家庭用の井戸ポンプの基礎知識!仕組みや特徴など詳しく解説!
災害の多い日本では、いつどこで断水するかわかりません。そのような時、家庭用の井戸があると非常に助かります。そして、その井戸の水をくみあげるには、ポンプが必要です。
家庭用井戸ポンプは、井戸の深さや、手動か?電動か?などによってポンプの種類も変わっていきます。この記事では、その家庭用井戸に必要な、ポンプの基礎知識と仕組みや特徴について詳しく解説していきます。
目次
自然の恵みを活用する家庭用井戸ポンプとは
井戸ポンプとは、井戸水を汲み上げるために必要となるものです。昔ながらの「手動ポンプ」と、楽に汲み上げることができる「電動ポンプ」があります。ポンプのタイプも井戸の深さによって異なり、大きく分けて「浅井戸」と「深井戸」で異なります。さらに、深井戸ポンプにはジェット式と水中式とがあり、汲み上げる仕組みが違います。
家庭用井戸ポンプの仕組み
まず、井戸ポンプの「水を吸い上げる原理」について説明していきましょう。井戸ポンプは、シリンダ内のピストンが往復し、圧力をかけて井戸水を押し上げます。
この原理を分かりやすく説明すると、ストローと同じ原理です。ストローの場合、口で吸いこむことによって、ストロー内の空気が抜かれて真空になります。すると、飲んでいる液体表面にかかる大気圧のはたらきによって、液体は吸い上げられます。
次に、「水を吐き出す原理」です。井戸ポンプは、吸い上げた液体を吐き出す(押し出す)ために、バルブでコントロールされています。水鉄砲と同じ構造だと想像してください。
その仕組みは、ピストンが上に上がる時に井戸側のバルブが開き、ピストン側のバルブが閉じます。すると、先ほどのストローの原理によって、水がシリンダ内に吸い上げられます。この時にピストンよりも上にある水がポンプの外に押し出されるのです。
ピストンが下がる時には、井戸側のバルブが閉じ、ピストン側のバルブが開きます。そして、ポンプの外に押し出す力をためていきます。この一連の動作を繰り返して、水を汲み上げるのです。これが、井戸ポンプの仕組みです。
家庭用井戸ポンプを設置するメリットとデメリット
家庭用の井戸ポンプを設置するには、メリットとデメリットがあることを知っておきましょう。
メリット
- 水道代が節約できる
- 年中通して、適温
- 非常時(断水時)でも水が使える
デメリット
- 井戸の設置工事費がかかる
- 電動式ポンプは、停電時には使えない
- 定期的に水質検査が必要
水道代が節約できるというのは、最大のメリットでしょう。下水道代がかかることもありますが、それを差し引いても上水道代は節約でき、大幅な水道代の節約が期待できます。
真夏に「井戸水は冷た~い」という経験をされた方も多いのではないでしょうか?地上の温度に左右されない「地下水」のため、年中一定の温度で使用できるのも魅力の一つです。
そしてなんといっても、災害時や渇水時などの断水・取水制限の時に水が使えるというのも、大きなメリットです。過去の災害を経験された方が、防災・減災の観点から、家庭用の井戸を設置したという話もよく聞きます。
デメリットに目を向けますと、やはり掘削工事費等の設置工事費がかかることが一番目立ちます。仕方のないことではありますが、後のメンテナンス費用も含めて業者に見積もってもらい、必要かどうかを検討しましょう。
また、電動式ポンプは停電時には使えないので注意しましょう。手動式のポンプならば停電時でも使えるので、非常時をメインに考えるならあえて「手動式を選ぶ」というのもいいでしょう。
最後にデメリット3の「定期的に水質検査が必要」とありますが、この結果によって用途が制限されてしまうことがあります。飲用できるか?洗濯に使えるか?風呂に使えるか?等、水質によっては思うように使えないこともあります。
井戸ポンプで汲み上げる地下水の仕組み
井戸水とは、言い換えれば「地下水」のことを指します。地下水は、土砂や岩石、粘土などから構成される「地層」にしみ込んだ雨水が、粘土や岩盤などの水を通さない層のところで溜まってできます。その水が溜まっている層を「帯水層」と呼びます。
地表に近い部分にある地下水を「不圧地下水」と言います。不圧地下水は常に、雨や河川から水が補給されているのです。ただし、汚染はしやすいという点は否めません。
そして、不圧地下水よりもさらに奥深くにある地下水を「被圧地下水」と言い、太古の昔にできた帯水層です。そのため、水質が非常によくてミネラル分を多く含みます。深層にあるので、汚染はしにくいと言えます。
井戸ポンプで汲み上げた地下水の使い道
井戸水の使い道は、水質にもよりますが、豊富にあります。
- 生活用水(飲用、洗濯、風呂など)
- 農業用水(水耕栽培、散水など)
- 営業用水(工場、洗車場、理美容室など)
- 非常用水(災害時の生活用水や、飲料水など)
生活用水に使う場合は、水質が良くないと使えないこともあります。農業用水や営業用水の場合、用途による場合もありますが、幅広く使えます。水を大量に使用することが多い、農場や工場などでは必需品と言っても過言ではないでしょう。
家庭用井戸ポンプの選び方
家庭用井戸ポンプには、手動・電動とあります。また、ご自分の井戸が、浅井戸か?深井戸か?でポンプのタイプも異なります。選ぶ際のポイントや、特徴を詳しく解説していきます。
選び方①「手押しポンプ」か「電動ポンプ」かで選ぶ
家庭用の井戸ポンプを選ぶ際、手動式にするか電動式にするかが、大きなポイントです。生活用水として毎日利用するのならば、手間のかからない電動がおすすめです。しかし、災害等の停電時には使えません。そのような時でも利用するためには、手動式のポンプということになります。
現在の手動ポンプは、昔のような「固いレバーを一生懸命上下させる…」ことなく、女性や子供でも楽に水が汲める、小型で軽量な商品もあります。
amazonなどの通販でも、魅力的な手動ポンプはたくさんあります。もちろん、最初の画像のような電動ポンプも種類豊富にあるので、最適なものをネットで探してみましょう。
選び方②「浅井戸」か「深井戸」かで選ぶ
「浅井戸」とは、一般的に8メートル以内の井戸のことを指します。これは、手動ポンプが対応できる深さと言えるのです。これ以上の深層にある地下水を対象にした井戸は「深井戸」と区分されています。手動ポンプでは対応できません。
浅井戸は、周辺の環境などの影響を受けやすく、汚染しやすいため飲用には不向きです。飲用としても使用したい場合は、安全な深層水の深井戸がいいので、対応できる電動ポンプを選びましょう。
家庭用井戸に設置するポンプの種類と特徴
家庭用井戸に設置するポンプの種類は、大きく分けて「浅井戸」「深井戸」の2種類となります。さらに深井戸には、「ジェット式」「水中式」と仕組みの違う2種類が存在します。その特徴を分かりやすく解説していきます。
種類①浅井戸ポンプ
深さが8メートル以内の「浅井戸」には、手動ポンプ・電動ポンプ共に利用できるために種類も豊富にあります。電動ポンプでは、蛇口の開閉によって自動で運転をコントロールするタイプや、冬場の凍結防止装置が付いたものなどあります。
種類②深井戸ポンプ
8メートル以上の深さがある井戸では、手動ポンプは対応できません。よって電動ポンプでの対応となります。電動なので、電源が必要になることがポイントです。農場のど真ん中などの電源が確保しにくい場所では、電気工事にコストがかかることもあります。
種類③深井戸ジェットポンプ
ジェット式とも呼ばれる「深井戸ジェットポンプ」。深さが8メートルから20メートルの井戸に対応できます。井戸ポンプ本体のそばに、モーターがあり、吸込管と圧送管の2本の管があることが特徴です。
大気圧を利用した吸い上げの限界は、約8~10メートルです。それ以上の高さまで水を上げるために、ジェット式のポンプがあります。井戸の水中に配置する「ジェットノズル」が、高速水を吸込管を使ってポンプへ送ります。ポンプに送り込まれた水を、圧送管がジェットノズルへ押し戻し、水を循環させます。
このように、ジェットノズルと圧送管の働きによって、揚水作用を引き起こして水を吸い上げる仕組みです。
モーター音が「うるさい」、という近隣トラブルが昔はよくあったそうです。しかし、現在は非常に改善され、静音タイプやサイレントタイプなど進化したポンプもたくさんあります。
種類④深井戸水中ポンプ
モーターを水中に設置し、地上にあるのは水を上げてくる揚水管と制御する装置だけです。ジェットポンプは2本の管を使用したポンプですが、水中ポンプは揚水管1本の管のみです。水中にあるモーターが水を押し上げ、揚水管を使って地上に送る仕組みです。
深さ20メートル以上の井戸でも使用でき、40メートルくらいまで対応できる機種もあります。モーターが水中にあり音が聞こえないため、近隣トラブルなどの心配はありません。
新規に家庭用の井戸を掘りポンプを設置する方法
新規に家庭用井戸を設置する場合、2通りのパターンがあります。
- 自分で井戸を掘る
- 業者に依頼する
自分で井戸を掘るには、体力とある程度の知識が必要となりますが、決して難しいわけではありません。実際に、井戸をDIYで作っている方もたくさんいらっしゃいます。そのための基礎知識を簡単にご紹介いたします。
また、業者に依頼する場合の事前準備や注意点なども、まとめてみました。
方法①自分で井戸を掘る
まず最初に、地面を掘ればすぐに水が出でくるというわけではありません。すぐに出てくる場合もありますが、何メートル掘っても水が出てこない…。そういったことも珍しくありません。近隣に井戸がある場合、所有者の方に深さを確認してみるのもいいでしょう。
また、自治体によって申請が必要な場合もあります。詳しくは、後の項目で説明していきます。
自分で井戸を掘る場合、掘り抜き・打ち込みという方法があります。掘り抜きは、昔ながらの手法でとにかく地面を掘っていく、そんなイメージです。単純なようですが、掘り進めていくと有毒ガスが発生する層があったり、崩れないように掘った周りをコンクリートや木枠等で固める必要があったりと、何かと大変です。
一方、打ち込み(突き井戸とも言う)の場合は、地面にパイプを打ち込んでいき、そのパイプで水を吸い上げるといった仕組みです。掘り抜きよりも、大変な作業は少なく、一般的な自作方法です。
しかし、打ち込み途中に岩盤などに当たり、それ以上打ち込めないこともあります。そうなると、場所を変更してまた「打ち込み」と、水が出てくるまで時間を要することもあります。
方法②業者に依頼する
業者に依頼する場合、ボーリング作業となります。諸費用や掘削作業などを含めて、最低30万円くらいの費用がかかると考えておきましょう。すぐに帯水層が見つからない場合は、さらに掘り進めるため100万円を超えることもあります。必ず事前に業者へ見積もりを依頼し、費用がどのくらいかかるか把握してから検討しましょう。
安すぎる業者ですと、後から追加請求されるといった事例もあります。できれば複数の業者をネット等で検索し、妥当な費用で提示する業者を選びましょう。
家庭用井戸ポンプを設置する際の注意点
家庭用井戸を設置する際の注意点は、どのようなことがあるのでしょうか?予め、調べておくことで後々の手続きをスムーズに進められたり、自治体から受けられる「助成金」申請の知識を得られたりします。また、大切な水質検査についても詳しく解説していきます。
注意点①井戸掘り前に助成金についても調べておく
「井戸を掘る」と心に決めたら、まずお住まいの自治体ホームページ等を調べましょう。助成金が受けられる自治体というのは、結構存在するのです。中には、補助金という名目の自治体もあります。
注意点は、井戸を掘る前に申請をすることです。井戸を掘ったあと、またはポンプ交換後では申請が通らない自治体がほとんどです。また、自治体によっては防災井戸として指定されないと、助成金・補助金の交付が受けられないといった所もあります。事前に、各自治体の助成金・補助金についてよく調べましょう。
注意点②自治体に届け出をする
どのような届け出?と申しますと、それは「公共下水道使用届」というものです。これは盲点だったという方も、よくいらっしゃいます。
そもそも、井戸水利用によって節約できるのは、上水道料金であり、下水道料金はタダではありません。ちなみに、工事湧水・ビル湧水・雨水利用水にも下水道料金がかかります。この申請を怠り、排水を続けていると罰則金が過料されることもあるのです。
井戸の設置の検討と同時に、公共下水道使用届についても詳しく調べる必要があります。
注意点③水質検査を行う
井戸水を飲用するために使用する場合、定期的に水質検査を行うよう、厚生労働省から定められています。検査項目は以下の通りです。
毎日の検査
- 味
- 色
- 濁り
- 臭い
これらの項目を、ご自身で確認しましょう。さらに年に1度以上、行わなければならない水質検査の項目は各自治体によって、若干の違いがあります。基本的な11項目をご紹介いたします。
定期検査項目
- 一般細菌
- 大腸菌
- 亜硝酸態窒素
- 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素
- 塩化物イオン
- 有機物
- pH値
- 味
- 臭気
- 色度
- 濁度
これらの項目を定期的、または周辺に異変があった場合は、必ず検査を依頼しましょう。
井戸ポンプのDIY動画を見てみよう
決して簡単ではないかもしれませんが、動画のような塩ビ管を使って配管をつくることは可能です。手先が器用な方は、ぜひ自作の「手押しポンプ」の作成にチャレンジしてみてください!
家庭用井戸ポンプを活用してみよう
家庭用井戸ポンプは、近年再注目をされています。災害が多い日本では、断水などで水道水が利用できなくなることが多々あります。そのような時でも、井戸があれば水を利用することができます。防災・減災の観点から、井戸の設置を検討されてみてはいかがでしょうか?
いくつかの、ハードルを乗り越えないといけない場合もありますが、設置する価値は十二分にある井戸。水の重要さを再認識して、井戸の重要さも再認識してみましょう!
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※記事の掲載内容は執筆当時のものです。