仕上げ釘を連続して打込めるフィニッシュネイラ。作業時間が大幅に短縮でき、とても便利な工具のひとつです。
ですが、
「フィニッシュネイラはどのように使うの?」
「エア式と充電式のどちらが良い?」
という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、フィニッシュネイラの使い方から、エア式・充電式の特徴、おすすめ品などをご紹介します。使い方を詳しく知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
まずは、フィニッシュネイラの基本知識についてご説明します。
フィニッシュネイラとは、釘打機のひとつで、仕上げ釘(フィニッシュネイル)と呼ばれる釘を打込むことができます。仕上げ釘はピンのように細く、頭径がたいへん小さい釘です。
釘を打った跡が目立たないため、化粧材や巾木など内装工事の仕上げなどに使われることが多く、そのため「フィニッシュネイラ」と呼ばれます。
また、「フィニッシュネイラ」という名称はマックスの商品名であるため、他メーカーが使うことはできません。そのため、HiKOKIでは「仕上釘打機」、マキタでは「仕上釘打」や「面木釘打」といった名称を使っていますが、すべて同じ工具です。
釘打機には、使用する釘(針)ごとに機種があり、さらにメーカーによって工具の名称も異なります。
前項の通り、フィニッシュネイラと仕上釘打機はメーカーが違うだけで、同じ用途の工具です。
タッカとは釘ではなく「コの字型」の針(ステープル)を打つ工具のことをいいます。ステープルは保持力が強いため、布材料などの貼り付けに多く使われます。ただし打込み跡(針の頭)が目立つため、人目につかない箇所の固定がおもな用途です。
他にピンネイラ(「ピンタッカ」とも呼ばれます)という工具もあり、こちらは、仕上げ釘よりも「細くて頭径が小さい」ピンネイルの打込みに使用します。
フィニッシュネイラのモデルによっては、フィニッシュネイルの他に、より細いスーパーフィニッシュネイルも使用可能です。
これらは化粧材など釘を目立たせたくない仕上げ材に使いますが、下図のように、頭径が大きい(跡が目立つ)ほど保持力も大きくなります。
そこで、保持力と見た目を考慮して、どの場所にどのネイルを使用するか決めるのです。ピンネイルは保持力が弱いため、ボンドと併用し、ボンドが固めるまでの仮止めとして使います。
ちなみにタッカで使用する針(ステープル)は、保持力は強力ですが、打込み跡がとても目立ちますので、上表では最も左端に位置します。
フィニッシュネイラは便利な反面、釘を打ち出す大変危険な工具でもあります。ここでご紹介する使い方を確認して、安全に使用しましょう。
作業時には、打ち損じのネイルがはね返ることがあり、目に当たると大変危険です。そのため、作業者だけではなく、作業者の周囲の人も必ず保護メガネを着用しましょう。
また作業場が狭く、音がこもるような場合は耳栓を、粉じんが多い場合は防じんマスクを着用します。
エア式フィニッシュネイラの使い方は以下のとおりです。MAXのフィニッシュネイラを例に説明しますので、上図の名称を参考にご覧ください。
エアホースを接続する前に、フィニッシュネイラ本体について以下の点検を行います。
エアホースを接続した途端に誤作動してしまわないよう、接続前には以下のことを実施します。
まだネイルは装填せず、エアホースだけをフィニッシュネイラ本体に接続し、以下の確認を行いましょう。
このどちらかでも当てはまれば、本体かエアホースの故障が考えられます。使用を中止して、メーカーの販売店に修理を依頼しましょう。
使用前には必ず、安全装置が正常に作動するか確認が必要です。ネイルは装填せず、エアホースを接続し、トリガロックダイヤルをフリーにセットして作動を確認します。
ここで次のように作動した場合は、安全装置が故障しています。使用せずに修理を依頼しましょう。
メーカー指定以外のネイルを使用すると、本体の故障や事故につながることがあります。取扱説明書やカタログで確認し、必ず指定ネイルを使用しましょう。
また、ネイルを装填するときは、必ずトリガをロックし、エアホースを外した状態で行って下さい。
フィニッシュネイラの使用空気圧範囲は決まっています。その範囲を超えた圧力で使用すると、本体が損傷したり、故障で事故が起こる恐れがありますので、必ず守りましょう。
例)MAX TA-255の使用空気圧範囲:0.4〜0.8MPa(4〜8kgf/㎠)
まずは本体のエアプフラグ口からオイルを注油します。オイルの種類や量は、各モデルの取扱説明書を確認して下さい。
ネイルを装填し、エアホースを接続したところで、以下の手順によりネイラを対象物に打込みます。
作業終了後には、以下のお手入れを行いましょう。
ネイルが本体に残っていると、次回の使用時に誤って動作させて事故につながることも。必ずマガジンからネイルを抜きとりましょう。
移動する際にエアホースを接続していると、誤ってネイルを発射し、事故につながります。必ずトリガをロックした上で、エアホースを外しましょう。
またネイル装填やネイルづまりを直すなど作業を中断する際も、やはりトリガのロックとエアホースを外すことを心がけましょう。
充電式フィニッシュネイラの使い方は、次のようになります。MAXの充電式フィニッシュネイラを例に説明しますので、上図の名称を参考にご覧ください。
電池パックを本体に装着する前に、以下のような本体の点検を行います。
使用前にいったん電池パックを取り付け、以下の手順で本体の確認を行います。
電池パックを取り付けただけで作動音がしたり、発熱や異音などがあった場合は本体が故障しています。メーカーに修理を依頼しましょう。
使用前に、安全装置に異常がないかを点検します。以下の手順で行って下さい。
ここで本体が作動した場合は、安全装置が故障しています。使用せずに修理しましょう。
次の手順を参考に、メーカー指定のネイルを装填します。
以下の手順で、対象物にネイラを打込みます。
フィニッシュネイラのモデルによっては、打込み深さを調整できる機能がついています。打込みすぎると保持力が低下するため、打込み状態を確認しながらアジャスタの調整を行って下さい。
作業が終了したら、トリガをロックし、電池パックを取り外します。キャリングケースに収納して保管してください。
電池パックを長持ちさせるために、6ヶ月以上使用しない場合は、以下のことを守って保管しましょう。
水平面に釘打ちを行う際は、前進しながら釘打ち作業を行います。安全で正確な作業ができ、疲労も少なくなります。
後ろに下がりながら作業すると、周りが見えず、ひっかかるなど危険です。
垂直面に釘打ちを行う際は、一番高いところから下に釘打ち作業をしていきます。
傾斜面の釘打ちは、下から上に向かって、前進しながら作業を行います。上から下に後退して釘打ちを行うと、足を踏み外して転落する危険がありますので、やめましょう。
フィニッシュネイラを使用する際は、次のことを必ず守りましょう。
エア式フィニッシュネイラを使用するとき、動力源は必ずエアコンプレッサを使用します。
酸素やアセチレンなどの高圧ガスは絶対に使ってはいけません。高圧ガスを使うと、異常燃焼を起こして爆発する恐れがあります。
作業場所に物やコードが乱雑に散らばっていると、つまづいて誤作動を引き起こすなど事故の原因となります。作業場所はつねに整理整頓を心がけましょう。
トリガに指をかけたまま本体を持ち歩くと、誤ってネイルを発射し事故につながる恐れもあります。打つとき以外は、トリガに指をかけないように注意しましょう。
射出口をしっかりと対象物に当てて、ネイルを打ち出します。確実に対象物に当てていないと、ネイルがはねたり、それたりして危険です。また本体が強く反発することもあります。
射出口を人に向け、誤ってネイルを発射してしまうと大変な事故につながります。絶対に人に向けてはいけません。
射出口付近に手足を近づけて作業することも避けましょう。また、打ち損じたネイルが飛んで、人に当たる恐れもありますので、つねに周囲の人には気をつけて作業しましょう。
壁を境に向かい合って作業を行うと、打ち損じたネイルが前方の作業者にあたって大変危険です。向かい合っての釘打ちは絶対にやめましょう。
フィニッシュネイラやエアコンプレッサを、シンナーやガソリンといった揮発性可燃物のそばで使用すると、ネイル打込み時の火花によって引火したり、爆発する事故につながります。絶対に近くでの使用はやめましょう。
フィニッシュネイラは、動力源で分けるとエア式と充電式(電動)があります。ここではまず、エア式フィニッシュネイラの特徴をご説明します。
エア式は、エアコンプレッサを動力とするフィニッシュネイラです。フィニッシュネイラはもともとこのエア式が主流でした。しかしここ数年は、高性能の充電式が販売されたことで、シェアは下降気味です。
充電式と比べたときのメリットとしては、本体の軽さが挙げられます。また、本体がスリムで扱いやすいことも特徴です。
デメリットとしては、動力源としてエアコンプレッサを準備する必要がある点。そして、取り付けたエアホースの取り回しに注意しなければならない点があります。特にエアホースは絡まったり、物を落とすなどで破れが発生するため注意が必要です。
またエア式には「高圧用」と「常圧用」の2種類があります。使用するエアコンプレッサも変わってくるため、次項ではこの違いについてご説明します。
エアーコンプレッサーについては、こちらの記事もぜひご覧ください。
高圧エアコンプレッサを動力源として使用するのが高圧用フィニッシュネイラです。こちらのHA-55SF2では、使用空気圧は1.0〜2.3MPaとなります。
常圧用と比較すると、高圧のハイパワーで打込みが行える、本体がスリムで扱いやすいといった特徴があります。
常圧用フィニッシュネイラは、動力源に常圧のエアコンプレッサを使用します。こちらのTA-255SF2では使用空気圧が0.4〜0.8MPaです。
高圧用と比べると、本体が若干大きくなりますが、長時間打込みを行うことが可能。打込みの仕上がりは高圧用と変わりませんので、手持ちのエアコンプレッサの種類や作業量などでどちらを選ぶか判断すると良いですね。
発売後、大きく販売数を伸ばしている充電式(電動)フィニッシュネイラ。ここでは、その特徴をご説明します。
2016年にマックスが業界初の充電式フィニッシュネイラを販売。高い打込み力と低反動など品質も良かったため、マックスの充電式フィニッシュネイラは業界で大変受け入れられました。
その後、HiKOKIとマキタも充電式フィニッシュネイラを販売します。こうして、それまでエア式しかなかったフィニッシュネイラの勢力図が徐々に変わりました。
エア式と比べた充電式のメリットは、何といってもエアホース不要の取り回しの良さ。そしてエアコンプレッサ不要の持ち運びの容易さです。移動が多く、エアホースの取り回しが難しい場面での作業に最適といえます。
こちらがマックスの業界初である充電式フィニッシュネイラ TJ-35FN2です。
ここでは、DIY用におすすめするフィニッシュネイラをご紹介します。
フィニッシュネイラは、住宅などの建築現場で使われるイメージがありますが、DIYでもぜひ活用して頂きたい工具です。
木材を使用して棚などを作る場合には、フィニッシュネイラは大変役立ちます。瞬間でしっかりと釘打ちができるため、時間も手間も省略可能。
床張りなどでも活躍しますので、DIYに慣れてきた方には、フィニッシュネイラの使用をおすすめします。
DIY用におすすめするのは、SK11の常圧用エア式フィニッシュネイラSA-F35L-X1CAです。本体は870gと超軽量で扱いやすく、打込み深さを変える深さ調整ダイヤル、安全装置も付いて入門用モデルとしても最適。
また工具には珍しい迷彩柄を使用しており、他にはないデザインのモデルです。
ここではフィニッシュネイラの代表的メーカーと、おすすめ品をご紹介します。
もともとエア式のフィニッシュネイラ(仕上釘打機)を販売し、好評を得ていたHiKOKI。
2018年に販売した充電式がこちらです。現在販売されている充電式フィニッシュネイラの中で、最もハイパワーの36Vバッテリーを使用しているため、大人気となりました。
こちらは高圧用のエア式フィニッシュネイラ。特許取得のスマートプッシュ機構を搭載し、スッキリした先端部で打つ場所が見やすくなるとともに、素早くキレイな仕上がりを実現します。
国産初のネイラ(釘打機)を開発・販売したマックス。そのため、手動からエア式、電動まで最も多くの種類のネイラを販売しています。
さらに、国内で最も早く充電式フィニッシュネイラを発売したのもマックスです。性能も良かったため、HiKOKIのモデルが発売されるまで、充電式はマックスの独壇場でした。
エア式でおすすめするのが、こちらの高圧用HA-55SF2です。スリム先端コンタクトノーズで、斜め打ちも可能。風量調整エアダスタ機構も付いて、より使いやすくなっています。
MAXについては、こちらの記事もぜひご覧ください。
国内電動工具トップメーカーのマキタ。エア式と充電式のフィニッシュネイラ(仕上釘打・面木釘打)も販売しています。
充電式は、マックス・HiKOKIに続いて2019年に販売。マキタのセールスポイントである、バッテリー共有可能な18Vシリーズです。また他社よりも価格が安いことも特徴です。
こちらは高圧用のエア式フィニッシュネイラAF552H。スマートタッチ機能搭載で、美しい仕上がりと疲労軽減を実現したモデルです。
電動工具や建築用工具などの製造・販売を行う高儀。DIY向けのオリジナルブランドである「EARTH MAN」からエア式フィニッシュネイラが発売されています。
価格が安く、使いやすいことが特徴の高儀らしく、こちらのフィニッシュネイラも大変安価です。また打込み深さ調整機能や、誤射による事故を防ぐ安全装置付きですので、安心して使えるモデルになっています。
頻繁にフィニッシュネイラを使うわけではないけれど、DIYで使ってみたい。そういった場合は、レンタル・中古の品を利用するという方法もあります。
ホームセンターでも工具のレンタルをしていますが、フィニッシュネイラのレンタルをする店舗はあまりないようです。そのため、近隣のレンタルショップか、オンラインのレンタルショップを探しましょう。
こちらのレンタルショップでは、2泊3日からフィニッシュネイラのレンタルを行っています。
・レンタルトライ
・レンタルプロント
※エアコンプレッサをお持ちでない方は、忘れずにエアコンプレッサとエアホースもレンタルしましょう
フィニッシュネイラを中古で入手するには、近隣の中古工具ショップや、オンラインのオークションなどを利用する方法があります。
しかしここで注意が必要なのが、工具にはメンテナンスが必要という点です。特にエア式フィニッシュネイラは、使用前後のオイル注油や作業後の本体水抜きをしっかり行わないと、内部が錆びつき使用不可になってしまいます。
「中古で安く買ったのはいいけれど、すぐに使えなくなってしまった」ということがないよう、中古で購入する際は、メンテナンスがしっかり行われている品物を探しましょう。そのためには、工具専門の中古ショップなど、信頼できるお店を見つけ、そこで購入することをおすすめします。
今回は、フィニッシュネイラの使い方から、エア式・充電式の特徴、おすすめ品などについてご説明しました。作業時間が劇的に短縮する一方で、使い方を誤ると大変危険な道具ということがおわかり頂けたかと思います。
ぜひ今回の記事を参考に、フィニッシュネイラを安全に使い、釘打ち作業の効率化につなげてみてください。