溶接工はきつい?仕事内容・健康リスク・向いている人など徹底調査!
溶接工と聞くと「きつい」というイメージを抱く人は、少なくないでしょう。
「火花を散らす作業」「騒音が大きく高温になる職場」「長時間立ちっぱなしや座りっぱなしの姿勢」などから、危険と隣り合わせの力仕事という感じがします。
しかし溶接工は知識を身に付け資格を取得すれば、男性はもちろん女性もできる仕事です。また技術を磨くことで、ステップアップを目指せるという魅力があります。
この記事では溶接工がきついと言われている理由・仕事内容・職場選びのコツなど、ご紹介していきます。溶接工に少しでも興味がある方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!
溶接工の仕事内容とは?
溶接とは「加熱・加圧により2つの材料を接合する加工技術」のこと。そして溶接工とはその作業を専任で行う人です。
しかし溶接工の仕事は、単純に接合する作業だけではありません。
- 必要な材料を判断する
- 図面を正しく読み取る
- 的確な作業を行う
など、さまざまな能力が求められます。
溶接の種類
溶接は主に以下の3種類があります。
- 融接:電気や火で材料に熱を加え、溶かして接合する基本的な方法
- 圧接:熱に強い素材に、プレス機で圧力を加え接合する方法
- ろう接:材料に熱を加えず、溶加材を用いて材料を接合する方法
溶接工の仕事現場
溶接が必要な仕事現場は、主に以下の2種類です。
【一般機械の製造工場】
船・自動車・重電機・一般機器などを製造する工場が、溶接工の主な勤務場所です。部品ごとに溶接したものを組み立て作業に回す、というチームで進める仕事が主になります。
【建設現場】
建設現場ではビルや橋の柱梁(ちょうりょう)など、巨大な建材を半自動溶接機で溶接する作業を行います。大きな建材を用いるため、高度な作業スキルが求められる現場です。
溶接工になるには
工場や会社で溶接工を採用する際には、年齢よりも実力・知識・技術・経験などの有無を重視する傾向にあります。
そのため下記のような人は、未経験者よりも優遇されるでしょう。
- 工業高校・専門学校・職業訓練学校などを卒業し、基本的な知識が身に付いている
- 溶接工として働いた経験がある
- 溶接の資格を取得している
ただし学校で学んだことはない・経験はないという人でも、やる気がある人材を積極的に採用し、会社負担で資格を取得させ育てていく職場もあります。
溶接工の学校
溶接工は専門知識と技術が必要とされる仕事です。一般的には職業訓練校に入校し、技術を磨いた上で溶接工になるのが一般的です。
他にも工業高校・専門学校・職業訓練学校の「溶接技術科」「溶接技術取得コース」などで学んでから、仕事先を探す人もいます。
学校によって異なりますが、以下のような内容を主に学びます。
- カリキュラム:金属工学・機械工学・材料力学・製図・溶接法・測定法など
- 実習:溶接機の使い方・手作業の溶接・機械での溶接など
溶接工の資格
会社によっては溶接工の資格を持っていなくても、見習いとして未経験者を雇い、溶接作業を行わせる場合もあります。
しかしながら溶接の種類によっては資格がないと、できない作業があるため、採用後に資格取得をさせる会社がほとんどです。
有資格者には資格手当が支給されることも多く、上級資格を取得をすることで管理職を目指せるなどメリットもあります。
溶接の資格は入門者向けの資格から、熟練者向けの資格まで種類が豊富です。
初級資格
入門編の資格としては、以下の2種類があります。
【アーク溶接作業者】
アーク溶接の作業には「アーク溶接作業者」の取得が必要です。特別教育(※)を受講・修了すれば取得でき、18歳以上なら誰でも受講できます。
アーク溶接作業者を取得すれば、各種工場や建設現場など幅広く仕事ができます。
※特別教育:11時間の学科と、10時間の実技を受講(3日間程度)すれば修了
【ガス溶接技能者】
「ガス溶接技能者」はガス溶接作業に従事するには必須の資格です。学科8時間・実技5時間の講習を受け修了試験に合格すれば取得でき、18歳以上なら誰でも受講できます。
中級資格
実務経験1か月〜3か月の溶接経験者には、以下の資格がおすすめです。
【アルミニウム溶接技能者(基本級・専門級)】
アルミニウム溶接技能者は、15歳以上で溶接の実務経験がある人向けの資格です。
基本級と専門級の二段階があり、それぞれ求められる条件が異なります。
基本級は溶接の実務経験が1ヶ月以上あれば挑戦でき、学科・実技試験があります。
一方専門級は、基本級取得者かつ実務経験が3ヶ月以上で資格出願が可能です。
上級資格
専門性を高め仕事の幅を広げ、管理職を目指す人向けの上級資格は以下の通りです。
- ガス溶接作業主任者
- 普通ボイラー溶接者(実務経験1年以上)
- 特別ボイラー溶接士(普通ボイラー溶接者取得後、実務経験1年以上)
- 溶接管理技術者:特別級・1級・2級(学歴または認証、等級別の必要職務経験年数などの受験条件あり)
※参考:溶接管理技術者評価試験案内(特別級)
※参考:溶接管理技術者評価試験案内(1級および2級)
- 溶接作業指導者(満25歳以上かつ以下に該当する人)
JIS Z 3801(手溶接)、JIS Z 3805(チタン)、JIS Z 3811(アルミニウム)、JIS Z 3821(ステンレス鋼)、 JIS Z 3841(半自動)又は公的な団体が実施する技能検定を資格を保有している方、又は有していた方。
※参考:2021 年度溶接作業指導者資格 新規受験のご案内|一般社団法人 日本溶接協会
上級資格は実務経験年数や受験するにあたって、取得しておきべき資格などの条件があります。誰でも簡単に取得できるものではありません。
しかし溶接工として経験を積んで、受験条件を満たせば挑戦するのがおすすめです。
資格を取得できれば仕事の幅が広がるため、給料・キャリアのアップにつながります。スキルの証明になるため、より良い条件の職場へ転職する際にも役立ちます。
溶接工がきつい5つの理由
溶接工がきついと言われるのは、以下の5つの理由からです。どのような点がきついのか、ご紹介します。
常に危険と隣り合わせである
溶接は作業内容によって、強烈な光・高温の熱・ガスなどが発生します。油断すれば事故につながるため、常に注意深く作業しなくてはなりません。
さらに以下のような事故もあり得るので、常に気を付ける必要があります。
- 重い材料や部品の落下
- 切断作業を行う際の鋸刃によるけがや巻き込まれ
そのためどの作業現場でも、設備や機材などの安全確認や適切な安全保護具の装着は、厳重に行なわれています。
作業内容によっては、健康診断が義務付けられているものもあります。
体力・集中力が求められる
溶接工には体力が求められることから、きつさを感じやすい仕事といえます。
現場によって作業内容は異なりますが、長時間立ちっぱなし・中腰での作業をすることもあるでしょう。
体力がなく作業の途中で足元がふらつくと危険です。とはいえ休憩ばかりしていては、作業が捗りません。
そのためキャリアが長い溶接工の中には、足腰を鍛えるため日常的に筋トレをしている方もいます。
また溶接は基本的に細かい作業なので、高い集中力が求められることも覚えておきましょう。
地道にコツコツ技術を習得する必要がある
溶接工は高度な技術が必要です。勉強して資格を取得すれば、即戦力として活躍できるというわけではありません。
現場で経験を積み、地道にコツコツと努力して腕を上げることが大切です。
溶接工にはいろいろな種類の資格があります。働きながら勉強して資格を取得すれば、キャリアアップを図れる仕事です。
職場の人間関係が厳しいことがある
溶接工に限りませんが、危険が伴う作業現場では、新人に優しくのんびりと教えていては危険で、作業も間に合わなくなるでしょう。
上司や先輩に厳しい口調で指導や注意をされる・丁寧に仕事を教えてくれないなどの理由で、人間関係が厳しいと感じる人もいるようです。
しかしながら最近では「新人を早く育てチームワークをよくして仕事の効率を上げる方がいい」と考える職場が多くなっており、昔ながらの厳しい人間関係の現場を心配する必要は少ないでしょう。
職場によっては残業や休日出勤がある
定時に作業が終わる会社もありますが、受注量が多いとき・工期に追われているときなどは、残業や休日出勤が続くこともあるでしょう。
早く腕を上げたい人や資格取得を目指している人は、自ら残業や休日出勤して腕を磨くケースも少なくありません。
とはいえ最近では昔よりも安全面の問題から、残業や休日出勤をさせる職場は減少傾向にあります。
溶接工の健康リスクとは?
溶接はやりがいのある仕事ですが、作業には健康リスクもあります。安全に仕事をするためにも、どのような健康リスクがあるのか・予防するための対策は何かを知っておきましょう。
目を痛める
空気中の放電現象を利用し金属同士を溶接する「アーク溶接」では、熱源から可視光・紫外線・赤外線が放出されます。
それらの光が目に入ってしまうと、目がゴロゴロする・開きにくくなることもあります。
こうした症状を抑える目薬をさすと、症状は落ち着きやすいのですが、繰り返すと目を痛めるかもしれません。どの現場でも目のトラブルを防ぐため、保護メガネやゴーグルの装着は必須です。
「ほんの少しの間だから」と面倒がらず、短時間の作業でも必ず装着することが求められます。
日常的に火傷をする
溶接中は無数の火花が飛び散ります。火花は一瞬で鉄を溶かすほどの高温であるため、溶接工は日常的に火傷をするリスクが高い仕事だといえます。
また溶接直後の母体や溶接棒も高温なので、うっかり素手で触ると火傷します。
これらの火傷リスクを防ぐためには、保護着の着用が必須です。
- 皮手袋
- 遮光面
- 頬や首回りを覆う頭巾
- 肌が露出しない服装
- 遮光幕
などを使用して、体を保護しながら作業を行います。
腰を痛める
溶接工は日常的に同じ体勢を続けたり、重い荷物を持ったりするので、腰に負担がかかります。そのため以下のような腰痛対策を取っている人がほとんどです。
- ストレッチで体幹・腹筋・背筋を鍛える
- 1時間に1度くらいの感覚で筋肉をほぐす
- 腰痛ベルトやコルセットを装着する
- 仕事終わりには夏でもお湯に浸かって、体を温め血行を上げる
こまめに腰のケアを行い、1日の疲れはその日のうちにとるのがコツです。
腱鞘炎になる
溶接作業でトーチを長時間握っていると、手が腱鞘炎になる恐れがあります。
腱鞘炎を緩和させるには休ませるのが第一ですが、仕事をしないわけにもいきませんよね。
そこで以下のような対策で、症状を緩和します。
- 仕事の合間にストレッチする
- 冷たい湿布で痛みのある部分を冷やす
- サポーターを装着する
全く改善しない場合は、整形外科など専門医に診察してもらったり、整体院などに通ったりしている人もいます。
暑過ぎて熱中症になる
溶接の現場は火を使うので、作業場付近は40℃近くになることもあります。
建設現場も夏場はかなり暑さに悩まされるもの。現場では自己管理も含め、以下のような熱中症対策が行われています。
- 睡眠不足に気を付ける
- 朝食をしっかりとる
- こまめに水分・塩分補給をする
- 冷却タオルなど、熱中症対策グッズを利用する
- 空調服を着る
また気分が悪い・めまい・頭痛などの症状を感じたら、すぐに作業を止めることも大切です。
熱中症は意識を失いやすく危険なため、できるだけ早めに自己申告して、涼しい環境で休むよう心がけましょう。
耳への負担が大きい
溶接の現場は騒音がつきものです。大音量を毎日聞いていると、耳に大きな負担がかかります。
こうした耳への負担を日常的に受けていると、以下のような症状に悩まされるかもしれません。
- 聴力の低下
- 耳鳴り
- 耳がふさがれているような感覚
また騒音に慣れて何の対策もせずに、仕事を続けた結果「難聴」になる人もいるようです。
現場では耳への負担を軽減しトラブル予防のために、作業用耳栓をして対策されています。
溶接工になるなら働きやすい職場を選ぶ
溶接工としてこれから就職したいと思っている方、今の職場から転職したいと考えている方は「働きやすい職場」を選ぶことが大切です。
では溶接工はどのような職場なら、働きやすいのでしょうか。
設備が整っている
溶接作業をスムーズに行うためには、そのための設備が整っていることが大切です。
取り扱う製品によって異なりますが、高品質・高精度な溶接加工ができる設備が充実している職場であれば、働きやすいでしょう。
教育環境が整っている
溶接の仕事は知識を学び資格を取得さえすれば、すぐにでもプロとして通用するわけではありません。現場でいろいろな経験を積み、腕を磨いていくことで一人前の溶接工になるのです。
- 先輩や上司が丁寧に教えてくれる
- 仕事時間以外に、溶接の練習をさせてくれる
- 研修システムがある
上記のような単に目の前の仕事をするだけではなく、自社の職人が技術を磨いて腕を上げられるように、教育環境を整えている職場がおすすめです。
現場の連携が取れている
溶接の仕事は最初から最後まで一人で行うのではなく、チームで協力して行うことも少なくありません。仕事の連携が取れている職場なら、働きやすいでしょう。
会社の公式ホームページ・口コミサイトなどから、会社の実情を調べておくのもおすすめです。
溶接工はきつくてもやりがいあり!
「きつい」というイメージが先行しやすい溶接工ですが、以下のような職場であれば、未経験でも大きな負担を感じずに働きやすい可能性が高いでしょう。
- 設備を整え、働く人たちの安全対策に配慮している
- 技術習得やスキルアップを応援してくれる
- 職人を育てることに熱心
溶接工はものづくりが好きで、達成感の得られる仕事をしたい人にはやりがいのある仕事です。
腕を磨き上級者向けの資格を取得すれば、給料アップ・指導者としてキャリアアップなどのメリットもあります。ぜひ自分に合った職場を探してみてくださいね!
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