【受取手形の裏書きとは?】元銀行員が詳細解説

手形に裏書きすることは受取手形の利用者に取って欠くことができない要件です。なぜなら受け取った手形に裏書きしないことには何も利用価値は生まれませんので。

では受取手形に裏書きすることの本当の意味を十分理解して手形を活用している中小企業経営者や個人事業主はどれぐらいいるのでしょうか?
実際にその裏書きの価値や重要性まで聞かれると、答えに窮する事業者も結構多いのではないかと思います。

事業において受取手形は重要な支払いかつ決済手段のひとつです。事業者がそのうまい使い方を知れば資金繰りの改善にも大いに役立ちます。

ただ支払い手段としての受取手形の流通量は減っているのが現実で、利用のピーク時から比べるとその流通量は約10分の1まで激減していると言われています。筆者は元銀行員なので手形が事業者の支払い手段の中心だった時代をいやと言うほど知っており、このような利用実態を聞くと時代の移り変わりを感じざるを得ません。

しかしコスト面や管理面から手形利用の削減に躍起になっている大企業ならいざ知らず、依然として中小企業や個人事業主の支払い手段のひとつとして利用されている手形はまだまだ利用価値があります。

そこでこの記事では受取手形に裏書きするとはどういうことかについて、長年仕事を通じて手形実務に携わってきた元銀行員の筆者が詳細解説します。

なお、手形に裏書して譲渡すること(譲渡手形)のより詳しい活用方法や利用上の注意点については、別記事「手形の裏書譲渡について元銀行員が徹底解説!」を参考にして下さい。

受取手形として受け取る手形の大半は約束手形

じつは支払いを手形で受け取る場合、その受取手形の大半は約束手形です。一方、別の手形種類である為替手形の利用率は本当に少ないです。そこでこの章ではまず、受取手形の種類と手形現物、また裏書きとはどのようなものか、具体的に読者の目で確認してもらいたいと考えています。

手形は小切手とともに事業者が日常的に事業資金として利用できる支払い手段のひとつです。また事業者がどのようにして手形を手にすることができるかというと、まず自社が取引している銀行や信用金庫に当座預金勘定の開設を申し出ることから始まります。

当座預金の申込みを受けた金融機関は依頼を受けた取引先を様々な角度から審査して「本当に当座預金を開設するのに値する事業者か」どうか決めます。なぜなら当座預金を開設するということは、金融機関がその取引先に信用を供与するのと同じ行為だからです。

そして審査に通るといよいよ事業者は当座預金を開設することができ、銀行が与えてくれた信用を背景に小切手や手形を取引先宛て発行できるようになります。

小切手や手形を現実に見たことがない方のために、まずは手形の現物を全国銀行協会の公式サイトから引用してみたのでご覧になって下さい。公式ページの中段以降に約束手形や為替手形、および手形の裏書きの状況を見ることができます。

引用元:全国銀行協会 手形・小切手の利用方法1.手形・小切手の振出

手形は約束手形、為替手形の二種類がありますが、実際の取引で圧倒的に利用されているのは約束手形です。

約束手形は取引先と自社のような2社間取引の決済で、為替手形は3社間取引の決済で利用されますが、為替手形は輸出入取引業者のような特殊取引に活用されることが多く利用実態も極めて少ないので、以降は為替手形の説明を省き、主に約束手形を中心に解説していきます。

手形は当座預金の信用を背景に発行できる有価証券

手形は銀行等の当座預金の信用を背景に発行できる有価証券です。また事業者の支払い手段のひとつとして利用することができます。事業者が物品購入や受けたサービスの対価として支払う方法には、現金、小切手、振込み、売掛金など色々種類がありますが手形もそのひとつです。

一方、手形については、すぐに支払いに利用できる現金や振込み、小切手と異なる点があり、手形や売掛金は延べ払いができるという点、いわば決済を先送りできるというメリットがあります。

もちろん売掛金は取引相手が自社を信用してくれなければ延べ払いに応じてくれませんが、約束手形は金融機関からの信用をバックに最初から有価証券という形を取っているので、取引相手もそのまま素直に手形を支払い手段として受け取ってくれる割合が圧倒的に多いです。これも約束手形が支払い手段として優れている面でもあります。

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約束手形表面(おもてめん)の重要記載項目とは?

前章で手形は「支払いの繰り延べ」と説明しましたが、約束手形は「A社はB社に対し○ケ月後の○月○日に○円を支払うことを約束した」という内容を盛り込んだ有価証券になっています。そして上記の文言の全てが約束手形の表面の重要記載項目と一致しているのです。
ここで各項目は以下のことを示しています。

・A社…振出人
・B社…受取人かつ第一裏書人
・○ケ月後の○月○日…手形の支払期日
・○円…券面金額

約束手形では、上記重要4項目除き、その他の項目は全て印刷済みなので、手形の振出人は上記4項目のみ内容記入して、最後に金融機関に届け済みの当座取引印を押印して手形を受取人(兼第一裏書人)に渡せばそれで支払いは終わります。

受取手形は裏書きすることで支払い手段として活用できる

自社が取引先に納品した商品や提供したサービスの対価に約束手形を受け取った場合、その手形のことを受取手形と言いますが、受取手形は裏書きすることで「再び」支払い手段として利用できます。(譲渡手形とも言います)

ここでもう一度全国銀行協会の公式サイトから引用した約束手形の裏書き欄を確認して下さい。

引用元:全国銀行協会 手形・小切手の利用方法2.手形・小切手の譲渡

事例にある約束手形の裏面(裏書き欄)には署名欄が上から下に向けて階段上に並んでおり、手形を受け取った会社や個人が署名、捺印して次々に自社の取引相手に支払い手段として渡すことができるようになっています。(この手形に関する行為を裏書きといいます)

ただし裏書きで手形を支払いに使える期限はその約束手形の表面に記載されている支払期日までです。そして約束手形を支払期日まで持っていた最終所有者が最後に手形表面に記載されている金融機関の支店に手形を呈示して額面記載の金額を受け取るようになっています。(手形の取立手続きに関しては最後の章で詳しく説明します)

最終所有者から手形が金融機関に呈示され、振出人の取引口座から額面の金額が引き落とされ無事に決済されると、その手形に関する全ての取引が完了することになります。

受取手形の裏書きは連続していなければダメ

受取手形の裏書きには利用者が守らねばならないとても大事なルールがあります。それは「受取手形の裏書きは連続していなければならない」ということです。

これがきちんとできていないと、手形の所持人は正当な権利者と見なされないので、金融機関に約束手形を呈示しても支払いを拒否されることになります。

裏書の連続性とは手形が以下の2つの条件を満たしていることです。

  • 表面の「受取人」の署名と裏書欄の「第一裏書人」の署名が同一人であること
  • 裏面の「被裏書人」欄の名称とその次の「裏書人」欄の署名が同じであること

さらに厳格なことを書くと、裏書き欄の各署名欄に記載されている日付も逆転してもいけません。必ず上の段から下の段に向けて、古い日付から新しい日付で連続している必要があります。

取引相手の無知から、裏書き署名欄で連続性を欠いた手形や日付が連続していないような約束手形を支払いで渡されるようなこともあるので、受け取るときには「約束手形の必要要件は全て備えているか」きちんと確認してから受け取るようにしましょう。

受取手形は支払いに利用しないなら早めに金融機関に取り立てに回す

受取手形を裏書きで支払いに回す方法やその裏書のコツについて大枠で説明してきましたが、もしそれ以上支払いに利用しないなら手形を早めに金融機関に取り立てに回すようにしましょう。

筆者の銀行員時代の体験ですが、たまに手形の支払期日ギリギリか、支払期日を過ぎてから店頭に所持する約束手形を呈示してきたお客様がいました。

じつは手形の金融機関における支払可能期間は「支払期日を含めて3日間※」と極めて短く設定されており、顧客が支払期日を過ぎて手形を呈示しても金融機関は「支払期日経過」を理由に支払いに応じてくれません。(※銀行休日の土日及び祝日が手形の支払可能期間に入ると、その分支払期日は延びます)

もちろん受取手形は有価証券なので支払期日を過ぎても手形自体は無効にはなりませんが、金融機関では支払いに応じてくれないので、手形の所持者は振出人に連絡を取り、手形を渡して小切手か現金に交換してもらわねばなりません。

このようなとき、もし間に手形の裏書人がたくさんいて、しかも振出人が他県在住のような場合、手形の最終所持者は手形を現金化するため、わざわざ時間と手間をかけて振出人の住所に出向いて頭を下げて依頼しなければならなくなります。そんなこと想像しただけでもいやですよね。

そのようなことにならないためにも、手形を支払いで受け取って、それ以上次の支払いや手形割引に使う予定がないのなら、すぐに受取手形を自社の取引銀行に「取立て」で持ち込んで資金回収を依頼しておきましょう。

そうすれば支払期日まで後の手形管理は全て取引銀行がやってくれるので、事業者は手形の管理に頭を悩ます必要もありません。

取立てがスムーズに進めば支払期日には自社の取引口座に資金が入金されるので、数日後には運転資金として利用できるようになります。(手形交換所のルールで取立て代わり金が自由な資金として使えるようになるには資金が口座に入金後、1日~数日かかります)また取立ての際には、金融機関に対して手形1枚ごと、7百円~1千円程度(消費税別)の手数料支払いが必要なので合わせて覚えておいて下さい。

まとめ

受取手形は裏書きすることで、支払期日まで次から次と支払いに回せるという点では事業者にとって大変メリットの大きい決済手段です。

しかも売掛金という明確な形のない決済方法と違い、受取手形は銀行等の信用を背景としたれっきとした有価証券であるため、受取側にも受け取ってもらいやすいという利点もあります。

しかし一方で小切手など、いつでも金融機関に呈示ができ基本的に支払期限が決まっていないものに比べて、受取手形は支払可能期限が支払期日を含めて3日間と極めて短いデメリットもあります。しかも振出人が倒産等で支払不能になれば手形に裏書きした自社も前裏書人に対して返済責任を負うというリスクも抱えます。

このように受取手形にはメリットもデメリットもあるので、利用者はしっかり手形に関する知識を身につけて有効活用を図らねばなりません。

 

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※記事の掲載内容は執筆当時のものです。

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