フルハーネス特別教育とは?受講内容や方法など詳しく解説!
高所作業で落下防止のために用いるハーネスが労働安全衛生法が変わったことで高所作業では必須アイテムになりしました。これにより一定条件下での現場ではフルハーネスを正しく使うための特別教育を受けなければいけません。
そこでこちらの記事ではフルハーネス特別教育の受講方法や内容、免除になる条件などを紹介するのでぜひチェックしてください。
目次
高所作業に欠かせないフルハーネス特別教育とは
元々高所作業する場合、身の安全を守るために安全帯と呼ばれるハーネスを装着する必要がありました。しかし法改正により装着するハーネスの種類や条件が変更、事業者には高所作業者の安全を確保するために特別教育を受講する、または受講させることが義務付けられています。そこで高所作業に欠かせないフルハーネス特別教育とはどのようなものかチェックしてみましょう。
法改正で講習が義務化されたフルハーネス特別教育
フルハーネス特別教育とは2018年6月に法改正、2019年2月1日に施行された高所作業に関する新たな教育で、新ルールに伴い高所作業者の安全性を高めるために行われる教育です。
これまでも高所作業では落下による事故防止のために安全帯をつけることが義務付けられていましたが、安全帯と言われる主な器具はU字や1本つりの胴ベルト型やハーネス型が主流でした。
しかしこれらの安全帯では落下衝撃による腰部骨折や内臓破裂など身体への影響が懸念されていたため、他のものと比べて落下時に身体への負担が少ないフルハーネスを導入し、新規ガイドラインや使用方法を作業者や事業者に広く理解を求めるためにフルハーネス特別教育の受講が義務化されました。
フルハーネス型安全帯が選ばれた理由を動画で見てみよう
今回新たに採用されたフルハーネス型安全帯が選ばれた理由はこちらの動画を確認することで分かるようになっています。これまで利用されていた胴ベルト型は腰部分でのみ支えるため、抜け落ちる可能性や腹部圧迫の危険性がありましたが、フルハーネス型は身体全体にベルトが掛かっているので一部分にだけ衝撃を受けたり、抜け落ちない構造なので作業員の安全が守れるため採用されました。
フルハーネス特別教育の規定
改正によってこれまでの規定で変更された箇所がいくつかあります。呼び名の変更や受講対象者など以外に特別教育を受講しなかった場合、罰則を受けることもあるので、しっかりと把握するためにも変更されたポイントをチェックしておきましょう。
規定①安全器具の正式名称
これまで落下防止に使われていた安全器具である安全帯は「墜落制止用器具」に切り替わっています。そのため安全帯とされていた胴ベルト型(U字つり)は「ワークポジショニング用器具」になり、胴ベルト型を使用する際にはフルハーネスを同時着用することが必須となります。しかし呼称が「安全帯」のままでも罰則があるわけではないので、現場では慣れ親しんだ呼び方でも大丈夫です。
規定②受講対象者
フルハーネス特別教育の受講対象者は労働安全衛生規則の第36条・特別教育を必要とする業務の41号に記されていますが、そちらに記述されているものを確認するところ、作業床のない2m以上の高所作業に係る作業員が対象となります。
具体的な作業として
- 送電線架線や電柱、電信柱上の作業、木造家屋や低層住宅での作業
- 鉄骨・鉄塔の組み立てや解体、作業床にならない斜面のキツい屋根作業
- 足場を設けることができず滑りやすい素材の屋根下地上での作業
- 足場組み立てや解体・つり棚足場の足場板設置・撤収作業
- スレート屋根材上の踏み抜き防止による歩み板の設置・撤去作業
- 天井クレーンのホイスト点検作業
- チェア型ゴンドラで行う作業
これらの業務を行う場合には受講対象者となりますが、作業する方が対象であり、通行や昇降だけの場合は対象者に含まれません。また、上記に挙げた作業以外にも受講を受ける必要がある場合や、作業全判が対象となることもあれば一部作業のみが対象になることもあるので注意してください。
建築業務に携わる方はほとんどが当てはまりますが、陸運業でも対象となることがあるのでしっかりと確認することをおすすめします。
規定③罰則
フルハーネス特別教育は労働安全衛生規則に基づくものなので、対象者であるにも関わらず特別教育を受講しない場合は無資格として罰則が与えられます。特別教育を受講していない者を該当箇所で作業させた場合、事業者には6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が課せられます。
フルハーネス特別教育はすでに2019年2月1日に施行されたものであり、該当箇所でフルハーネスを着用して作業する場合には必ず受講する必要があるので、法令違反にならないだけでなく、作業員の安全を守るためにもしっかりと講習を受けましょう。
フルハーネス特別教育の受講方法
フルハーネス特別教育を受講する方法は複数あり、決まった場所での講習は全国各地でも開催されていますが、講師が出向いてくれるパターンやWeb講座による方法もあります。それぞれの講習によって特徴が異なるのでチェックしてみましょう。
受講方法①講習会を受講
フルハーネスの特別教育講習会は建設業関連が主催となって全国各地で行われているので、それに参加する方法が一般的です。主に労働技能講習協会や中小建設業特別教育協会、建設業労働災害防止協会が講習会を開催しており、それぞれの公式サイトにて開催日時のスケジュールや費用などが掲載されているので確認して参加するといいでしょう。
上記に挙げた団体以外にも講習会を開催しているので、各地域ごとに検索してみてください。近隣で開催されない場合には出張講習を行っている場合もあるのでチェックしてください。申し込み方法やスケジュールは各団体によって異なるのでしっかりと把握しておくことをおすすめします。
受講方法②出張講義サービスで受講
先程も記述したように近くで講習会が行われない、講習を受けることができない場合には講師が出向いてくれる出張タイプによって講義を受ける手段もおすすめです。出張講義サービスを利用すれば開催会場までの出張費用の節約や移動時間などを短縮でき、受講参加者が多ければ割引を行っている団体もあります。
出張講義サービスを希望する場合はこちらをチェックしてください。
上記団体以外にも出張講義サービスを行っているところは多数あるので、受講人数や費用などを検討して選ぶといいでしょう。
受講方法③自社講習で受講
講習開催会場に出向いたり、講師を現地派遣する出張講義サービス以外に自社で講習を行う方法もあります。受講対象者が多い場合には社内講習することで参加しやすいメリットがあります。先程紹介したように、出張講義サービスを利用して自社に講師を呼ぶ方法もありますが、フルハーネス特別教育に関する教育方法の講習を受け、講師の資格を得ることで社内講習を行うことができるようになります。
「フルハーネス型安全帯使用作業特別教育講師養成講座」のカリキュラムは作業・労働災害防止・安全帯などに関する知識や法律を学び、教える立場になるための講習が含まれています。また、自社講習を行う場合は講習内容に実技も含まれているため、参加人数分のフルハーネスやフックが取り付けできる設備などが必要になってきます。
自社講習は受講対象者の人数や設備などによって、出張講義サービスを利用するか講師の資格を得るかは各企業によってメリット・デメリットが分かれます。
受講方法④Web講習を受講
時間や場所などある程度の融通がきき、空き時間に講習を受けるならWeb講座に参加する方法もおすすめです。インターネット環境が整っていればフルハーネス特別教育の学習動画を視聴・閲覧することが可能です。しかしWeb講座で受講する際に注意しなければならないポイントは動画視聴だけでは修了証が発行されることはありません。
Webでの講座は決められた時間以上学んだことを証明するために事業者などが同席する必要があります。また、Web上で受講できるカリキュラムは学科のみになるので、実技実地責任者(経験者)立ち会いのもと実技を行うことが必須となります。
個人事業主や一人親方など立ち会いができる経験者がいない場合には第三者による実技実地責任者立ち会いのもと行いましょう。
フルハーネス特別教育の科目別受講内容
フルハーネス特別教育のカリキュラムは学科が4時間30分、実技1時間30分となり、全過程を終了させるためには6時間の講習が必須なのです。科目毎に範囲と受講時間が決められているので確認してください。
科目①作業に関する知識【学科】
受講時間は1時間、講習内容は作業に使う設備の種類や構造及び取り扱い方法、作業中に使う設備の点検・整備の仕方、作業の仕方を学びます。
科目②墜落制止用器具に関する知識【学科】
受講時間は2時間、講習内容はフルハーネス・ランヤードの種類及び構造や付け方・選択方法、ハーネス・ランヤードの点検と整備方法と関連器具の使い方になります。
科目③労働災害防止に関する知識【学科】
受講時間は1時間、講習内容は落下による労働災害防止や落下物の危険防止、感電防止に関する手続きや処理法、作業用ヘルメットの使い方や点検方法、事故発生時における手順、その他作業中の災害防止方法です。
科目④関係法令【学科】
受講時間は30分、講習内容は労働安全衛生法や労働安全衛生法施行、労働安全性規則などの労働に関係する法律を知るために勉強します。
科目⑤墜落制止用器具等の使用方法【実技】
受講時間は1時間30分、講習内容はフルハーネスやランヤードの付け方、落下を含む労災を防ぐための手続きや処理法、フルハーネスやランヤードの日々のチェックや整備の仕方を学びます。
フルハーネス特別教育が免除になる条件
学科と実技合わせて6時間の講習が必須となりますが、実は一定条件下では一部科目が免除になる場合があります。この条件に当てはまる場合には講習時間を短縮できる可能性があるので、確認しておきましょう。
条件①フルハーネス型を用いて行う作業に6月以上従事
フルハーネスを使った作業を6カ月以上していた場合には上記で紹介した学科の作業に関する知識や墜落制止用器具に関する知識、実技の墜落制止用器具の使用方法3科目の講習が免除されます。
これらが免除となれば合計4.5時間の短縮が可能となり、実際に講習を受ける時間が1.5時間で済むのです。これは半年以上使用していることからフルハーネス型に関する経験や知識が十分備わっていると判断されるため免除になります。
免除対象となる業務はこちらを確認してください。
免除可能な業務経験
- 建築作業で鉄骨上での作業
- 天井クレーンのホイスト点検業務・ホイストに乗車して行うもの
- チェア型ゴンドラで行う作業
免除可能とならない業務経験
- 足場の手すりを一時的に取り外しての作業
- パラペット端部・開口部での作業
- 高所作業車で作業を行うもの
- 天井クレーンのホイスト点検業務・ガーターに乗って行うもの
- デッキ型ゴンドラで行う作業
条件②胴ベルト型を用いて行う作業に6月以上従事
フルハーネス型ではなく胴ベルト型を用いて6カ月以上の作業経験がある場合は学科の作業に関する知識1科目が免除、1時間の省略が可能となります。フルハーネス特別教育が施行される以前から高所作業を行っている方のほとんどがこれに該当するのではないでしょうか。
たった1時間、と思うかもしれませんがこちらも免除対象の条件となるので、少しでも講習時間を短くしたい方は利用するといいでしょう。胴ベルト型の作業経験にあたる業務も上記のフルハーネス型の免除対象条件と同様になります。
条件③特定の特別教育受講者
免除になる条件の「特定の特別教育受講者」とは「ロープ高所作業特別教育受講者」「足場の組立て等特別教育受講者」を指します。ロープ高所作業や足場組立てなどの特別教育を受講した場合は学科の労働災害防止に関する知識1科目、1時間が免除となります。
そのためフルハーネス型を用いて6カ月以上の作業経験があり、ロープ高所作業や足場組立てなどの特別教育を受けたことがある方は受講科目が学科の関係法令だけでOKとなります。
フルハーネス特別教育の助成金
労働安全衛生法改定によってフルハーネス特別教育が義務化されたことにより、厚生労働省の人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)の助成対象となりました。助成金を受け取るための制限はいくつかありますが、中小建設事業主が受講経費を負担した場合など特定の条件にあてはまれば受講料の一部が支給されます。
受給する場合は技能実習実施日3カ月前から1週間前までに計画書を提出し、技能実習終了翌日から2カ月以内に申請書を提出する必要があります。支給に関する手続きなどは都道府県労働局かハローワークに問い合わせ、そのほか支給要件や手続きなどの詳細は厚生労働省ホームページを確認してください。
フルハーネス特別教育の受講修了は建設業では必須
高所作業の多い建設業に携わっている方は法改正によってフルハーネス特別教育の講習を受ける義務があります。特に建設業では受講修了は必須となります。作業中の事故を防ぎ、従業員の安全を確保するためにも特別教育をしっかりと受講するようにしましょう。
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※記事の掲載内容は執筆当時のものです。