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外壁再塗装などの時に知っておくべきケレン作業の目的と分類など

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おもに建設業でよく用いられる「ケレン」という用語。聞きなじみのない方向けに、
・ケレンの目的
・ケレンの分類
・ケレンの道具
について紹介します。

ケレンの目的


ケレンとは塗装作業の前の下地調整作業を指します。下地調整をおこなう被塗物は様々で、金属部以外にも木部や樹脂表面でも行われます。
大きく分けて、

  1. 被塗物の表面の錆を除去すること
  2. 被塗物の表面の旧塗料や汚れなどの異物を除去すること
  3. 被塗物の表面を適度に荒らして表面積を増やすこと(目荒らし)
  4. 被塗物の毛羽立ちを押さえて表面粗さを適切な範囲におさえること

を指します。それぞれの詳細については後述します。「ケレン」という単語は、英語のclean(クリーン)が訛ったものが語源とされています。

ケレン=「クリーン」な被塗装面を作ること と覚えるとわかりやすいです。

ケレンを行うことで、塗装がはがれにくくなり、塗料本来の耐用年数が発揮されます。

家庭や建築業界では、外壁塗装や車の塗装修理時の、さび落としや表面をヤスリで荒らすことを指します。
「ケレン」は、建設・建築業界では広く浸透している言葉で、同じ作業を指す言葉として、「素地ごしらえ」「下地処理」「目荒らし」などがあります。
また、溶接現場では溶接ビード上のスラグ(異物)を取り除くつるはし状の工具を指して「ケレン」と呼ぶこともあります。
製造業では、塗装前に溶接スラグを除去したり、素材の錆を落としたり、レーザー加工の酸化被膜を除去することを指す場合があります。

それでは、上記のケレン作業の目的や効果について説明します。

錆除去・・・被塗物(金属)を錆びにくくする

すでにサビが発生している金属表面の場合、仮にその状態で塗装を施すと、たとえ良質な塗料を使ったとしてもサビの浸食は防げません。また、表面に異物が付着している状態では、塗膜と被塗物の間に水が残ったり、水が入り込む空隙が残ります。
そのため、グラインダーなどの研磨工具を使用してサビを除去してから塗装、「サビを寄せ付けにくい」外壁に復活します。その上から塗装を施せば、見た目はもちろんのこと、塗料の耐候性も期待できます。

異物除去・・・汚れを除いて塗膜の密着性を高める

壁の塗り替え時など、被塗物に旧塗料が残っていることがあります。古い塗装の上に汚れが残っていたりすると、せっかく塗り替えても旧塗膜と新しい塗膜の境から剥がれやすくなってしまうのです。同じように、部分的に古い塗装が残っている場合、古い塗装と被塗物の間の密着がほどんどなくなっている場合があります。この状態では、仮に古い塗装の上が汚れていなくても、古い塗装と被塗物の境界から塗装がはがれてしまうことがあります。そのため、塗装前のケレンで汚れや旧塗膜を除去すれば、被塗物と新塗膜の間が異物なく密着するので、塗膜本来の密着性が発揮されます。

目荒らし・・・アンカーくさび効果で塗膜の密着性を高める

つるつるの鏡の上に接着材をつけても、その境界から接着剤がはがれてしまう経験はありませんか?このように表面が平滑すぎると、異素材同士の密着性が悪くなります。材料表面の凹凸に塗料が入り込んでしっかり密着することをアンカー効果といいます。
工業塗装では、被塗物を化学薬品に漬けて、金属表面をエッチングし、化学的に表面を荒らす場合があります。建築現場などでは、化学処理はできないので、金属の平滑な面をヤスリ等で削って表面を荒らしてから塗装します。木材のようにすでに表面が荒れている素材については不要な工程です。

毛羽立ち除去・・・塗膜の密着性を高める

木材に対する処理です。毛羽立ちとは、木の表面の繊維が浮き上がる現象です。斧で薪を割った表面をイメージするとわかりやすいです。建築材料においても、粗く切り出した木材表面はささくれ立っています。そうした状態で塗装を施すと、大きな汚れがある場合と同様に剥がれやすくなります。また、使用者を傷つける恐れもあります。そのため木部は目の細かい研磨工具で毛羽立ちを除去して、ある程度平面にしてから塗装を施します。

ケレンの分類


建築関連分野では、金属材を対象とした「ケレン」は4種類に分類されます。

ケレンは、被塗物の劣化の程度や強度、作業環境条件により選択する種別が変わります。数字が大きいほど、劣化が少ないときに行うケレンで、費用は安くなります。

1種(一般住宅用にはほぼ適用されない)

専用の機械を使って旧塗膜や異物を全面除去して、光沢のある表面にするもの。
鉄部が非常に激しく腐食した状態の塗装に対して行います。
主に「ショットブラスト工法」が採用されます。研削材(白けい砂・銅粒・銅砕粒など)を高圧で吹き付けて、金属面のサビや異物を落とす処理です。この工法には、粉じんや騒音などの作業環境の問題や、被塗物がある程度厚く強度がないとできない工法なので、ブラスト工法は一般住宅における外壁塗装では適用されません。一般住宅の外壁塗装でケレン1種に相当する腐食が発生している場合は、基本的に部材の交換が必要となります。費用は以下と比較すると高額になります。

2種

電動工具を使って旧塗膜や錆を全面除去するもの。
電動工具や手動工具でひたすら被塗物の表面を削り、旧塗膜と錆を取り除きます。主に鉄骨を対象とし、「ディスクサンダー」「ワイヤーホイール」「パワーブラシ」「ニューマチックハンマー」などの電動工具を使用します。電動工具が適用できない場所(狭い部分など)はやすりなどの手動工具を使用します。被塗物の全面を対象とするため、以下に比べて費用は高めです。選定のポイントとして、大体被塗物の30%以上の表面に錆が発生している場合、2種ケレンを選定します。
錆びてない旧塗膜も全て除去するのが、2種ケレンです。

BOSCH ボッシュ 100mmディスクグラインダー GWS7-100
BOSCH ボッシュ 100mmディスクグラインダー GWS7-100

・誰の手にもジャストフィットする56mmφ細径グリップで握りやすい。
・ハイパワーモーターによりパワフルな作業が可能。
・考えられた設計で高耐久なグラインダーです。

3種

2種と同様、電動工具や手動工具で錆を除去するのですが、違いは「まだ十分密着しており、傷みがないと判断した旧塗膜は残す」という点です。外壁塗装におけるケレンのなかでは、最も多く採用されているそうです。部分的で軽度なサビや剥がれを対象としており、「ワイヤーブラシ」「やすり」「スクレパー」「ケレン棒」などの手動工具を主に用います。選定のポイントとして、被塗物の5~30%の表面に錆が発生している場合、3種ケレンを選定します。点錆が浮いている程度が目安です。

SK11 伸縮式 ステンレスケレン棒 最短1500~最長2500mm PSK-1
SK11 伸縮式 ステンレスケレン棒 最短1500~最長2500mm PSK-1

・サイズ:通常1500mm
・サイズ:最長時2500mm
・パイプ:特殊パイプ
・刃部:ステンレス

4種

電動工具を用いず、サンドペーパーやワイヤーブラシを当てる程度の作業を指します。
最も作業工数が少ないケレンです。サビや旧塗膜の劣化が少ない状態の表面に適用します。「ワイヤーブラシ」「やすり」などを用います。軽度な汚れには、サンドペーパーを使うこともあります。サビがないときは、表面の洗浄作業にとどまるケースが主流です。

コンヨ (KONYO) チャンネルブラシ 小判 真鍮
コンヨ (KONYO) チャンネルブラシ 小判 真鍮

・鋼・合金等の研磨仕上げに。
・ハンドルが上部にあるので上から押さえつけやすい形状です。
・ブラシ部長さ:15mm

上記の通り、被塗物の状態によって、何種のケレンを選択するかによって、かかる費用が大きく変わってきますが、適切な下地処理を行うかが最終の塗装の仕上がり具合に影響しますので、安易に安いからと言って4種ケレンを選択せず、しっかり施工業者に現場を確認してもらってから見積もりを出してもらいましょう。

被塗物の状態によって選択するケレン種別が変わりますので、どの部位に何種ケレンを施工するのか確認しておくと、費用の件で後々揉めません。

ケレンの道具

最後に、日曜大工レベルの柵などの再塗装の際に使用するケレンの道具について紹介します。
ケレンに使用する工具は、上述の通りワイヤーブラシや、サンドペーパー、などの動力不要のものや、電動・エア駆動のディスクグラインダー、サンダーなどがあります。
ワイヤーブラシは手作業に用いられるもので、毛が金属製の大きな歯ブラシのような形状です。
ディスクグラインダーやサンダーは電動やエアで動かす工具で、研磨材が回転して異物をこすり取るようになっています。
電動・エア駆動工具は、手動工具に比べ作業時に大きな音が発生したり、大量の粉塵や火花が出ることもありますので、作業環境に注意してください。

まとめ

本記事ではケレン作業の目的、種別、工具について紹介しました。
被塗物や、要求する仕上がり具合に応じて、適切な種類のケレンを選定する参考にしてください。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。