転職は住宅ローンの審査で不利になる⁈転職後に住宅ローンを申し込む際の注意点を解説
住宅ローンは安定性・継続性を審査されるため、転職直後だと契約できないのではと心配される方も多いかもしれません。しかし、先に結論から言うと、金融機関が適切と判断すれば、転職直後でも住宅ローンを組むことは可能です。この記事では、住宅ローン返済中に転職した場合の転職のタイミングや必要な手続きについて詳しく解説していきます。
目次
転職すると住宅ローンの借入審査に落ちる?!
原則として、住宅ローンの審査では転職が不利に働くケースがほとんどです。これは、多くの金融機関が住宅ローンの審査において、申込者の勤続年数を重要視しているためです。
ただし、転職後すぐに住宅ローンの審査に絶対に通らない、通らないということではありません。
例えば、転職によって前職よりも収入が大幅に増えた場合や、中小企業から大企業に転職した場合などは、審査で有利になる可能性があります。
ただし、これは例外で、原則、転職直後の住宅ローン審査は通りにくいと考えた方がよいでしょう。
住宅ローンの審査項目
まず、住宅ローンにはどのような審査項目が設定されているのかを見てみましょう。金融機関によって基準は異なりますが、主な審査項目は次の10項目とされています。
- 完済時年齢
- 健康状態
- 担保評価
- 借入時年齢
- 年収
- 返済負担率
- 勤続年数
- 連帯保証
- 金融機関の営業エリア
- 融資可能額
特に返済時年齢と借入時年齢は返済計画に直結する項目であり、健康状態や担保評価も重要です。
これらの項目を審査に考慮する金融機関は8~9割以上と言われており、借り手自身の返済能力をシビアに判断する傾向にあるようです。
このほか、転職の際には、年収の安定性・継続性、連帯保証人、勤続年数なども審査されます。そのため、将来的に転職と住宅取得の両方を考えている方は、住宅ローンの審査項目をクリアする覚悟が必要です。
転職後に住宅ローンに申し込む際の注意点
転職直後は基本的に住宅ローンの利用が難しいことを理解した上で、それでも住宅ローンの利用を希望する場合は、以下の点をよく検討して住宅ローンを申し込むかどうかを決めるとよいでしょう。
注意点①年収の計算
転職後の年収が確定している場合は、その年収で審査されますが、年収が確定していない場合は、金融機関によっては見込み額で計算される場合があります。
ボーナスなど計算対象期間外のものは概算額に含まれません。そのため、概算額が実際の年収より低くなる場合があります。その場合、借入可能額も減ってしまうので、より注意が必要です。
注意点②勤続年数が重視
金融機関が勤続年数を重視するのは、申込者の収入が安定しているかどうかを見極めたいからです。
金融機関が最も避けたいのは、住宅ローンが貸し倒れになることです。勤続年数が長ければ、金融機関はその人の収入が安定していると判断します。
しかし、勤続年数が短いと、近い将来転職や退職で収入が減るのではないかと思われてしまう可能性があります。ところが、勤続年数が短いと、金融機関は収入が安定していないと判断することも考えられます。
そのため、勤続年数の短い申込者に対してはハードルを高く設定し、毎月安定した収入が見込めるかどうかを徹底的にチェックするのです。
注意点③申し込み書類の増加
転職後すぐに住宅ローンを申し込む場合、通常の申し込みに必要な書類に加えて、以下のような書類の提出を求められることがあります。
- 在職証明書・雇用契約書
- 勤務先発行の継続勤務証明書
- 収入予定証明書
- 給与明細
- 職歴書
金融機関により必要書類が異なります。お申し込み前に、どのような書類がいつ必要になるのか、金融機関にご確認ください。
住宅ローン審査は、お申込時にご提出いただいた書類等をもとに行われます。そのため、お申込から融資実行までの間に転職された場合、審査結果やお申込自体が無効となる場合があります。
お申込時に近い将来転職を予定されている方は、後々のトラブルを避けるためにも、必ず金融機関にその旨をお伝えください。
住宅ローン審査の流れと転職のタイミング
転職のタイミングを知る前に、住宅ローンの流れを理解することが大切です。流れを理解することで、どのタイミングで何をすればいいのかがわかるようになります。
住宅ローンの事前審査について
住宅ローン事前審査とは、買主が不動産購入のために住宅ローンなどの融資を受けようとする際に、事前に行う審査のことです。売買契約締結前に、売主が金融機関に融資を受けられるかどうか確認します。
売買契約締結後に、借りようと思っていたローンが組めなかった場合、売主、買主、関係者に不利益が生じる可能性があります。そのため、事前に金融機関による仮審査が行われるのです。
融資実行日と審査完了日について
注意したいのは、転職に適したタイミングは住宅ローンの審査が終わった時点ではないということです。
金融機関は事前審査や最終審査で報告された情報をもとに、住宅ローンの融資を認めるかどうかを判断します。
しかし、融資実行前に転職してしまうと、審査時に申告した情報と直近の状態に差異が生じるため、融資を受けられない可能性があります。住宅ローンの本審査完了から実際の融資までは、最低でも3日~1週間程度かかります。
転職のタイミングは融資の実行後
転職がバレなければ大丈夫と思う方もおられることでしょう。しかし、実はある必要書類によって、転職先が簡単にバレてしまうのです。
転職がバレる可能性のある必要書類とは、事前審査と本審査の両方で提示を求められる「健康保険証」です。
日本は国民皆保険制度であり、誰もが健康保険証を持っています。会社に勤めている人は、会社が所属する健康保険組合から健康保険証が発行されます。
健康保険証には「資格取得日」が記載されているので、いつからその会社で働き始めたかが一目瞭然です。
そのため、住宅ローンの融資実行後に転職するのが良いでしょう。具体的な年数は金融機関によって異なりますが、会社員で転職後3年以内、起業後3年以内という方は特に注意が必要です。
転職予定があるなら金融機関に相談
住宅ローンは一般的に「申込」「審査」「融資実行」という流れになりますが、必要に応じて「申込」前に金融機関に相談することも可能です。
転職を予定している方で、ローンの利用について不安や疑問がある場合は、いきなり申し込まず、まずは金融機関の住宅ローン担当者に相談してみましょう。
頭金と融資額のバランス、申し込みのタイミング、転職前にローンを申し込むことのメリット・デメリットなど、十分に説明を受けるようにしましょう。
転職したばかりでも住宅ローン審査に問題ない場合
転職したばかりだからといって、必ずしも住宅ローンの審査に通らないとは限りません。一般的には勤続年数が1年以上必要と言われていますが、以下のような場合は勤続年数が半年でも審査に通る可能性があります。
グループ会社や関連会社への転職は問題ない
会社の規模にもよりますが、前職のグループ会社や関連会社への転職は、そもそも転職とみなされない場合があります。このあたりは各金融機関の判断になりますので、事前にご確認ください。
スキルアップのための転職は評価よし
金融機関では、その転職がキャリアアップやスキルアップにつながるかどうかを審査します。スキルアップやキャリアアップであれば、年収アップのケースもありますし、転職先で働き続ける可能性も高いです。
また、将来的に転職したとしても、再びキャリアアップやスキルアップにつながる可能性が高いでしょう。したがって、継続的に安定した収入を得る可能性が高いと判断されます。
借り手の転職が「スキルアップやキャリアアップ」につながるかどうかの判断に、明確なルールはありません。ただし、金融機関に提出する「職務経歴書」によって判断することに留意する必要があります。
職務経歴書には「転職理由」欄が付きますので、その内容や会社の規模によって総合的に判断されます。スキルアップやキャリアアップと判断されれば、銀行などからは好印象を持たれるでしょう。
転職するなら一貫性と将来性があること
前職と転職先の業界・業種・仕事内容に一貫性があるかどうかも重要なポイントです。同業種・同職種への転職であれば、自分のスキルや専門性を活かしてスキルアップできる可能性が高く、収入も安定すると判断されやすいでしょう。
逆に、全く違う業種への転職は基本的にNGです。特に、転職が短期間であったり、年収が大きく下がったりすると、金融機関も融資に慎重にならざるを得ません。
住宅ローンの審査は勤続年数が重視されている
住宅ローンの審査では勤続年数が重視されるため、転職後すぐに住宅ローンの審査に通らなかったり、希望する金額を借りられないケースがあります。
住宅ローンの審査に落ちてしまうと、他のローンの審査も不利になる恐れがあるので、できれば転職直後の住宅ローンの申し込みは控えた方が無難です。
転職後まで住宅ローンの申し込みを待っていれば、勤続年数が伸びて審査に有利になるだけでなく、頭金を貯める時間やより慎重な返済計画を立てる時間にも充てられるでしょう。
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※記事の掲載内容は執筆当時のものです。