自然農法のやり方を検証して発信するYoutuber。『ちょこっと自然農』の星野さんにインタビューしてみた
自然農法を中心とした農業のやり方をYouTubeで発信している星野さん。動画チャンネル『ちょこっと自然農』では、実験検証的でくわしい解説が多く、観ている人にとってためになる情報を意識しているように感じます。
今回は星野さんに、動画をはじめたきっかけや家庭菜園をはじめるコツなど、お話をうかがってみました。
ーさっそくですが、星野さんの自己紹介をお願いできますでしょうか?
ちょこっと自然農を運営している星野さん
はい。出身は新潟の田舎です。大学で自然環境や農業などを学び、材木関係の会社に就職しました。4年ほど勤めた後に退職。
その後は、アルバイトをしながら自然体験やキャンプのボランティアなどを行っていました。その中で貸し農園の管理人兼アドバイザーの仕事をはじめたことが現在の仕事のルーツとなっています。
2014年に仲間とNPO法人を立ち上げて、現在の愛知県西尾市に移住。そこから本格的に自然農法に挑戦しつつ、農福連携にも取り組みはじめました。
ーYouTube動画を始めたきっかけについて教えてください。
実ははじめからYouTube動画をはじめたわけではありませんでした。2012年から2015年ごろまで、ニコニコ動画に釣りを中心としたアウトドア動画を投稿していたんです。
YouTube動画でお金を稼げると知って、YouTubeに移行したのがきっかけですね。でも全く伸びず…。
2018年1月から現在の『ちょこっと自然農』を開設し、自然農法を中心とした農業のやり方を動画にして上げはじめました。
その年の夏はひどい干ばつで、野菜の生産販売をあきらめて、YouTubeの活動に力を入れるようになったんです。そうしたらチャンネルが徐々に伸びはじめてきて。
▼【家庭菜園実践編】①自然農法的に畝作り《My畑を作ろう!》
ーなるほど、今のチャンネルが開設されるまでにも、動画をあげていたんですね。いつもどのように撮影されているんですか?
管理している畑で、1眼レフカメラに三脚をつけて、作業風景や解説を撮影するのが主なスタイルです。あるいは手持ちで撮影しながら解説をしゃべっています。
主に1人で撮影していますが、たまに他の農家さんを取材したり、仲間と共に畑作業をしたりする様子を撮影することもあります。
いつも使用している1眼レフカメラと三脚
ー星野さんがおっしゃっているように動画では、わかりやすい解説や実験検証することが多いですよね。やっぱり「読者にとってためになる」というのを前提で動画を作っているんでしょうか?
はい。それももちろんですし、実験検証については私自身が気になるものというのが大きいです。
そもそも、動画では「『自然農法』というものでどれくらい野菜ができるのか?」ということを試しているので、チャンネル自体が実験検証の場といえますね。
ー星野さんは普通の農業ではなく、なぜ「自然農法」にこだわるのでしょうか?自然農法に出会った経緯についても教えていただきたいです。
私の活動の目的は「自然のおもしろさと大切さを伝えたい」というところにあります。なので、そもそも農産物の生産販売を中心にした農業をやりたいわけではなかったんです。
無農薬栽培について勉強したり実践したりする中で、いつのまにか福岡正信さんや川口由一さんといった自然農法の先輩方のことを知り、私の活動のテーマにぴったりだと感じました。
それに、私の性格はちょっと天邪鬼なんですよね。
たとえば肥料がないと野菜はできないとか、石灰は必ず撒かなきゃならないとか、世間一般の『常識』とされているものが、本当なのかどうか確かめてみたいという気持ちがありました。
ーなるほど。農作物をたくさん生産して販売するよりも、自然への好奇心と、自然の大切さを伝えたい気持ちが強いのですね。
ー動画を拝見して、星野さんご自身はファームインタープリター(※)として活動されてることを知りました。こういった考えに至ったきっかけについて教えてください。
※ファームインタープリターとは畑の解説を行う人のこと
私は、子どもの頃から自然環境に興味関心がありました。
「どうしたら地球で人類が豊かに暮らし続けていけるのか?」を考えたときに自然との共存、共生は欠かせません。けれど、現代では自然のことに興味や理解を示す人がどんどん減っていると思います。
だからこそ、ファームインタープリターとして「自然のおもしろさと大切さを伝えたい」という考えに至りました。
星野さんが実施されている自然農体験の様子
ー現代では自然に関心を示す方が減っている。星野さんはそれを由々しき事態だと感じ、活動をされているんですね。教えていただき、ありがとうございます。
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コロナウィルスで在宅を強いられている方も多いです。自宅でできることを探して、家庭菜園に興味を持った方も少なくないのでは?そこで、星野さんに家庭菜園におすすめの道具や育てやすい野菜についても教えていただきました。
ー最近コロナの影響もあり、家庭菜園に興味をもった方も多いと思います。まずは最低限の道具を揃えることが必要なのかなと思うのですがいかがでしょう?
プランターでやるのか、地面に植えるのかでも変わってきますが、どちらにせよ必ず使う道具は『移植ゴテ』という小さいスコップです。
星野さん愛用の移植ゴテ
移植ゴテは100〜300円でも買えるけれど、ちょっと無理をすればすぐ壊れてしまいます。長く続けるつもりなら、少し高くとも長持ちするものを選ぶことがおすすめです。
ちなみに私は、出身地の新潟三条市で鍛冶屋さんが鍛造して作っている4,000円ほどの移植ゴテを愛用しています。これは本当に良いです。
他によく使うのはハサミと鎌ですが、プランターならば鎌は必要ありません。地面を畑にしてやるなら、クワとショベルも必要です。
用途に応じてたくさんの種類がありますので、詳しくは私の動画を見ていただければと思います。
▼圧倒的農具の極み!?鍛冶屋特製のスコップがスゴイ【道具の話】
ーでは、家庭菜園初心者の方でも育てやすいものはありますか?もしあれば教えていただきたいです。
ミニトマトは強くて簡単ですね。
他にもおすすめの野菜は色々ありますが、ニラや小ネギはプランターで育てておくと便利かと思います。虫に食われにくいのが特徴です。
地上部を切って収穫すればまた2〜3週間で新しいのが生えそろうので、何度も収穫ができるんですよ。繰り返し生えてくるし、根っこから分かれていくので簡単に増やせます。
ーなるほど!参考にしたいです。
ーその他、家庭菜園をやる上で大切なことってどんなことでしょうか。やはり実践あるのみですか…?
おっしゃる通りで、まさに実践と継続です。
というのも、農業もスポーツと一緒で、やり方を聞いたらいきなりできるものではないんです。
原理原則、基本を知ることは大事ですが、それだけでうまくはいきません。でも、それがまたおもしろいところでもあります。
私が野菜の手入れをするときに考えていることは「この子(野菜)が心地よく育つにはどうすればよいのか?」ということ。
それを経験と観察を通して見極めること、ネットで調べたりしてやっていくことが重要です。これがある意味、極意とも言えるかもしれません。
ーこれから家庭菜園をはじめてみたいと思っている方へのメッセージをいただきたいです。
いきなりたくさんやるのではなく、少しずつやってみていくのが良いと思います。何より、続けることが1番です。
私のチャンネルでは、色んな野菜から米麦大豆、ときには野草まで育てて食べています。その中でおもしろそうなものがあれば、ぜひやってみてくださいね。
▼家庭菜園を始める方への話とミニトマトの定植・水やりについて【無農薬無肥料栽培】
▼プランター栽培比較実験途中経過と《命の土》紹介【家庭菜園実践編】
ー最後に、星野さんが今後チャレンジしていきたいことについて教えてください。
麦、それも古代小麦や無農薬での小麦栽培を、ある程度の規模でやりたいと考えて動きはじめているところです。今回の回答の中で「生産販売を中心にしない」と言いましたが、少し考えが変わってきています。
ーなぜ、小麦の栽培なんですか?
パンや小麦を使った食べ物が好きなことと、小麦アレルギーの問題に注目していることが、大きな理由です。
コロナのことがあって、多くの人が食糧安全のことを見直すきっかけになりました。でもそれは、単純な量の確保だけではなく、質の部分も考え直す時期にきていると思います。
幸い、私自身は小麦アレルギーになっていません。でも、現在の大量生産で作られるものを食べ続けたら、いずれ発症するのではないか?と感じています。
それは小麦に限ったことではなく、食べ物全体、もっと言えば我々の生活に関わるもの全てに言えることでしょう。
そういったことに興味を持ち、少しずつでも考え方や行動を変えていく人たちが増えることを願って、農産物と動画を作っていきたいです。
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自らとにかく実践してみることで、自然農法の実用性を探究してきた星野さん。
お話の中で特に強調していたのは、「自然のおもしろさと大切さを伝えたい」ということ。自然や環境問題は、人間が地球上で暮らしていくには切っても切り離せません。
星野さんの言葉には、自然に対する熱い想いを感じました。この熱意が、多くの人を惹きつけているのでしょう。
まずは、自分の食べるお野菜を少しずつでも育ててみませんか?星野さんの動画には、いろいろな作物の育て方が、わかりやすく説明されています。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
星野さんの動画はこちら
▼【ちょこっと自然農】チャンネル紹介2019・農業ユーチューバー:かーびー
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。