【セオドライト使い方】トータルステーションとの違い、三脚の選び方も。
土木工事や建築現場などで、角度の測定に活躍するセオドライト。精密機器ですので、適正な使い方を知り、正しく測定する必要があります。また測定に欠かせない三脚についても、正しく選ぶことが大事です。
そこで今回は、セオドライトの使い方を中心に、トランシットやトータルステーションとの違い、三脚の選び方や中古・レンタルで利用する方法などをご説明します。「業務でセオドライトを使うけれど、まだ良く理解できていない」という方は、ぜひご覧ください。
目次
セオドライトとは?
セオドライトとはどのような機器なのか。まずはセオドライトの基本をご紹介します。
セオドライトとは
セオドライトとは、「水平角や高度角(水平と垂直)」といった角度を測定する測量機器で、地形測量や工事測量などで活躍します。
またセオドライトには電子式や光学式、レーザー式などの種類があります。
電子式(デジタル)セオドライトの特徴と価格
電子式セオドライトは、デジタルセオドライトとも呼ばれ、角度を電子的に測定してデジタル表示する機器です。角度の読み取りが早く、読み取り誤差が少なくなります。おもに、地形測量や勾配設定などに使用されます。
またセオドライトの種類の中で、最も主流なのがこの電子式です。
次に、電子式セオドライトの人気モデルの価格を確認してみましょう。まずはニコンのNE-20SCIIです。現時点でのAmazon販売価格は301,890円。多少の雨も気にならない、JIS保護等級4(防まつ型)以上の防水性能と、カンタン操作で安心、快適な電子セオドライトです。
JIS保護等級4(防まつ型)の耐水性能
短い距離でもピントクリア
乾電池6本で22時間使用可能 視認性にこだわったデジタル大型液晶表示
三脚付:OTタイプ
2点目はトプコンのDT214SET。Amazonでの販売価格は278,600円です。
アルカリ電池を使用しての測角時間が何と150時間!レーザー測角連続使用でも45時間と長時間安心して使用できます。またレーザーポインタ搭載のため、作業者は観測者の誘導なしに正確な作業を行うことが可能です。
光学式セオドライトの特徴
引用:松永測機
光学式セオドライトは、デジタルマイクロメーター機構を内蔵し、レンズを覗きながら測角値を読み取ります。光学式マイクロメーターで角度を読む、光学式測量機器です。電子式と違いバッテリーを使用しないため、電池切れの心配がありません。一般土木や地形測量などに使用されます。
ただし現在は電子式が主流のため、光学式セオドライトを取り扱っているところはレンタルでも多くありません。
その他のセオドライトの種類・特徴
レーザー式セオドライト
電子式セオドライトにレーザーダイオードを組み込み、観測点をレーザースポットで照射するのがレーザー式セオドライトです。地下工事やトンネル工事、建築工事でその威力を発揮します。
引用:レックス
精密セオドライト
精密セオドライトは、高い測角精度をもつ機器です。大型精密機器の据え付けや工業計測の場でよく使用されます。
引用:レックス
セオドライトの使い方
ここではセオドライトの使い方を、ニコンの電子式セオドライトNE-10RCIIを例にご説明します。下図の各部名称を参照しながら、ご覧ください。
引用:J-Marts
使用上の注意
セオドライトを使用する際は、次の注意事項を守りましょう。
- 精密機械のため、本体に振動や衝撃を与えない
- 本体を三脚に取り付けたまま、肩にかついで運搬しない
- 雨のなかで使用した場合は、水滴を拭き取り、乾燥させてからケースに収納する
- 長時間使用しない場合は、バッテリーは取り外しておく
- レンズが汚れた場合は、アルコールを柔らかい布や紙に含ませ、静かに拭く
また三脚については、次の点に注意して下さい。
- 本体を三脚に止めるときは、定心かんを確実に締める
- 本体をのせた三脚は、蝶ネジを確実に締める
- 三脚の石突きを人に向けて持ち運ばない
- 持ち運ぶ際は、蝶ネジを確実に締める
機械の据え付け
本体機械を据え付けて、観測の準備をする手順は次のとおりです。
1.本体をケースから取り出す
このとき、本体に振動や衝撃を与えないように注意して取り扱います。
2.電池を入れる
電池を交換する場合は、すべて同時に、同じタイプの新品に交換しましょう。
3.三脚の設置
三脚を以下の手順で設置します。
- 三脚の脚を適当な間隔に開く
- 測点が、脚頭中央の孔の真下にあることを確認する
- 石突きを充分に踏み込む
- 三本の脚を伸縮させて、脚頭表面を水平にする
- 脚の中継部の蝶ネジを確実に締める
- セオドライト本体を脚頭にのせ、定心かんを底板中心のねじにねじ込み、固定する
4.求心
セオドライト本体の中心と測点とを、同一鉛直線上にあわせることを「求心」(または致心)といいます。求心には垂玉を用いる方法と、求心望遠鏡による方法の2つがあります。
ここでは求心望遠鏡による方法をご紹介します。
- 本体を脚頭にのせ、固定する
- 求心望遠鏡をのぞきながら、整準ネジを回し、測点(☓)を焦点鏡の◎印の中心に入れる
- 三脚中継部の蝶ネジをゆるめ、脚を伸縮させ、円形気泡管の気泡を中心に導き、その後蝶ネジを締め付ける
- 平盤気泡管によって、本体を「整準(次項参照)」する
- 求心望遠鏡をのぞき、測点が焦点鏡の◎印の中心に入っているか確認する
5.整準
本体の鉛直軸を、鉛直にすることが「整準」です。その方法は、次のようになります。
- 水平クランプをゆるめ、平盤気泡管を整準ネジB・Cを結ぶ線に平行に置く
- 整準ネジB・Cをまわして、気泡を中心に導く
- 上盤を90度回転させ、整準ネジAをまわして気泡を中心に導く
- 手順1〜3を繰り返し、下図の両位置で気泡が中心に入るようにする
- 手順3の状態から上盤を180度回転させたとき、気泡が中心にあれば整準は完了
6.視準
望遠鏡をプリズム(目標)に向け、望遠鏡の十字線中心をプリズムの中心に合わせることを「視準」といいます。望遠鏡接眼レンズをのぞきながら視度環を回し、十字線が黒く鮮明に見える位置に合わせましょう。
引用:J-Marts
基本操作
セオドライトの基本操作について、ご説明します。
1.電源スイッチを入れる
カバー側面の電源スイッチを押すことで、本体の電源がはいります。
本体を「正の観測状態」(後述の「3.測角」を参照)にして、望遠鏡が水平をよぎるように上下にふるとブザー音がなり、高角度がリセットされます。これで高角度、水平角の測定が可能になりました。
2.バッテリー残の確認
表示のバッテリー残量を確認し、残量が少ない場合にはバッテリーを交換します。
3.測角
正、反観測
正の観測:高度目盛りが左側にある状態で、望遠鏡接眼レンズをのぞき観測することをいいます。
反の観測:高度目盛りが右側にある状態で、望遠鏡接眼レンズをのぞき観測することをいいます。
正、反の両観測を行い、平均値をとれば、器械的な定誤差はほぼ消去できます。できるだけ正、反観測を行うことを心がけましょう。
引用:J-Marts
水平角と高度角の読み取り
望遠鏡をタテ方向にまわした分だけ高度角度が、本体上部を旋回した分だけ水平角度が、本体にデジタル表示されます。
高角度の表示 |
水平角の表示 |
高度角と水平角は本体に次のように表示され、それぞれ角度を読み取ることができます。
引用:ソーキ
点検、調整
セオドライトを使用する前には必ず点検を行い、常に正確な値が測定できることを確認します。また長期保管後や、運搬中などに強いショックを受けたと思われる場合にも、必ず点検を行いましょう。
1.平盤気泡管
気泡管軸を、鉛直軸に対して直角に合わせます。
1)点検
- 本体を三脚に設置し、整準を行う
- 上盤を180度回転させる
- 気泡が中央にあるか確認。ずれている場合は調整を行う
2)調整
- 平盤気泡管調整ネジを調整ピンでまわし、気泡をズレ量の半分だけ中央に近づける
- 残りのズレ量を、整準ネジをまわして気泡を中央に導く
2.円形気泡管
1)点検
平盤気泡管の調整後、気泡が中心円に対してズレていないか確認。中心にない場合は調整を行います。
2)調整
円形気泡調整ネジを調整ピンでまわして、気泡を中心に導く。
引用:J-Marts
3.求心望遠鏡
求心望遠鏡の光軸を、鉛直軸にあわせます。
1)点検
- 本体を三脚に設置する
- ☓印をかいた紙を本体の真下に置く
- 求心望遠鏡をのぞきながら、整準ネジをまわして、☓印を焦点版の◎の中心に入れる
- 上盤を180度回転させ、☓印が◎の中心にあることを確認。ズレた場合は調整する
2)調整
求心望遠鏡ネジをヘクスキーでまわし、☓印を、☓印と◎の中心を結ぶ線分の中点にあわせる。
引用:J-Marts
セオドライト、トランシット、トータルステーションの違い
測量機器の中でも、違いが分かりづらいのがセオドライト、トランシット、トータルステーションの3機器です。ここでは、その違いをご説明します。
セオドライト、トランシット、トータルステーションの違い
まずセオドライトとトランシットは、どちらも「角度(水平角と高度角)を測定する測量機器」です。そしてこの角度表示が目盛り読みの機器をトランシット、デジタル表示するものを電子セオドライトと呼びます。また現在では、一般的に「セオドライト」といえば「電子セオドライト」が主流です。
引用:ココミテ
それに対してトータルステーションは、一台で角度と距離の両方を測ることができる機器です。セオドライトに距離測定の機能を足した機器がトータルステーションといえます。
距離を測るトータルステーション(光波)
トータルステーションは、電子セオドライトと距離を測る光波測距儀の機能を併せ持つため、現在の建設現場では最も重要な測量機器となっています。ただし機能が多い分、セオドライトよりも価格が高額です。
また、トータルステーションは光波測距儀の機能をもつことから「光波」とも呼ばれます。マイコンやオペレーティング・システムを搭載し、遠隔操作による計測などが行えるモデルもあり、測量工程の大幅な省力化を実現しました。
◇有効径:45mm(50mm測距光学系)
◇倍率:30x
◇最短合焦距離:1.5m
◇測距範囲:レフシート(5cm角):200m、1素子プリズム:1.5-3,000m
セオドライト用三脚の選び方とおすすめ品
セオドライトでの測定に欠かせない三脚。ここでは三脚の選び方とおすすめ品をご紹介します。
セオドライト用三脚の選び方
セオドライト用の三脚を選ぶ際は、①材質と②脚頭・定心かんを確認して選びます。
①材質を選ぶ
三脚の材質には、木製とアルミ製があり、それぞれ次のような特性があります。セオドライトを多く使用する場面を考えて、材料を選びましょう。
- 木製:アルミ製に比べて、温度による膨脹が少なく振動も吸収します。そのため精度の高い測量が可能。ただし高価で、重量があるため持ち運びには不便です。
- アルミ製:安価で軽量なため、持ち運びに便利。ただし温度による膨張があるため、木製よりも測量の精度が低くなります。
②脚頭・定心かんを選ぶ
測量機用の三脚として様々な種類が発売されていますが、セオドライト用の場合は脚頭・定心かんについて次のものを選びます。
- 脚頭の形状:平面
- 定心かんのサイズ:35mm(太管)
ただし、モデルによっては専用の三脚を使用する場合があるため、本体の取扱説明書などをよくご確認ください。
また、三脚は石突きがすり減ったり、木が腐ることで転倒してしまう危険があります。そのような場合は交換時期と考え、新しい三脚の導入をご検討ください。次項でおすすめ品をご紹介しています。
引用:Amazon
三脚のおすすめ品
セオドライト用三脚でおすすめするのは、こちらの2点。もちろんどちらも、「脚頭:平面」で「定心かん:35mm」です。
まずはマイゾックスの精密木脚 PMW3-OT。サイドから脚部を間接的に固定するMG型ブラケット機構採用を採用し、本体の急な脱落を防止します。また、さびない二重構造伸縮式ストッパーや強固な石突部によって、正確な測定が可能です。
定芯桿:平面・35mmねじ
カラー:オレンジ
全長/全縮時:1753mm/1092mm
脚頭外径/内径:160mm/56mmφ
次におすすめするのが、大平産業の木製三脚 WTSD2-165Tです。
伸縮固定ねじを上下2箇所に配置する「ダブルロック」で、高い剛性と安定度を実現。精度維持の要となる脚部の材料については、自社工場で素材選別から含水率の管理、最終加工まで一貫して行っています。
仕様:平面脚頭 35mmねじ
質量:6.2kg
全伸寸法:1650mm
全縮寸法:1060mm
中古やレンタルでセオドライトを利用する
セオドライトは高額なため、中古やレンタルの機器を利用するケースも多いようです。ここでは利用する際のポイントをご説明します。
中古のセオドライトを利用する
中古のセオドライトを利用したい場合は、中古測定機器の販売店を探しましょう。ただし、中古の測定機器はそれほど多く出回っていません。そのため必要となったら、次のような販売店に早めに確認することが重要です。
またセオドライトは精密機器です。「中古で安く買ったのに正しく測定できなかった」ということが起こらないよう、できるだけ保証がつく販売店を選ぶことも大切です。
レンタルでセオドライトを利用する
レンタルでセオドライトを利用したい場合は、測定機器のレンタル会社を探しましょう。測定機器については、中古機器の購入よりもレンタルのほうがメジャーなため、レンタル会社は多くあります。
また、レンタル会社を選ぶ際は、電話やメールで使い方などをフォローしてくれる会社を選ぶこともポイントです。使い方がわからなければ、せっかくの機器もムダになりますよね。
レンタルならば、最新の機種を最短1日から利用することが可能です。また機器の保守管理や校正などの精度維持管理も不要ですので、手間がかかりません。
・株式会社ソーキ
・株式会社レックス
セオドライトの使い方を理解して正しい測量を
今回は、セオドライトの使い方を中心に、トランシットやトータルステーションとの違い、三脚の選び方や中古・レンタルで利用する方法などをご説明しました。
繰り返しますが、セオドライトは精密機器です。点検や調整をしっかり行うことで、はじめて正確な測定が可能になります。ぜひ、この記事を参考に、セオドライトの使い方を再点検してみてください。
※記事の掲載内容は執筆当時のものです。