吊りクランプとは?その種類と使い方を解説
吊りクランプは、重量のある鉄板や鉄骨、石材、コンクリートなどを持ち上げる際、安全に吊り上げることができる道具です。建築や土木、鉄工、造船など、幅広い分野で利用されています。
吊りクランプは、てこの原理利用して吊り上げをおこないますが、吊り上げる材質や形状によってさまざまな種類があり、目的に合わせて使い分けられます。
また、吊りクランプは構造がシンプルなため、使い方を間違えると大事故を起こす可能性があるので注意が必要です。そこで今回は、「吊りクランプの構造と種類、使い方について」と題しまして、吊りクランプについて詳しくお伝えしていきたいと思います。
吊りクランプとは?
吊りクランプは、荷物の重さを利用して吊り上げをおこなうための用具で、一般的によく利用される縦吊りと横吊りのクランプはアメリカで開発され、建設や土木、鉄工、造船、運輸、重機など、世界中のさまざまな現場で幅広く利用されています。
しかし、吊りクランプは構造がシンプルなため、点検不良や使用ミスによる人身事故が後を絶ちません。吊りクランプだけに限らず、工具や用具を使用する際は、どのような場合でも安全確認をおこなう必要があります。
それでは、次に吊りクランプの用途について見ていくことにしましょう。
吊りクランプの用途
吊りクランプは、レッカーやクレーンのフックに取り付け、鉄板や石材などをしっかりとつかみ、安定感のある運搬をおこなうことができます。鉄板や石材などは、ワイヤーロープを巻き付けることで持ち上げたり移動したりすることはできますが、吊りクランプを使用することにより、ぐらつき防止が可能で安全性が大幅に増すため、鉄板や石材といった重量のある荷物を運ぶ現場では、吊りクランプは必須アイテムとされています。
吊りクランプの構造
吊りクランプは、シンプルな構造に見えますが、構造力学や材料力学、機械力学など、非常に高度な技術を駆使して設計されています。一般的に利用される機会の多い縦吊りと横吊りのクランプは、つり環、リンク、カムから構成されていて、つり荷重をカム力に変換することにより、安全な荷物の吊り上げを可能にしています。この際のカム力は、縦吊りクランプで1.6倍、横吊りクランプで約1.0倍の吊り荷重で支えることができます。
吊りクランプの種類
吊りクランプは、縦吊りクランプと横吊りクランプ、吊り用および万能型の3種類が基本で、それぞれ手動ロック式と自動ロック式のクランプに分かれています。吊りクランプは、メーカーにより形式や呼び方に違いはありますが、容量は定格荷重を表していて、クランプ範囲は対応できる部材の厚さを表しています。それでは、ここからは吊りクランプの種類を見ていくことにしましょう。
縦吊りクランプ
縦吊りクランプは、主に重量のある鉄板などに利用します。使い方は、部材を吊り上げたときに、クランプの口が縦向きになるようにします。そして、部材をくわえて引き上げ、縦に吊り上げて運搬します。また、吊り上げた際に部材を反転させる場合にも活用できます。容量は0.5~10トン、クランプ範囲は、容量に合わせてそれぞれサイズがあるので選ぶ際はチェックしておきましょう。
横吊りクランプ
横吊りクランプは、鋼板やH形鋼、山形鋼などを水平にくわえて吊り上げる際に利用されていて、建設や鉄工、造船など、幅広い分野で広く使用されています。使用する際は、部材が宙に浮いたとき、くわえたクランプの口が横向きになるようにします。容量は0.5~5トンまでとなっています。
ねじ式クランプ
ねじ式クランプは、クランプの口がネジ式でしっかり固定できるため、縦吊りや横吊り、横引など、さまざまな吊るし作業が可能で、主に鉄鋼部材などの吊り上げに使用されます。ま容量は0.5~5トンまで対応していて、メーカーごとにかみ合わせ部分の素材に工夫が施されているので、用途に合うものを選ぶようにしましょう。
コンクリート製品用クランプ
コンクリート製品用クランプは、用途によりさまざまな種類が提供されていて、写真のものは主にコンクリート製の平板やU字溝、マンホール、溝蓋などの吊り上げに利用されています。使い方としては、積み込みや積み下ろしがメインですが、クレーンだけでなく、複数人での手動による作業でも使用できるものもあります。容量は、用途に合わせてさまざまな種類が提供されているので、目的に合わせて選べることができます。
石材クランプ
石材クランプは、石の平板や墓石などを安全に吊り上げて、移動および運搬をするための用具で、クランプする際に墓石や大理石など、表面を傷つけないように当て板が加工されたものや、荒石用専用のものまで、用途に合わせて使い分けることができます。
無傷クランプ
無傷クランプは、吊り上げる部材の表面をクランプすることにより傷がつかないように、用途に合わせて噛み合わせの部分が加工されていて、縦吊りや横吊り、カム付きハッカーなどで展開されています。吊り上げが可能な部材は、鉄板や型鋼、ステンレス鋼、アルミなどです。
吊りハッカー
吊りハッカーは、平鉄板の4カ所に取り付けることで水平に吊り上げることが可能で、絞り吊り用や引っ掛け吊り用、カム付き型などさまざまなタイプがあります。容量は1~5トンまでのものが一般的に用いられています。
木質梁専用吊りクランプ
木質梁専用吊りクランプは、木質梁の吊り上げ施工を目的に設計されたクランプで、吊り上げる際は、2台1組で使用し、主に住宅建設の現場で活用されています。
吊りクランプの使い方
吊りクランプは、作業する内容に合った適切なものを選定しましょう。ポイントは、吊り上げる部材の形状、重量、クランプ範囲の確認です。クランプを使用する前には、必ず取扱説明書を熟読し、しっかり理解しておきましょう。また、多数のクランプを同時に使用する際は、同じ機種、容量のものかを再度チェックしてください。部材にクランプを取り付ける際は、不安定にならないように確実にしましょう。
使用上の注意
・クランプは取り扱い席者が作業前に必ず点検をおこなうようにしてください。
・クランプにもし異常が見当たる場合は絶対に使用しないでください。
・クランプは作業に適合したものを選定しましょう。
・吊りクランプは玉掛け作業の法定資格がない場合は使用できません。
・玉掛け作業以外での使用はできません。
・重ね吊り、横つかみは絶対にしないでください。
・吊り下げた部材が落下もしくは転倒する範囲内への立ち入りは厳禁です。
・吊荷の温度は150度以上-20度以下にならないようにしましょう。
・つかみ部の勾配が10度以上ある吊り上げものは使用禁止です。
・滑りやすい材質、塗膜、油などが付着している吊り上げものは使用禁止です。
・クランプを改造して使用することは絶対にしないでください。
まとめ
今回は、「吊りクランプの構造と種類、使い方について」と題しましてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか?吊りクランプは、シンプルな構造に思われがちですが、非常に高度な技術を駆使して設計されていて、利便性と安全性に優れた吊り用具です。
しかし、吊りクランプは、シンプルが故に使い方を怠ると事故を起こす原因につながります。吊りクランプは、日々のメンテナンスを心がけ、正しい使い方を守るようにしましょう。今回の記事が皆さんの参考になればうれしいです。
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。