。内容としては決められた縮尺での配置図をはじめ、階層ごとの平面図や断面図、計画の要点や面積表など数多くの課題を約6時間30分で作成する試験となります。
一級建築士になるためには、まず最初の難関である学科試験をパスする必要がありますが、平成25年~29年までの学科試験の合格率を見ると、約19%前後と非常に難しい試験であることが分かります。確実に実力を身に着ける勉強方法が必要となりますので。簡単にご紹介します。
専門の学校へ通って、徹底的な試験対策をすることが、一級建築士の資格取得を目指している方には、最も確実な早道かも知れません。受講費用が掛かりますが、専門講師による授業やテスト解説など、試験対策に絞った授業が受けられるため、独学では理解し難い項目も気軽に質問することが出来るなどメリットがあります。有名な専門学校のウェブサイトをご紹介しておきます。
1:総合資格学院:http://www.shikaku.co.jp/strength/index.html
2:日建学院:http://www.ksknet.co.jp/nikken/guidance/architect1q/index.aspx
3:TAC:https://www.tac-school.co.jp/kouza_kenchiku.html
一級建築士の試験に合格するには、やはり過去問題を何度も何度も繰り返し解くことが一番の早道となりますが、その中でも特に建築法規と建築構造の項目については、最重点項目として勉強することをおすすめします。この2項目については、本番の試験でも設問数が各30問の計60問と多く、しっかりと勉強することで他の項目よりも点数を稼ぎ易いという傾向があります。おすすめの各種テキストを少しだけご紹介しておきます。
1:総合資格学院 (編集) 1級建築士試験 学科 過去問スーパー7
先にご紹介した総合資格学院からリリースされている問題集で、過去7年分の試験問題が収録されており、さらに独自の解説を掲載していますので、しっかりと理解しながら勉強することが出来ます。
2:総合資格学院 (編集) 1級建築士試験学科ポイント整理と確認問題
こちらも先にご紹介した「過去問スーパー7」同様に、総合資格学院からリリースされており、厳選した過去問題を解説付きで収録しており、参考書としても使用出来るため、おすすめです。
建築士資格の最高峰である「一級建築士」について、試験内容や要綱、受験資格などをご紹介しました。総合合格率は約12%前後と、非常に難易度の高い資格ですが、経験によってはご自身での独立開業も可能なことから人気が高く、毎年多くの方が受験されています。実務経験などの要綱もありますので、気軽に受験することは出来ませんが、建築関係にお勤めの方であればステップアップのために、チャレンジされてみては如何でしょうか。
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