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債務と債権の違いとは?意味を3つのポイントで解説

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資金調達や給与、売掛金の回収などのお金にまつわる場面でよく耳にする言葉に「債権」と「債務」があります。債務と債権について調べると、財産上の権利や貸し借りなど、いろいろなキーワードが登場し「ますます意味が分からない」と謎が深まる可能性も。最終的に法律なども登場し、頭を抱える羽目になることも少なくありません。

債務と債権の違いは、3つのポイントですっきりと理解することが可能です。3つのポイントを通じて、債務と債権の違いをおさえてしまいましょう。ファクタリングやキャッシングなどにも応用できる知識です。

ポイント①債務と債権の意味の違い

債務と債権の違いを理解するために真っ先に把握しておきたいのは、債務と債権の意味の違いです。この2つの意味の違いを知ることによって、債務と債権の違いは7割方理解できると言っても過言ではありません。まずは債務と債権の意味的な違いをおさえ、分かりやすい具体例を見て知識をしっかりと頭に馴染ませましょう。

債務とは?

債務とは、特定の人に対して果たさなければいけない義務のことです。

「債務」という言葉を注視してください。債務という言葉の中には、義務の「務」という漢字が含まれています。債務の「債」という漢字は、財産や財産的な権利を意味する漢字です。そんな債という漢字に義務を意味する務がついているわけですから、債務という言葉を漢字から分解すると「物やお金などの財産的な義務」になります。

漢字の分解結果の通り、債務とは、「特定の人に対して果たさなければいけない(物やお金などの財産的な)義務」という意味になるのです。

債務の具体例

債務の最たる具体例は、お金の貸し借りです。

お金を借りたら、借りた分のお金を返さなければいけないという義務が生じます。100万円借りたら基本的に100万円の返済義務が生じ、1億円借りたら1億円を返済しなければいけません。業者などから融資を受けた(お金を借りた)場合は、利息を付して返済することになります。この100万円や1億円を借り受け、返済する義務が債務です。

借金の借り手側を「債務者」と呼ぶのは有名な話。債務という義務を負う人だからこそ債務者。分かりやすい言葉です。

債権とは?

債権とは、「財産的な義務を履行してもらう権利」になります。債権の債の漢字は財産。債権の「権」は権利を意味する漢字です。物やお金などの財産的な権利を特定の人に履行してもらうという権利になります。

債権の具体例

100万円の借りをした場合、貸した側と借りた側という2つの立場が生じます。お金を借りて返済する義務が債務で、返済する義務を負う人が債務者でした。対して、お金を返してもらう権利が債権であり、お金を返してもらう権利を持つ人が債権者になります。

ポイント②債務と債券は表裏一体である

債務と債権は表裏一体の言葉です。100万円の貸し借りを想像してみてください。100万円の貸し借りを契約して、Aさんは借りる側でした。Aさんはいずれお金を返さなければいけない立場ですから、債務という義務を持つ債務者になります。Aさんの立場から見ると、100万円の貸し借りは債務なのです。

Bさんは100万円を貸す立場でした。BさんはAさんから100万円を返してもらう権利があります。権利を持つ側なので、債権者です。Bさんの立場から100万円の貸し借りを見ると、債権になります。

このように、債権と債務は表裏一体の存在です。1つの契約について別々の立場から見た場合に「支払いや返済、何かをしなければならない」側の人にとっては債務になります。「支払いを受けたり、返済を受けたりする。何かをしてもらう」側の人にとっては、債権です。債権と債務は視点により違いが生じることになります。

契約タイプごとの債務と債権の違いについて見てみましょう。

売買契約

売買契約を売り手と買い手それぞれの視点で見てみましょう。

売買契約の売り手は、商品を渡さなければいけません。要するに、商品を渡すという債務があるのです。しかし、商品代金を受け取ることも可能なので、代金受け取りの債権も持つことになります。買い手の視点に立ってみると、商品を受け取る債権を持ち、代金を支払うという債務を負っているはずです。

売り手と買い手がいなければ売買契約は存在しません。債権と債務は視点によって変化する表裏一体の存在になります。

雇用契約(労働契約)

雇用契約とは、労働者と雇い主の「働いてください」「働きます」という契約です。

雇用契約によって雇われた労働者は、契約に従って労働しなければいけません。仕事をするという債務です。ただ、奴隷のように労働の義務のみ負うわけではなく、労働分の賃金を受け取るという債権を持っています。雇い主側は、労働者に働いてもらえるという権利があるのですが、賃金を支払うという義務を負うのです。

雇い主と労働者それぞれの立場に視点を変えてみると、債務と債権の違いが見えてくるのではないでしょうか。

賃貸借契約

賃貸借契約は「物を使用、収益させる代わりに賃料を支払う」という契約です。アパートなどを借りるときの契約が賃貸借契約の代表例になります。アパートを借りるときのアパート所有者とアパートを借りる人を例に債務と債権の違いを考えてみましょう。

アパート所有者は、アパートを貸す義務があり、賃料を払ってもらう権利を有しています。アパートを貸すことについては債務者の立場であり、賃料を払ってもらうことについては債権者です。

アパートを借りる人は、部屋を使用する権利があります。部屋の使用という点では債権者です。ただ、賃料を支払う義務を負うため、賃料の点では債務者になります。

ポイント③債務と債権の「できること」の違い

債務と債権では、できることが違います。

たとえば、債務を負っている存在である債務者。債務者は義務を負う存在ですから、支払いや返済などの債務の履行が可能です。債権者は債務の履行を受ける側になります。この他に、債権者だけが持っている力があるのです。

たとえば、AがBに100万円貸しました。Aが債権者で、Bは債務者です。Aは、Bが100万円の返済をしない場合は訴訟などの法的手段で債務の履行を迫ることが可能です。債務名義(確定判決など)を持っていれば、強制執行によって債権の回収をはかることも可能になっています。

また、契約内容によっては、Aは「契約をやめます」という契約解除もできます。契約通りに返済してくれないことで損害が発生したら、損害賠償の請求ができる可能性もあるのです。

債権者であるAには、給付保持力という力もあります。給付保持力とは、債務者から受け取った返済物などを適法に保持できる力のことです。

AとBの借金の例で説明すると、Bが返済したお金を適法に保持できるということになります。契約通りにBに返済してもらった後にBから「やっぱりあのお金を返して」と言われても、Aには給付保持力があるため、返す必要はありません。当たり前のことですが、とても重要な債務と債権の違いです。

最後に

債務と債権は別々の意味を持つ言葉ですが、表裏一体的な存在の言葉でもあります。100万円の貸し借りにおいては、返してもらう側が債権であり、返す側が債務です。

債務と債権の違いは1つの借金を例に、借り手と貸し手の視点で見ると覚えやすくなります。意味を混同しそうになったらAとBの2人の人物の借金問題を思い浮かべて、ABそれぞれの立場で「何をしてもらえるか」「何をしなければならないか」を確認してみると、頭の中がすっきりして分かりやすいはずです。

※記事の掲載内容は執筆当時のものです。